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『テレビじゃ言えない』(小学館新書)
ビートたけしが安倍政権に吠えた!「軍国主義を狙ってると思うくらい」「拒否反応を示さない日本人はヤバい」
http://lite-ra.com/2017/02/post-2900.html
2017.02.07. たけしが安倍を「軍国主義」と批判! リテラ
シリーズ完結となる『アウトレイジ最終章』が今年公開される予定の北野武。映画監督としてはバイオレンス満載の過激な表現で鳴らすが、「芸人・ビートたけし」としては、最近、イライラがたまっているらしい。
「このところ昔みたいに自由が利かなくなってる」
「テレビの自主規制が年々ひどくなっていて、かつてのような言いたい放題、やりたい放題がドンドンできなくなってきてるんだ」
たけしがこうぼやいているのは、先日発売された著書『テレビじゃ言えない』(小学館新書)でのこと。たけしにとって主戦場たるテレビ界の自主規制によって、過激な発言や毒舌を吐いてもカットされたり話を変えられてしまう……そんななか、社会事象を「毒全開でぶった切る」(帯より)のが同書の目的だという。
そして、同書においてたけしが最初に俎上に載せるのが、“テレビでは言えない”という「一億総活躍社会」なる安倍政権のスローガンの問題だ。
「現代のニッポン人を見ていて怖いのは、「世の中を疑う」って気持ちがまるでなくなってしまっていることだ。それは「一億総活躍社会」って怪しい言葉を、みんなが信じられないほどすんなり受け入れちまってるのに象徴されていると思う」
そう明言すると、たけしはこのスローガンをこんなふうにぶった斬るのだ。
「とにかく最悪のキャッチコピーなのは間違いない。もう、「一億玉砕」とか「一億火の玉」みたいな、戦時中の危なっかしい国威発揚のスローガンとほとんど同じに見えちまう」
「こんなスローガン、「軍国主義を日本中・世界中に思い起こさせたい!」と、あえて狙ってやってるのかと思うぐらいだよ。せっかくならサラッと「一億総活躍」ってだけじゃなくて、「一億総活躍・欲しがりません勝つまでは」ってコピーにしたほうが、狙いがわかりやすかったんじゃないの(笑)」
さらに、たけしは「一億総活躍」という政策自体の欺瞞を暴く。
「国が国民に「頑張れ」って強いるのは、よくよく考えりゃ「働いて税収を増やせ」「社会保障に頼るな」って言われているのとほとんど同じだろ。政府の人間は反論するだろうけど、それってやっぱり戦時中とほとんど変わらないマインドだ」
「そもそも「活躍」ってのは、誰かの犠牲の上に成り立つものだからね。誰かが活躍すりゃ、その裏で別の誰かが仕事にあぶれたり、悔しい思いをするのが世の常だよ」
「一億総活躍」は「みんなが豊かで幸福に」なんて話ではない。事実、安倍首相が進める政策はたけしが言うとおり、「働いて税収を増やせ」「社会保障に頼るな」というものだ。しかし、この物騒極まりない国威発揚のスローガンと政策を安倍首相は堂々と掲げ、一方で国民はすんなり受け入れている。この現状に、たけしは吠える。
「これだけ世間から「好戦的な首相」と言われているのに、なぜわざわざツッコミどころを自ら作ってしまうんだろう」
「こんな押しつけがましい言葉に拒否反応を示さないニッポン人はやっぱりヤバい」
好戦的なことを隠そうともしない首相も、黙っている国民もヤバイだろ──。このたけしの指摘はもっともだが、くわえてたけしは「ニッポン人は、どんどん「当事者意識」がなくなってる」と嘆く。世界中で起こる無差別テロや、シリア情勢と難民や移民の問題──「世界中で真剣に考えなきゃいけない問題がたくさん起こってる」にもかかわらず、テレビはベッキーの不倫騒動やショーンKの学歴詐称問題に明け暮れていたからだ。
「国として、人として、「よその国で人が毎日死んでいることに無関心」ってのはやっぱりまずいんじゃないだろうか」
国民が世界の問題に当事者意識がもてないのも、首相がとんでもないスローガンを打ち出しても問題にならないのも、メディアに問題があることは明白だ。たけしも「ニッポン社会が自主規制だらけってことは、テレビや新聞みたいなメディアを見てればよくわかる。どのテレビ局のニュースも、申し合わせたように横並びの同じような内容ばかりじゃないかってさ」「ガンガン政治にモノを言うって時代じゃなくなったのは肌で感じるね」と述べている。
だが、古舘伊知郎をはじめとするキャスター降板騒動の話題では、たけしは諦めたようにこう言うのだ。
「まァ、オイラに言わせりゃ、「何を言ってやがるんだか」って感じだよ。テレビなんて、昔から「事実を曲げてばかり」なんだから」
「「真実を報じるのがテレビ」なんて認識は間違いで、「真実をオブラートに包んでしまうのがテレビ」ってのが本当のところなんだよな」
たしかに、昔からテレビにはたけしが言及するような問題点はずっとある。あるが、現在はほかならぬたけし自身が感じているように、さらに強い自主規制と、政治の話題、とくに政権に対する批判的意見を口にできない空気が流れている。だからこそ、たけしのような毒舌で鳴らしてきた大御所芸人でさえも、「「一億総活躍・欲しがりません勝つまでは」ってコピーにしたほうが、狙いがわかりやすかったんじゃないの(笑)」なんて軽口が「テレビじゃ言えない」状態になっているのだろう。
本書のなかでたけしは、「そのうち誰も想像がつかないような上手いやり方で、テレビの自主規制やタブーを飛び越してやろうかって考えてる」と述べている。そのことには大いに期待したいが、早く手を打たないと、この国の好戦的な首相が「一億玉砕」「一億火の玉」などと言ってもテレビがツッコまない最悪の状況は、すぐ目の前まで来ているのではないだろうか。
(大方 草)
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