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豊中市に4月開校予定の私立小学校。安倍夫妻は、この学校にどのように関わっていたのだろうか(写真:ZUMA Press/amanaimages)
豊中「神道小学校」は設立経緯が不透明すぎる 「安倍晋三記念小学校」という名前で寄付集め
http://toyokeizai.net/articles/-/159289
2017年02月20日 安積 明子 :ジャーナリスト 東洋経済
「私や妻がですね、この認可あるいはこの国有地払い下げにですね、もちろん事務所を含めて一切関わってはいないことを明確にさせていただきたい。もし関わっていたらそれはもう、私が総理大臣を辞めるということですから、それははっきりと申し上げたい」
2月17日午後の衆院予算委員会。大阪府豊中市で開校予定の私立小学校の建設を巡る「疑惑」について、安倍晋三首相は民進党の福島伸享衆院議員の質問にむきになって反論した。
「安倍首相の反応にはびっくりした。自身の進退をかけてまで言うなんて」――。追及した福島議員も驚くほど頑なに安倍首相が「無関係」と言い張ったこの疑惑とは、いったい何なのか。
■瑞穂の國記念小學院とは?
この小学校は今年4月1日に開校予定の「瑞穂の國記念小學院」。阪急宝塚線庄内駅から徒歩約10分のところにあり、すぐ北側を走る名神高速道路の数キロ先には、伊丹空港が広がっている。
かつて民家が建っていたこの一帯は、1974年3月に航空機騒音防止法第9条に基づく土地建物の移転補償で国が買収。航空機騒音防止法改正によって1989年3月に騒音対策区域から解除され、1993年1月には普通財産に組み入れられて一般への転売が可能になった。
このうち東側の9442uは豊中市が2010年3月に14億2300万円で購入し、現在は公園となっている。同市は西側の土地の購入も希望したが、価格があわずに断念したという。
西側の土地の面積は8770uで、豊中市が取得したよりもやや狭い程度。これに目を付けたのが学校法人森友学園で、小学校建設用地として2016年6月20日に1億3400万円で取得した。隣接しあう土地であるにもかかわらず、取得単価は豊中市のおよそ10分の1だった。
その理由は「土地改良、埋蔵物撤去工事等に係る有益費」があったためだ。そもそも当該土地は、大阪航空局が2009年から2012年にかけて地下埋蔵物状況や土壌汚染状況を調査した結果、浅い部分から鉛やヒ素の土壌汚染と廃材・コンクリートガラ等の地下埋蔵物が発見されていた。
森友学園は2015年5月29日、近畿財務局との間で当該土地の買受け特約を付した有償貸付契約を締結。月額賃料は227万5000円だった。国有財産は払い下げが基本だが、公用や公共の用に供する場合、将来の買受けが確実ならば貸し付けもできる。森友学園の場合は純資産が4億2000万円しかなく、それでは10億円以上の建設費用を賄えないため、経営が安定するまで貸し付けで利用したい旨の申し出があったという。
そして2015年7月29日から12月15日まで土壌改良、埋設物撤去工事等を実施。この時にかかった費用1億3176万円は後に国から森友学園に支払われている。
■ゴミが出た土地をあえて購入
ところが2016年3月11日、小学校建設工事中に地中深くから新たに廃材やプラスチック、家庭ごみなどが見つかった。さっそく14日には近畿財務局、大阪航空局、現地関係者が現場を視察。その直後の3月30日になって森友学園は土地購入を申し入れている。
「ゴミが出た土地をあえて買おうというのはおかしくないか。建設用地から当初はヒ素や鉛が検出されたが、後でゴミが出てきた深部はどうなのか。全部の土を掘り起こして新しい土に替えるならトラック4000台分になるが、その確認はしたのか」
こうした福島氏の追及に対して財務省は、「開校日が迫っているので早く除去したいという学園に処理を任せた」と述べるのみ。国が撤去及び処理費用として8億1974万1947円を計上したが、それが実費ではないことが明らかになった。
