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南スーダン撤退 あの日報を引きずり出したジャーナリストの執念を見よ 全ては一通の情報公開請求から始まった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51186
2017.03.11 現代ビジネス編集部
■火をつけたのは、ひとつの文書
まさに青天の霹靂というほかない。3月10日、午後6時。安倍晋三首相は、南スーダンにPKO派遣されている自衛隊の部隊を、5月末をめどに撤収させる考えを明らかにした。
今国会では南スーダンの治安を巡り、与野党間で激論が交わされた。火をつけたのは、ひとつの文書だった。
政府はこれまで「自衛隊が活動する首都のジュバ市内は比較的安定している」と繰り返してきたが、現地の部隊が昨年7月に作成した「日報」が発見され、そこに<戦闘>という文言があったことが明らかになり、様相は一変。「戦闘地域に自衛隊を派遣することは、PKO法にも憲法にも反している」と指摘する声が続出したのだ。
安倍首相は撤退の理由について「南スーダンでの活動が今年1月に5年を迎え、部隊の派遣としては過去最長となり、一定の区切りをつけられると判断した」と語ったが、「日報」が発見されたことで議論が再燃し、それが撤退の判断に影響を与えたのは明らかだろう。
本来なら公開されることのなかったこの文書が明るみに出たのは、昨年9月、ジャーナリストの布施祐仁氏が防衛省にかけた情報公開請求がきっかけだった。布施氏が血道をあげた日報問題。その経緯を振り返りたい。
■きっかけは「教訓要報」
そもそも情報公開請求をかけるには、ある程度具体的に「この情報を開示してほしい」と指定しなければならない。つまり、日報の存在を知らなければ、請求のしようもない。布施氏が防衛省に日報の公開請求をかけたのは、昨年9月末のこと。布施氏はどのようにして、日報の存在に気づいたのか。
話は2015年9月、安全保障関連法案が国会を通過した直後にさかのぼる。
「安保関連法が成立したことで、自衛隊の新任務として駆け付け警護が認められることになりました。当時より政府は南スーダンに自衛隊をPKO派遣していたので、最初に駆け付け警護任務が付与されるのは、南スーダンのPKO活動になることは明らかでした。そこで、南スーダンに派遣されている自衛隊の活動について、情報公開制度を利用して詳しく調べてみようと思ったんです。
とはいえ、こちらは防衛省がどんな文書を持っているかは分からないので、最初は大雑把な内容で請求をかけるしかない。まずは、2013年12月に南スーダンで内戦が勃発した時に活動していた、第5次隊の活動状況をまとめた文書を開示請求しました。おそらく、報告書のようなものは存在しているだろうから、それを出してほしい。と。
すると、『教訓要報』という文書が開示されました。いわば、現地で発生したさまざまな事案と、そこからくみ取るべき『教訓』をまとめた資料です。ここに<自衛隊宿営地近傍で発砲事案が発生し、全隊員が防弾チョッキ及び鉄帽を着用><宿営地を狙った襲撃・砲撃も否定できない>といった、現地の緊迫した状況が記されていたのです。『平和維持活動』と言っているけど、これはもう戦争だな、と」
「教訓要報」によって改めて南スーダンの危険な状況を認識した布施氏は、他にも重要な資料があるはずだと、以後、防衛省に継続的に文書の公開を請求した。
「その過程で、南スーダンに派遣される隊員を教育する『国際活動教育隊』が使っているテキストが開示されました。そのテキストに、隊員たちの訓練内容を検討する上で、派遣部隊が作成するて『日報』を基礎資料として活用している、と書かれていた。これが、日報の存在を知るきっかけでした」
■あまりにずさんな防衛省の対応
布施氏が調査を進めていた最中の2016年7月、南ジュバで150人以上が死亡する大規模な戦闘が発生した。このとき、現地の自衛隊がどんな状況に置かれ、それにどう対応したのかを知りたいと思った布施氏は、防衛省に対し、戦闘の期間中に「南スーダンに派遣された部隊が作成した日報」の情報公開請求を行った。これが、2016年9月30日のことだ。
その後の防衛省のずさんな対応はすでに広く報じられているが、ここでもう一度確認しておきたい。
通常、情報公開請求を行うと30日以内に開示か不開示かが通知される。だが、10月30日に布施氏のもとに届いたのは<開示決定期限延長>の通知。「開示決定にかかわる事務処理や調整に時間を要する」というのが理由だった。
そして12月2日、防衛省から布施氏のもとに「日報はすでに廃棄しており不存在」という連絡が来る。開示でも不開示でもなく、すでに廃棄したので公開しようがない、というのだ。
実際に届いた不開示決定通知書
