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リーマン・シスターズなら破綻しなかった?
記者の眼
女性活用、他人事と思うなかれ
2017年3月10日(金)
藤村 広平
「もしリーマン・ブラザーズがリーマン・ブラザーズ&シスターズだったら……。きっと、破綻することは無かったでしょう」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030900425/p1.jpg
スピーチ中盤で放たれた渾身のジョークに、耳を傾けていたビジネスウーマンたちから笑い声があがった。壇上に立っていたのは安倍晋三首相。1月20日夜、東京都内で開かれた「女性リーダーのための経営戦略講座」の懇親会での一幕だ。
「女性リーダーのための経営戦略講座」の懇親会で挨拶する安倍首相。女性リーダーに囲まれ、いつにも増して饒舌(2017年1月20日、東京都港区)
政治家がこうした場で挨拶するのは良くあることだが、これだけ出席者に女性の多いパーティーは珍しい。
この日は通常国会の召集日で、安倍首相は1万字を超える分量の施政方針演説をこなしてきたばかり。だが全方位から黄色い歓声とスマートフォンのカメラを向けられた首相はいつになく饒舌。リップサービスも含まれるとはいえ、わざわざ会場に駆けつけて女性活用の意義を語る姿には「女性役員の割合を2020年までに3割まで引き上げる」と掲げる政権の本気度がにじみ出ていた。
多様性といっても色々。まず女性から
この講座は、経済産業省が2015年から幹部候補の女性を民間企業から招いて実施している研修プログラムの一つ。2016年度は全国から約60名の女性リーダーが参加し、ハーバードビジネススクールの教授陣から「マクロ経済と経営戦略」「リーダーシップ論」などの講義を受けた。
女性活用、女性の社会進出、女性登用――。表現はその都度違っていても、女性の活躍を後押しする取り組みは長らく人権問題として受け止められてきた。だが現在の政府は「これは社会政策ではなく経済政策」(安倍首相)という姿勢。「女性の活躍を、経営を強くするための手段としてとらえてほしい。だから(15年以降の女性リーダー育成プログラムは)厚生労働省ではなく、我々が指揮をとっている」。経産省・経済社会政策室の藤沢秀昭室長はそう語る。
日本は人口が減るという未曾有の時代に突入し、これからは国内市場の縮小が避けられない。国内で新たな事業モデルを築き上げていくにしても、海外に打って出るにしても、企業には、これまでにない大胆な発想が求められる。
こうしたなか、企業の意思決定に携わるのが例えば「四年制大学を卒業し、サラリーマンとしてそこそこの成果を上げ、いくつかの担当部署を移りながら主任、係長、課長、部長と昇進してきた男性」ばかりでは、いつも似通ったようなアイデアしか出てこないリスクがある。
そのリスクを軽くするのが経営人材におけるダイバーシティー(多様性)の実現。だが、一口にダイバーシティーといっても国籍や宗教、生活スタイル、障害の有無、性的嗜好など色々な要素がある。社会的な理解・受容度を考えるとまだハードルが高いものがあるのも事実であるため、政府としてはまず着手しやすい「性別」から始めたという形だろう。政府の呼びかけと前後して、企業でも女性が働きやすい職場づくりを進める動きが進み始めている。
だが……。記者は常々感じていたことがある。
女性活用の取り組みとして脚光を浴びるのが、経営余力のある「ホワイト系大企業」ばかりではないか、という点だ。
大企業ばかりでいいのか
女性向けに商品やサービスを開発しているBtoC企業の事例を耳にすることが多いのも気になる。「それはおまえの勝手な思い込みだろう」との批判を覚悟のうえで、あえて列挙するのなら、カルビーや資生堂、高島屋、日産自動車、日本ネスレといった企業群だ。
たとえば、日産自動車のカルロス・ゴーン社長は今年1月、日本経済新聞の「私の履歴書」にこう書いている。
「日産の車を買ってくれるのは誰か、という点が問題意識にあった。調べてみると、世界中で車の購入の約65%は女性が決定権を持っていることがわかった。だが、車を開発し、生産し、意思決定しているのは、どの企業でもほとんどが男性だ。これはおかしいと思った」
この言葉の通り、日産は2015年、国内販売を統括する責任者のポジションに星野朝子・専務執行役員を据えている。「クルマの購入を決めるのは家庭で実権を握る女性なのだから、クルマを作って売る側にも女性の感覚が必要」。これ自体は至極真っ当な考え方といえる。だが、BtoC産業だけで良いのだろうか。
意思決定のありかたを変えていかなくてはならないのは、地方の中小企業や、顧客が男性だったり、BtoB領域が専門だったりする企業も同じであるはず。前述の「いかにも」なホワイト系大企業ばかりが脚光を浴びれば浴びるほど、中小企業の男性経営者らは「うちには関係ない話」と白けてしまうのではないか。
