<■3490行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 公衆浴場の利用は身体的特徴で男女区別を 自民「女性守る議連」が法案まとめる 2024/9/3 18:06 https://www.sankei.com/article/20240903-X4VKI6C3ZVMTBBJ2KTCMS2GG74/ 自民党の保守系議員らで作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 は、公衆浴場の利用について、男女を身体的特徴で区別すると定めた法案をまとめた。 関係者が3日明らかにした。 4日の議連会合に諮る。 党総裁選の候補に配布し、論点としたい考えだ。 2023年6月のLGBTなど性的少数者への理解増進法成立を受け、悪意を持って女性を自認していると称し女性用トイレや公衆浴場を使うケースが出かねないとの懸念が背景にある。 ただ政府は既に同趣旨の通知を自治体に出しており、法制化の必要性に疑問の声も上がりそうだ。 法案は、性的被害の多くが弱い立場の女性に生じているとして、男女別で利用が区分される施設に関し 「女性が安心して利用できる環境の確保」 が必要だと説明。 公衆浴場や旅館、ホテルの共同浴室は 「男女は、身体的な特徴により区別されるものとする」 と定めた。自民・松山政司参院幹事長「より良い結論得るよう努力」 性別変更で「外観要件」違憲疑い 2024/7/10 18:03 https://www.sankei.com/article/20240710-KMM7VCCE5VKW3FUXOGGS4YQSWM/ 自民党の松山政司参院幹事長は10日、戸籍上の性別変更に当たり性同一性障害特例法の外観要件を憲法違反の疑いがあるとした広島高裁決定を受け、法改正に関し 「より良い結論が得られるよう真摯に努力していきたい」 と述べた。 福岡市で記者団の取材に応じた。 保守系議員からは、要件削除に慎重な意見が出た。 保守系有志で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 のメンバーである柴山昌彦政調会長代理は取材に 「外観要件は違憲の疑いが濃いと言っているだけなので、立法府を拘束するものではない」 と指摘。 「生殖能力要件や外観要件を削除という乱暴な議論はすべきではない」 と慎重な対応を求めた。 公明党の谷合正明参院幹事長は取材に、生殖能力要件を違憲とした2023年10月の最高裁判決を踏まえ 「今回の判断は想定されたことだ」 と受け止めた。 秋の臨時国会での法改正に向けて 「自民に更に促していく」 と語った。 女性スペースの利用は「身体的特徴で判断」 自民議連、女性の安全・安心確保法整備へ 2024/6/14 10:39 https://www.sankei.com/article/20240614-S3OEC6PK5BFE3GI7WIDMLRHU3I/ 自民党有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連) が、公衆浴場や旅館・ホテルの共同浴室など女性スペースを利用する際は男女の取り扱いを 「心の性」 ではなく 「身体的な特徴」 で区別する議員立法の法案骨子を策定した。 性別適合手術などを経ずに男性器を備えた 「法的女性」 が誕生した場合に備え、性自認は女性だと主張する性犯罪目的の元男性が女性スペースで性加害行為を働く余地を狭める狙いがある。 ■各党の賛同を求めて立法化 骨子では公衆トイレを含め、不特定多数の利用者が性別で区別される施設(特定施設)について、管理者に女性の安全・安心を確保するために必要な施設構造の変更や照明設備・警報装置の設置、警備の実施などハード・ソフト両面で努力義務を課した。 議連は各党の賛同を求めつつ条文化し、2024年秋の臨時国会で提出を目指す。 施設側は身体的な特徴の性をもって男女を判断し、性別適合手術などを経ずに男性器を備えた 「法的女性」 らの利用を断ることができる根拠となる。 これまでも公衆浴場での男女の取り扱いに関して、厚生労働省は 「身体的な特徴をもって判断する」 と通知を出している。 その方針を改めて法律に明記する形となる。 女性スペースの安全確保の徹底を図る背景には、性別適合手術を経ないで戸籍上の性別を変更できる可能性が高まっていることがある。 性同一性障害特例法が求めている生殖機能の喪失を要件とした規定は、2023年10月の最高裁で憲法違反と判断された。 変更後の性別の性器に似た外観を備えている外観要件についても憲法適合性の審理が2審に差し戻されている。 ■「被害比率の高い方を守る」 一方、性別適合手術を経ないトランスジェンダー女性(生まれた時の性別は男性、性自認は女性)は女性スペースを利用する権利を侵害されることになる。 