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「日報」 陸自が電子データを一貫して保管 “消去”指示か[NHK]
3月15日 19時20分
南スーダンで大規模な武力衝突が起きた際のPKO部隊の「日報」について、防衛省は、陸上自衛隊が破棄し、その後、別の部署で見つかったと説明していますが、実際には陸上自衛隊が日報のデータを一貫して保管していたことが複数の防衛省幹部への取材でわかりました。さらに、これまでの説明と矛盾するとして一切公表されなかったうえ、先月になってデータを消去するよう、指示が出されたと幹部は証言しています。
南スーダンでPKO活動にあたる自衛隊の派遣部隊が日々の状況を記した「日報」について、防衛省は、現地で大規模な武力衝突が起きた去年7月の記録を情報公開請求されたのに対し、部隊の指揮にあたる陸上自衛隊の司令部がすでに破棄していたとして、去年12月、「日報は存在しない」と回答しました。
その後、再調査が行われ、防衛省は、陸海空の各自衛隊でつくる統合幕僚監部に保管されていたことがわかったと先月7日に発表しましたが、その一方で、陸上自衛隊には存在しないと説明しています。
ところが、実際には、陸上自衛隊が日報の電子データを一貫して保管していたことが複数の防衛省幹部への取材でわかりました。それによりますと、陸上自衛隊に電子データがあることがわかったのはことし1月中旬で、部隊を指揮する司令部の複数のコンピューターに保管されていました。このことは、陸上自衛隊の上層部に報告され、いったんは公表に向けた準備が進められたということです。この時の方針は、陸上自衛隊で日報のデータが見つかったことを認めた上で、隠す意図はなく今後公表するという内容だったということです。
しかし、その後、これまでの説明と矛盾するため外部には公表しないという判断になり、さらに、先月になってデータを消去するよう、指示が出されたと幹部は証言しています。
防衛省幹部の1人はNHKの取材に対し、「日報の電子データは陸上自衛隊の司令部もダウンロードし、保存していました。しかし、『いまさら出せない』となり、公表しないことになった経緯があります。いま現在、司令部のデータは消去されたと聞いています」と証言しています。
陸上自衛隊トップの岡部俊哉陸上幕僚長は、NHKの取材に対し、「日報の電子データが残っていたという話は聞いていない。司令部を探したうえでなかったという部下の報告を信じるしかない」と話しています。
防衛省は「今回の日報については、陸上自衛隊から『不存在』である旨の報告が行われている。いずれにしてもこの日報はすでに開示しており、適法に手続きが行われたものと考えている」としています。
「日報」問題とは
問題の発端となったのは、南スーダンでの陸上自衛隊のPKO活動に関する文書を去年10月、情報公開請求されたのに対し、防衛省が「文書はすでに破棄され存在しない」と通知したことでした。
防衛省によりますと、情報公開請求の対象は、南スーダンに派遣された陸上自衛隊の10次隊が日々の状況を記した「日報」で、期間は、現地で政府軍と反政府勢力による大規模な武力衝突が起きた去年7月7日から12日までの6日分でした。
これに対し防衛省が文書が保管されているか確認したのは、陸上自衛隊の派遣部隊と、その指揮にあたる中央即応集団司令部でした。その結果、防衛省は「派遣部隊は司令部に報告した時点で、司令部はそれに基づき資料を作成した時点でそれぞれ日報を破棄していて、すでに存在しない」として、去年12月、「非開示」と通知しました。
これについて、自民党の河野前行政改革担当大臣から疑問が示され、再調査が行われた結果、陸海空の各自衛隊でつくる統合幕僚監部に電子データで保管されているのがわかったとして、防衛省は先月7日、当初の説明を撤回して日報を公開しました。その一方で、防衛省は、陸上自衛隊の司令部には、再調査でも日報は確認されず、存在しないという説明を続けていました。
「日報」管理の仕組み
南スーダン派遣部隊の「日報」を管理する仕組みです。
日報は、南スーダンに派遣されている陸上自衛隊の部隊が、活動の記録や現地の治安情勢などを文書にまとめたもので、毎日、作成します。作成後、外部からは閲覧できない自衛隊専用のインターネットのサーバーに電子データで送信され、部隊の指揮にあたる陸上自衛隊の中央即応集団司令部がダウンロードして内容を確認します。そして、国づくりの支援状況や治安情勢の見通しなど評価・分析を加えた報告書を作って司令官に伝えるという仕組みになっていて、この作業は毎日行われます。
一方、このサーバーには、陸上自衛隊の司令部のほかにも関係する複数の部署が接続できるようになっています。今回の問題で、防衛省は、再調査の結果、陸海空の各自衛隊でつくる統合幕僚監部が日報をダウンロードして保存していたとして、公開しました。しかし、再調査の際に、陸上自衛隊でも電子データが見つかっていたことは一貫して伏せられてきました。
日報の内容と治安情勢
今回の日報には、自衛隊の宿営地がある南スーダンの首都・ジュバで、去年7月に起きた政府軍と反政府勢力による大規模な武力衝突について、「戦闘」が起きたとして具体的な状況が記されていました。
このうち、武力衝突が始まった去年7月7日の日報には、宿営地の近くで、発砲音がおよそ15分の間に30発以上確認されたことが記されています。その後の日報では、「政府軍の攻撃ヘリや戦車の動きを確認」とか、政府軍や反政府勢力以外にも「民間人約25人が死亡した模様」など、武力衝突の規模が拡大していく様子が記されています。また、武力衝突について、当初は、「抗争」と記されていましたが、3日目の7月9日からは「戦闘」という表現に変わっていて、急速な治安情勢の悪化に部隊が危機感を強めていたことがうかがえます。
この日報が情報公開請求されたのは去年10月で、当時、国会では、南スーダンに派遣される部隊に「駆け付け警護」など安全保障関連法に基づく新たな任務を付与するかどうかをめぐり、現地の治安情勢が焦点になっていました。その際、政府は「『戦闘』に定義はなく、一般的な意味で『衝突』という表現を使っている」と説明するとともに、国際的な武力紛争の一環と定義される「戦闘行為」は起きておらず、PKO参加5原則は維持されているという認識を示していました。
専門家「信頼が壊れた」
公文書の取り扱いに詳しい早稲田大学の春名幹男客員教授は「事実の隠蔽と言われてもやむをえない」としたうえで、防衛省はこの問題に関する情報を徹底して開示する責任があると指摘しています。
陸上自衛隊の司令部に日報の電子データが保管されていたことがわかったことについて、春名さんは、「防衛省はこれまで陸上自衛隊にデータはないと明言していた。この日報には戦闘の様子など重大なことが記されていて、それが政府の今後の方針にとって邪魔だという判断が働いて隠していたと勘ぐられても仕方ない」と指摘しています。
また、先月になって、データを消去するよう指示が出されていたという証言については、「事実の隠蔽と言われてもやむをえない。防衛省が機密情報を扱うことを国民はある意味で委託しているわけだが、その信頼が壊れたということになる」と指摘しています。そのうえで、「今回の日報をめぐる問題は派遣部隊が撤収すればそれで済むというものではない。国民の知る権利や、民主主義の根幹に関わる問題なので、防衛大臣はデータの破棄を指示した人を明らかにすることも含めて、徹底的な情報開示に努めてほしい」と話しています。
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