「この決定には強い違和感を持ちました。文書が届いてみたら『のり弁』のように重要な部分が黒塗りされていることはよくありますが、わずか3、4カ月前に作成された文書が廃棄されて存在しないというのは、初めてのことでした。しかも、これから先の訓練内容を考えるための基礎資料として活用されているような自衛隊にとっても重要な文書が、こんな短期間に廃棄されているなんてあり得ないと思いました。
その直前の11月15日、政府は新たに南スーダンに派遣する自衛隊の部隊に駆け付け警護の新任務を付与する閣議決定を行いました。そして、同30日に、第11次隊が青森から出国した。請求開示期限を延長したのは、新任務付与と派遣前に議論が起こることを避けたかったからではないかと思えてなりません。
とにかく、常識的に考えても廃棄したというのはおかしいだろう、と。そうSNSで発信したところ、ものすごい勢いで拡散し、方々から『これはおかしい』という反応が返ってきました」
布施氏がツイッターで公開したところ、4000件近いリツイートがあった
自民党の河野太郎議員も、「廃棄」に違和感を持った一人。元公文書管理担当大臣で、現在は自民党の行革推進本部長を務める河野議員が日報の存否を再調査するよう防衛省に要求、さらに稲田朋美防衛大臣も文書の再捜索を指示したこともあり、防衛省はついに「日報」を出さざるを得なくなった(といっても、隠ぺいしていたのではなく、廃棄されているはずのデータがたまたま見つかったというスタンスは最後まで崩さなかったのだが)。
■情報公開は有力な「武器」である
ようやく公開された「日報」。そこに「戦闘」という文言が何度も出てくるため、「ジュバは安定している」という政府の従来の見解に偽りがあるのではないか、という議論に発展したのは、周知のとおりだ。
「第11次隊が派遣される前に日報が開示されていれば、自衛隊に駆け付け警護を付与すべきかどうかについて、もっと活発かつ有益な議論が交わされていたはずです。国民や国会が真実をもとに議論する機会を奪われたということを、深刻にとらえなければなりません。
不幸中の幸いというべきか、今回の請求がきっかけとなって再度議論がはじまり、安倍首相は南スーダンの撤退を決断しました。日報が公表されたことが今回の撤収の政治判断に少しでも寄与したならば、情報公開によって国会や国民の間で活発な議論が行われ、それが政治判断に反映されるという、国民主権のひとつの「理想形」を実現できたことになります。それは喜ばしいことだと思っています。
そして、私は過去の取材でも情報公開制度を利用してきましたが、改めて情報公開の重要性を認識しました。
この国は、これまでにも増して重要な情報を国民に開示しない方向に傾いている――私はそう感じています。マスメディアが、国家権力が隠す『不都合な真実』を暴いてくれればいいのですが、残念ながら今のメディアの状況をみると、それにも限界があるでしょう。情報公開制度は私たちがもっと利用すべき、誰にでも使える有力な『武器』なのです」
日本で情報公開制度がはじまったのは、2002年のこと。総務省ホームページには施行以降の開示請求件数が公開されており、年々その数は増えている。が、主な請求内容は「不動産登記に関するもの」や「医薬品の承認関係」など、ビジネスに関わるものがほとんどだ。国の政策に関わるような情報の公開は、そもそも請求の数が少ないか、あるいは「不開示」とされる場合も少なくない。
さらに、総務省は不開示となる6つのケースを挙げているが、<審議・検討等に関する情報で、意思決定の中立性等を不当に害する、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報>というものがあり、これが厄介だ、と布施氏は言う。
「過去に情報公開請求を行ってきたなかで、何度かこの理由を盾に開示を拒まれたことがあります。しかし『この情報が表に出たら、反対意見が出てきて困る』というのは、前提がおかしい。可能な限りの情報を国民に提示して、反対意見も踏まえて議論しながら政策決定を進めていくのが、民主主義国家のあるべき姿でしょう。だから、情報公開法では『原則開示』とされているのです。
ところがこの国では、情報公開制度を支えるべき予算も人員も十分ではない。さらにいえば、そもそもなぜ必要なのか、という理念の共有が進んでいないのです。仏作って魂入れず、ということです。
今後も、私は情報公開制度を積極的に利用します。日本の場合は、重要な情報が真っ黒に塗り潰されて出てくることも多く、つい使えないと思ってしまいがちですが、そのこと自体をSNSを通じて発信し可視化することも重要です。今回の日報はまさにそうでしたが、そうすることで、政府・行政が何を国民に隠そうとしているのか、いかに情報公開に熱心でないかを訴えることができますから。
それを繰り返すことで、次第に現状の情報公開制度には問題がある、という認識が広まって、改善に向かっていくことを期待しています」
一通の情報公開請求が、国の決定を動かす可能性がある――。制度施行から15年という節目に起こった「日報問題」を奇貨とすべきだ。
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