http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/343.html
Tweet |
“奥崎謙三”を持ち上げたかつての左翼と今の右翼はどっちもどっち
[橘玲の日々刻々]
太平洋戦争末期、独立工兵第36連隊の二等兵・奥崎謙三は敗残兵として、飢餓と疫病の蔓延するニューギニアのジャングルに置き去りにされました。銃撃によって右手小指を吹き飛ばされ、右大腿部を銃弾が貫通し、左手一本で濁流の川を泳ぎ渡って逃げ延びようとしたものの頭部に銃弾を受け、とうとう死を覚悟せざるを得なくなります。
奥崎は、山中で腐り果て、蛆虫にたかられ山豚の餌になるよりは、ひとおもいに米兵に射殺された方がマシだと思い、酋長らしき男の前に飛び出して自分の胸を指差します。ところが酋長は、「アメリカ、イギリス、オランダ、インドネシア、ニッポンみんな同じ」といって、奥崎に食事をふるまったあと米兵に引き渡したのです。
奥崎はこうして終戦の1年前に捕えられ、俘虜収容所で玉音放送を聴くことになります。ニューギニアに送られた独立工兵第36連隊千数百人のうち、生き残ったのは奥崎を含めわずか8名でした。
帰国した奥崎は結婚して神戸でバッテリー商を営みますが、不動産業者とのトラブルから相手を刺し殺し、傷害致死で懲役10年の刑に処せられます。大阪刑務所の独居房で奥崎は、自分はなぜあの戦場から生きて日本に戻ってきたのかを考えます。そして、この世のすべての権力を打ち倒し、万人が幸福になれる「神の国」をつくることこそが、ニューギニアで神が自分を生かした理由であり、戦争責任を果たそうとしない天皇を攻撃することで自らの信念を広く世に知らしめるべきだと決意したのです。
出所後の1969年1月2日、新春の一般参賀で、奥崎はバルコニーの天皇に向かってゴムパチンコで数個のパチンコ玉を撃ち込みました(暴行罪で懲役1年6カ月の実刑)。
この事件のあと、奥崎の人生は大きく変わります。彼は突如、左翼のヒーローとして祀り上げられたのです。
それまでも左翼の知識人たちは天皇の戦争責任を追及してきましたが、それはたんなる理屈にすぎませんでした。それに対して、レイテ島、インパールと並ぶ太平洋戦争の最大の激戦地から奇跡的に生還した元日本兵は、自らの凄惨な体験に怨念を込め、全身全霊で天皇の責任を問うたのです。
その後、奥崎は連隊の残留守備隊長(中尉)が日本軍の敗戦を知ったあとに、2人の上等兵を敵前逃亡の罪で銃殺刑に処した事件にとりつかれていきます。「捨身即救身」「神軍 怨霊」などと車体に大書した白のマークUを駆って、銃殺事件に関与したとされる下士官や軍医、衛生兵のもとを訪ね、ときには暴力をふるって真実を問いただす奥崎の鬼気迫る姿は、ベルリン国際映画祭などで多くの賞を受賞した原一男監督のドキュメンタリー映画『ゆきゆきて神軍』に描かれています。
奥崎の言動が過激になればなるほど左翼の知識人は彼を神格化し、「東大を出た奴らが跪いてくる」と奥崎も悦に入ります。しかし83年12月、奥崎が上等兵2名を銃殺した責任を認めない元残留守備隊長を殺害すべく、改造銃を持って自宅を訪ね、応対に出た長男に発砲して重傷を負わせたことでこの関係は終わります。それまで奥崎を称賛していた左翼知識人たちは、潮を引くように離れていったのです。――この話は、左と右を逆にすればいま起きていることととてもよく似ているのではないでしょうか。
奥崎謙三は懲役12年の判決を受けて97年に満期出所。05年に死去。享年85でした。
参考:「38年目の亡霊 奥崎謙三と戦争責任」
『週刊プレイボーイ』2017年4月10日発売号に掲載
橘 玲(たちばな あきら)
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(ダイヤモンド社)『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など。最新刊は、小説『ダブルマリッジ』(文藝春秋刊)。
●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)
• “奥崎謙三”を持ち上げたかつての左翼と今の右翼はどっちもどっち [橘玲の日々刻々][2017.04.17]
• 森友学園問題をめぐる、 保守派とリベラルの空回り議論の本質 [橘玲の日々刻々][2017.04.10]
• 本気でいじめをなくそうとするなら 「学校制度」をやめるしかない [橘玲の日々刻々][2017.04.03]
• コロンビア大学黒人名物教授が提言する ”「ドラッグの非犯罪化」による黒人の救済” [橘玲の日々刻々][2017.03.30]
