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“手土産”が踏み絵になりつつある北方領土交渉
解析ロシア
着々と進むロシア化「そしてαだけが残った」
2017年3月24日(金)
池田 元博
日本とロシアの政府間で最近、重要な協議が相次いだ。北方領土での「共同経済活動」などを話し合う公式協議と、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)だ。一連の協議を通じて、北方領土交渉を進める道筋はみえたのだろうか。
3月20日、日ロ外務・防衛担当閣僚協議 都内で開催された(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
のっけから日本側に「冷や水」
日ロの思惑の違いが、改めて浮き彫りになったといえるだろう。先に東京で相次ぎ開かれた日ロの外務次官級協議と、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)である。
まず3月18日に開いた次官級協議。昨年12月の日ロ首脳会談の合意を受け、北方領土での共同経済活動について話し合う初の公式協議となった。
安倍晋三首相とプーチン大統領による肝煎りの合意とあってか、両国政府ともそれぞれ関係省庁による事前協議を開いて具体案を検討するなど、かなり入念な準備を進めてきた。
日ロ協議では、日本側がウニやホタテ、アワビの養殖、北方4島周辺のクルーズ船観光、遠隔医療サービスなどの事業を提案。ロシア側も島民の住宅の改修などを日ロの共同事業案として挙げた。
昨年の首脳会談後に出したプレス向け声明は、北方4島での共同経済活動が「平和条約問題に関する日本及びロシアの立場を害するものではない」と規定。安倍首相はロシアの法律でもなく、日本の法律でもない「特別な制度」の下で実施すると強調していた。
ただ、のっけから大枠の法制度の議論をしていては、いつまでたっても進展は期待できない。まずは北方領土で実施したい具体的な事業案を持ち寄り、個々のプロジェクトごとに実現可能性やそのために必要な法整備を議論していくべきだというのが、双方のほぼ共通の認識となっている。日本側が今回提案した事業案も、法制度の面で比較的クリアしやすい案件を中心に選定したといえるだろう。
ところが協議では、ロシア側代表を務めるモルグロフ外務次官が「ロシアの法律に矛盾しないという条件の下でのみ、実現されなければならない」と強調。「特別な制度」に固執する日本側に冷や水を浴びせた。
早くもにじみ出た認識の違い
実は今回の次官級協議の2日前の3月16日、ロシア外務省のザハロワ情報局長もモスクワで全く同じ発言をしている。ロシア側が事前に擦り合わせた主張であることは明らかだ。
しかもザハロワ局長は、日ロの共同経済活動では「南クリール(北方領土)の社会・経済発展にとって重要な提案」を重視する立場を表明。共同経済活動を北方領土問題の解決と平和条約締結への一歩と位置づける日本側との認識の違いが、早くもにじみ出ている。
協議では北方4島の元島民の墓参など往来の簡素化も話し合い、航空機利用の具体化などを早急に検討することで合意した。
ただ、この関連ではラブロフ外相が両国間の「国民全体の交流のさらなる簡素化」にも言及。具体例として、サハリン州と北海道の間でビザなし制度を導入する可能性を打診していることを明らかにした。日ロの合意を最大限利用しようとするロシア側の思惑も垣間見える。
次に、3月20日に開いた2プラス2はどうだったのか。
安全保障問題を協議する日ロの2プラス2は2013年11月以来で、今回が2回目だ。ウクライナ危機の影響で長らく開かれていなかったが、昨年12月の日ロ首脳会談の際にロシア側が再開を強く求め、日本側も平和条約締結交渉の環境整備に資するとみて受け入れた経緯がある。
ウクライナ危機後の主要7カ国(G7)による対ロ包囲網を突き崩す狙いでロシア側に利用された面も否定できないが、日本側がこの機会を利用して特に正そうとしたのが、北方領土での軍備強化の動きだった。
当面、見込めそうもない領土問題の進展
ロシア軍は昨年、北方領土の択捉島と国後島にそれぞれ新型の地対艦ミサイル「バスチオン」「バル」を配備した。さらにショイグ国防相は先月、北方領土を含むクリール諸島に1個師団を年内に展開させると表明した。現在、択捉島と国後島に合計で約3500人のロシア軍が駐留しているとされるが、さらに増強されるのは確実な情勢で、日本政府は強い遺憾の意を表明していた。
しかし、2プラス2に出席したショイグ国防相は「師団の展開は過去6年間、沿海地方、サハリン州、アムール州で進めてきたものだ。誰かを標的にしているわけではなく、純粋にロシアの領土を守るためのものだ」と表明。日本側の抗議にもかかわらず、予定通り計画を進める考えを強調した。
