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なぜJアラートを鳴らしたのか 「ミサイル狂騒」7つの疑問
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/212561
2017年8月31日 日刊ゲンダイ 文字お越し
訪日したメイ英首相を出迎え(右は北朝鮮ミサイル「火星12」=コリアメディア提供・共同)/(C)AP
北朝鮮による中距離弾道ミサイル発射から2日経ったが、いまだに日本中は大騒ぎだ。米領グアムへの包囲射撃を予告している金正恩朝鮮労働党委員長は「太平洋上での軍事作戦の第一歩。侵略の前哨基地であるグアム島を牽制する意味深い前奏曲となる」と自画自賛し、「米国とは言葉で相手にせず、行動で見せるべきだ」と発射継続を指示。カリアゲ独裁者の挑発行為は言語道断だが、腕まくりでコトに当たる安倍政権も常軌を逸している。
29日早朝の発射直後に会見した安倍首相は「わが国に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した」と断定し、「発射直後からミサイルの動きを完全に把握している」と胸を張った。30日、衆参両院で開かれた閉会中審査で小野寺防衛相も「レーダーで落下するまで切れ目なく完全に追尾していた」と言い切っていたが、自衛隊による迎撃措置はなされなかった。
日本の領土、領海に着弾する可能性がないと判断したからだ。ここで矛盾が生じる。ミサイルの動きを完全に把握し、日本列島に飛来する恐れがないと分かっていたのにJアラート(全国瞬時警報システム)を鳴らしたのはなぜなのか。その対象は北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、長野の12道県で、実に広範囲に及んだ。
■辻褄が合わない首相の言動
軍事評論家の前田哲男氏はこう言う。
「安倍首相や小野寺防衛相の説明によると、発射兆候を探知し、ミサイル進路を分析した結果、日本に落下しないと判断したため、破壊措置を実施しなかったということになります。だとすれば、北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したというのは事実と異なりますし、Jアラート作動も辻褄が合わない。しかも、北関東や長野県までも対象としたのに、首都圏中枢部の東京、千葉、埼玉、神奈川はキレイに外されている。人口集中地域で朝の通勤ラッシュ時に公共交通機関がストップしたら、不安心理によるパニックは避けられません。疑惑まみれで屋台骨がグラグラの安倍政権は、現実には存在しない危機を煽り立て、目くらましに利用しているのではないか。国民を思考停止させて統制を強め、国民保護法の社会実験を敢行した。それが安倍官邸の狙いだったのではないでしょうか」
ミサイルが加速中の段階では、正確な着弾地点を割り出せないとか、破片が落下する可能性があったというのであれば、キチンとした説明が必要だ。そうでなければ、国民は納得できない。
トランプ米大統領はハリケーン対応で手一杯(右は金正恩委員長=コリアメディア提供・共同)/(C)AP
ミサイル脅威を誇張、言葉を失うハレンチな二枚舌 |
一方、現実にミサイルの標的にされている米国は「北米にとって脅威にならない」(国防総省マニング報道部長)と静観。3万人が避難するハリケーン対応に手いっぱいで、トランプ米大統領が「国際的に受け入れられる最低限の基準に対する侮辱だ」と非難声明を出したのは、発射から半日以上も経ってから。日本の要請で急きょ招集された国連安保理緊急会合は「強く非難する」との議長声明を全会一致で採択し、北朝鮮にミサイル発射の即時停止を求めたが、中ロは対北制裁の強化に難色を示している。米国や安保理の対応を見る限り、騒ぎ立てているのは安倍首相だけではないのか。国際社会の反応と安倍の言動にはかなり温度差がある。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「事態が緊迫していれば、米国は行動を起こしますし、ロシアも動く。実際、イラクやシリアをめぐっては、対立する米ロがそれぞれ介入しています。今回ミサイルが落下した地点は北海道・襟裳岬東方約1180キロの太平洋上。領土から12カイリ(約22.2キロ)の領海、24カイリ(約44.4キロ)の接続水域、ミサイルの残骸を落下させても国際法上問題とされない200カイリ(約370.4キロ)の排他的経済水域(EEZ)のはるか先です。しかも、ミサイルは最高高度550キロで飛行し、高度400キロで飛ぶスペースシャトルや200〜300キロを周回する偵察衛星のさらに上空。本気で日本の領土領空が侵され、国民の生命が脅かされていると考えているのでしょうか。ハレンチなほどの二枚舌には言葉を失います」
■一触即発で世界秩序グラグラ
国民には警報で死の恐怖を植え付け、「圧力を高める」「国際社会に訴える」と拳を振り上げる。大体、本当に国民の生命が危ういのならば、なぜミサイル発射の夜に安倍は高級フレンチを食えるのか。安倍は午後6時半過ぎに有楽町の有名店「アピシウス」入り。ディナーコースは1万2960円(サ別)から、ドレスコードもうるさいリッチなレストランで、自民党の吉田博美参院幹事長、西田昌司参院国対委員長代行、野上浩太郎官房副長官とテーブルを囲み、のんびり2時間かけて豪華メシに舌鼓。これだけ騒いでおいて、よくも官邸を離れられるものだ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。
