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2017.09.04 前原新代表選出で民進党はどうなる、野党再編か野党共闘か(リベラル21)
広原盛明(関西在住 都市計画・まちづくり研究者)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-4084.html
民進党代表選翌日の9月2日、各紙は前原氏の代表選出を大きく伝えた。その中で目立ったのは、前原新代表の選出で民進党が野党再編に向かうのか、野党共闘を継続するかについての観測記事だった。各紙の社説と主な見出しを紹介しよう。
【朝日新聞】
「社説、前原民進党 愚直に、一歩一歩前に」「民進 存亡かけた船出、前原新代表 持論の増税・改憲 党内に火種」「小池氏らと再編? 共産と共闘継続? 両方に分裂リスク」
【毎日新聞】
「社説、民進党新代表に前原氏、『ど真ん中』の空白埋めよ」「民進代表に前原氏、枝野氏 要職起用へ」「前原氏 背水の船出、民進新代表 多様な意見どう結集」「野党再編見通せず、枝野氏善戦、融和を優先」
【読売新聞】
「社説、野党共闘の見直しが試金石だ」「民進代表に前原氏、共産と協力『見直しも』、枝野氏破る」「野党再編 道険し、前原新代表 非自民 3度目の挑戦、連携 小池氏か『民共』か」「枝野氏『善戦』 人事影響か、国会議員票 大差つかず、『党員票』前原氏に軍配」
【日経新聞】
「社説、党再建へのラストチャンスだ」「民進代表に前原氏、野党再編 やまぬ憶測、『非自民』受け皿目指す」「前原氏、背水の再登板、増税や原発なお火種、党結束、幹事長人事も焦点」
【産経新聞】
「社説、前原新代表、党再建は危機の直視から」「前原氏 霧深し、なお離党予備軍・どうなる民共共闘」
【京都新聞】
「社説、前原新代表、危機感持って党再生を」「民進新代表に前原氏、野党共闘見直し検討、枝野氏に執行部入り要請」「京滋の民進党所属国会議員『前原氏、党立て直しを』、野党再編の期待吸収、『非共産』路線に共感、枝野陣営『策に溺れた』」「福祉充実、増税逃げず、党内融和へ保守色封印、野党共闘
難しい対応」「民進新代表に前原氏、対案路線 党内結束、京都各党 手腕に注目、共産、共闘可能性探る」
各紙を一通りざっと読んでみたが、予想に反して論調にさほど大きな差はなかった。もちろん野党共闘とりわけ「民共共闘」に否定的な読売・産経・日経各紙は、前原氏が野党再編を通して保守2大政党へ舵を切ることに対する強い期待を示しているものの、それが民進党の解党につながり、政局が一挙に流動化することまでは望んでいない。民進党の解党と小池新党の立ち上げが重なることで、この先どんな政局になるか、まだ見極めがつかないからだ。
一方注目すべきは、これまで野党共闘を支援してきた朝日・毎日両紙の論調がここにきて大きく分かれたことだ。朝日が野党勢力や幅広い市民団体などとの連携が不可欠であり、その結集軸をつくる野党第1党としての民進党の責任を強調するのに対して、毎日は「ど真ん中」との表現で民進党が「穏健な保守政党」へ回帰し、その延長線上に野党再編に突き進むことを推奨している。これが1論説委員の個人的意見なのか、それとも毎日新聞全体の総意をあらわす主張なのか、もう少し時間をかけてみないとわからないが、もしそうであるなら毎日新聞の変質にもつながりかねない大事件だと言わなければならない。
とはいえ、各紙が思い切って社説を展開できない背景には、目前に迫った青森・新潟・愛媛の衆院3補選をはじめ、安倍政権に対する国民の批判票がどのような形で現れるか依然として予想がつかないからだ。内閣改造効果を狙った内閣支持率の回復も思わしくなく、森友疑惑・加計疑惑を覆う「黒い霧」はいっこうに晴れる気配がない。安倍政権の刺さった骨は喉元深く食い込み、抜こうとしても抜くことができない。安倍政権に対する国民の不信感は、民進党内のゴタゴタや野党の敵失で雲散霧消するほど浅くはないのである。
だが、安倍政権内ではこの混乱に乗じて一気に総選挙に打って出る「ガラガラポン」戦略が検討されていると聞く。「加計学園獣医学部新設」と言う安倍政権の喉元に深く食い込んだ骨を抜くために、獣医学部新設構想をいったん棚上げして総選挙に打って出ると言う「サプライズ戦略」が練られているというのである。真偽のほどはよく分からないが、森友学園の籠池理事長をトカゲの尻尾切りよろしく切り捨てたように、加計学園の加計理事長もこの際一挙に始末し、安倍政権の再浮上を図ると言うのだからただ事ではない。政界は一寸先が闇なのだ。
前原氏の地元・京都でも、最近になって衆院選向けのポスターが一斉に張り替えられた。私の近所(京都3区)でも自民、公明、民進、幸福党などの候補者ポスターが目立つようになり、総選挙の匂いが充満してきている。「民共共闘は死んでも阻止する」と断言する民進党京都府連の面々は意気軒高だ。前原氏を政治の師と仰ぐ京都4区の北神衆院議員などは、民進党代表選の決起集会で共産党との共闘を「赤いモルヒネ」と呼び、「手を出したら骨の髄まで蝕まれる。京都の我々は一番よく分かっている」と言い放った。前原氏も「どの部分がとは言わないが、私の本音を話してくれた」と述べたという(朝日、2017年9月2日)。
いずれにしても、民進党が態勢を立て直し次のステージに移る前に総選挙が行われる可能性が極めて高い。前原新代表はその渦中で翻弄されて体力を消耗し、総選挙後には見る影もない状態に陥ることも予想される。民進党代表選は「嵐の前の序曲」にすぎないのであり、これから嵐の中に突入することになるのである。
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