ロシアの軍事専門家の間では、米国に対する抑止力強化と北極海航路の需要拡大を見込み、ロシア軍がオホーツク海全体を要塞化しようとしているとの見方が大勢だ。ロシアにとって、北方領土を含むクリール諸島の軍事的・地政学的な重要性はとみに増しているとみるべきなのだろう。
今回の2プラス2では、核兵器やミサイル開発を続ける北朝鮮に連携して対処する方針を確認するなど、成果もなかったわけではない。だが、その北朝鮮情勢に関しても、ラブロフ外相が協議後の共同記者会見で真っ先に挙げたのが、米国のミサイル防衛(MD)システムへの懸念だった。
軍事的な圧力を強める中国を日ロの安保協力を通じて抑制しようという日本側の期待に対しても、ラブロフ外相は「中国や東アジア首脳会議に加わる他の国々」と共に、アジア太平洋地域の安保環境の向上に努める立場を表明。あえて中国との連携を強調することで、日本側の思惑をけん制した。
安倍首相は今年、4月末にロシアを訪問するほか、9月にウラジオストクで開かれる東方経済フォーラムへの出席も予定している。昨年と同様にプーチン大統領と首脳会談を重ね、平和条約締結に向けた環境整備を加速する意向だ。これに伴い、日ロ間の経済や安保協力もある程度は前進するとみられる。
ただ、平和条約締結の前提となる領土問題の進展は当面、見込めそうもない。ロシアでは来年3月の大統領選を控え、国民の琴線に触れる「領土の割譲」の問題はただでさえタブーになっているという事情があるからだ。
共同経済活動が“人質”に
それ以上に気がかりなのは、日ロの領土交渉の進め方だ。昨年末の首脳会談の合意を受け、北方4島での共同経済活動が領土交渉を進めるほぼ唯一の道筋となってしまったからだ。本来は平和条約締結問題を話し合う次官級協議も、共同経済活動に焦点を当てざるを得なくなっている。
もちろん、日ロの共同経済活動が首尾良く実現できれば良いが、先の次官級協議で浮き彫りになったように、双方が納得できる形で推進するのは容易ではない。結果的に何も実現できなければ、ロシア側は「日本側は南クリールに関心がない」とみなし、領土問題でより強硬な立場を主張する言い訳に使うのは目に見えている。
ロシアの極東政策を統括するトルトネフ副首相は今月初め、北方領土での日ロの共同経済活動について「長く待つつもりはない」と言明。日本側が決定を引き延ばしたり、効果的な事業プランができなかったりした場合、ロシアは「優先的社会経済発展区域」(TOR)と呼ばれる経済特区を設置し、日本抜きで独自に開発を進める考えを表明した。
しかも、ショイグ国防相が2プラス2で改めて表明したように、ロシア軍は北方領土での軍備強化に余念がない。ロシア政府も最近、北方領土を含むクリール諸島の5つの無人島に、ソ連時代の将軍や政治家にちなんだロシア風の名前を命名するなど、“ロシア化”を着々と進めているのが現実だ。
「そしてαだけが残った」
日本外務省が昨春、政府系の全ロシア世論調査センターに委託して実施した世論調査では、日ロ間にいまだ平和条約が締結されていないことを知らないロシア国民が少なくない。ロシア政府内でも、現状でとくに支障がないのだから領土問題で譲歩してまで平和条約締結を急ぐ必要はないとの見方も根強い。
*日本外務省が昨春、政府系の全ロシア世論調査センターに委託して実施/グラフの単位=%
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/032300025/graph1.png
プーチン大統領は最近になって態度を硬化させているものの、平和条約締結後に歯舞、色丹2島を日本に引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言の有効性は認めてきた。一方の日本側は「4島の日本の主権確認」という公式的な立場はともかく、水面下では「2プラス2」(2島返還後に再交渉)、「2プラスα」(2島返還、残る2島は共同経済活動)など様々な案を模索してきた。
結果的に共同経済活動という細い糸だけが、頼みの綱になっているといえなくもない。日ロ関係に詳しいアレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使は、政権ごとにころころと変わる日本側の対応のまずさが敗因としたうえで、今の状況をこう評した。「そしてαだけが残った」。
このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/032300025
「防衛装備庁のマネー、研究者への誘惑強い」
「軍民両用技術」の曲がり角
東大・須藤教授、防衛装備庁の研究資金に反対意見
2017年3月24日(金)
武田 健太郎
軍民両用研究の是非を議論するため、2月に日本学術会議がシンポジウムを開催。研究者からは防衛装備庁の研究推進制度に反対する意見が多かった(写真:共同通信)
防衛用にも民生用にも使える軍民両用技術「デュアルユース」。防衛装備庁は2015年、「安全保障技術研究推進制度」を開始した。同庁が興味を持つテーマを対象に、一般の大学や研究機関、企業などに研究資金を提供する仕組みだ。科学者の代表機関である日本学術会議は、この制度の利用について4月にも正式見解を出す方針を示している。
