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そこまでやるか安倍官邸 強引幕引き、電波ジャックの狂乱
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/201299
2017年3月11日 日刊ゲンダイ 文字お越し
籠池理事長にかぶせた安倍首相の電波ジャック(C)日刊ゲンダイ
こんな幕引きがアリなのか。ぶったまげるまでの強引さだ。
10日夕方のテレビは、まるで電波ジャックの様相だった。学校法人「森友学園」の小学校建設をめぐる一連の問題で、渦中の籠池泰典理事長が17時半から、経営する塚本幼稚園で会見。夕方のニュースは一斉にこれを中継した。
籠池理事長は小学校の設置認可申請を取り下げたことを明らかにし、「何も悪いことはしていませんが、学校を建設できなかった責めは取らせていただく」と、理事長辞任も発表したが、謝罪の言葉は一切なく、「朝日と共産の陰謀で潰された」「国会で野党が追及するから工事が滞った」とあくまで被害者ヅラ。さらには「明治維新から150年の年に素晴らしい小学校ができ、75年かけて本来の日本の教育に戻していかなければならなかった」と戦前教育への回帰願望を臆面もなく開陳するなど、トンデモ持論を展開する一方だった。
視聴者も唖然の極右独演会をテレビ局は垂れ流し続けたのだが、その最中に突然、「南スーダンPKO撤収」の速報が入る。理事長と記者との質疑応答が始まろうかというタイミングで、テレビ画面は一斉に安倍首相のぶら下がり会見に切り替わってしまった。こんどは籠池に代わって安倍が電波ジャックという錯乱の金曜日だった。
■疑惑は何ひとつ解明されていない
「南スーダンからの撤収は朗報ですが、5月の話ですから、いま緊急発表して会見するような話ではない。籠池会見にかぶせてきたのは明らかで、それだけ安倍官邸は焦っている。後ろ暗さを認めたも同然です。メディアの攻勢に慌てふためいて、籠池理事長に申請を取り下げさせ、問題にフタをするシナリオを描いたのも官邸でしょう。週末に行われるマスコミ各社の世論調査向けの工作ですよ。しかも、きょう11日からしばらくはメディアも震災追悼一色になります。森友問題への追及が手薄になるタイミングで、南スーダン撤収をぶつけてきた。首相個人の保身のために、政策をねじ曲げる。震災も利用する。完全に国家を私物化しています」(政治評論家・本澤二郎氏)
緊急性のない南スーダン撤収で会見しておきながら、同じ日に政府は「東日本大震災の3月11日に毎年開いてきた首相会見を打ち切る」と発表。自分たちの都合で何でも決められると思い上がっているのではないか。
官邸の思惑通りということか、金曜夜のニュース番組では南スーダン撤収がトップニュースになり、その分、森友学園のトンデモ会見は扱いが小さくなった。土曜日からは震災報道がメーンになる。だが、これで幕引きなんて許されない。籠池理事長の会見でも疑惑は何ひとつ明らかにされなかったからだ。
なぜ、財務省は異例を積み重ねて国有地をタダ同然で払い下げたのか。誰がこのスキームを考えたのか。財務面でも教育内容も問題だらけの学校法人だと認識しながら、大阪府がスピード認可した理由は何か。政治家の口利きは本当になかったのか。そして、「トカゲの尻尾切りはやめろ」と反論動画をユーチューブにアップするなど強気だった理事長が、一夜にして急変、申請取り下げに転じたウラに何があるのか――。
「籠池理事長が態度を急変させたのは、官邸が裏取引を持ちかけたからだと見るのが自然でしょう。このあたりで幕引きにしないとマズイと考えた官邸が、事態の収束を図った。ただ、南スーダン撤収までぶつけてきたのは、さすがにやりすぎで、国民だって、ますます怪しいと感じているはずです。肝心なことが何も解明されていないのに、このまま問題を隠蔽して幕引きなんて許されない。政府には、国民の疑問に答える義務があります」(ジャーナリストの横田一氏)
松井大阪府知事も安堵?(C)日刊ゲンダイ
大阪府と握り、身の安全とカネを保証して黙らせた?
会見で、籠池理事長は「涙が出る思いで申請を取り下げた」と語ったが、一方で、小学校開設への意欲も力説していた。小学校をつくることは「天からのミッション」だと言い、「またチャレンジさせていただく」「大阪かは分かりませんが、子供さんの育成は今以上にする」と前向きだった。
解せないのは、認可申請を取り下げたことで用途指定の国有地払い下げの前提が崩れ、更地にした上で国が買い戻すことになるのに、籠池理事長は「九分九厘までできた」校舎の「解体はしない」と明言し、開校は「延期になっただけ」みたいな発言もしていたことだ。
ほとぼりが冷めた頃に開校させる口約束を官邸から取り付けたのか。それとも、完成した建物ごと国が買い戻し、まさか国立安倍晋三記念小学校にでもするつもりなのか。
現地で取材を続けるジャーナリストの田中龍作氏が言う。
「裏取引の具体的な中身は分かりませんが、籠池理事長が感じている不安は、主に経済的負担、詐欺容疑でパクられること、そして口封じに消されることの3つでしょう。これらを保証する代わりに、今年4月の小学校開設は諦めてもらう。官房機密費からそれなりのカネを渡したのかもしれませんし、脅しもあったでしょう。籠池理事長の会見が支離滅裂だったのは、本人が主導した申請取り下げではないから、事態をまだのみこめていないのではないか。何を質問されても、新左翼の陰謀などといった持論を長々と話すだけで要領を得なかった。明確に否定したのは、『政治家の口利きはないし、安倍首相にも昭恵夫人にも何もしてもらっていない』『安倍首相にお目にかかったことはない』という2点だけです。この点だけハッキリ明言すれば、後は悪いようにはしないと言いくるめられている可能性は大いにあります」
■「疑獄事件には死がつきまとう」
結局、ハッキリしているのは、政権にとって最も都合がいい形で小学校開校が中止になったという事実だけだ。予定通り4月に開校すれば、問題が長引いて政権への打撃になる。かといって、大阪府が「不認可」の決定をすれば、訴訟になるリスクもあった。森友学園側が自ら申請を取り下げた以上、損害賠償の裁判を起こすこともない。大阪府と握り、ある程度のカネを渡して黙らせる。こんな芸当は官邸にしかできないというわけだ。
「7日夜には大阪の土木工事業者が亡くなりました。森友学園の工事で、土の搬出を請け負う建設会社の下請け業者です。遺書はありませんでしたが、警察は早々に自殺として処理した。現地に飛んで取材したところ、元請けの建設会社は『たしかにそこの会社に発注している』と認めたのですが、自殺者が出た会社は『ウチは森友の工事に一切関わっていない』と言う。真相は不明ですが、ライブドア事件の時、沖縄で不審死した元取締役が早々に自殺と断定されたケースを思い出しました。この元取締役は安倍首相の私的後援会と関係があったともいわれる。ロッキード事件やリクルート事件もそうでしたが、疑獄事件には死がつきまとう。こういうことも籠池理事長への脅しになったのかもしれません」(田中龍作氏=前出)
業者は本当に自殺だったのか、森友学園の件と関係があるのか、現時点では判然としないが、こういう噂が広まること自体が、この問題の根深さを物語っている。死者が出たというだけで、「余計なことはしゃべるな」というメッセージだと受け取る関係者もいるだろう。そうやって疑心暗鬼にならざるを得ないほどの核心とは何なのか。異様な幕引きは、誰を守るためなのか。森友事件の闇は底知れない。
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