骨子をまとめた13日の会合後、議連の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相は記者団に 「(施設管理者の)注意義務が上がるから(女性や女児の)安心・安全性は高まると思う」 と語った上で、 「(手術要件が撤廃され)社会問題化した場合に備えて、我々は身体的要件で判断するという答えを出した」 「平等に競争している社会の中では一定のルールが必要で、やはり弱い方、被害比率の高い方を守るというのが鉄則だ」 と強調した。 海外でトランスジェンダー女性が女性スペース内で女性に性的暴行を加えた事例が確認されていることから、 「女性のスペースをきちんと管理して守るというのが必要な時代になっている」 と指摘した。 パラ初のトランス陸上選手出場が波紋 他国から「男性として長く生活しており有利」と懸念 2024/9/3 11:40 https://www.sankei.com/article/20240903-4DWGYLYXGZE4FN7FXPIALCYS74/?outputType=theme_paris2024 パリ・パラリンピックの陸上女子400メートル(視覚障害T12)が2日に行われ、パラリンピックでは初のトランスジェンダーの陸上選手として参加したバレンティナ・ペトリロ(イタリア)が出場した。 ペトリロは準決勝で敗退したが、他国の選手からは 「男性として長く生活しており、そのことが有利に働く」 といった懸念が出ており、出場への波紋が広がっている。 50歳のペトリロは予選4組に出場し、58秒35をマークして2位に入り、準決勝に進出。 準決勝2組では57秒58をマークしたものの3位となり、決勝進出を逃した。 ペトリロは女子200メートル(視覚障害T12)への出場も予定している。 英紙デイリー・メール(電子版)によると、ペトリロは視野の喪失を引き起こす遺伝性眼疾患の 「シュタルガルト病」 で、視覚に障害がある。 2019年に性転換手術を受けるまでは男性としてイタリアの国内大会に出場。 既婚者で、2人の子供がいるという。 世界パラ陸上競技連盟の規定では、法的に女性として認められた選手には出場資格があることを認めており、パラリンピックへの出場が決まった。 一方、他国の選手からは 「(ペトリロは)長い間、男性としてトレーニングをしており、このことが(競技で)有利に働く可能性がある」 といった懸念が出ていた。 パリ五輪ボクシング女子では、性別を巡る騒動の渦中にいた66キロ級のイマネ・ヘリフ(アルジェリア)が初の金メダルを獲得し、話題を呼んだ。 性別変更「10年以上の治療と他性別の生活」手術要件撤廃に備え、自民女性守る議連が提言 2024/4/15 14:26 https://www.sankei.com/article/20240415-IPIQTUL4ZJA3DAF25FI7652XZI/ 自民党有志の 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 が性同一性障害特例法が定める性別変更する上での要件厳格化を求める提言をまとめ、党政務調査会の特命委員会に2024年4月9日、提出した。 提言は10年以上継続して性同一性障害の治療を受け、他の性別で社会生活を営んでいるという要件の追加を求めた。 女性の生殖機能を持った 「法的男性」 が出産する場合などに備え、民法上の親子関係を整理する必要性にも言及した。 ■法的男性が妊娠した場合、戸籍は女性に 特例法は性別変更する上で生殖機能の喪失を求める要件があるが、最高裁大法廷は2023年10月、これを憲法違反と判断した。 法改正が迫られているが、要件を撤廃すれば、性同一性障害を抱える人々と女性へのなりすましなどの見極めが困難になるとも指摘されている。 提言は 「一定期間(10年以上)継続して一定の治療を受け、かつ、一定期間(10年以上)継続して他の性別で社会生活を営んでいると認められること」 を新たに要件に盛り込んだ。 カナダや英国では、刑務所や留置場などで、女性に性別変更した元男性による女性への性犯罪が発生している。 これを踏まえ、提言では 「収容施設などにおいては、生物学上の性別に基づき区別して収容される」 ことを求めた。 性別変更する上で、子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する 「日本版DBS」 創設法案に盛り込まれた、就業を制限する 「特定性犯罪」 の前科がないという要件も追加した。 女性の生殖機能を持ったままの 「法的男性」 が妊娠・出産した場合は、戸籍を女性に戻すとの条文の追加についても、検討を求めた。 提言は 「『なりすましによって生じた性的被害への国家賠償』 『女性生殖機能が残っているので妊娠・出産してしまった戸籍上男性が母親になることの社会的混乱』 という、現在までには、ほぼあり得なかったケースがあり得ることになる」 と指摘。 「女性たちの安心と安全を1ミリたりとも危うくしない」 と強調し、リスクの排除を訴えた。 ■「診断の判断があやふやに」 平成15年に成立した特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で @18歳以上 A未婚 B未成年の子がいない C生殖不能 D変更後の性別の性器に似た外観を備えている の要件を定めている。 2023年10月、最高裁大法廷は生殖不能要件を違憲と判断し、Dの 「外観要件」 について憲法適合性の審理を広島高裁に差し戻した。 CとDを合わせて 「手術要件」 と言われる。 特例法は性同一性障害者について 「他の性別であるとの持続的な確信を持ち、身体的および社会的に他の性別に適合させる意思を有する者」 と定義する。 ただ、手術要件が撤廃された場合、客観的な基準がなくなり、衝動的に元の性別による性行動に出る場合も含め、 「なりすまし」 が排除しきれないとの懸念もある。 性同一性障害を訴える患者を数多く診断してきた精神科医の針間克己氏は2024年4月9日、特命委の会合に出席後、 「手術要件がなくなると(性同一性障害者の)定義に一致するかどうかの判断が非常にあやふやになってしまう」 「診断が難しくなるので何らかの基準を設けたほうがいい」 と産経新聞などの取材に語った。 <主張>教科書にLGBT 男女否定の授業にするな 社説 2024/3/24 5:00 https://www.sankei.com/article/20240324-2PWOH4565RKCVKFLAV2GC5BQKQ/ 文部科学省の検定に合格し、令和7年度から使われる中学校の教科書で、LGBTなど性的少数者についての記述が増加することになった。 保健体育では、性的少数者に関連し 「性自認」 「性的指向」 など学習指導要領の範囲外の内容が 「発展的内容」 として全ての教科書に掲載される。 英語や社会科地理などの教科書にも関連した内容が入る。 性的少数者への差別をなくす教育は必要としても、男女の性差を否定するような行き過ぎた指導で、思春期の子供たちを混乱させてはならない。 検定結果によると、保健体育では 「人間の性は単純に『男性』と『女性』に分けられるものではありません」 などの説明と共に、合格した全3点の教科書が 「性の多様性」 について踏み込んだ内容を記述した。 性教育とは関係の薄い地理でも 「性的少数者に配慮した社会へ」 として、同性婚を法制化したニュージーランドなどの事例を好意的に紹介するコラムを掲載した教科書がある。 社会科公民では性別に関係なく使える 「だれでもトイレ」 を写真付きで取り上げる例もあった。 2023年6月に成立した性的少数者に対する理解増進法が教科書にも影響した格好だが、同法には反対意見も多く、性は自分で決められるといった 「性自認」 の概念は大人にも分かりにくい。 教師は指導できるのか。 中学生は生殖機能が発達する思春期で、異性への関心が高まる時期だ。 男女の身体的な特徴などを理解させることが重要であり、その前に 「性の多様性」 などと教えても生徒は戸惑う。 男女の性差など違いを知り、互いに認め合う教育が必要だ。 教師用の学習指導要領解説には、性に関する指導は 「発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である」 と明記されている。 この原則を守るべきだ。 生徒に行き過ぎた指導を押し付けてはならない。 教科書は流行を追うものではない。 伝統的家族の役割、日本の国柄などについてもしっかり教えてもらいたい。 例年検定結果が注目される社会科では日本の領土に関する記述が一層充実した。 教師自身が歴史経緯などを深く理解しているか、指導力が問われる。 LGBT記述が社会科の教科書に、地理「同性婚法制化」 公民「ジェンダーレス制服」 中学校教科書検定 2024/3/22 16:44 https://www.sankei.com/article/20240322-GEXH3Q6JFJL3ZNJ7PSZVVOFKJA/ LGBTなど性的マイノリティーに関する記述が教科横断的に広がった中学校教科書。 現行本に記載がない社会科地理では、日本文教出版の教科書に登場した。 オセアニア地域の紹介で、豪州やニュージーランドで同性婚が法制化されたことに触れ、 「性的少数者に配慮した社会づくり」 の実例として記述している。 6社が申請した社会科公民では、自由社を除く5社が記述。 東京書籍は、同性カップルに結婚に相当する関係を認める 「パートナーシップ証明書」 や中学校に設置された 「だれでもトイレ」 の写真を掲載するなど複数のページを割いた。 女子生徒向けにスカートだけでなくズボンも選べるジェンダーレス制服を紹介する教科書もあった。 教育出版は国語で、日本社会のLGBT受容に対する感想を綴った日本文学研究者、ロバート・キャンベル氏の文章を掲載。 東京書籍の英語には、パキスタン出身のノーベル平和賞受賞者、マララ・ユスフザイさんのスピーチに関連付ける形で、性的マイノリティーに対する偏見や差別に言及している。 