同制度を利用する是非を巡り科学者の意見は揺れている。そのなかで、宇宙物理学者で東京大学大学院教授の須藤靖氏は、「防衛省からの資金は、研究に指向性を与える」と反対意見を唱える。さらに、同制度が注目される背景には、経費削減に苦しむ若手研究者の存在があるとインタビューでは指摘している。
軍事研究か否か、区別はできない
学術会議で「安全保障技術研究推進制度」を巡る議論が進んでいます。
須藤:科学者の我々が考えるべきことは、科学を通じて世界の人々を幸せにすること。学術研究を前に進めるために非常に重要なことは、自由に研究し、結果をすべての人たちに公開することだ。
「安全保障技術研究推進制度」は、研究の方向性に何らかの指向性を与える可能性がある。情報発信を制限する必要もある。科学の発展や世界の平和、幸福の追求とは相いれないというのが私の立場だ。
防衛に関する研究そのものに反対しているのでしょうか。
須藤:イデオロギーの議論になるので、防衛研究そのものの是非については意見しない。防衛省は国防という重要なミッションを持っていて、その範囲内で活動すること自体に反対はしていない。
ただ、基礎科学の研究者たちが補助金を通じて、気が付かないまま、防衛省のミッションに取り込まれてしまうことを非常に懸念している。
安全保障技術研究推進制度は、純粋な防衛目的ではなく、軍民両方に有用な研究を対象にするとしています。
須藤:私は宇宙に関する観測データを使った理論的な研究に取り組んでいる。軍事とは全く関係ない研究をしているつもりだ。しかし、天文学のデータ取得には、かなりのところで衛星を使う。衛星の技術はもともと軍事関連から来たものだと言われることもある。
学術研究を巡って、何が基礎研究で、どこからが軍事研究かと判断するのは不可能だ。したがって、軍民両用だから良いとか悪いという現在の議論は意味をなさない。大切なのは、その資金がどこから出ているかという点に集約されるはずだ。
研究に対して、国防を最大のミッションとする防衛省からお金が来るのか、それとも科学技術の推進をミッションとする文部科学省などからお金が出てくるのか、という点で議論することが非常に大事だ。
それでは、防衛に関する研究はどのように進めて行くべきでしょう。
須藤:一般の大学とは切り離して、防衛省の管轄内で研究者を雇うべきだ。どういう機構になるかは分からないが、例えば防衛大学に組織を立ち上げて研究するならば、私は文句を言うつもりはない。
非効率が許される研究資金
安全保障技術研究推進制度の予算は2015年に始まってから右肩上がりに増え続けています。
須藤:2015年に3億円、2016年には6億円、2017年度は110億円に突然増えた。防衛予算は総額で約5兆円と、文科省関係の予算とは規模が全然違う。そうすると、補助金額は簡単に1000億円にも増えかねない。
しかも、防衛のお金は効率的である必要がない。予算で買ったミサイルをすべて相手に打ち込んで撃沈させたとして、そんな効率的な使い方をするのは非常に残念なこと。買ったけれども使わなかった。非効率であることが、むしろ嬉しいこと。そういうお金だから、短期的な成果を求める文科省の補助金などに比べ、使い勝手が良い。研究者への誘惑は強い。
10年後、20年後に、「今が学術研究の分岐点になった」と言われる可能性が非常に高い。安全保障技術研究推進制度の予算が1年で20倍近くに増えたのを見れば、数値的に見ても明らかだ。
いったん研究者がお金をもらってしまうと歯止めがきかなくなる。最初は全研究費の1%だったのが、10%になり、やがて50%になる。そうなると、もう防衛省の言うことを聞くしかなくなる。だから、やはり研究者は今回の補助金制度にははじめから応募しない決意をするべきだ。
米国では国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)がインターネットの原型を作るなど、軍民両用研究が成功しているように思えます。
須藤:米国では軍民両用技術の研究が進んでいるとのイメージを持つ人が多いが、実は違う。米国でも軍事と一般の研究が明確に区別されている。一般的な大学のキャンパス内には軍事研究は基本的に持ち込まないようにしている。
軍事研究を進めるのは専門の機関だ。すべての人が入り口でチェックされるなど、非常に厳しい管理体制をしいている。そういった組織に一度入った人たちは、もう決して後戻りはできない。
第2次世界大戦時のマンハッタン計画には、物理学分野におけるノーベル賞級の人たちが参加した。今でも個人のイデオロギーに基づいて、国のためにと軍事研究に進む人が米国にいる。いったん、そちら側にいってしまうと、純粋に世界の発展のために科学を推進しようという議論は成り立たなくなる。
軍事からのお金を受け取ることがなくても、素晴らしい基礎研究ができると、今こそ私は主張したい。それは実は戦後の日本が示したこととでもある。
日本の研究、コスパ良い
日本が示したものというのは?
