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森友学園問題が「捜査ナシ」で済むはずがないこれだけの理由 特捜部に起死回生の時が来た
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51167
2017.03.09 伊藤 博敏 ジャーナリスト 現代ビジネス
■「だから私は告発状を提出した」
今後、国有地格安払い下げの森友学園疑惑が事件化したとして、最も印象的なシーンとなるのは、鴻池祥肇元防災担当相が、3月1日に開いた記者会見だろう。
「無礼者、というて叩き返した。(手渡された紙包みは)一瞬でカネとわかった。すぐに投げ返したため、中身は、カネか、コンニャクか、天ぷらか、かまぼこか、ういろうかは知らん」
紙包みを手渡したのは森友学園・籠池泰典理事長夫妻。
それまでに、籠池夫妻が何度も鴻池事務所に陳情を繰り返し、「賃借料をまけて欲しい」「政治力で早く結論が出るようにして欲しい」といった趣旨の発言をしていたことから、鴻池氏は「(国有地の売却額を)安くしてくれ、との話でなかったか」と、認識していたという。
この会見を受けて、すぐに告発状を作成、大阪地検特捜部に提出したのは、千代田区永田町に事務所を置く「日本タイムス」発行人の川上道大氏(69)である。
「国会で、連日の“コンニャク問答”を聞かされて、国民はイライラを募らせていた。でも、安倍(晋三首相)さんは、『コト(疑惑)がハッキリしてないじゃないか』と、逃げていた。
今回、疑惑がハッキリしたんだから、捜査すべきなんです」(川上氏)
告発状によれば、籠池夫妻は、14年4月頃、永田町の参院議員会館に鴻池氏を訪問、小学校の開校準備が思うように進んでいなかった状況の改善を図ろうと、「これでお願いします」と、持参した封筒を差し出した。
それに対して、鴻池氏は怒り、突き返すのだが、その時点で金銭を受け取っていなくとも、刑法第198条に違反するという。
「被告訴人(籠池夫妻)らが申し込みをした相手は国会議員であるが、財務省の幹部に働きかける行為は、少なくとも職務行為に密接に関連する行為として、贈賄の申込罪が成立するというべきである」(告発状)
籠池サイドが「金銭ではなく3万円の商品券」と否定している面もあり、大阪地検が受理して捜査するかどうかは流動的だが、今後、この手の告発が続くのは間違いない。
「過去、検察に政治資金規正法違反などで、何度も告発状を提出、政治家を追い詰めた市民グループなどが、告発準備を整えています。松井(一郎・大阪府)知事が、『補助金詐欺』と口にしたような事案もある。このまま捜査なしでは済みません」(大阪の司法担当記者)
■森友は無理をし過ぎた
実際、森友学園は無理をし過ぎている。
疑惑の発端となった国有地の約8億円の値引きは、資金力不足を政治力で補おうとした“努力”の結果だし、認可関係の書類でも偽装が露見した。そのうち国と府への提出書類に数字上の大きな乖離があるのは、補助金不正受給のためではないかと指摘されている。
問題となっているのは、開校する予定の小学校の総事業費を、国には21億8000万円と報告しながら、府には7億5000万円としていた点である。
森友学園が国から受け取ることになっていたのは、総設計費の2分の1、工事費の3・75%。補助対象の設計費と工事が減額されたものの、結局、6194万円が認められ、これまでに5644万円が支払われた。
過大な事業費は、補助金増額のためと指摘されてもおかしくなく、松井知事は、「補助金詐欺なら刑事事件になる」と、批判した。
疑惑のタネはほかにもある。
保守系団体「日本会議」で長く活動している籠池理事長は、地方から中央までさまざまな政治家と付き合っており、今回、悲願の「小学校認可」と「土地の払い下げ」を巡り、鴻池氏の元秘書の黒川治・兵庫県議、中川隆弘・大阪府議、松浦正人・防府市長などに、各種の「お願い事」をしている。
そのほか表面化していない政界工作もあるわけで、陳情を受けた政治家や秘書が、官僚に対して金銭の提供を受けて働きかけをしたら、あっせん収賄罪やあっせん利得処罰法違反を疑うことができる。
証拠がなく、そうした罪に問えなかったとしても、金銭の授受が判明すれば政治資金規正法違反での立件が可能。最近、検察が政治家に迫る材料として、この規正法を用いるのは、収支報告書に記載が残り、最も立件しやすいからである。
また、偽造や偽装は常態化していたようで、先の補助金受給の際、総事業費をごまかすために、国と府に提出した工事契約書が偽造された疑いがある。
そのほか府教育庁に提出された「愛知県の中高一貫・海陽中等教育学校への推薦枠の提供で合意した」という文書も、そんな合意はなかった、と訂正している。ミスで済む範囲を超えていると見なされれば、当然、事件化する。
■「死んだふり」している場合ではない
官僚も無傷ではいられない。
国会では、8億円もの国有地の値引きについて、財務省の佐川宜寿・理財局長が、「埋設物撤去費用だった」と、説得力のない答えを繰り返しているが、この撤去費用の過大計上については、背任の疑いが浮上する。
そのうえ、不可解な資料破棄が少なくない。
15年9月4日、近畿財務局と森友学園側が行った売買価格交渉の記録は、「管理規則に基づいて破棄した」(佐川局長)というものの、買戻し特約のついた継続案件の書類を破棄できるとは思えない。現に、小学校設置認可先送りで、土地買い戻しの話が浮上。証拠隠滅が交渉を妨げる可能性がある。
これだけの疑惑の数々に、捜査のメスを入れなければ「不作為の罪」を指摘されても仕方がない。6年前の証拠改ざん大阪地検事以降、「死んだふり」を貫く特捜部だが、起死回生の時が来た、と捉えるべきではないだろうか。
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