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トランプ大統領は「黒船」で日本を開国できるか
資本を自由化する新たな「日米構造協議」が必要だ
2017.2.10(金) 池田 信夫
連邦判事は「政治的」 トランプ大統領、入国禁止令めぐり司法批判
ワシントンで開かれた全米の保安官らによる会合で演説するドナルド・トランプ大統領(資料写真、2017年2月8日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News〕
アメリカのトランプ大統領は、日米間の自動車貿易について「アメリカは日本で自動車を販売できないのに、日本は米国に何十万台の車を輸出している」と不満を表明し、この問題について「日米で協議しなければならない」と発言した。
安倍首相は間もなくホワイトハウスで行う日米首脳会談で、この問題を協議する予定だが、日本側は戦々恐々だ。トランプは、1980年代の日米構造協議のような通商交渉を始めようとしているのかもしれない。今では名前を覚えている人も少ない構造協議は、アメリカの仕掛けた筋違いの喧嘩だった。
「貿易赤字で損する」というトランプは時代錯誤
トランプ大統領が選挙運動のときから言っている「アメリカは貿易赤字で損している」という話は、高校でも教わる初歩的な間違いだ。貿易赤字は輸入が輸出より多いというだけで、いいことでも悪いことでもない。「赤字」という言葉が誤解を招くが、個々の企業は海外から商品を輸入して国内で売れば利益が出る。
2016年のアメリカの経常収支(貿易収支+所得収支)は約4700億ドルの赤字で、GDPの2.5%だった。これは1980年代と同じぐらいで、その後は2000年代のバブル期に5%を超えたが、2009年以降の不況で赤字は減った。経常収支は「国内需要−国内供給」なので、貿易赤字は景気がよくて需要が大きいことを示すのだ。
経常収支の赤字は資本収支の黒字と同じで、アメリカの借金(海外からの資金流入)を示すが、これも悪いことではない。世の中に、借金をしていない企業はほとんどない。アメリカの借金が多いのは全世界から投資が集まるからで、これによって先進国でトップクラスの成長を維持している。
アメリカ車が日本で売れなくても、iPhoneは2016年に日本で1473万台売れた。携帯電話で日本は、1兆円以上の貿易赤字だ。個々の商品が売れるか売れないかは国際競争力の問題で、政府が変えることはできない。もちろん貿易黒字が悪いわけでもなく、80年代のような「黒字減らし」は意味がない。
構造協議に勝利したのは日本の消費者だった
「貿易摩擦」は、1985年に突然始まった。レーガン大統領が当選してから、アメリカは「強いアメリカ」を目指したが、ドルが強くなって貿易赤字が拡大し、減税で財政赤字も大きくなったため、「双子の赤字」といわれた。貿易赤字の最大の原因は財政赤字だったが、レーガン政権は日本を標的にした。
最初は「日本の製品輸入が少ない」という話が出て、「黒字減らし」のために政府専用機やスーパーコンピュータなどを政府が緊急に調達して黒字を減らした。だが、そんなことで貿易赤字は減らないので、MOSS協議(市場志向型分野別協議)が始まった。
これは半導体、通信機器、医薬品、農産物などの分野別協議で、日本はハイテク製品の輸出を減らして農産物などの輸入を増やすよう迫られた。アメリカでも反日感情が高まって「ジャパン・バッシング」が起こり、アメリカの下院議員がホワイトハウスの前で東芝のラジカセをハンマーで壊した。
このころ私もNHKで日米双方に取材したが、印象的だったのはアメリカ側が日本の実態を実に詳しく知っていることだった。たとえば農産物の非関税障壁について、USTR(アメリカ通商代表部)は、部外者には分からない細かい問題を指摘してくる。それは通産省(当時)がUSTRに情報を提供していたからだ。
私も通産省に呼ばれ、本館17階のレストランでご馳走になって資料を見せられ、「農水省はこんなひどい障壁をつくっている」と情報を提供された。それを我々が報道すると、USTRが「NHKが報道をしていた」と日本政府を追及する「やらせ」の交渉だった。本格的な構造協議は1989年に始まったが、それは「日米交渉」ではなく、通産省がやりたいことをアメリカに言わせた「日日交渉」だったのだ。
日本が世界から恐れられたのは、あのときが最後だろう。その後、日本のバブルが崩壊して交渉は下火になった。アメリカの貿易赤字は90年代以降も(景気回復で)拡大し、日本の貿易黒字は不況で増え続けた。
10年近い構造協議の交渉で勝ったのは、日本の消費者だった。アメリカが最大のターゲットにしたのは、大店法(大規模小売店舗法)だったが、これは通産省の念願だった。彼らは「外圧」を利用して規制緩和し、2000年に大店法を廃止した。日本の政策は自民党と官僚機構のコンセンサスで決まるので、大きな変化は「黒船」や敗戦のような外圧でしか起こらないのだ。