須藤:日本の基礎科学の研究費はアメリカの1%とか圧倒的に小さな規模。それでありながら、ここ10〜20年間で日本の研究が、世界のトップとは言わないけどトップレベルに達したのは間違いない。
お金の効率で考えると日本の研究は極めて良くできている。誇るべきことだ。だから、安全保障技術研究推進制度からの補助金をもらわないとダメだと言う人たちは、今まで先人たちがどれだけ頑張ってきたかを考える必要がある。効率的に研究を進めてきた歴史を我々は守っていく。私たちには義務がある。
学術会議が4月に方針をまとめます。どのような内容が理想的と考えますか。
須藤:安全保障技術研究推進制度に応募しないと明記すべきだ。2月の中間とりまとめでは、制度利用の是非を各大学が自由に判断して良いと解釈をする人がいる一方で、基本的には応募してはいけないと解釈する人もいる。幅広い解釈ができ、誰もが賛成できる文章にしている。しかし、学術会議として制度に反対するという内容を、はっきりと言っておくべきだと思う。
学術会議での議論は、研究者の間でも関心を集めていますか。
須藤:太平洋戦争を経て(戦争を目的とする科学研究には従わないという)1950年の学術会議の声明を出した。その頃の議論を経験した人は非常に少なくなっている。私のさらに下の世代は、そういう議論があったことすらも知らない。
しかも、今の20代、30代は研究費が非常に少なくて困っている。職も不安定。そういった状況で、防衛装備庁から自由に基礎研究をやって良いと言われると、全然悪くないと思ってしまう。研究をやって近視眼的になっていると、そうなりかねない。
だけど、10年後にどうなるか、ちょっと考えてみなさいと言ったら、たいていの人たちはそこで初めて分かってくれる。若手研究者に気付かせてあげられない、我々の世代にも非常に責任がある。
若手研究者の経済状況というのも、今回の議論の裏側にあるのですね。
須藤:助教などの安定した雇用ポジションに付けるのは、30年前だとだいたい30歳すぎというのが普通だった。ところが現在では、天文学分野でも、1つのポジションに50〜100人が応募する。いまや35〜36歳で雇用が安定したポジションにいる人は、非常に優秀か、あるいは幸運な人しかいない。場合によっては40歳代でも短期的なポスドクのポジションで食いつなぐ必要がある。
そうすると、経済的な問題、ご家族の問題とかを考えたら、軍事・防衛と学術の関係についてではなく、2〜3年後の自分の職と研究を優先する。それは当然だ。それが死活問題というのはよく分かる。だから、優秀な若手研究者をどのように安定的に雇用するかが、今回の議論とは密接に関係している。
研究の自由、奪われたくない
解決策はあるのでしょうか。
須藤:基本的には文科省管轄のお金を増やすしかない。ついでに言うと、世界一の研究者には膨大なお金を使うといった過度なインセンティブに傾いた資金の使い方には反対する。日本で今までノーベル賞を取った人たちは、お金欲しさに研究したわけではない。それでもこれだけ立派なノーベル賞学者を輩出している。
重要なことは、1人の研究者に資金を集中するのではなく、幅広く資金を分散させることだ。例えば教授の給料が若手研究者の2倍だとすると、教授の給料をさらに2倍に増やしたら若手4人分になる。それだったら教授の給料は上げることなく、若者を2人雇用した方が良い。
基礎研究というのは非常に裾野が広い。どの研究が良い成果に結び付くかなんて実は誰も分からない。色々な人が色々な方向から、人と違う研究をやる自由を保障して初めて成果が出る。何かを基準に選別して、特定の人だけに膨大なお金を付けるというのは、完全に無駄な行為だ。
私を含めてほとんどの研究者は、リッチになるためにこの業界に入ったわけではない。自分の好きな研究が自由にできることが何よりもの喜びだ。「学者は好きなことをやって飯を食っている」と言われるが、まったくその通り。自由があって貧しくないのであれば、良いと思う。安全保障技術研究推進制度は研究の自由を妨げる可能性を持つ。私は反対だ。
須藤靖(すとう・やすし)
