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海外メディアも重大関心 国家権力総動員の“籠池潰し”
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/202835
2017年4月4日 日刊ゲンダイ 文字お越し
安倍首相と籠池理事長(C)日刊ゲンダイ
やはり政権を本気で追い込む気はないようだ。3日の定例会見で、民進党の野田幹事長は冒頭発言で「森友疑獄」にひと言も触れなかった。おまけに質疑応答の際、JNNの世論調査で内閣支持率だけでなく、民進党の支持率も下がったことを指摘されると、こう言ってのけた。
「(安倍政権を)厳しく追及すると同時に提案をして(民進党が)政権を取った時も大丈夫だというイメージを、併せてジワジワと浸透できるように頑張る」
何をカッコつけているのか、このオッサン政治家は? 「政権を取った時」といったって、安倍政権を解散に追い込まなければ、民進党は二度と政権の座には返り咲けないのだ。まさか、来年12月の衆院議員の任期満了まで指をくわえて待つつもりじゃあるまい。ならば答えはひとつ。森友問題で安倍政権をガンガン攻めたて、「崖っぷち解散」を打たせるまで追及すべきだ。
世論も森友疑惑の幕引きを許してはいない。出発点である8億円引きの国有地売却について、どの世論調査も政府の説明に「納得できない」は7割以上。先のJNN調査では、安倍首相が昭恵夫人の森友側への「寄付金100万円」を否定する説明に、「納得できない」が56%に上った。
政権のウヤムヤ説明に有権者の疑念は深まるばかり。さらに重大な関心を寄せるのが、海外メディアだ。先月31日にも米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)が〈失速する日本の安倍首相 政治スキャンダルが安定政権を脅かす〉と題した社説を掲載したばかりである。
日本のメディアは国有地払い下げの正当性や、安倍夫妻からの「寄付金100万円」の有無に注目しがちだが、海外メディアの関心は森友疑獄の「本質」に向かう。WSJが社説で〈超国家主義的な人物との関係をめぐるスキャンダル〉と書いたように、森友学園の極めて異常な教育方針に着目しているのだ。
■海外特派員が驚愕する戦前肯定のグロテスク
園児たちに教育勅語を暗唱させ、中韓両国への差別的な印象を植え付け、「安倍首相がんばれ!」と叫ばせる。思想的に極めて偏った“洗脳教育”を見て、海外メディアは「ウルトラナショナリスト」「差別主義者」「極右学校」とハッキリ報じる。そんな学校法人の名誉校長就任の依頼を、日本のファーストレディーが唯々諾々と受け入れた衝撃、日本の首相が戦前の日本を美化する教育方針への「共鳴」を国会で口にしたことへの驚愕を、包み隠さず国際社会に訴えているのだ。
「欧州全域で極右政党が台頭し、米国のトランプ大統領が移民排斥の意向を隠さぬ中、実は日本の安倍政権が極右思想を最も先鋭化させていることが、世界に知れ渡りました。その事実を海外メディアは改めて驚きを持って受け止めています。ましてや、日本は先の大戦の敗戦国です。『戦前回帰的な教育』は、ドイツの学校がナチスの教えを肯定しているようなもの。世界の常識から大きくかけ離れた歴史修正的な実態に、国際社会は驚き、あきれ果てているのではないでしょうか」(政治学者・五十嵐仁氏)
3日付の毎日新聞は、英フィナンシャル・タイムズの東京支局長、ロビン・ハーディング氏の談話をこう伝えた。
「夫人の昭恵さんが籠池氏と近い関係にあったことも合わせて、外国人は『首相は陰で森友学園を支援してきた』と受け止めかねない」「塚本幼稚園が首相の目指す教育であると我々外国人は考えるだろう」
国際社会は右翼政権の正体をとうに見破っているようだ。なおさら、野党は追及にひるんでいる場合ではない。
