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安倍政権を滅ぼす時限爆弾になりそうな「森友学園問題」の深い闇
http://www.mag2.com/p/news/241590
2017.03.03 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
さまざまな疑問点が湧き上がる、学校法人森友学園が4月に開校予定の「瑞穂の國記念小學院」の国有地売却問題。昭恵夫人が名誉校長に就任していたことや、「安倍晋三記念小学校」の名で寄付が集められていたことも含め、同学園との「関係」を厳しく追求されている安倍総理は、発言内容が二転三転するなど、あいまいな答弁を繰り返しています。元全国紙の社会部記者でメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、森友学園の破格値での国有地取得に国会議員の関与があったか否かはなんとも言えないとしつつも、「この国のファーストレディーが新設小の名誉校長であったという事実」が何を意味するのか、鋭い筆致で浮き彫りにしています。
■安倍首相夫妻が縁切りに躍起の愛国教育小学校
今年中の解散総選挙をめざす安倍首相は目下、政権のアキレス腱となりつつある学校法人「森友学園」との関係を切り離すのに躍起だ。
同学園が4月開校を予定する小学校の名誉校長に昭恵夫人がなっていた件について、安倍首相は2月24日の衆議院予算委員会で、夫人を辞任させたことを明らかにした。
そのうえで、「安倍晋三記念小学校」という名のもとに寄付集めをしていた学園のトップ、籠池泰典理事長のことを「そう簡単に引き下がらない方だった」「非常にしつこい」「教育者としていかがなものか」などと、まるで安倍夫妻側が、被害者であるかのように強調した。
17日の衆院予算委員会で「私の考え方に非常に共鳴している方」と語っていただけに、驚くべき豹変ぶりだ。
その背景には、国有地格安払い下げや、森友学園の極端な軍国主義的教育実態をめぐる問題が次から次へと明らかになって、首相サイドも同学園を突き放すしか立場を守る手立てがなくなったという事情がある。
籠池泰典氏は安倍首相の国会発言をどう思っているだろうか。裏切られた思いなのか、それとも、懲りずに崇め奉っているのか。また、この学園に肩入れしてきた百田尚樹、曾野綾子、青山繁晴、竹田恒泰ら著名論客の方々の考えはいかがなものか。ぜひとも沈黙を破って発言していただきたい。
いずれにせよこの件、あらゆることが尋常ではない。国有地を売却した国がそれを非公開にし、交渉記録を破棄し、土地代金の分割支払いまで認めているのだ。どうして、それほどまでの特別扱いをしなくてはならないのか。
まず、国有地払下げ問題。大阪・豊中市野田町の国有地8,770平方メートルが対象物件だ。大阪空港の騒音対策による住居移転で空いた土地なので大阪航空局が管理していたが、土地売却の担当は近畿財務局である。
実はこの土地に関しては、2011年夏、近くに所在する大阪音楽大学が7億円前後での購入を希望したが、価格交渉が折り合わずに断念した経緯がある。
ところが2013年6月から3か月間、近畿財務局が購入希望者を公募し、応募のあった森友学園については、大阪音大のときとは打って変わって、配慮の行き届いた対応になった。
国有地は貸すのではなく売却するのが原則だ。それゆえ購入者を募集したのに、なんと、同学園に対しては10年間の定期借地を認めたのである。
しかも、資金を貯めたうえで8年後をめどに同学園がそのときの時価で土地を購入するという、なんとも優しい契約になっていた。
このゆるさは、役所の対応としては異例中の異例だ。2015年2月の国有財産近畿地方審議会では、数々の疑問点が出されながらも、新設小学校を認可する大阪府私立学校審議会がOKなら「了とする」という結論になった。
しかし、これはまだ序の口だった。近畿財務局は2015年5月に森友学園と定期借地契約を締結したが、翌2016年6月には森友学園が、土地を買い取ると言い出したのだ。しかもその購入価格は1億3,400万円で、年利1%、10回の分割払いという破格の条件である。
近畿財務局が不動産鑑定士に依頼して算出した土地の評価額は9億5,300万円だったのだ。8億1,900万円もの値引きになる。ありえないことだ。
地下に埋まっていた廃材や生活ごみの撤去にかかる費用を計算し、瑕疵のない状態で引き渡すため、その分を値引きして売却をしたと政府は言うのだが、少なくとも常識的ではない。
出てきた廃材や生活ゴミは学校建設の支障になるようなものではなかった。地下9.9メートルの支持層まで杭を打ち込むのに邪魔になるほどの地下埋設物はなかった。そのことは2月28日の参院予算委員会における小川敏夫議員への政府答弁で確認されている。
財務省や国交省の担当官僚は国会で質問をはぐらかし紙に書いた同じ答弁を繰り返す。近畿財務局や大阪航空局の役人は民進党議員に問い詰められて口ごもるばかり。肝心な何かを組織的に隠しているとしか思えない。
いかにも、国が土地の価格を提示し、森友学園が「それなら買いたい」と定借から購入に切り換えたように装ってはいるが、国が進んでそこまで大サービスをすると思う人はいないだろう。