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県生まれ。1981年東京大学理学部物理学科卒業。1986年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。カリフォルニア大学バークレー校、ミラー基礎科学研究所研究院、茨城大学理学部物理教室、広島大学理論物理学研究所、京都大学基礎物理学研究所を経て現職。日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。
このコラムについて
「軍民両用技術」の曲がり角
防衛用にも民生用にも使える軍民両用技術「デュアルユース」。ロボットやAI(人工知能)などの最先端分野を中心に、軍民の境目は薄まりつつある。防衛装備庁は2017年度、デュアルユースの活用に向け、有望な研究を手掛ける大学や企業などに提供する資金を大幅に拡充。だが「軍事」への警戒感を持つ研究者らが反発し、激しい議論が起こっている。有識者へのインタビューを交えつつ、現状をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/031500046/032300003/
100万円寄付よりも国有地問題を追及せよ
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
2017年3月24日(金)
田原 総一朗
(写真:ロイター/アフロ)
大阪府豊中市の国有地が大幅に安い価格で学校法人「森友学園」に売却された問題で、3月23日に同学園理事長の籠池泰典氏の証人喚問が行われた 。
一連の中でも最も大きな問題は、国有地を大幅に安く売却されたことだ。森友学園が小学校を開設するにあたり、財務局が鑑定価格9億5600万円の国有地を、地下のごみ撤去費8億1900万円を差し引いた約1億3400万円で購入した。さらに民進党の指摘では、国が汚染土除去費用1億3176万円を支払い、結局、同学園が負担したのはたった200万円だったという。
こんなことは、どう考えてもあり得ない話だ。国有地の売却にあたり、何らかの介入があったとしか思えない。事実、証人喚問では籠池氏は「その都度その都度の場所で政治家の関与があったのではないかと思っている」と述べている。
証人喚問で籠池氏は、自民党の柳本卓治参院議員や北川イッセイ前参院議員、日本維新の会の東徹参院議員に相談したことを明かしている。鴻池祥肇参院議員を含めて、これら議員の働きかけが、結果的に介入になったのか、与野党を含めてしっかりと究明していく必要がる。
100万円寄付問題で、籠池氏は安倍首相に喧嘩を売った
16日には、籠池氏が衆参予算委員会のメンバーに対して、「安倍晋三首相から妻・昭恵夫人を通じて2015年9月に100万円の寄付を受けた」と話したという。ただ、菅義偉官房長官は、同日の記者会見でこの内容を否定している。
これについて、「日本会議の研究」(扶桑社新書)を執筆した菅野完氏が、「籠池氏が安倍首相から寄付を受け取った物的証拠がある」として、寄付者名簿と振込票の画像を公開した。これに対し安倍首相は、「そんな事実は全くない」と発言している。
僕は、これは籠池氏が安倍首相に真っ向から喧嘩を売りつけたんだと思う。籠池氏が安倍さんに政治献金をしたということを公表することはあり得るかもしれないが、安倍さんから寄付してもらったことを公表することは、普通では考えられないことだ。
首相に喧嘩を売るということは、ある意味「捨て鉢」だ。何が籠池氏を捨て鉢にさせたのか。
経緯を振り返ると、不自然さが残る。籠池氏は9日、大勢のマスコミの前で「小学校開設の申請は続けるし、悪意ある批判に対しては、園として今後も断固として戦う」と言い切っていた。ところが、翌日の夕方に開かれた記者会見では180度姿勢を変え、「認可の申請を取り下げる。理事長を退任する」と発表した。
さらに15日も、籠池氏は日本外国特派員協会での会見を延期した。実は彼は、同日の午前中に上京している。マスメディアの記者たちは、彼が東京に来れば、おそらく財務省か国土交通省に行くだろうと推測し、両方を張り込んだのだが、籠池氏はどちらにも現れなかった。
この日、籠池氏は誰に会ったのか。相当影響力の強い人物、おそらくは政治家に会って、何らかの圧力をかけられたのではないかと思う。
