http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/550.html
Tweet |
第4次産業革命に介入する、世耕経産相が激白
すべる経産省
大臣が語った逆転のシナリオ
2017年3月1日(水)
井上 理
「今日は自由に喋らせていただきます」。安倍晋三首相がトランプ米大統領との首脳会談に飛び立つ直前の2月中旬、経済産業省11階にある大臣室隣りの応接に現れた世耕弘成・経済産業相は、事前に送っていた質問状や想定問答など一切のペーパーを持たないまま、そう言った。
政権中枢に経産省のOBや出向者が根を張り、日露交渉から働き方改革まで経産省の活躍の舞台は広がった。日本を「統べる」存在となった経産省のトップにこの日、聞きたかったのは、経産省の一丁目一番地と言える産業政策についてだ。
かつて隆盛を誇った日本の基幹産業が日一日と衰退の一途を辿っている。家電事業の多くは既に中国勢に買われ、半導体や液晶などエレクトロニクス産業にも暗雲が立ち込める。国も守りきることができない。シャープの本体出資を巡り、経産省傘下の産業革新機構が台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と激しいつばぜり合いを演じた末に負けが確定的になったのは、ちょうど1年前の2月末のことだった。
旧来型の産業が崩壊へと向かう一方、経産省は次世代産業に一縷の望みをかけ、未来への戦略を「新産業構造ビジョン」に集約している。
「痛みを伴う転換か安定を求めたジリ貧か、日本の未来をいま選択」――。2016年4月に公表した新産業構造ビジョンの中間整理で、経産省はそんなキャッチコピーを掲げた。「『第4次産業革命』とも呼ぶべきIoT、ビッグデータ、ロボット、AI(人工知能)等による技術革新を的確に捉え、大胆に経済社会システムを変革することこそが、我が国が新たな成長フェーズに移行するための鍵となる」。そう銘打ち、今年4月にも工程表など具体策を盛り込んだ最終報告を公表する予定だ。
ただし、国が旗を振れど民間がついてこなければ、経産官僚の努力は水泡に帰す。第4次産業革命への思い入れが強い世耕経産相は、どんな策を描いているのだろうか。
世耕 弘成(せこう・ひろしげ)
1962年大阪府生まれ。86年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、日本電信電話(NTT)に入社。報道担当課長などを経て98年の参院和歌山選挙区補選で参院議員に初当選、第2次安倍内閣で官房副長官に。ネット選挙の解禁などインターネット分野の政策に精通。ロシアとのパイプも太い。4期目の2016年、経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣に就任、現職。(写真=北山 宏一、以下同)
第4次産業革命に向けてのビジョン作りが進んでいます。経産省として、具体的にどう関与していくつもりでしょうか。
世耕経産相(以下、世耕):第4次産業革命は、IoTや自動運転、AIなど、いろいろなことが言われていますが、まずはそれぞれに民間主導でしっかりと取り組んでいただきたい。ただ、第4次産業革命でチャレンジするテーマというのは、はっきり言って個々の会社だけでは手に余る面があると思っています。
もちろん民間が主役なのですが、我々が、例えば実験の場を提供するとか、あるいは、自動運転が典型的ですが、規制緩和をして民間がやりやすい環境を整えていくことが必要。技術の方向性も、民間と対話をしながらということになりますが、やはり国全体として、これはこっちの方向でいった方がいいというコーディネートもしていく。
だから、昔の「ザ・産業政策」のような、「こっちに行きなさい」「ここの会社とここの会社は合併しなさい」という感じでもないし、一時期、経産省が陥っていたように、「いや、あくまでも民間が主役ですから、国は一切関与してはいけないんです」ということでもないんですね。それらの中間的なやり方で進めていくというのが、第4次産業革命における経産省の在り方なのかなと思っています。
第4次産業革命を構成するキーワードはいろいろありますが、中でも重要視しているものは何でしょうか?