性自認、身体的性別と同列に記述する保健体育の教科書も 専門家「誤解与える」 中学校教科書検定 2024/3/22 16:25 https://www.sankei.com/article/20240322-RUE5JJORYVMJBBRUS6RRY5HIW4/ 文部科学省は2024年3月22日、令和7年度から中学校で使われる教科書の検定結果を公表した。 合格した教科書には、LGBTなど性的マイノリティーに関する記述の充実が目立った。 保健体育では、 「男女」 という生物学的性別を相対化し、自認する性などと同列に説明している教科書もあり、専門家からは誤解を与えかねないとの声も上がっている。 「性には『男性』『女性』という『体の性』以外にも、『心の性』や『好きになる性』、『社会的な性』など、いろいろな『ものさし』があります」。「性の多様性」 をこのような記述で取り上げたのは、東京書籍。 「性の構成要素」 として、体の性(生物学的な性)、心の性(性自認)、好きになる性(性的指向)、社会的な性(性表現)を同列に図示し、 「それぞれが組み合わさって、私たちの『自分らしさ』となっています」 と説明。 同社の編集担当者は 「互いにその人らしさを認め合うことが大切であることを理解できるようにした」 と語る。 ■大修館書店の教科書も 「人間の性は単純に『男性』と『女性』に分けれらるものではありません」 と記述。 東京書籍版と同じように性を4つに等分した図を掲載した。 保健体育の学習指導要領は 「身体の機能の成熟とともに、性衝動が生じたり、異性への関心が高まったりする」 などの内容にとどまり、性的マイノリティーへの言及はない。 「子供の成長度合いや保護者の理解、家庭の価値観などのため一律に教えることは難しい」(文科省) ためだ。 しかし、指導要領の範囲外であることを示す 「発展的な内容」 と明記すれば掲載でき、一部の版元は手厚く扱っている。 「男女」 の性別は戸籍でも使われている。 LGBT理解増進会の繁内幸治代表理事は 「性自認は尊重すべきだが、生物学的な性と同一視はできない」 「性別は性自認に伴って自由に変えられるものではなく、法律の要件がある」 と指摘する。 ■虹の旗写真を削除 技術・家庭科(家庭分野)でも手厚い記述が目立った。 開隆堂出版は申請本に 「男・女だけではない性」 などの見出しで、多様性を象徴する虹を象った旗の写真を掲載するなど紙幅を割いた。 「中学生には性の悩みを抱える生徒も多い」 「生徒が直面する悩みに寄り添えるような内容を目指した」 (編集担当) が、 「家族・家庭や地域との関り」 の学習が求められる部分だったため、検定で 「扱いが不適切」 の意見が付き、文科省と協議して旗の写真や記述の一部を削除した。 多様な価値観がある中、教科書はどこまで踏み込むべきか。 繁内氏は 「記述内容が控えめであったとしても、悩む生徒に周囲の大人への相談を促すことにも繋がる」 「教科書のみに偏らず、学校教育全体での対応を検討してほしい」 と話した。 LGBTに関する記述が増加 学習指導要領範囲外の「性の多様性」教科を横断 中学教科書検定 2024/3/22 14:46 https://www.sankei.com/article/20240322-P4NR7MSM3BPORNGE2D5UY27Z5E/ 文部科学省は2024年3月22日、令和7年度から中学校で使われる教科書の検定結果を公表した。 LGBTなど性的マイノリティーについての記述が増加。 社会科地理など現行本には記載がない教科にも登場し、教科横断的なテーマとして扱われるようになった。 保健体育は学習指導要領で定められた教育内容の範囲外だが、全ての教科書が 「発展的な内容」 として掲載した。 現行の学習指導要領に沿った中学校教科書の検定は令和元年度に続く2回目となり、10教科100点が合格した。 技術・家庭(技術分野)でイスペットの1点が不合格となった。 社会科歴史で2点が 「具体的な検定内容が漏れていた」 ことを理由に結果が 「未了」 となり、検定が継続される。 性的マイノリティーに関する記述の増加について、文科省教科書課は 「理解増進法が制定されるなど社会の広い分野で取り上げられていることが影響したのではないか」 と推測する。 性の多様性にとどまらず、男女差別や男女共同参画といったジェンダー(性差)に関する記述が全般的に充実した。 一方、領土問題を巡っては、合格した社会科の公民と地理の全ての教科書が北方領土、竹島(島根県隠岐の島町)、尖閣諸島(沖縄県石垣市)が日本の 「固有の領土」 であることを明記した。 社会科歴史では、山川出版社と学び舎が慰安婦問題を取り上げた。 山川出版社は 「戦地に設けられた『慰安施設』には、日本・朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた」 と記述。 学び舎は 「慰安婦」 の文言が使われた平成5年の河野洋平官房長官談話を引用するなどした。 令和4年の安倍晋三元首相銃撃事件は、社会科の歴史と公民で自由社と育鵬社が記述。 