そのあたりまでは、言ってみれば自民党の説得が効いていた。しかしその後、籠池氏は安倍さんに対して真っ向から喧嘩を売る形になった。
野党は、以前から籠池氏の国会招致を要求していたが、これを安倍さんや自民党が拒否していた。ところが、100万円寄付問題が表沙汰になると事態は一変する。
野党が求めていた「国会招致」。一般的に考えれば、まずは参考人招致からだと思われていたが、突如、自民党サイドが「証人喚問」をすると言い出した。
参考人招致と証人喚問は、全く「重み」が違う。参考人招致というのは、何を言ってもいい。嘘を言っても、答えなくても許される。一方、証人喚問は、嘘を言えば偽証罪で罰せられるのだ。
証人喚問の話が出たことについて、一番驚いたのは野党側だろう。参考人招致を拒否し続けていた自民党が自ら「証人喚問をする」と言い出したからだ。自民党の幹部たちからも「なぜ証人喚問になったのか」と驚く声も上がっている。
これを誰が決めたのか。自民党の中で僕が取材した限りでは、どうやら安倍さん本人が言い出したという。なぜ、これまで参考人招致すら拒否していた安倍さんが、証人喚問をやると言い出したのか。
安倍さんは籠池氏が売った喧嘩に対して相当怒りを感じたのではないかと僕は思う。籠池氏と安倍さんの間には、「対立」などという生易しい言葉では言えないほどのことが生じたのではないか。
今回の100万円寄付問題は、かつての「偽メール事件」とは違う
籠池氏が「安倍首相から100万円の寄付を受けた際の書類だ」と主張する振込票について、「それは本物なのか」「信用できる証拠なのか」と疑う声も出ている。特に民進党は慎重な姿勢を見せているという。
それはかつて、民主党がライフドア事件をめぐり、ねつ造されたメールを公表して鬼の首を取ったかのように自民党を追及した「偽メール事件」があったからだろう。
僕は当時、この事件をよく取材したが、偽メールの仲介者はジャーナリストの端くれで、その人物の名前を出した時に、週刊誌の編集者たちが「あんな男のことは信用できないよ」と口を揃えた。実際、それは信用できないメールだった。
しかし、今回は当時の事件とは相当違うと思う。もしでたらめの証拠ならば、籠池氏は安倍さんに喧嘩を売ることはなかっただろう。
今回、寄付者名簿と振込票を公表した菅野完さんに対し、籠池氏はずいぶん信頼を寄せているようだ。菅野氏の取材を受け、菅野氏を通して発言をすることもあった。僕は菅野氏と会ったことはないが、彼の著書「日本会議の研究」は、かなり取材をして執筆していると感じた。その点を考えると、民主党の偽メール事件を仲介したジャーナリストとは随分違うと思う。
籠池氏は、100万円の寄付を公表した時点で、証人喚問までのシナリオは想定していたのではないか。
今回の証人喚問で、安倍さんが籠池氏に100万円の寄付をしたことについて、白黒をはっきりと立証することはできなかった。
両方に証拠が出なかった時は、安倍さんとしてはイメージが悪いだろう。「やはり100万円の寄付はあったんじゃないか」という疑惑が残ってしまう。ただ、昭恵夫人が森友学園に100万円の寄付をするということは、法律的に何の問題もない。
重要なのは100万円寄付ではなく、国有地の問題だ
証人喚問をすることで、安倍さんは幕引きを図りたいと考えているのかもしれない。そうはいかないだろう。やはり、野党は国有地売却の交渉時に財務省の理財局長だった迫田英典国税庁長官や、当時の近畿財務局長らの証人喚問も求めると思われる。
野党は安倍さんを首相の座から引きずりおろしたいと考えているかもしれない。
だが、最大の問題は100万円寄付問題ではなく、国有地が格安で売却された問題だ。一般的にはあり得ないことについて、近畿財務局長に問う必要がある。
今後、財務省は野党が要求する証人喚問に応じるのか。ここが1つの大きな焦点だ。野党は国有地問題にフォーカスし、厳しく追及すべきである。
このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/032300013
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