• 「自衛隊員の生命を守れ」というひとはいても、 南スーダンのひとたちのことは話題にしない [橘玲の日々刻々][2017.03.27]
http://diamond.jp/articles/-/125187
【第1回】 2017年4月18日 石黒 浩 :大阪大学大学院基礎工学研究科教授
幸福度世界1位のデンマークより、日本のほうが恵まれている
今回からお届けするのは、漱石アンドロイド、マツコロイドを生み出したアンドロイド研究開発の世界的第一人者・石黒浩氏による、常識に囚われないモノの見方・考え方のヒント。第1回は、日本という国が我々が思っている以上に世界の中でも恵まれた社会だ、という“脱常識的”考察について。
公共サービスの充実は
貧しさゆえの必然
僕は学会や講演で世界中の国々を回りますが、日本のように暮らしやすい国はほかにないと実感しています。これはもう奇跡的なレベルです。
とくに何がいいかと言えば、バランス。公共サービスが中途半端なところで止まっているところが素晴らしいのです。
たとえば、「幸福度ランキング」で1位のデンマーク。公共サービスがすごく充実していますが、その背景にあるのは貧しさです。
冬の気温が低いので決して浮浪者は出せません。凍死する可能性が高いからです。近代社会において道端に死体が転がっている状況を容認することはできないでしょう。公共サービスの充実は、背に腹は代えられない事情から進んだものだと私は想像しています。
北欧の中でもデンマークは最も貧しく、資源がなくて、貿易等でしか生きていけない国です。それでも公共サービスを充実させなければならないので、当然ながら税金を上げることになります。消費税率は25%で世界3位の高さ。所得税は40〜60%です。
すると何が起こるか。ネガティブなループがぐるぐる回り出します。
税金を上げると、男女共働きじゃないと平均的な生活ができません。20代〜60代の女性の社会進出率が70%以上という数字は先進的に見えますが、そうしないと生きていけないのです。最近の日本でも、少しそのような現象が表われ出しています。
女性が自由に働けるようにするには、幼稚園から大学まで、すべて無料にしなければならない。個人では貯金はできないが、未来に貯金をしているという構図にしない限り、国民は納得しないからです。
女性が家事や子育てに集中する
選択ができる社会の豊かさ
石黒教授(左)と自身のジェミノイド(遠隔操作型ロボット)
また、男女共働きになると、弁護士や医者といった机に向かって、一所懸命勉強したほうが有利な職業は、女性が大半を占めるようになります。だから、実はデンマークは女性のほうが平均年収が高いのです。
すべての人が人工的に子どもをつくるような社会ならばいざ知らず、妊娠、出産を経験することの多い女性が、果たして男性と同じように働かなければならないのか。
もちろん機会は平等であるべきだと思いますが、僕自身、労働における男性と女性の立場は必ずしも同じでなくていいと考えています。
少なくとも、女性が家事や子育てに集中するという選択ができる社会のほうが豊かなのではないでしょうか。
それに加えて、こうした政策を採ると、どうしても公務員が増える。公務員を国民の1割にまで増やして破綻した国がギリシャですが、割合はデンマークも同程度で、地方自治体の中には1割を超えているところもあります。
その人たちが何をやっているかといえば、労働集約型の公共サービスしかない。それは、老人介護なのです。
税負担が大きく、かつ貯金がない人が大半なので、介護を徹底的に充実させておかなければ国民の不満が爆発することは目に見えています。
ここまでだと「そういう社会もありかな」と思われるかもしれませんが、一方で先端医療には十分な支援ができません。
たとえば、がんだとわかったとしても、かなり長期間待たないと医師に診てもらえないと聞きます。そのうちに手遅れになる可能性もあります。
そんなネガティブフィードバックがぐるぐる回っているというのがもし現実だとしたら、それでもまだ、あなたは「デンマークはすごくいい」「住んでみたい」と言えるでしょうか(これはあくまで、僕が想像するデンマークの一面だけを取り上げての見方の一つです。この国の社会のすべての説明にはなっていないことはご容赦願いたいと思います)。
あなたの想像以上に
日本は恵まれている
『枠を壊して自分を生きる。』石黒浩 著 三笠書房刊 1400円+税
逆に、公共サービスが極端に整備されていないのはアフリカの一部の地域です。水道も電気もない。これはこれで大きな問題です。
アメリカはスラム街があるので、どちらかと言えばアフリカ型に近い。個人的な見解ですが、スラム街を持っているような国が豊かで住みやすいとはとても思えません。そうした国と日本と、どちらがよい国かは一目瞭然です。