こうして当該土地の不動産鑑定評価額(更地価格)である9億5600万円からゴミの処理費用を差し引いた売買価格の1億3400万円で売られることになったのだ。
しかも、この1億3400万円は今後10年にわたって支払われることになっている。年間の支払い金額は、以下のようになる。
第1回 2017年5月31日納付期限 1114万7271円
第2回 2018年5月31日納付期限 1120万5425円
第3回 2019年5月31日納付期限 1120万5425円
第4回 2020年5月31日納付期限 1120万5425円
第5回 2021年5月31日納付期限 1120万5425円
第6回 2022年5月31日納付期限 1120万5425円
第7回 2023年5月31日納付期限 1120万5425円
第8回 2024年5月31日納付期限 1120万5425円
第9回 2025年5月31日納付期限 1120万5425円
第10回 2026年5月31日納付期限 1120万5427円
当初の有償貸付契約では、売買予約完結権を10年後に行使するとすれば、森友学園は賃料を総額2億7300万円支払い、さらに土地を取得するために土地の代金(更地として評価額)を支払わなくてはならなかった。それと比べればだんとつに「格安」に購入できたといえるだろう。
土地取得以外にも、森友学園への「優遇」が疑われる点がある。
たとえば小学校設置認可の際の手続きだ。大阪府下の小学校の設置は大阪府が権限を持ち、私立学校審議会で審議されるのだが、大阪府私立学校審議会は2014年12月18日の定例会で「申請内容等において確認すべき点があるため、継続案件とする。臨時の審議会で審議する」と議論を繰り延べている。そして翌2015年1月27日に開かれた臨時会で再度審議した後に以下のような条件を付けたうえで答申を出した。
・申請者には財務・会計状況やカリキュラム、または校舎建設など小学校設置までのプロセスをさらに明らかにしていただくとともに、今後の本審議会において、その内容を事務局から必ず報告をいただくこと。
・カリキュラムについては小学校の学びが充実されるようさらに内容を詰めていただきたい。
・私立学校には特色ある教育が求められる側面があるが、懸念のある点については本審議会が今後も確認を進めるべき。
要するに「経営基盤が足りず、カリキュラム内容が不十分。極端に特徴のある教育をするな」と読みとれる。
■安倍晋三記念小学校?
確かに森友学園は園児に教育勅語を暗唱させるという特徴ある教育で有名だ。そしてちょうどこの頃、父兄に対して小学校建設の寄付を募っていたが、振り込み用紙には小学校の名前を「安倍晋三記念小学校」と明記していたことが発覚している。さらにいえば小学校の名誉校長として、安倍昭恵夫人が就任している。
首相夫人が名誉校長になっている(学校のホームページより)
これについて週刊文春2月23日号は、「野党時代に(学校名使用の)内諾をいただいたが、総理になってそれはできないと辞退された」との森友学園理事長の発言を掲載したが、安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で内諾したことすらも否定した。さらにこの件とは無関係であるということを何度も強調し、「小学校に通う子どもたちもいるのだから、慎重にやってもらいたい」と訴えた。
確かに最も重視すべきは子どもたちの利益に違いない。しかし、実際には軽視されていた。
民進党が開いた国対ヒアリングで、財務省は非公開の理由を「地下埋蔵物の存在が周知されると、小学校に入学する保護者等への風評リスクが懸念されるので、契約金額を公開しないように森友学園が要請してきた」ことを認めた。参加していた辻元清美衆院議員などから、「それはおかしい。そうした事実こそ、保護者が開示を求めているものではないか」との批判の声が出ている。
そもそも当該土地の売買価格が不開示であったことから、この問題が発覚している点も皮肉である。果たして掘り出された埋蔵物のように、真実は明らかになったのだろうか。それとも地中深くに、まだ眠っているのだろうか。
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