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「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が国会で議論されている。政府は「テロ対策に必要」との立場だが、捜査当局による乱用や「表現の自由」などの侵害を危惧する声もある。
自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で、何度も「共謀罪」法案を取り上げている評論家の荻上チキさん(35)は、政府は堂々と監視社会になることを明示したうえで、法案を審議すべきだ、と語ります。
《政府は「監視権限を委ねることに賛成ですか」と、正直に国民に問うべきだ。》
現在国会で審議されている「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)を、政府は「替え玉受験」みたいな手口で通そうとしています。前回廃案となった段階までに、対象となる犯罪はある程度しぼられており、現在の案はそれより後退しています。
そのうえ、「テロ等準備罪」と名前を変え、東京五輪やラグビーワールドカップのために必要だ、と後付けの理由がどんどん増えています。テロ対策と言えば、多くの国民は仕方ないと判断するかもしれませんが、元の共謀罪と変わらない。まさに替え玉立法と言うべきです。
金田勝年法相が予算委員会で法律の立法事実(法律が必要な理由)を説明できなかったことも大問題です。まるで「何のために公園を作るか」と聞かれているのに、「公園の案ができてから」とか、「実際に工事が始まってから説明する」と言っているようなものです。
僕がパーソナリティーを務めるラジオ番組では、国会答弁の音声をたくさん使います。実際に国会の議論を聞いたことがない人も多いので、「実際に聞くとひどいでしょ」と。言いよどんでいますよね、とか、早口になって焦っていますよね、とか。声は雄弁なので、その日の音声はその日のうちに紹介しています。
酒と食事を持参していたら花見だけど、双眼鏡や地図を持ち歩いていたら、準備行為だと外形上判断できるという、とんでもない答弁もありました。
政府は下見などの準備行為をしなければ、処罰対象にならないと説明していますが、花見が下見なのかどうかは外形上は判断できないはずです。だからこそ、その前の段階でどのようなことを話しているのか、事前に把握していないといけません。そうなると、監視対象には一般人も含まれます。
一般の団体が対象にならないという議論も同じです。組織的な犯罪をする団体である、という証拠はどのように得るのか。会社のホームページに「テロをやります」と掲載することはあり得ません。組織犯罪を目的としているということを外形上判断することは難しい。普段から「ああいったことをやろうね」というコミュニケーションが行われているから、組織犯罪を目的にしている集団だということがわかるわけです。
政府は「テロ対策」と言わず、正直に「監視をすることでより幅広く犯罪を取り締まります。そのために監視権限を捜査機関にもっと委ねてください。それに賛成か反対か」と問えばいいと思います。ただ、監視権限が乱用されないように、誰が監視の対象になったのかを事後的に開示請求したり、監視機構を設けたりするなど歯止めをかけるための議論が不可欠です。
政権は変わっても法律は残ります。捜査には冤罪(えんざい)もつきものです。その後の政権がどのように法律を使うのか、社会の在り方にも踏み込んだ話をして、初めて丁寧な議論をしたと言えると思います。金田大臣の答弁は不明確で、明らかに議論が不十分。通すことありきで中身がお粗末です。少しはかみ合った議論をしてほしいと思います。(聞き手・小林孝也)
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おぎうえ・ちき 言論サイト「シノドス」編集長。TBSラジオ「Session―22」でパーソナリティーを務める。
http://digital.asahi.com/articles/ASK5841LLK58UTIL01X.html?iref=comtop_8_01
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