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身の毛もよだつアベノミクスの正体ー(植草一秀氏)
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26th Aug 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
9月、10月になるとNHKが
「いざなぎ超え」
などと喚く可能性があるが、とんでもない誤報である。
「いざなぎ」とは、1965年11月から1970年7月まで続いた
景気拡大局面のことを指し、景気の拡大期間が56ヵ月だった。
他方、2002年1月から2008年2月まで続いたとされる景気回復期間が
73ヵ月だったので、日本政府が認定する景気拡大期の時間的な長さでは、
これが最長とされている。
この景気拡大局面を「いざなみ景気」と命名したのだそうだが、
さすがに、こんな名称を聞いたことがある人はいないだろう。
およそ「景気拡大」などと表現できるような代物ではないからだ。
日本の名目GDPは1997年の534兆円をピークにして、
その後、2014年までの17年間、これを上回ったことがなかった。
2016年にようやく537兆円に達して1997年の水準に肩を並べた。
ならしてみれば18年間ゼロ成長だったわけで、
「いざなみ」も「つきなみ」もないのである。
政府は2012年12月から景気回復期間が現在まで続いているとしている。
この計算だと、本年9月で57ヵ月になり、
「いざなぎ」を超えて、戦後2番目に長命の景気回復になると喧伝している。
恐らく、10月の選挙向けに、
「いざなぎ超え」という「印象操作」を全面的に展開するつもりなのだろう。
ふざけるのもいい加減にしたほうがよい。
昨日記事にも記述したが、1966年から70年の実質経済成長率は
9.8%、12.9%、13.4%、10.7%、10.9%。
1965年の生産水準=所得水準を100とすると、
1970年の生産水準=所得水準は173になった。
5年で所得水準が7割も拡大したのだから、これは本格的な景気拡大だ。
「いざなぎ」以来の景気拡大と言っても過言ではないだろう。
しかし、「いざなみ景気」などと政府が称している2002年から2007年の
実質経済成長率は、
0.1%、1.5%、2.2%、1.7%、1.4%、1.7%。
2001年の生産水準=所得水準を100とすると、
2007年の生産水準=所得水準は109だ。
6年間で所得水準はわずか1割も増えていない。
時間の長さだけで過去の10%成長時代の景気拡大と類似していると表現することが
そもそもの大間違いである。
今回、「いざなぎ超え」だとしようとしている日本経済を検証すると、
2013年から2016年の実質経済成長率は
2.0%、0.3%、1.1%、1.0%で、
2012年の生産水準を100とすると2016年の生産水準は104に過ぎない。
2017年に1%成長を実現しても5年間で5%しか所得は増えていない。
「景気拡大」などと表現できる代物でない。
今回の景気を命名するなら「いかさま景気」ということになる。
メルマガの読者が命名してくれた。
景気の浮き沈みを最も端的に示す経済指標が鉱工業生産統計だ。
生産活動が低下してしまうのが「景気後退」=「不況」、
生産活動が上昇するのが「景気回復」、「景気拡大」である。
グラフを見ると分かりやすいが、
2008年にはサブプライム危機を背景とする不況が発生し、
2012年には、野田佳彦政権が超緊縮財政を強行したために
「野田緊縮財政不況」が発生したことがはっきりと読み取れる。
鉱工業生産統計のグラフを見ると、
実は2014年1月から2016年5月にかけて、
生産活動の低下傾向が続いたことが分かる。
これが何であるかと言うと、
「消費税増税不況」なのだ。
2014年4月に安倍政権は消費税率を5%から8%に引き上げた。
その結果、日本経済は深刻な不況に転落したのである。
生産活動が改善に転じたのは、
為替レートが円高から円安に回帰した昨年央以降のことだ。
今回、景気が改善傾向を示し始めてから、まだ1年しか経っていないのだ。
これが事実に基づく日本経済の推移だ。
実際、日本のGDP成長率は2014年第1四半期から第3四半期まで、
3四半期連続でマイナス成長を記録した。
米国では2四半期連続でマイナス成長となれば、
