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ネット上で配信されるニュースに対するコメントについて、立教大の木村忠正教授(ネットワーク社会論)とニュースサイトのヤフー・ニュースが共同で分析した。韓国や中国の人たちに対する「排斥意識」の強い言説が浮かび上がる。
ヤフー・ニュースでは月12万件の記事が配信され、閲覧者が意見や感想などをコメントとして投稿する。その数は月660万件に上る。今回、2015年4月の1週間に配信した政治や社会など硬派なテーマの記事約1万件と、それに対して投稿されたコメント数十万件を初めて調査した。
各コメントについて、人名や地名など様々な言葉で出現頻度を調べると、頻度の高い上位三つは「日本」「韓国」「中国」。10位までに「日本人」「韓」「朝鮮」がみられた。韓国絡みの言葉を含んだコメントが最も多くて全体の20%近く、中国関連とあわせると25%を占めた。その多くに「嫌韓」や「嫌中」の意識が色濃くみられたという。侮蔑的なコメントの8割を韓国関連が占めた。
日本では10年ほど前から嫌韓や嫌中関連本の出版が相次ぎ、書店にコーナーができることもあった。差別的言説への批判や意識が高まり、15年ごろには下火となった。ネット空間で排他的な言葉が飛び交っていることについて木村教授は「匿名で誹謗(ひぼう)中傷や極端な主張をしやすいため」とみる。
ヤフーは過度に悪質な投稿を削除したり、表示順位を下げたりする工夫を重ねているが、過激な内容を完全に排除することはできない。
今回の分析では1週間で100回以上コメントを投稿した人が全体の1%いた。この1%の人たちの投稿で全体のコメントの20%が形成されていた。一方、頻繁に投稿しない人のコメントにも嫌韓や嫌中の言葉が含まれていることがあり、昨年7月のデータを分析しても傾向はおおむね変わっていなかったという。
ある政治サイトの運営者は「記事に保守的な見出しをつければ、閲覧数が増える傾向はある」と漏らす。「ネット右派」を研究する成蹊大学の伊藤昌亮教授は「ヘイトスピーチやデマの背景には、ネットで拡散される言説がある。1990年代後半から続く根深いものだ」と指摘する。
欧州では反移民を掲げる極右政党がネットを使って勢力を拡大している。昨年の米大統領選では、トランプ氏がツイッターで白人至上主義や反移民を主張した。
今回調査した木村教授は「日米欧に共通するのは、少数派や弱者に対するいらだちだ。底流には自分たちは多数派なのに、利益を享受していないという不満がある。ネットニュースへのコメントには、こうした社会心理が表れている」と話す。(日浦統)
4月28日 朝刊
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