「検定後の訂正申請で増える可能性がある」(文科省)。 動画や音声などにアクセスできる 「QRコード」(2次元コード) も大半の教科書に掲載された。 民主主義の形 第5部 自由とは(1) 弱者救済招いた「正直者が損」 ワシントン地下鉄 無賃乗車の軽罰化 2023/12/5 8:00 https://www.sankei.com/article/20231205-WYUVH6WGYRM2JDH52XWCG2QDAM/ (中略) ■LGBT法「反対」はヘイトか 「差別主義者だからな、お前は!」 「黙ってろ、バカヤロー!」 東京都杉並区議の田中裕太郎は2022年末から2023年3月にかけて、区役所前やJR阿佐ヶ谷駅で街頭演説を行った。 街頭に立つ度、撮影しながら大声を上げる集団が現れた。 何人かは 「ANTIFASCIST(反ファシズム主義者)」 と書かれた上着を着ていた。 この時期、国会ではLGBTなど性的少数者への理解増進法の制定に向けた動きが進み、杉並区も 「性の多様性社会を尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」 の制定を目指していた。 多様な性の在り方を理解し、尊重するように区民や事業者に求める内容で、2023年4月に施行された。 もちろん、性的少数者にも守られなければならない自由はある。 一方で田中らは、こうした法律や条例が、女性や子供の権利を脅かす可能性もあると考えていた。 「性の多様性は尊重されなければならない」 「だからといって、女性の人権を軽んじていいという理屈は成り立たない」 共に街頭に立ったメンバーには、男性から女性に性別を変えた人もいたという。 田中は 「彼らを差別したり排除したりするような発言をするわけがない」 と説明する。 ■封殺 街頭活動の妨害に怒りを覚えたが、更に許し難かったのは、その状況を目撃した後で、田中らの訴えを 「ヘイトスピーチです」 とX(旧ツイッター)に投稿した区議がいたことだ。 田中の抗議を受け、区議は投稿を削除したという。 民主主義を支えるのは、多数決の原理と少数意見の尊重だ。 「民主主義の学校」 とも讃えられる地方自治の場で、根幹が揺れた。 田中は話す。 「LGBT法や条例に反対すれば差別ですか?」 「レイシストになるんですか?」 「それこそ、レッテル貼りによる言論封殺、言論弾圧に他ならない」 「しかも、現職の政治家がそれをやった」 東京都新宿区で2023年10月、市民団体が公衆浴場やトイレなどの女性用スペースの利用は生物学的な女性に限るべきだと主張するデモを行った。 その時にも、大掛かりな抗議が行われた。 勝手な撮影、大声での威圧・・・。 街頭デモに参加した 「女性の定義を守る会」 共同代表の青谷ゆかりは振り返る。 「性的少数者を差別する意図は全くありません」 「性自認も内心は自由です」 「でも、それが行動に現れる時、例えば浴場やトイレを女性が安心して使えなくなるかもしれない」 「他者の権利を侵害してほしくないと言っているだけです」 ■廃止 東京・歌舞伎町に2023年4月、開業した複合商業施設 「東急歌舞伎町タワー」。 多様性を認める街づくりの象徴として設置されたのが 「ジェンダーレストイレ」 だった。 2階には性別に関係なく使える個室8室の他、女性用2室、男性用2室、多目的トイレ1室が並んだ。 しかし、2023年8月には廃止されることになった。 原因は主に女性から寄せられた戸惑いの声だった。 「男性の目の前で個室に入りづらい」 「酔った男性に話しかけられた」 大半が不安を訴える内容だった。 一部の女性は利用を避けるようになり、廃止に繋がった。 LGBT理解増進法の成立後、厚生労働省は全国の自治体宛てに通知を出し、公衆浴場などでは 「身体的特徴」 で男女を取り扱うことを求めた。 背景には 「体は男性、心は女性」 の利用者が女湯に入るといったケースが生じかねないとの危惧があった。 通達には2023年4月の衆院内閣委員会の会議録が添えらえていた。 男女を身体的特徴で判断する運用が法の下の平等を定めた憲法14条に抵触しないという見解を示したものだった。 多様性への配慮が生んだ不利益。 理念を現実の中に落とし込むことは、そう簡単ではない。 (敬称略) 最高裁が嵌った「性自認至上主義」 正論2024年1月号 弁護士 滝本太郎 2023年10月25日の最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)の決定には驚かされた。 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下特例法) に定められた性別変更の要件についての憲法判断で最高裁は、申立人(男性から女性への変更)の訴えにあった特例法3条4号 「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(生殖機能喪失要件)」 について 「違憲」 と判断してしまった。 