もしホワイト系大企業が目立つことが女性活用の推進にネガティブに働くとしたら、それは日々企業取材する私たちビジネスメディアの責任でもある。そこで、記者は冒頭の経営戦略講座に参加していた企業から、あえて中小、しかもBtoCとはできるだけ縁遠い企業を探すことにした。
こうして記者が訪れたのが、埼玉県蕨市のオプトエレクトロニクスだ。資本金こそ9億4241万円、売上高も71億円(2016年11月期)と中小企業というには規模が大きいが、従業員数は約260人。なによりウェブサイトに書かれた事業内容が「自動認識装置の開発、製造、販売」と、お堅い。
自動認識装置とは、小売り店のレジや物流倉庫などで使われるバーコードの読み取り機のことだ。レーザー光で認識する方式では、オプトは国内で9割超、世界でも第2位のシェアを誇るという。一般消費者に商品を販売することはなく、顧客として日々向き合うのは小売り業界や、同業界向けにシステムを開発する大企業の営業担当者。まさに、男社会を主戦場とするメーカーだ。
そんな会社で、女性リーダーがどう活躍しているのか。
産学連携の窓口役
「なにも特別なことをやっているつもりはないのですが……」。そう謙遜するのは開発管理部の大島龍子部長。もともと銀行で為替業務に携わっていたが、2006年にオプトに入社。3年前、部長に昇格した。
大島部長の担当は産学連携だ。同社が全国の大学と共同研究するにあたっての窓口役と考えればわかりやすい。過去数年、同社は電気通信大学や長野大学、神戸大学など複数の大学と製品の共同開発プロジェクトを立ち上げている。その黒子として活躍してきたのが大島部長というわけだ。
志村則彰会長は「我々のような中小企業が、これだけ継続的に大学と連携できているのは大島さんのおかげ」と話す。現在販売しているバーコードスキャナーの基礎技術の一部は、電通大と共同開発したもの。技術の応用品として、紙ではなく液晶に商品の値段を表示する電子棚札を開発、発売したこともある。「産学連携といっても、企業が大学の研究室のスポンサー役になるだけという実態も多い」(大島部長)なか、オプトは着実に「稼げる共同研究」で実績を積み上げてきた。
産学連携を取り仕切るオプトエレクトロニクスの大島部長(2017年3月、埼玉県蕨市の同社本社)
大島部長の仕事の特徴は、大学側との丁寧なやりとりにある。
研究成果の発表会があれば必ず夜には懇親会を企画し、終わってからも教授や学生へのお礼の電話やメールを欠かさない。プロジェクトが一段落してからも学生との接触を続け、自社インターンへの参加や、最終的には正社員採用にまでつなげてしまう。オプトには電通大出身のエンジニアが約30人いるが、このうち半分は大島部長が研究後もフォローを続けたことでオプトの門をたたくことになった元学生たちという。「男性ばかりで会社を舵取りしていた昔はこうはいかなかった」と志村会長。
オプトで課長以上の管理職は16人。このうち、すでに大島部長を含めた3人が女性で、日本企業の現状である「3%台」を大きく上回る。
志村会長は「女性だからといって優遇する気はない」と話すが、一方で「労働人口の絶対数が減るなか、女性に活躍してもらうにはどうすればいいのか、いまのうちに考えておかないといけない」とも強調する。2014年からは、産休や育休で職場を離れる可能性のある女性社員を採用する際には、必ずその1人のほかに、休職期間中にカバーする社員も1人、併せて採用するという方針を掲げている。
休職者がいないときには人員が余るが、志村会長は「それなら、全社員がそのぶん30分早く帰宅できるようにすればいい」。オプトにとって女性活用はCSR(企業の社会的責任)ではなく、すでに重い経営課題となっている。地方の中小企業、かつ男性が携わることの多いお堅いBtoB企業でも、なかには経営者らが意識改革を進めているところもある。オプトの取り組みは、そんな現実を教えてくれる。
決まり文句「うちにはそんな余裕ない」
女性活用を、一部のホワイト系大企業だけの問題に矮小化してはいけない――。こんな危機意識を持っているのは経産省も同じだ。2016年から地方企業が地方企業同士で女性活用について議論するイベントを企画。フォークリフト作業を女性に任せている企業の現場を訪問するバスツアーも開いた。
「現在の男性経営者たちは、均質な(男性)社員が会社経営を担いながら成長した時代を過ごしてきた。総論としては『女性活用って大切だよね』と分かっていても、いざ自社の問題として実践するとなると腰が重くなる」。経産省・経済社会政策室の藤沢室長はそう指摘する。
はたして、リーマン・ブラザーズ&シスターズなら破綻しなかったか。
歴史にifは禁物であり、この問いへの答えは誰にも分からない。ただリーマン・ブラザーズが破綻したこと自体は歴史の教科書に載る事実だ。理由が何であれ、旧来型の経営を続けていてはいつか限界が来るということだけは、間違いないといえるのではないか。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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