景気後退=リセッションと認定される。
日本経済は消費税増税が強行された2014年に明確に景気後退に突入し、
経済悪化は昨年半ばまで続いたのである。
ところが、財務省が工作して、この「景気後退」の認定をしていない。
消費税増税で日本経済が不況に転落したという「明白な事実」を隠蔽し、
「景気後退」がなかったことにしているのである。
そのうえで「いざなぎ超え」とは開いた口が塞がらない。
森友疑惑で、財務省という役所が、いかにいかがわしい役所であるかということが、
ようやく広く世間に認知されたが、そのいかがわしい体質は
まったく変わっていないのだ。
昨日も記述したが、NHKは6月25日の日曜討論で
日本偏向協会の名にふさわしい放送を行った。
7月2日に東京都議選が実施されることを踏まえて、
安倍自民党を持ち上げる番組を編成したのである。
日本経済が「いざなぎ超え」なのではなく、
NHKが「大本営超え」と表現する方が適正である。
日曜討論タイトルは、あろうことか、
「“戦後3番目の景気回復”日本経済をどう見るか」
である。
何も知らない人は、日本経済が戦後3番目の好況に沸いていると伝えていると
感じてしまうだろう。
国民の生活実感に「景気回復」のかけらもない。
当たり前だ。
労働者の実質賃金指数は減少し続けている。
とりわけ労働者の実質賃金が大崩落したのが2014年である。
安倍消費税大増税で日本経済は崩落した。
私は2014年版の経済見通し著書タイトルを
『日本経済撃墜』(ビジネス社)
としたが、警告どおりに日本経済は崩落したのである。
毎四半期発表される実質経済成長率の平均値は、
民主党政権時代が+1.8%、第2次安倍政権発足以降が+1.5%。
あの、パッとしなかった民主党政権時代よりも
いまの安倍政権下の経済成長率が低いのだ。
他方、大企業の利益だけは史上最高を更新し続けている。
経済全体のパイが縮小して、大企業の取り分だけが激増しているのだ。
一般労働者は残りの所得を分け合うわけだから、
労働者の手取りの所得は減り続けているのだ。
しかも、残りの所得を分け合う人数だけは増えている。
第2次大戦でも日本の軍隊では、情勢が悪くなれば上にいる人間は
前線の兵隊や国民を置き去りにして、われ先に逃げ延びた。
国民と前線の兵隊は、共食いを強いられて、見殺しにされた。
これとまったく同じ光景が、いまも広がっているのだ。
安倍政権は「一億総活躍」と言うが、日本の人口は1億2700万人だ。
そのうち、65歳以上人口が3500万人だ。
安倍政権が推進しているのは、働くことのできる年齢の国民は全員働かせる。
働く場は、すべて低賃金労働だ。
大資本が利益を極大化するために、正規労働者を徹底的に減らし、
残業代をカットして、できれば、最低賃金制度も廃止して、
いつでも使い捨てにできるような形態で、すべての国民を働かせる。
生産年齢を超えてしまった国民は政府の「荷物」である。
だから、できるだけ年金支給額を減らし、
医療給付を減らす方向に制度を改変している。
これまでの日本では、基本的には、すべての人に、必要十分な医療を提供する
国民皆保険制度を適用してきたが、これを抜本的に改変しようとしている。
必要十分な医療を受けられるのは、一部の富裕層に限られる制度に移行し始めている。
公的保健医療がカバーする医療は、不十分で貧相なものに改変されつつある。
その狙いは何か。
生産年齢を超えた国民には、
できるだけ早期にあの世に逝ってもらおうということなのだ。
そのために、政府にとっては「荷物」だという意味を込めて、
「後期高齢者」
などという名称をつけたのである。
「一億総活躍」と表現するから勘違いしてしまう人が出てくるが、
内容を正確に表す言葉は、
「一億総低賃金強制労働」
である。
「働き方改革」と表現するから勘違いする人が出てくるが、内容を正確に表すなら、
「低賃金強制労働」
である。
他方、高齢者に対する社会保障を可能な限り手薄くして、
「早逝奨励政策」
が展開されている。
これが「アベノミクス」の正体である。
まずは、
「景気拡大が5年も続いている」
という、大本営超えのNHKが大宣伝している
「いざなぎ超え説」
がとんでもない虚偽、捏造、ペテンであることを、広く国民に伝達する必要がある。
客観的なデータを見れば一目瞭然なのである。
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