森友学園側がかなり強引な態度で、国に好条件の提示を求め続けていたと考えるのが普通ではないか。定借の契約をし、小学校の建設工事にとりかかったら、廃材や生活ゴミが出てきたのを、これ幸いに、さまざまな圧力をかけて土地の大幅値引きを要求したということではないのだろうか。
こうした場合、通常なら国は木で鼻をくくった対応をするだろう。ところが、地下のゴミが出てきたと知らせをうけるや、大阪航空局と近畿財務局の担当者がそろって現場に出向き、学園側の示したゴミを見て、いともたやすく8億1,900万円というほとんど根拠のないゴミ撤去費用を算出し、大特価セールをやってしまったのだ。
専門家に鑑定させることもなく、大阪航空局と近畿財務局の話し合いで売却価格を決めてしまう。そして、森友学園との交渉過程の記録はすでに破棄しているとして、公開要求を突っぱねる。
しかもこうした経緯や売却額を国有財産近畿地方審議会のメンバーには報告をしていない。同審議会は時価での売却ということで了解したが、これほどの大幅な値引きは想定していなかっただろう。
どうして、一般市民に対しては融通の利きそうもない役所が、そんな対応をしたのか。多くの人がうすうす感じていることだろうが、実は、しかるべき筋、あるいは面倒な輩から圧力がかかれば役所ほど融通の利く組織も少ないのだ。
では森友学園側は、たとえば政治家を動かすなどして国側に圧力をかけたのだろうか。たしかに自民党大阪府連には籠池氏の活動する日本会議に所属している国会議員も何人かいる。共産党の小池議員は国会議員の事務所から籠池氏の再三にわたる来訪を記録したメモを入手し、その生々しい内容を3月1日の参院予算委員会で暴露した。
だが今のところ確たる証拠といえるものはなく、国会議員の関与については、なんとも言えない。現時点でわかっていることは、安倍晋三夫人、すなわちこの国のファーストレディーが新設小の名誉校長であったという事実だ。
当然のことながら、籠池氏は役所に説明するのに、安倍首相夫妻との蜜月を宣伝しまくるだろう。そして、夫人が2015年9月に塚本幼稚園で講演し次のように語ったことを、場合によっては録画も見せながら強調したのではないだろうか。
こちらの教育方針は、主人も素晴らしいと思っていて、先生からは、安倍晋三記念小学校という名前にしたいと、言っていただいていたんですけど…もし名前をつけていただくなら、総理大臣を辞めてからにしていただきたいということでした。
安倍夫妻の名が水戸黄門の印籠のような威力を発揮していたとしたら、それにひれ伏した役人たちが、このやっかいな案件のケリを一刻も早くつけたいがため過剰に反応したと考えられなくもない。
安倍首相自身が「その方はそう簡単に引き下がらない方だった」と言うように、籠池氏のキャラクターはかなり特異なようである。安倍夫妻との関係を持ち出して強く押せば、事なかれ主義の役人は案外、御しやすかったかもしれない。
週刊新潮2月23日号に籠池氏の次男、籠池照明氏のコメントが掲載されている。
長男も籠池氏のもとには寄りつかず、三男は21歳の時に首吊り自殺したという。
思い込みが激しく他人の意見を聞こうとしない人が、子どもの教育にたずさわると、塚本幼稚園で起きているような父母とのトラブルが起こりやすい。
2月22日、民進党の玉木雄一郎議員は衆院予算委員会第4分科会で、退園した子の親から聞いた話として、次のように語った。
籠池氏の妻であり塚本幼稚園副園長でもある籠池諄子氏は保護者あての便りに、「邪な考えをもった(名前は日本人なのですが)在日韓国人である・支那人である…」と書き、強烈な差別意識を惜しげもなく世間にさらしている。
また、塚本幼稚園は、運動会で行われた選手宣誓で園児たちに「安倍総理ガンバレ」と言わせている。これが「学校は政治的活動をしてはならない」という教育基本法第14条に違反するのは明らかである。
さて、4月の開校予定が迫るなか、まだ設置認可がおりていない森友学園の新設小学校はどうなるのか。焦点は近く開かれる大阪府私立学校審議会がどのような結論を出すかだ。
これまでの審議でいくつもの懸念の声が委員から出ている。財務体質が脆弱であることや、カリキュラムや教育内容についての問題点、運営が安定的にできるかどうかの疑問など、検討すべき点は数多い。
安倍首相は第一次政権で教育基本法を改正し、伝統の継承、道徳心、愛国心の育成などを新たに付け加えたが、個人の価値の尊重という教育目標も継承している。
だが、安倍首相の教育思想の眼目が、戦前的な道徳や愛国心の復活にあることは周知のとおりだ。籠池氏が安倍首相を「偉人」と礼賛し、その記念となるような小学校をつくりたいと切望するのは、それゆえであろう。
「教育勅語」を暗誦し、軍歌を合唱する塚本幼稚園。その卒園児たちの受け皿としての「瑞穂の國記念小學院」。「愛国」一貫教育をめざす森友学園の方針が、はたして教育基本法の精神に照らして許容できるものなのか。大阪府私立学校審議会には、行政への妥協のない冷静な議論を期待したい。
image by: 首相官邸
『国家権力&メディア一刀両断』
著者/新 恭(あらた きょう)(記事一覧/メルマガ)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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