http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/600.html
Tweet |
日米首脳会談、第一ラウンドの勝者は誰か?
トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
語られなかったところに火種がある
2017年2月13日(月)
篠原 匡
貿易政策の攻防は、ペンス副大統領と麻生副総理の「経済対話」に舞台を移す(写真:ロイター/アフロ)
真実は、表立って語られなかったところにあるのかもしれない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/021200007/aflo_OWDG833172.jpg
米国国境に隣接するメキシコの町、マタモロス。ティファナなどと同様に、マキラドーラ(保税輸出加工区)として発展を遂げた国境の町である。ここで、米企業向けに様々な部品を輸出している企業は、遠く離れたワシントンで開催された首脳会談を注視していた。
「(日本との関係という面で見れば)我々のビジネスに関係があるのは日本から輸入している原材料に限られる。だが、今回の首脳会談で今後について何らかのインサイト(洞察)が得られるかもしれない」。ノバリンクのオペレーションマネジャー、ルイス・ムスキス氏は会談直前に、本誌の取材にこう述べた。ノバリンクの部品が組み込まれた最終製品は90%以上が米国で販売されている。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や"国境税"の導入が実行に移されれば、ビジネスそのものの存亡に関わる。
「トランプの貿易政策」詳細は見えず
2月10日に開催された日米首脳会談。ムスキス氏のように、貿易協定や為替政策に関して、新大統領の求めるものがある程度、見えるかもしれないという指摘は少なからずあった。トランプ大統領の具体策があまりに不透明だったためだ。
大統領選で環太平洋経済連携協定(TPP)やNAFTAを厳しく批判、大統領選の勝利後もメキシコでの工場建設を進める自動車メーカーをツイッターで非難した。1月20日に就任初日にはTPP離脱の大統領令に署名している。一方で、二国間のFTA(自由貿易協定)を望んでいるということを除くと、貿易政策の詳細はあまり明らかになっていない。その手がかりが、首脳会談を通じて見えるのではないかという期待である。その観点で言えば、手がかりと言えるようなものはほとんどなかった。
首脳会談自体はおおむね好意的な評価を得ている。米ロイターは共同声明で日米安保に基づく防衛義務を確認したことに言及、「共同声明は安倍首相の勝利」と論評した。米ワシントンポストも、トランプ政権のアジア政策が従来の路線に修正されつつあると好意的に捉えた。
「トランプ大統領は『一つの中国』という従来の考え方を踏襲、尖閣諸島を含め、日本の施政権の及ぶ範囲の防衛義務を明言した。一連の動きを見ると、東アジア政策に関して、新政権が伝統的なアプローチにシフトしていることが見て取れる」。米シンクタンク、CNAS(Center for a New American Security)のリチャード・フォンテーヌ会長は指摘する。
トランプ大統領は選挙中、日韓の核武装を容認する発言で物議を醸した。またロシアとの関係改善に意欲を示す一方で、北大西洋条約機構(NATO)を批判したり、在日米軍の駐留経費の増額を求めたり、同盟国を揺さぶる発言を続けていた。今回の首脳会談は、こういった不安を解消するものとして評価されている。
「麻生・ペンス経済対話」新設の意味
もっとも、両首脳の記者会見を見ると、日本が望んだ方向に進んだ安全保障分野に比べて、為替政策や通商政策については両者の溝がうかがえる内容だった。
「通貨の切り下げについてはずっと不満を述べている。最終的に、恐らく人々が考えるよりも早く、公平な競争条件になると信じている」。トランプ大統領は記者会見でそう述べると、「それがフェアな唯一の方法」と改めて念押しした。日本は通貨の切り下げは一切していないという立場だが、その主張にトランプ大統領が納得していないのは明らかだ。日系自動車メーカーに対する表立った批判もなかったが、国内での雇用創出や貿易赤字の削減という旗は下ろしていない。
「安全保障についてはトランプ大統領がかなり踏み込んだという印象を持った。半面、為替や貿易赤字については根本的にかみ合っていないと感じた」。野村インターナショナルの雨宮愛知・シニアエコノミストは指摘する。