更に同法3条5号 「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること(外観要件)」 について、高裁段階で審理が尽くされていないとして、自らの判断を示さぬまま広島高裁に差し戻したのだ。 4号の生殖機能喪失要件が、憲法13条に定めた幸福追求権に反し違憲としたのは、15人全員だった。 三浦守、草野耕一、宇賀克也の3人の裁判官は、5号の外観要件についても差し戻しをせずに違憲だと判断すべきだとしてその意味での反対意見を示した。 残る12人は5号要件の憲法判断を回避した。 最高裁は憲法判断から逃げたのである。 最高裁によるとんでもない暴走である。 女性の権利を劣後させ、余りに矮小化している。 女性が差別され、不利益を被るのは、性別(SEX)を根拠としているという歴史的事実を無視して、つまりは男性の身勝手、女性の侮蔑、差別主義である 「性自認至上主義」 に侵された最高裁になってしまったということである。 「性自認至上主義」 をひた走った先進国では相次いで、女性の安心・安全が害され、脅かされている。 深刻な事態を招いた結果、その反省に立って正常化に舵を切ろうとしながらも、苦労しているイギリスの実態などについて、決定文では何の言及もなかった。 男性として思春期を幾分でも経験した者は女子スポーツ選手権への参加資格はないとした国際水泳連盟や世界陸連の判断なども決定文では一顧だにされていない。 15人の裁判官は何も知らないのだろうか。 不勉強極まると言う外ない。 決定文から読み取れることは、 「性自認は他者の権利法益より優先すべきである」 とする 「性自認至上主義」 に基づく論理展開ばかりなのだ。 私は本誌2023年12月号で、本決定について4つの可能性があると予測した。 第1は 「違憲であり性別変更を認める」 第2は 「違憲状態だ、国会は法を改正せよ」 第3は 「永続的に生殖腺の機能を欠いているなどとして変更を認め、違憲かどうかの判断は回避する」 第4は 「2019年1月の判例と同様、法的性別の変更を認めない、いわゆる手術要件は合憲である」 である。 まさか、4号と5号を分け、4号だけを違憲とし、5号については差し戻しをするとは思わなかった。 仮に広島高裁で5号を違憲として性別変更を認めたならば、最高裁への上訴はなく、高裁決定で確定し、実に不安定なままとなる。 高裁で5号を違憲とせずに 「ホルモン療法で陰茎が小さくなる、などしていれば陰茎ではない」 などと無理に評価し、法的性別の変更を認めてしまう手法を取れば、それが独り歩きしてしまうだろう。 そもそも最高裁は、法律の違憲判断をするかどうかという重大局面なのだから、国(法務省)に家事事件手続法と法務大臣権限法に基づき、利害関係人として参加してもらうべきだった。 最高裁にとって影響が大き過ぎて責任を負えないのならば、法務省に参加を打診すれば良かったのである。 法務省は決定後の2023年11月9日、自民党の 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(女性を守る議連) で 「通例は裁判所から要請があって参加する」 と説明するなどこれまた逃げを打っていた。 議連も私どもも法務省(国)宛てに参加を要請し続けたのに、法務省も参加申し出をしないままだった。 挙げ句の4号違憲判決であり、5号は高等裁判所に差し戻して違憲となってしまう可能性がある。 行政の長である首相らに政治責任があると思われる。 差し戻し審があるのだから今からでも参加すべきだろう。 ■性別変えず支障なき社会を 決定文には、生殖能力喪失要件について 「2014年に世界保健機関等が反対する共同声明を発し、また2017年には欧州人権裁判所が欧州人権条約に違反する旨の判決をした」 などとあった。 申立人側の主張そのままであろう。 死刑制度について国際的に批判を浴びても世論動向などを踏まえながら決して違憲判決を下さないのが日本ではなかったのか。 性別変更は死刑問題よりも格段に国民生活に影響を与える問題であるにもかかわらず、最高裁が暴走してしまった。 決定文には 「性同一性障害者がその性自認にしたがって法令上の性別の取り扱いを受けることは・・・個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益である」 とあったが、だからと言って制度である 「法的性別」 を歪ませて良い理由になどならないではないか。 「本件規定がなかったとしても、生殖腺除去手術を受けずに性別変更を受けた者が子をもうけることにより親子関係等に関わる問題が生ずることは、極めてまれであると考えられる」 ともあった。 従前から女性という性自認を持ちながら父となった方も相応に居るのだから、生殖腺を失わずに性別変更ができるのであれば 「父である女」 が続々と出現するだろう。 メディアでも報道されているが、乳房切除までしたが、パートナーとの間に子を設けた例もある。 性別変更が認められれば 「母である男」 となる。 決して稀なことではなかろう。 