いずれにせよ、やはりライフラインなどの生活のベースとなる公共サービスは国民が公平に享受できるレベルに達していなければなりません。
イギリスの『エコノミスト』誌が23項目にわたって163ヵ国を対象に分析し、各国や地域がどれくらい平和かを相対的に数値化する「世界平和度指数」があります。これで日本は常にトップ10に入っています。
上位に入っている他国は、そもそも人口が少なかったり、人口密度が低かったり、あるいは近隣に北朝鮮のような困った国がない、という点に鑑みると、実質的には日本がトップではないか、と僕はひそかに思っています。
実際、2016年の1位であるアイスランドの人口は約34万人、2位のデンマークは約570万人、3位のオーストリアは約870万人。人口も人口密度も日本とはケタ違いです。
また、日本が9位であるのに対して(2011年は3位)、フランス46位、イギリス47位、アメリカは103位という結果を見ても、日本の順位の高さは輝いています。
デンマークのように公共サービスが重たくなり過ぎてネガティブフィードバックが起こる状態になっているわけでもないし、逆に公共サービスが手薄過ぎて、死者が出るような状態でもなく、適度なところでバランスを取っている、日本は世界でも稀有な国なのです。世界中からあこがれられている国です。
さらに国民性として真面目で誠実、差別が少なく、貧富の差が小さくて社会がフラットなので、相互扶助の精神が行きわたっている。そんな国だからこそ、僕は世界に先駆けて、
「日本こそ国民全員が家族になることができる国」
だと考えています。もちろん、人類のゴールは、
「地球上の全員が家族」
となることです。その前段階として、国が一つの家族として機能する状態が求められます。僕は、これを「島国仮説」と呼んでいます。つまり、みんなが助け合って平等になるということです。
日本のものづくり世界一は
労働を苦役としない社会ゆえ
そのためには「家族の輪」を広げなければなりません。血縁だけが家族、一族という幻想を捨て去って、その枠組みを拡大していく必要があります。そうなると、
「僕の父はお金持ちだから将来は安泰」
「自分の子どもにお金をどれだけ残そうか」
といったような矮小な思考がなくなり、
「この社会にいかにして役に立つか、貢献するか」
という思考をする人が増えます。現在はその方向へと進んでいる過渡期なのです。そして、日本は幸運にも世界をリードできる場所にいます。
もちろん、日本にも多くの矛盾はある。それでも、日本人は矛盾の中を揺れ動きながら、差別の少ない平等な社会の中で、極端に走る人が少ない安定した社会を形成してきました。
その意味で、親という存在に縛られず、家族の概念を国全体にまで拡大できる可能性の高い国だと言えます。そして僕たちは、そんな日本という国の一員なのです。
さらに言えば、そういう日本だからこそ、ロボットの研究では圧倒的な強みがあると考えています。
日本はこれまで時計でも、家電でも、自動車でも、ものづくりに関してはすべて世界一を取ってきました。「トップになれなかった分野がない」と豪語してもいいくらい、日本人はものづくりが得意です。
それは日本という一つの大きな家庭のようなところで、協力し合えたからだと思います。
ヨーロッパは人種が入り乱れ、貧富の差も大きい。階級をつくって、上の人が下の人を虐げるような構造になっているので、労働を苦役とする傾向が強く、働くことの目的が日本人とは明らかに違います。
日本人は貧富の差がない、非常にフラットな民族なので、むしろ「社会の中で自分の役割を見つけよう」というモチベーションで働いている。だから、よく働くんですね。
労働時間はいささか長いかもしれません。しかし、お金のためよりも、ものをつくることへのプライドを心の軸にして働いているので、いいものができて当たり前で、その結果、すべてのものづくりにおいて世界一になった。
ロボットにおいても、日本は産業ロボットで圧倒的に世界をリードしてきました。
これに続く日常活動型ロボット、日常生活の中で様々なサービスを提供するロボット、あるいは人間型ロボットの社会はもうそこまで来ています。
そこで日本は再び世界のイニシアチブを取れると、僕は確信しています。
世界的にも稀有なバランスの取れた国だからこそ、国全体が一つの家族になれる国だからこそ、世界に先駆けて豊かなロボット社会がつくれるはずだと信じて、研究に取り組んでいます。
http://diamond.jp/articles/-/124434
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK224掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。