今回の首脳会談で、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップとする経済対話の新設で合意、日本が避けたい二国間FTAや金融政策を巡る議論をここに押し込むことに成功した。何を言い出すか分からないトランプ大統領ではなく、ペンス副大統領を相手に実務を進めようという狙いである。その面では成功と言えるが、貿易と為替が日米の火種として残り続ける状況は変わらない。むしろ、首脳同士の記者会見でほとんど言及されなかったということが、今後の波乱を示唆しているのかもしれない。
このコラムについて
トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/021200007/
日本と中国が為替操作していると批判されるワケ
ニュースを斬る
元日銀審議委員、白井さゆり慶応大教授が解説
2017年2月13日(月)
白井 さゆり
日米首脳会談では、「為替」についてのサプライズはなく、ひとまず穏便に終わった。だが、トランプ大統領は「日本は何年も市場で通貨安誘導を繰り返している」と批判しており、この先も予断を許さない。そもそも、最近は為替介入をしていない日本が、なぜ批判されるのか。元日銀審議委員で慶応義塾大学教授の白井さゆり氏が解説する。
黒田東彦日銀総裁も超金融緩和を長くは続けられない(写真:ロイター/アフロ)
安倍首相とトランプ氏の首脳会談が2月10日に開催された。主要議題は日米同盟の重要性の確認で、尖閣諸島、中国の海洋進出、北朝鮮の核・弾道ミサイルなどの懸案事項で共通認識が共有され、トランプ大統領の年内来日要請と同氏による受け入れ表明など、日本外交としてはまずますの成功と言えそうだ。
経済関係については、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を踏まえ、今後は日米二国間で議論を進めていくこと、貿易や投資拡大に向けて麻生太郎副総理とマイク・ペンス副大統領による対話の枠組み新設などを確認した。注目点は為替問題で、トランプ大統領は記者の質問に対して通貨の切り下げに言及し、きわめて短期間で公平な条件を取り戻して通貨安誘導を阻止する構えを強調した。中国を念頭に置いているのは間違いなく、今年4月の米国財務省による為替報告書の発表を待たずに、近く中国を「為替操作国」と認定し、高関税を適用する可能性がある。日本については、今年末の企業懇談会でトランプ氏は中国と日本の両方に言及し「何年も市場で通貨安誘導を繰り返している」と言及しており、今後の日米交渉でこの点も議論の俎上に乗るとみられる。
そこで本稿では、トランプ大統領が繰り返し言及する中国と日本の「通貨の切り下げ」に焦点を絞って論点をとりまとめてみたい。
中国は「為替操作国」なのか
中国に対する通貨の切り下げとは、2015年8月に人民元が対ドルで3%程度切り下げられて以来、人民元安が10%程度も進んだ現状を指しているとみられる。主要貿易相手国との貿易額で加重平均した人民元の名目実効為替レートも10%程度安くなった。ただし、トランプ氏の言うように何年もその状態を続けてきたというよりも、ここ1年半の最近のことだ。
というのは、中国では、2005年7月に1ドル=8.3元程度で人民元をドルに対して固定する為替制度を撤廃して以来、2013年末までは人民元高が続いてきたからだ。この間、中国政府は変動幅を徐々に拡大し、2015年12月にはドルよりも主要貿易相手国の貿易加重平均をとった通貨バスケットに重点を移しており、2005年から2013年までに人民元は対ドルで25%程度、通貨バスケットに対して(ピークの2015年初め対比で)50%程度も高くなっている。通貨高の影響もあって、経常収支の黒字が国内総生産(GDP)に占める割合はピークだった2007年の10%程度から、2015年以降には3%程度へ低下し、2016年は2%以下にまで低下したようだ。過去と比べれば中国は外需から投資・消費主導の経済へと大きく転換を果たしているのは明らかだ。
米国側でも、同じ傾向が確認できる。米国の経常収支の赤字は対GDP比でここ5年ほどは2%台で推移しており、貿易赤字も世界金融危機前の6%近くから4%台へと縮小している。米国の経済活動の規模からみてこの程度の赤字は大きな問題ではないはずである。
では何が問題なのか?ここ1年半の人民元安の動きとともに、時を同じくして米国の貿易赤字が金額ベースでは急ピッチで拡大し、世界金融危機前の状況に戻りつつあることをトランプ氏は懸念しているようだ。特に米国の輸入総額に占める中国の割合が2005年の14%程度から2016年には2割を超えるまで拡大しているのに、米国の輸出総額に占める中国の割合がこの間4.6%から2016年には8%へ拡大しているに過ぎないため、貿易の不均衡は甚だしいということなのだろう。
的外れの対中貿易批判
こうした見方には2つ問題がある。ひとつは、中国では2015年半ばの人民元切り下げをきっかけに人民元安圧力が強まっており、資本流出に拍車がかかっていることにある。最初は人民元安期待が高まる中で中国企業による短期ドル建債務の前倒し返済が中心だったが、最近では居住者による(さまざまな規制の網の目をくぐった)当局の統計では把握できない形での流出が増えている。中国向け証券投資も減っている。