「そもそも平成20年改正により、成年の子がいる性同一性障害者が性別変更審判を受けた場合には、『女である父』や『男である母』の存在が肯認されることとなった」 ともある。 しかし、平成20年の改正では未成年の子がいる場合は、法的性別は変更できないままだった。 子の出生時点で 「出産した母だが男だ」 「父だが生物学的な女だ」 という事態を招くこととは局面も意味合いも全く異なる。 「強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一」 という記述も変だ。 手術は身体違和がきついから、自分の意思でするのであり、決して断種手術ではない。 むしろそれまで手術を受けて性別変更してきた人たちにとっては戸籍や身分証明上の性別と身体とが一致しているからこそ信頼が得られていたのだ。 それが失われるデメリットを考えなかったのだろうか。 まして精巣の除去は卵巣や子宮の除去に比較して実に容易である。 身体違和がさほどきつくなく、精巣の除去を含めて性別適合手術を必要としない方は、法的性別を変更しなければよいのである。 精巣と陰嚢を持ったままに、書類上である法的性別を女性に変更することが、どうして 「人格的存在と結びついた重要な法的利益」 と言えるのか。 生殖腺機能喪失要件が 「過酷な二者択一」 と言えるのか。 法的性別など変更でずとも、生活に差し支えない社会を作ることこそが重要ではないのか。 女性だと認識し、いわゆる女性装を日々する人も、排泄は認識からではなく、身体からするのだから男子トイレに入ることも相応にある。 その際に時に男性から揶揄され、時に暴力を受けることがある。 それこそが排除であり、差別であろう。 法的性別を変更して女性トイレを利用する権限があるなどとする前に、男子トイレで男性からの揶揄・暴力のない状態にすること、就職差別などないようにすることが重要な人権ではないのか。 4号の生殖腺機能喪失要件、そして5号の外観要件が外れれば、文字通り 「男性器ある女性」 が続々と登場する、その先には 「性同一性障害」 ではなく、ジェンダーアイデンティティ(性同一性・性自認)に基づく法的性別の変更は決定文中1人の裁判官が何度も言及した。 ドイツにおける性自認至上主義の如く、裁判所の関与さえないままに法的性別が変更できる方向となっていくだろう。 性犯罪目的の男や、女性を侮蔑・差別したく、その専用スペースを侵害することで喜びを得ようとする一部の男は、何としても診断書を取り、法的性別を女性に変更するよう努力するだろう。 週刊新潮2023年11月9日号には、診断が取りやすいことで有名な医師が登場し、 「そもそも性自認は当人がどう感じるかだけ」 「医者が決めることがおかしい」 「医師はウソ発見器じゃないですから、本人の言っていることをそのまま聞く。それが基本」 などと述べている。 法律を違憲とすることは法の形成過程の1つで、今回の最高裁決定は、まさに性自認至上主義を大きく伸展させる法律の登場に繋がるものだ。 先行する国々では混乱が多々あるのに、日本に周回遅れでこれに従えとするもので全く異常である。 岡正晶裁判官は補足意見で、立法府の対応について 「(4号要件の)目的を達成するために、より制限的でない新たな要件を設けることや(中略)社会一般の受け止め方との調整を図りつつ、特例法のその他の要件も含めた法改正」 「立法府に与えられた立法政策上の裁量権に全面的に委ねられている」 と述べている。 確かにこれは立法府が定めるべきことである。 3人の裁判官は、5号外観要件も違憲だからこの際、決断すべきとしたが本来、4号、5号とも立法府の広い裁量に委ねられていると言うべきだろう。 見解を異にする方もいると思うが、婚姻時の選択的夫婦別姓を導入していないことについては、憲法には両性の合意のみで婚姻できるとしているのに、最高裁は未だ立法裁量の問題としている。 多くの女性らが不便を被っている案件でその状況なのである。 「手術をしたくないならば法的性別を変えなければ良い」 だけの話なのに、どうして 「日々、トイレや風呂で見る身体違和には耐えられるが、書類上の性別の食い違いには耐えられない」 といった、率直に言って不可思議な権利主張を、そこまで保障しなければならないのか。 先程、最高裁は逃げたと述べた。 これは言い換えれば、最高裁は 「陰茎のある法的女性を出現させて良いか」 について判断するという、負わされた責任から逃げたという意味である。 最高裁から責任を押し付けられた広島高裁は国会の動向を待って判断すべきであろう。 決して2023年中とか2023年年度内に結論を出そうなどと、司法の傲慢に陥ってはならない。 ■要件の再構築を求める 左派野党と公明党は、この最高裁決定を受けて早速に法改正を言い出し、立憲民主党は4号、5号要件の削除、また3号にある 「未成年の子が居る場合は変更を認めない」 という要件も削除するという案を言い出している。 一体、 「陰茎がある法的女性」 が出現することや 「他の性別に変わったものと見做す」 ことの重さをどう考えているのだろう。 