日米FTAは「対内直接投資」をテーマに
2011年から始まったTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉も、アメリカの力を借りて「開国」する試みだった。もともと日米FTA(自由貿易協定)は小沢一郎氏が結ぼうとしていたものだが、彼が民主党政権で「鎖国派」に転じたので、経産省がアメリカと小国の結んでいるTPPに後から参加したのだ。
これも経済的なメリットはほとんどなく、経産省の希望的観測でも今後10〜20年間にGDP比で2.6%という微々たるものだ。ただ個別にFTAを結ぼうとすると相手国が例外品目を設定して交渉が難航するので、多国間でほぼ決着していたTPPに参加することは、それなりの意味があった。
ところが与野党の議員の過半数がこれに反対し、交渉が難航しているうちに、アメリカが降りてしまった。トランプ大統領が正式にTPP離脱を決めたので、今まで6年間の交渉は無駄になり、また最初から日米FTAの交渉をやり直すしかない。
しかし日本が失ったものは少ない。貿易協定としてのTPPにはほとんど中身がなく、これで日本の対米輸出が増える見込みはない。「だからFTAもやめろ」という重商主義者がいるが、これはナンセンスである。FTAの目的は貿易黒字を増やすことではなく、消費者の利益を増やして成長率を高めることだ。
日米FTAを仕切り直すとすれば、最大の課題は対内直接投資だろう。これは外国企業や投資ファンドによる日本企業の買収のことだが、日本は図のようにGDPの3.7%と、199カ国中の196位だ。
対内直接投資残高のGDP比(%)
(2013年末、財務省調べ)
日本の経営者が株主資本主義を嫌い、株式の持ち合いなどの買収防衛策を二重三重に張りめぐらしているため、日本ではハイリスクの投資ができず、株主資本利益率(ROE)はアメリカの半分程度で、労働生産性は6割である。
買収防衛策を撤廃し、外資系ファンドによる買収を自由化する資本の開国が必要だ。それが万能の解決策にはならないが、日本には資本主義が少なすぎる。不動産投資で成り上がったトランプ大統領は、そういう外圧をかける悪役としてふさわしい。
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(英エコノミスト誌 2017年2月4日号)
冷戦時代の沖縄への核配備、米政府が初めて公式に機密解除
沖縄県宜野湾市にある米軍の普天間飛行場(2009年11月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/Kazuhiro NOGI〔AFPBB News〕
東アジアで地政学的な緊張が高まるにつれ、琉球諸島の不快感も高まっていく。
1年のこの時期、日本の北の海岸には流氷が打ち寄せるが、南の琉球諸島では農家の人たちがサトウキビを刈り取っている。日本列島はとてつもない距離に広がっている。北海道の北端の宗谷岬からは、ロシア極東のサハリンの影が水平線上ににじんで見える。琉球列島最西端の与那国島からは、時折、台湾東部の山を見分けることができる。
この旧正月(春節)、沖縄県を構成する琉球諸島は、行楽客でごった返していた。沖縄は、あらゆる趣味を楽しめる楽園の島としての評判が高まっている。冬の太陽と免税のショッピングモール、そしてボリューム満点の炒め物(名物の1つはスパムだ)を求めて、中国本土の家族連れがパッケージツアーで那覇空港へ流れ込む。
那覇からおよそ400キロ南に行ったところでは、クルーズ船がサンゴ礁の間をすり抜けて石垣島の港に入り、地元の黒真珠が目当ての台湾人観光客を降ろしていく。一握りの冒険家たちは与那国まで足を延ばし、シュモクザメが泳ぐ中でダイビングしたり、久部良の埠頭に立ち、漁師たちがメカジキを獲って持ち帰って来るのを眺めたりしていた。この島は、生命を育む黒潮のど真ん中に位置している。
安全保障にかかわる人の間で、沖縄は駐屯地の島として知られている。F15戦闘機の轟音は確かに那覇生活の1つの要素となっている。
だが、大半の訪問者は軍のプレゼンスをほとんど感じない。心地よい安らぎは、観光パンフレットが作り出す虚構ではない。平和主義は、沖縄人の自意識にしっかり焼き付けられている。元沖縄県知事の太田昌秀氏はかつて、1879年に日本に併合されるまで独立国だった琉球王国の最大の特徴は「平和への献身と武器を持たないこと」だったと語ったことがある。
沖縄の人たちは好んで、バジル・ホールを引き合いに出す。1816年に琉球を訪れ、王国の温和さと礼儀正しさ、そして武器がない様子に驚嘆した英国海軍大佐だ。ホールは後に、セントヘレナで流刑生活を送っていたナポレオン・ボナパルトのもとを訪ね、琉球の話をして皇帝を困惑させた。「しかし、武器なしでどうやって戦うのか」とナポレオンは叫んだという。
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