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「加計疑惑」は新展開! 不可解な「前川 出会い系バー」読売報道
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2017/06/11/post-1580.html
サンデー毎日 2017年6月11日号
牧太郎の青い空白い雲 622
2017年5月22日、『読売新聞』朝刊の社会面に奇妙な記事が載った。
「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」という見出しである。悪徳官僚が業者にたかって、接待を受けていた!ということなのか? 出会い系で未成年に買春行為を働いた!ということなのか?
でも読んでみると、そうでもない。
〈前川喜平・前文科省次官は歌舞伎町の出会い系バーに頻繁に出入りしていたことが関係者の取材でわかった〉。それだけのことだ。
「出会い系バー」なるものを知らないが、「通った」だけで「お叱り」を受けるようなことなのか? 事実であったとしても、一流の新聞が取り上げる「犯罪的行為」なのか?
ヘンな記事だ。取材協力した「関係者」とは一体、誰なのか?
× × ×
この記事が話題になった背景に「加計(かけ)学園疑惑」が存在する。安倍さんの親友が経営する加計学園に特別便宜を図ったのは、「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」――『朝日新聞』が文科省の内部文書の存在をすっぱ抜いた。官邸は、この文書を「怪文書」扱いしたが、実は、大臣、次官に対する説明用に高等教育局専門教育課の役人が書いた「本物」である。「本物」だから、官邸周辺は「この文書は前川から流れた」と推測した。
「前川」とは、前出・文科省の前川喜平・前事務次官のこと。文科省の天下り斡旋(あっせん)問題の責任を取って辞職に追い込まれた人物だ。
この文書が提出されたとされる昨年9〜10月、前川氏は事務次官だった。加計学園に絡む「政治的な動き」はすべて把握している立場にあった。
その前川氏がマスコミのインタビューに応じ「あの文書は本物」と実名で証言するとしたら......官邸は慌てた(当時、某テレビ局がすでにインタビューを放送する寸前だった、という噂(うわさ)まである)。
読売にヘンな記事が出たのは、そんなタイミングだった。
× × ×
前川氏は気骨のある人と聞いている。熱血漢!である。
小泉純一郎政権が「三位一体の改革」(国庫補助負担金の廃止・縮減、税財源の移譲、地方交付税の一体的な見直し)を進めようとした時、省内に「奇兵隊(喜平隊?)」を組織して猛烈に反対した。
安倍政権の「教育勅語」的教育改革にも反対だった。もちろん、加計学園を優遇する「官邸の最高レベル」の言いなりにはならない。前川氏は安倍政権にとって「良からぬ存在」だった。だから、どの役所でも行われている「天下り斡旋」を問題にして、辞任に追い込んだのではないか。前川・文科省は「1強」の安倍さんに盾突き、結果的に潰されてしまった。
そんな経緯があったから、官邸は「総理のご意向」文書が流れた時、「前川の報復」と推理した。
× × ×
でも、「出会い系バー通い」が本当だとしても、一流の新聞が追及する事件だろうか? 大体、この「出会い系バー通い」の噂は「天下り斡旋騒ぎ」の頃にも流れていた。
読売に「出会い系」情報を流した関係者は多分、世間に《ハレンチ前川》を印象づけようとしたのではないか。前川氏の「口封じ」を狙ったのだ......。
ところが、天は自ら助くる者を助く!
前川氏は自ら反撃に出て、関係者の策謀は裏目に出た。
前川氏はビビらなかった。 6月1日号の『週刊文春』を見て官邸は仰天した。
〈「『総理のご意向』文書は本物です」文科省前事務次官 前川喜平 独占告白150分〉というスクープ。洗いざらい「総理のご意向」をバラしている。
読売の「出会い系バー」の疑惑には「その店に行ったのは事実ですが、もちろん、法に触れることは一切していません」とサラリ。5月26日には堂々と記者会見も行った。
つまり、前川氏は安倍政権と命がけで戦うつもりだろう。「加計学園疑惑」の新展開である。
「これ不正があったんですか。もし働きかけて決めてるのであれば、(私は)責任取りますよ。当たり前じゃないですか」
と開き直っていた安倍さん、大ピンチである。
読売はどうだろう。これまで読売は、官僚や政治家の不正はあまり書かない新聞と見られていた。それが今回、見慣れない「ハレンチ官僚追及」。安倍政権との間に「何か」があった、としか思えない。
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