中国はさらなる人民元安を招くと資本流出がとまらないことに恐怖を感じており、人民元安の急速な進行をなんとか抑えているのが現状だ。用いている手段は(1)外貨準備の取り崩し、(2)資本流出規制の適用強化、そして(3)金利上昇が中心である。
(1)外貨準備については、2015年半ばの4兆ドルから大きく減少して今年1月には3兆ドルを下回っており、米国債もこの間2200億ドルほど売却している(もっともこの減少の一部は為替評価損も含まれる)。
(2)資本流出規制については主に企業の国際送金などに対して引き締めており、企業の経済活動の妨げとなっている。中国政府は、2009年から人民元のSDR通貨バスケット入りを目指して国内金融規制の自由化、資本流入規制の緩和、人民元の国際化を進めてきたが、現在ではその流れと大きく逆行している。
(3)金利引き上げについて、今年1月に中国人民銀行(中央銀行)が商業銀行に貸し出す6カ月物のやや長めの金利を10ポイント引き上げ2.95%にした。それに加えて、昨年の米国大統領選挙以降、資本流出や米国金利につられて長期金利は1%ほど上昇している。金利上昇は中国経済を冷やす恐れがあるが、資本流出を抑制する効果が期待されているようだ。
米国が主張するように中国が完全に自由な変動相場制に移行すれば、人民元は大幅に安くなり、米国の国益とは合わないであろう。しかもそれにより中国金融市場が不安定になって中国経済が落ち込めば、世界第2位の輸入大国である中国の輸入低迷が続き、米国を始め世界の対中輸出は伸び悩む恐れがある。最近では中国発の為替・株価不安定化が日本を含む世界に波及するほどの影響力をもつようになっていることにも注意が必要だ。
もう一つの問題は、1980年代とは異なり二国間貿易の不均衡に注目しても意味がない点にある。アジア地域では2001年の中国による国際貿易機関(WTO)への加盟をきっかけにサプライチェーンが加速し、日本や他のアジア諸国が付加価値の高い中間財・資本財を中国へ輸出あるいは中国・アジアに生産拠点を構えて生産する生産分業体制が進んだ。
例えば、米国は世界最大の輸入市場であるが、日本の対米輸出は2割程度に過ぎず、アジア向けが半分を占めるのもそうした背景がある。だからこそ、中国から米国へと輸出が増えているのだ。米国が中国に高関税を適用しその状態が長期化すれば、外資系・中国系問わず企業は他の国へと生産拠点を移していくであろう。米国社会が貯蓄よりも消費が旺盛である限り、不均衡を改善するのは難しい。
それでも米国新政権は、選挙公約通り、中国を為替操作国として認定し高関税率を適用するとみられる。それを正当化する根拠として、米国の貿易赤字の約半分を中国が占めており、2005年の25%程度から拡大していることを挙げるであろう。米国の関税率引き上げに中国は報復する構えであるため、そうした応酬がメキシコやカナダなどの他の諸国でも実践されていくと、企業の経済活動は阻害され、世界の貿易活動が今後数年はいっそう停滞することが懸念される。
為替介入をしていないのに日本が批判される理由
では日本はどうなのか。米国の貿易赤字で第2位にあるのは確かに日本だ。米国の貿易赤字に占める日本の割合は2005年の11%程度から2016年には9%程度へ低下しているものの、3%程度を占めるドイツよりも大きい。この間の米国の輸入総額に占める日本割合は8%から6%に低下した。しかし、米国財務省の「為替報告書」で為替操作の「監視国リスト」として挙がる6カ国のうち残る4カ国のドイツは5%、韓国は3%、台湾とスイスは1.8%程度と低い。しかも2014年半ば以降に日本の輸出総額は伸びているが、対米依存が際立つ。日米通商交渉では日本が厳しい譲歩を迫られる可能性がある。日本の輸出の強みは自動車と資本財だが、対米向けは自動車が大きい。
為替政策についてはどうなのだろうか。トランプ氏は日本について為替介入はしていないが、金融政策で円安誘導していると批判している。確かに、日本は直近では2010年から2011年にかけて数回の介入を繰り返したことがあるが、その後は、介入実績はない。
一方、2013年4月からは日本銀行が黒田東彦総裁の下で大量の国債を買い入れる「超金融緩和」を実施し、過度な円高・株安が是正されている。2016年1月にはマイナス金利を導入し、意図しない円高方向への転換を招いている。同年9月に10年金利を0%程度で釘付けする政策を導入すると当初の影響は限定的であったものの、11月8日の米大統領選挙後の米国金利が急上昇すると、その金利差をもとに短期筋の外国投資家を中心に円安・株高へ方向へとポジションが転換し、円安が進むきっかけなった。
「為替介入」と「超金融緩和」の違いとは?