世耕:自動運転というのは非常に重要ですね。私自身、サラリーマンだった頃からずっとやってきたITの世界で、やはりスマートフォンの反省というものがあります。
例えば、アップルの「iPhone」一つとっても、レンズからディスプレー、中の部品に至るまで、日本製がかなりの割合を占めているにもかかわらず、頭脳の部分もプラットフォームを活用したビジネスも米国に押さえられている。組み立ては台湾や中国で行われていて、日本は部品受注だけの国になっちゃっているんですね。
私は、これと同じことが自動運転で起きたら大変なことになると思っています。日本は素晴らしい自動車を、エンジンを作っているんだけれども、自動運転で頭脳の部分やそれを使ったビジネスを海外勢に押さえられたら、日本は大変なことになる。そういう危機感があります。
スマホの轍を踏まないためにも、例えば自動運転分野において、経産省として何ができるのでしょうか。
世耕:これは国土交通省ともよく話さなければいけませんが、経産省が産業界の声も聞きながら、自動車や走行にまつわるいろいろな規制の撤廃を主導していく。これがまず一つだと思っています。
あとは、自動車メーカーとよく対話をして、日本の自動車産業全体が同じ方向を向くのか、あるいはあえて戦略的に別の方向を向いておいて、どちらかが勝てるラインを狙っていくのか、そういうことも考えていかなければいけない。
加えて、(経産省傘下の官民ファンドの)産業革新機構がルネサスエレクトロニクスの大株主であるわけです。これはかなり具体的な話になりますが、このルネサスというのは自動車に載せるマイクロコンピューターを作っており、自動運転の頭脳の部分を担える可能性がある。
このルネサスの技術といろいろな自動車メーカーの技術をどう組み合わせていくか、というのは、実は日本の自動運転で重要なアプローチになる。ここは、かなりよく考えて戦略的にアプローチしていくと。そんなことが自動運転の世界で経産省のできることなのかなと思っています。
「AIに大変、希望を持っている」
第4次産業革命をつかさどるキーワードの中で、最も危機意識と優先度が高いのは自動運転だとすれば、次点は何ですか。
世耕:私は大変、希望を持っていますが、次点はAIであります。既に、AIに関する論文数では、米国にも中国にも負けています。ただ、最終的にはモノを動かさなければ意味がない。
私は、工作機械や建機といった日本のモノづくりの技術とAIが結び付くことによって、いろいろな勝ち筋の商品を作っていくことができるだろうと思っておりまして、AIはかなり前向きに取り組んでいます。
何よりも経産省が「日本の勝ち筋はここだ」と声高に言うことが非常に重要だと思うんですね。ならばということで、企業も安心して投資をしていけます。産業革新機構など経産省傘下の官民ファンドもいろいろありますから、それらをうまく組み合わせながら、しっかりと応援して、育てていきたいと思っています。
応援の手法としては、補助金もあれば、例えば今、福島にロボットのテストフィールドなんかを作っていますが、そういう場を提供するというところから始めていく。AIの領域はまだ始まったばかり。早めに、プラットフォームを押さえなければいけません。
米グーグルの「TensorFlow(テンサーフロー)」など、汎用のAIプラットフォームでも米国に先行されています。
世耕:グーグルの人工知能は素晴らしいと思いますが、それだけでモノが動くわけではないですよね。だから私は、モノを動かすためのアプリケーションの世界を押さえていく、アプリのプラットフォームを狙う、というのもあり得るべしだと思いますね。
次世代産業という意味では、欧米では共有型経済を掲げるシェアリングエコノミーが急拡大しています。
世耕:シェアリングエコノミーの革命は、あまりにも既存業界の抵抗が強く、日本では気配すら見えないという状況ですから、気になります。
「民泊」の方は、何とか風穴を開けつつある状況です。これは私が官邸時代、内閣官房副長官を務めていた時に、私の下で観光分野と住宅分野を担う国土交通省や観光庁、あと厚生労働省も一堂に集め、規制改革会議も絡めて徹底的に議論をし、何とか「Airbnb(エアビーアンドビー)」のようなサービスは展開できるようにしました。
ただ、「カーシェアリング」はまったく進まないという状況で、これはやや大きな課題だなと思っています。ちょっと世界から取り残されちゃうかなと。空港に着いて「Uber(ウーバー)」で(ライドシェアカーを)呼べないのは日本だけですから。