疑念は晴れず(C)日刊ゲンダイ
寄ってたかって私人をいたぶる恐怖政治の実態 |
開校を目指した小学校の施工業者に塚本幼稚園の土地・建物だけじゃなく、自宅まで「仮差し押さえ」をくらった籠池ファミリー。もはや失うものはない、と捨て鉢の反撃に政権与党は防戦一方である。
何せ、一私人が一国のトップにケンカを売っている構図である。アッという間に潰されてもおかしくないのに、ここまでの展開を見ていると、むしろ泡を食っているのは、安倍官邸サイドだ。
自公与党を向こうに回した籠池氏の証人喚問の毅然とした振る舞い。学園の運営をバトンタッチされた長女の愛国教育への決別に加え、長男はツイッターで情報発信といった家族の結束。資金繰りは苦しいはずなのに国交省からの補助金約5600万円を耳をそろえて期限までに全額返還したのにも驚いた。
自民党議員が「偽証告発」をチラつかせても、ひるまず弁護士を通じて猛抗議。自民党議員が指摘した「偽証の疑い」に「昭恵夫人からの寄付金100万円」が含まれてないことを逆手に取り、〈(寄付金100万円の)供述の信用性を認めて頂け、偽証に疑いをかけられていないようであることは、誠に重畳なこと〉と皮肉る余裕まで見せた。
さらには「昭恵夫人に関する様々な資料を公開してまいります」として先月24日に突如、謎のウェブサイト「アキエリークス」が開設。関係者しか知り得ない情報を次々と暴露している不気味さも加わる。
戦前回帰のウルトラ右翼一家の肩を持つ気はさらさらないが、まさに「窮鼠猫を噛む」のたとえ通りの籠池サイドの大反撃には、安倍官邸の面々が歯ぎしりする様子が目に浮かぶようだ。
それこそ野党第1党の腰抜け幹部たちは籠池ファミリーにケンカの作法を学んだらどうだ。
■強権発動で潰しにかかれば世界を敵に回す
それにしても、一私人に寄ってたかって追い込みをかける“権力者”たちのみっともないこと。
産経新聞報道に便乗した民進党の辻元清美議員への攻撃が「デマ」のひと言で終わった安倍。籠池氏に「ハシゴを外された」と非難され、刑事告発のネタ探しに森友学園への行政調査権の行使を匂わせた大阪府の松井知事。国会の頭越しに籠池氏の偽証告発を示唆した越権行為の菅官房長官……。行政を預かる立場として、ガバナンスもへったくれもない私憤ムキ出しの失言続きと、強権発動のオンパレードは、まるで昔のSFマンガに出てきた悪の組織のマヌケな大幹部を彷彿させる。
笑えないのは、籠池氏にコケにされた面々が恥も外聞もなく、大真面目にかつての「同志」の“抹殺”に血道をあげていることだ。いまだ支持率が50%台をキープしていることをいいことに、安倍政権は偽証罪、補助金適正化法違反、偽計業務妨害、私文書偽造など、あらゆる罪状を並べ立て、籠池潰しに躍起になっている。
あからさまな口封じは国策捜査以外の何ものでもないが、「やれるものならやってみろ」だ。籠池劇場に注目するのは、今や日本の有権者だけではない。国際社会も注視する「衆人環視」の状況下で、国家権力を総動員して一私人を血祭りにあげれば、この政権は国際世論を敵に回すだけだ。政治評論家の森田実氏はこう言った。
「政権サイドの極度な狼狽ぶりをみて、多くの国民はウソをついているのはどちらか、もう直感していると思います。証人喚問以降の昭恵夫人の雲隠れと、先の日曜の首相との不自然なツーショットを目の当たりにして、ますます確信したのではないですか。やはりウソをついた側が弱みがある分、追い込まれるのは世の常で、もがけばもがくほど墓穴を掘る結果を招くだけです。安倍首相は『関係していたら、首相も国会議員も辞める』と軽々しく発言した自分を呪うほかありません」
野党は絶対にひるんではダメだ。民進党も日和見幹事長を引きずり降ろしてでも、追及の手を緩めてはいけない。
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