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御用メディアが盛んに報じる 米国抜きTPPという夢物語
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204139
2017年4月22日 日刊ゲンダイ 文字お越し
安倍首相にやれるわけがない(C)AP
「明らかな無理スジ。メディアの論評記事も、根拠なき楽観論に過ぎません」――経済評論家の斎藤満氏がそうバッサリ切り捨てたのは、安倍政権が目指すという「米国抜きTPP」の発効だ。
現地時間19日、ニューヨークで講演した麻生副首相兼財務相は、「TPPを(米国を除く)11カ国でやろうという話は5月に出る」と明言。5月20日前後にベトナムで開かれるTPP参加国の閣僚会合で、協議が本格化するとの見通しを示したが、一体、どんな勝算があっての発言なのか。
米国はトランプ政権の誕生に伴いTPPから離脱。米国以外の11カ国での発効を目指すには、全ての交渉を一からやり直さなければならない。日本以外に米国抜きTPPに積極的なのはオーストラリアとニュージーランドだけ。他の参加国は米国の離脱を受けて、もはや“同床異夢”の状況にある。
ベトナムやマレーシアは米国の市場開放を目当てに自国の規制緩和に応じた経緯があり、米国抜きのTPPには消極的だ。カナダやメキシコは、トランプ政権が「見直し」を明言する北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が最優先。チリやペルーは、中国を加えた貿易協定に関心を寄せている。
18日の日米両政府の経済対話後の会見で、米国のペンス副大統領が言い切った通り、TPPは「過去のものだ」。いくら安倍政権が米国抜きTPPの音頭を取ろうが、ほとんど独り善がりに過ぎない。ハッキリ言って、お笑い草だ。エコノミストの高橋乗宣氏はこう言った。
「TPPに参加するメリットは、米国という世界一巨大な市場があったからこそ。参加国内で経済規模の3分の2を占めた米国が抜けたことで、TPPは立ち消えになっても仕方がないのです。
日本主導で米国抜きのTPPを発効させようにも、今の日本市場に他の国々の経済を引っ張り上げるだけのパワーがありますか? 残念ながら、それだけの力は今の日本経済にはありません。本来なら、安倍政権はその現実を受け止めるべきなのです」
日本はTPP交渉に2013年から参加。15年10月に大筋合意し、16年2月に署名するまで「長い間、激論を重ねてきた」(政府高官)というだけに、安倍政権としても未練たらたら。「ハイ、さようなら」という気持ちになれないのだろうが、ちょっと往生際が悪すぎやしないか。
日本は米国にやられっぱなし(C)AP
中川前政務官も顔負けの国を挙げた付きまとい |
安倍政権が未練がましい状況に陥ったのは、自分たちの見通しの甘さのせいだ。そもそも「TPP離脱」を公約に掲げたトランプ大統領の当選を読み切れなかったのが、全ての間違いの始まりである。
トランプ当選後も「米国のTPP残留を説得する後押しになる」と、TPP承認案と関連法案の成立に邁進。当選から約1週間後に安倍はNYのトランプタワーに電撃訪問し、世界に先がけて直接会談にこぎつけたのも、つかの間だ。わずか5日後にトランプは大統領就任初日に実施する政策として「TPP脱退を通告する」と一方的に宣言。さすがに初日とはいかなかったが、就任3日後には「TPPから永久に離脱する」との大統領令に署名したのだ。
それでも安倍政権はあきらめきれず、トランプ政権にTPP復帰を促してきたが、前出のペンス副大統領の完全に突き放した発言もあって、方針転換。「米国抜きTPP」にカジを切ったわけだが、大マスコミは「発効すれば、日本などで豪州産の牛肉などの関税が下がり、米国産の輸出は不利になるため、TPP復帰を求める声が米国内でも強まるとの思惑もある」と書いていた。
自分たちの見通しの甘さを認めず、米国という“逃げた恋人”を振り向かせようと、とことん追いかけ続ける。自民党を離党したストーカー登録議員も顔負け。まるで国家を挙げたストーカー行為に等しい。
「安倍政権のやっていることはトランプ政権にシッポを振りながら、TPP推進派の米国内のグローバル企業にも秋波を送る“二股交際”のようなものです」と言うのは、TPP問題に詳しい東大大学院教授の鈴木宣弘氏だ。こう続けた。
「これまで安倍政権はTPPに邁進してきた手前、米国内でくすぶっている推進派の顔色をうかがって、うかつにTPPの“旗印”を降ろすわけにもいかない。その半面、トランプ政権のご機嫌も取ろうとすれば大変でしょうが、米国の反TPP派も推進派も取り込もうとするなんて、まさに究極の隷従の姿です」
ひょっとすると、今の安倍政権は「日本は米国の愛の奴隷」なんて考えに支配されているのではないか。もはや、笑うに笑えない亡国的センチメンタルである。
■透けて見える大東亜共栄圏の亡霊
「夢よ、もう一度」とばかりにTPPに固執する政権に、お付き合いしている大新聞・テレビもどうかしている。
米国抜きTPPについて、21日付の社説で「日本が主導して自由貿易圏を広げ、保護主義に走るトランプ米政権を多国間の貿易秩序に引き戻すことが重要である」と書いた読売をはじめ、大新聞の多くは「二国間交渉にこだわる米国をけん制し、翻意を促す狙いもある」と、もっともらしく解説する。
また、日韓など16カ国が参加し、中国主導で交渉が続く東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を念頭に「存在感を強める中国への対抗措置」と説くメディアもある。
前出の鈴木宣弘氏は、「アジア市場への投資・サービスの開放を狙う日本の財界にとって、RCEPは自由貿易のレベルが低い。より自由度の高い米国抜きTPPを目指すことで、安倍政権は財界の意向を忖度したのだと思います」と指摘したが、そんな薄汚れた思惑も米国抜きTPPが成果を挙げなければ、夢物語に過ぎない。
大マスコミが本気で書いているのか、誰かに書かされているのかは知らないが、米国抜きTPPは100%勝算なし。安倍政権の亡国的センチメンタルと感性を一体化させていると、国民に誤った情報を与えることになる。前出の斎藤満氏はこう言った。
「当然ですが、米国抜きTPPの発効の可能性がゼロである限り、米中両国への対抗措置にはならない。むしろトランプ政権の狙い通り、安倍政権は2国間交渉にズルズルと引きずり込まれていませんか。21日付の日経新聞は、来日したロス米商務長官が塩崎厚労相と水面下で交渉し、薬価制度の見直しを要求。高額な新薬の値下げに『待った』をかけたと報じました。日本では薬価は政府が決めるもの。トランプ政権のロコツな内政干渉で薬価にまで切り込まれ、政権スタッフは青ざめたはず。先日の日米経済対話も北朝鮮有事をダシにして、軍事力を誇示する米国の手玉に取られた印象すらあります」
安倍政権がぶち上げた米国抜きTPPに、前出の高橋乗宣氏は戦前の大東亜共栄圏の亡霊の姿を重ねる。こう語る。
「日本が主導して世界の自由貿易圏を広げ、米国と中国という2つの超大国に立ち向かう。この身の程知らずで思い上がったメンタリティーは、戦前・戦中の軍事政権と通底しています。安倍首相の祖父、岸信介元首相は『大東亜共栄圏』構想に貢献した人物です。ひょっとすると、首相は『祖父の夢よ、もう一度』と思っているのでしょうか。政権とメディアが一体となった『夜郎自大』の発想に、この国の暗澹たる未来を感じるのです」
米国抜きTPPという大笑い。その背後に横たわるのは、いよいよ笑うに笑えない誇大妄想政権の姿だ。
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