「前々から予定されていた意味のある会合なのかもしれませんが、安倍首相は〈これまでにない深刻かつ重大な脅威だ〉と強い言葉で国民を恐怖と不安のドン底に突き落とし、安全宣言も何もないまま、本人はのこのこと出かけている。〈何か変じゃない?〉という声が上がるのは当然ですよ」
安倍は30日深夜、トランプと電話会談で対北圧力をめぐり再協議。「トランプ大統領と完全に一致した」などとイキリ立ち、またぞろ対立を煽っていた。これでは北朝鮮が日本に怒りの矛先を向けるのも無理はない。そもそも、北朝鮮が相手にしているのは米国であって、日本は関係ないはずである。安倍は「わが国に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した」とわめいているが、今日の事態を招いたのは安倍外交の致命的失策ではないのか。
「日本は仲介国家として国際社会で一定の役割を果たしてきた。ところが、安倍首相のやることは真逆です。この国を脅威にさらし、国民の生命に危険をもたらしているのは首相にほかなりません。圧力一辺倒で一触即発の事態を招きつつあり、東アジアの国際関係を引っかき回した揚げ句、世界秩序を揺るがしかねません」(五野井郁夫氏=前出)
これで助かるとは思えない(C)共同通信社
軍拡競争の悪循環にハマり巨額防衛費パー |
北朝鮮のミサイル発射を受け、小野寺防衛相は「警戒監視態勢をしっかり強めていく」と、防衛態勢強化の必要性を重ねて訴えた。現在のミサイル迎撃システムは2段構えだ。まず大気圏外を飛行するミサイルを海上自衛隊が保有するイージス艦搭載の海上配備型「SM3」で撃ち落とし、撃ち損ねた場合は、空自の地上配備型「PAC3」で迎え撃つ。
同時多発的に発射されたミサイルへの対応は難しいとの理由で、小野寺は陸上配備型SM3「イージス・アショア」の導入を急いでいる。米国製の「イージス・アショア」は、1基800億円もする。日本は最低でも2基購入する予定だ。
しかし、それで本当に北朝鮮のミサイルを防げるのか疑問だらけだ。巨額の税金を投じるミサイル迎撃システムは際限ない金食い虫で、なおかつ、無用の長物になるのではないか。
武器輸出反対ネットワークの杉原浩司代表はこう言う。
「北朝鮮のミサイルは移動式発射台で、ただでさえ発射位置が掴みづらい状況です。イージス・アショアを導入しても、同時多発ミサイルを全て迎撃することは不可能に近い。いくら最新鋭の軍事設備を導入しても、北朝鮮はその能力を超える兵器を開発するでしょう。最新鋭の兵器もすぐに時代遅れになる。軍拡競争の悪循環にハマり、つぎ込んだ巨額な防衛費が無駄になるだけです」
■思考停止を招く避難訓練
全国各地で行われている「ミサイル避難訓練」も不可解だ。ミサイル警報を聞いたら「地面に伏せて頭部を守る」などと呼びかけているが、実際にミサイルが飛んできたら助かるはずがない。各自治体がやっている避難訓練はどういう狙いと効果があるのか。
政治学者の五十嵐仁氏がこう言う。
「北朝鮮の危機を煽ることで、国内でくすぶるモリカケ疑惑などから国民の目をそらすことが目的でしょう。冷静に考えれば、避難訓練でミサイルから逃れられないことは分かるはずです。しかし、こういったことを続けると、国民は思考停止状態に陥る可能性がある。『政府の言うことを聞かないと危険だ』と刷り込まれてしまうのです」
結局、北朝鮮の脅威が増すと儲かる連中がいるのではないか。トランプは1月の就任演説で「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」を強調。安倍は呼応するかのように、国会で「米国の装備品はわが国の防衛に不可欠。結果として米国の経済や雇用にも貢献する」と、米国に媚を売るかのような答弁を展開していた。
「脅威が増せば増すほど武器が売れ、懐が潤うのは米国の巨大軍事産業です。イージス・アショアだって、日本は米国から買うわけでしょう。日本には格差や貧困、社会保障などの問題が山積し、いくら財源があっても足りない。なのに米国企業を儲けさせるために巨額な兵器を買うなど、あり得ない話です」(杉原浩司氏=前出)
北朝鮮をめぐるミサイル狂騒はウサンくささがプンプンする。安倍政権は国民が抱く数々の疑問にまともに答えることができるのか。
なぜJアラートを鳴らしたのか 「ミサイル狂騒」7つの疑問|日刊ゲンダイDIGITAL https://t.co/cy1pUnrCQy @tim1134
― 桃丸 (@eos1v) 2017年8月31日
実によく似た三代目のボンボン同士が繰り広げる軍拡狂想曲。巻き込まれる両国民の悲劇→なぜJアラートを鳴らしたのか 「ミサイル狂騒」7つの疑問 https://t.co/CghQK5oVwk #日刊ゲンダイDIGITAL
― 垣見 創也 (@kakki330) 2017年8月31日
危機感を煽って支持率回復を狙うのは、無能な右翼政治家の常套手段ですが、為替相場の不可解な動きも気になりますね。あれで儲けた人が結構居たのではないでしょうか。>
― 川流桃桜@核は違法化! (@kawamomotwitt) 2017年8月31日
なぜJアラートを鳴らしたのか 「ミサイル狂騒」7つの疑問 https://t.co/JTJ9wkbVM6
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