為替介入も超金融緩和も円安の方向に働きかけるとすれば、それらの違いはどこにあるのだろうか。ひとつには、第一義的な目的が異なっている。為替介入の場合、急速に通貨高が進むと経済への負担が大きいと判断される場合に、通貨高のペースを抑えるために為替相場に直接的に働きかけることが多い。20カ国・地域(G20)ではこうした介入は、自国の競争力を高めるために他国を犠牲にして輸出を促進しているわけではないとして容認している。一方、超金融緩和の目的は国内の物価安定にあり、そうした政策についてもG20で合意がある。物価の安定とは各中銀が定めたインフレ目標を実現することを指し、日本では2%である。エネルギーを除いた現在の物価の基調をみると0%程度なので金融緩和がまだまだ必要だというわけである。
もうひとつの違いは、用いる手段が異なることだ。為替介入ではドル預金や米国財務省証券等の外国資産を買い入れるのが、超金融緩和では国債を含む国内資産を買い入れる。どちらも資産買い入れの見返りに、中銀が自国通貨を市場に供給している点で同じである。もっとも日本の場合、為替介入は財務省が所管しており財務省が国庫短期証券を発行して円を調達し、日本銀行に委託してその資金を使って外貨を買い入れているため、資金供給が増えることはない。仮に日本銀行が外国資産を直接買い入れれば資金供給が増えることになるが、その行為が為替介入とみなされれば財務省の権限とのすみわけが難しいこともあり、実施されていない。
ではG20で国際合意があるのに、なぜ、日本は通貨安誘導と批判されるのだろうか。それは、超金融緩和の目に見える効果として通貨安とそれにもとづく株高が際立つからであろう。
日本では銀行に預金が沢山集まっており資金が潤沢な割には貸出先が少なく、大企業では現金を多く保有し資金需要が乏しいという構造的問題を抱えており、金融緩和効果は大きいとは言えない。このため、円安・株高が唯一の金融緩和効果なのだから日銀は米国との金利差を維持する低金利政策を続けるべきとの見解を、海外投資家からよく耳にする。しかも、米国財務省の為替報告書では日本を前述の監視国リストに入れる理由の説明で、円高圧力が高まると政府当局による円高抑制を目的とした口先介入がみられると明記している。確かに、円高が進むと財務省・日銀・金融庁の幹部が緊急会合を開催し、市場を牽制するかのような行為がみられる。こうした一連の動きが、国際的に円安誘導ととられがちな背景にあるようだ。
いずれにしても、超金融緩和は長くは続かない
現在の円安が超金融緩和によるところが大きいとすれば、そうした超金融緩和は長くは続けられないことを今から認識しておくことが必要だ。だとすれば、超円高が是正されている現在、低金利環境である今のうちにその環境を最大限に生かして、スピード感をもって、企業は為替の変動に左右されない競争力を一段と高めていくこと、政府は企業の新陳代謝が進むよう規制緩和や成長戦略などにいっそう取り組んでいくことが重要だ。
日本の輸出はもはや「量」ではなくより付加価値の高い製品の輸出に大きく軸足を移している。アジア地域で生産分業体制が定着しており、アジアの生産拠点と日本の間では企業間の輸出と輸入が双方に拡大している。となると円安が総じて日本経済にプラスだとしても、以前ほど需要を押し上げる効果は期待できなくなっている。目先の為替の動向よりも超金融緩和後の将来を見据え、必要な対策を今から着々と打っていくことに皆が専念すべきではないか。
このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021000564
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK220掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。