民泊が解決したのは、「これ、メリットになるじゃん」という人が出てきたからなんですね。それは、賃貸住宅業界であり、そこに住宅を供給している家主さんたち。そういった人たちが声を上げてくれたことで、まとまりやすくなった。しかし、カーシェアリングではなかなか「メリットになる」という人たちが出てこない。
既存産業のために何かをするのではなく、新しい産業や市場、雇用を創出する、という観点に切り替えればいいのではないでしょうか。
世耕:その通りです。ですから私は、カーシェアリングの突破口は、運転する「ドライバー」だと思っています。自家用車が空いている時に乗ってもらえれば、結構お金が稼げるじゃないかと。そういう理解がだんだんと広がっていけば、意外と攻められるのではないか。だから、一般のドライバー、あるいは車を余らせている人が、「お金を稼ぎたい」という声を上げだせば、それが突破口になると思います。
実は、この話は私が力を入れている「働き方改革」にもつながります。
昨年、経産省が公表した「新産業構造ビジョン」中間整理のパンフレット
「日米の摩擦は削れ、つるつるになっている」
世耕:働き過ぎ、長時間労働はよくない。「残業規制」というのは非常に重要なテーマです。また非正規の皆さんの不公平をなくすという意味で、「同一労働、同一賃金」を実現していくことも非常に重要。一方で経産省としては、柔軟な働き方を推進することも重要だと考えています。
これ、先ほどのシェアリングエコノミーとも関係してきますけれども、フリーランスや副業、あるいは「クラウドソーシング」、そういった働き方が浸透しない限り、人口が減っていく中で、成長は難しい。自分の自由な時間をうまく切り売りするような形で働きたい、という人が世の中にはたくさんいるわけですから、そういう人の労働参加を促していくことで、成長につなげていくということです。
なるほど。ところで経産省には、環太平洋連携協定(TPP)を離脱した米国と2国間交渉を進めるというミッションもあります。かつての日米貿易摩擦とは違う新しい摩擦が生じるのではないかという懸念もある中、どう対峙していくつもりでしょうか。
世耕:私も、結構、通信摩擦などを見てきた立場でして。日米の貿易交渉は随分とやってきていて、摩擦するざらざらした部分は削れ、日米はつるつるになっているんですよ。ですから、今から2国間交渉をして、すごくガチンコになることは、私はそんなにないと思っています。
逆に、日米から見ると、まだざらざらの国、エリアというのはたくさんある。日米がこれまで積み重ねてきたいろいろな2国間交渉のノウハウを生かしながら、日米が連携をして、世界の貿易秩序を作っていくというのが、私は日米両国の国益になると思っています。これに、トランプ米大統領やトランプ政権の経済閣僚が賛成してくれるかどうかは分かりませんが、私はそういうふうに考えています。
メキシコ工場の建設を進めるトヨタ自動車に対して、トランプ大統領が就任前にツイッターで牽制するようなつぶやきをするなど、不穏な空気があります。
世耕:まずはファクトをよく説明して理解してもらうことが重要です。トランプ大統領は米国内の雇用が非常に大きな関心事なんだろうと思いますが、実は日本企業の米国内の雇用創出って半端じゃなく大きい。そういうことも含めて、日本は摩擦を生じさせる相手ではない、ということをよく理解していただきたいと思います。
かなり楽観的に考えているということでしょうか。
世耕:いや、それはまだ分からないです。先ほどのは、まだ私の頭の中での話ですから、まずは私のカウンターパートである米商務長官などと、できるだけ早く直接お会いし、しっかり対話をしていきたいと思います。
このコラムについて
すべる経産省
政権を支える内閣官房だけでなく、他省庁へも数百人規模で人材を送り込む経済産業省。首相の安倍晋三も、経産省やその出身者に信任を寄せる。彼らがこの国を「統べる」存在といっても過言ではないだろう。しかし、活躍の舞台は広がれど、担い手である官僚の視野は狭く、結果が「スベる」ことも少なくない。深掘りすると、「判断を誤る」「攻めない」「守りきれない」「見ていない」という課題が見えてくる。一方、経産大臣の世耕弘成は「担当外、民間にも介入する」と、積極姿勢を打ち出す。ニッポンの産業が復活し、世界で勝つために、経産官僚は何をすべきか。自動車、電機、エネルギー、シェアリングエコノミーとあらゆる産業政策を検証する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022400113/022800003/
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK221掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。