「どこでも女性として遇せよ」 という法規範が成立した場合の女性スペースの混乱をどう考えているのだろうか。 私が世話人をしている 「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」(以下連絡会) では、議論を重ね、 「女性スペースに関する法律案」 と 「女子スポーツに関する法律案」 を2023年11月14日に公表し各党に送付した。 2023年の 「LGBT理解増進法」 の制定論議の際、合わせて作ってほしいと作ったものを更新し、特例法の改正案を加えた。 特例法3条の4号と5号の要件は削除するが、新たな4号として 「男性から女性への性別の取り扱いの変更を請求する場合は、陰茎を残していないこと」 と入れるものである。 「女性から男性へ」 と性別変更する場合には要件がないので、比較すると一見不平等に見えるかもしれない。 だがこれは合理的で差別にはならない。 圧倒的多数の性犯罪は陰茎のある者による。 単に要件を削除するだけでは、性犯罪目的の者まで次々と法的女性になろうとする蓋然性がある。 また陰茎という外観上からして明白に男性である者が法的女性となって女性らに不安感・恐怖感を持たせるのは避けるべき強い必要があるからである。 その恐怖は合理的なものであり、決して 「研修」 により消し去れる類のものではない。 女性スペースに関する法律案は、 「女性」 の定義を 「生物学的女性のうち、特例法に基づいて性別を男性と見做されていない者、そして女性と見做された者のうち陰茎を残していない者」 とする。 仮に5号外観要件が削除された特例法により 「陰茎がある法的女性」 となっても、この法律の上では 「法的女性」 とはしない。 特例法4条では 「法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす」 としており、他の法律による異なった対応を許容しているのである。 今の浴場を男女別にすることについては、理解増進法が成立後の2023年6月23日に通達が出ており、それは 「身体的な特徴による」 とある。 これは主に陰茎の有無の趣旨であろう。 法律案は通達を法律に格上げし、かつ女子トイレ、更衣室等の女性スペースの全体を対象とするものだ。 性自認に重きを置いて考える性自認至上主義の立場であれば、 「トランス女性は女性」 となって 「女子トイレの利用公認を」 となるだろう。 ここが最初から最後まで闘いの焦点である。 ただ 「トランス女性は女性である」 と主張する論者らにも、 「女湯については入れないものとする」 と主張する者は多く、事実上 「法的女性」 を一律に扱わないとする合意形成は可能であろう。 だから、理を尽くして女子トイレの安心安全の確保のためには、陰茎がある限り利用を公認できないことを説得していくこととなる。 また、2023年7月11日の経産省トイレ裁判の最高裁判決も考慮しない訳にはいかない。 そこでは 「特定の女子トイレにつき、管理者が当該女子トイレを通例利用する女性の意向を尊重かつ十分聴取した上で、特定人の入場を別途許容し、その趣旨を女性スペースに明示する場合はこの限りではない」 と対応する外ない。 女子スポーツに関する法律では、2022年6月の世界水泳連盟、2023年3月の世界陸連の方針を踏襲する。 男としての思春期を経験した者は、その後、陰茎があってもなくても、女子スポーツ選手権への参加資格がないとするものである。 ただ、ルールは各団体の自治で定められるものである。 公的資金の援助や後援などに限ったルールとなる。 連絡会は、社会全般に対して10項目に及ぶ要望を2023年10月30日の声明と共に示した。 今後、どうすべきかという点で重要なのでこれを最後に紹介したい。 第1に、政府各省庁が、様々な調査をすることだ。 性自認や性別変更を巡って先行した国々のここ数年間の状況と動向、トイレ、共同浴場などにおけるトラブル・刑事事件の調査、性同一性障害の診断の実態と信頼性に関する調査、法的性別を変更した人のその後の調査などである。 第2にメディアには、性同一性障害はトランスジェンダーのうち15.8%に過ぎないのだから、混同して議論することを厳に慎み、国民に様々な見解・情報を伝えるよう求めたい。 第3に、国民は先入観に捉われることなく、自らの意見形成に努めてほしいと願う。論者による議論を拒否する姿勢のまやかしを知ってほしいし、自由な言論空間を確保し合いたい。 第4に、各政党に求めたいことは、当連絡会を含め多くの国民の様々な意見を聴取し、党内で自由に議論して方針を定めてほしい。 第5に、それらの議論にあっては、女性が性別(SEX)によって未だに経済的・社会的に様々な不利益を被っていることを直視されたい。 第6に、国会に求めるのは5号要件が決して違憲判断が下されたものではないからそれも削除すれば良いというものではないことを確認すると共に、様々な調査や国民的に議論した上で新たな要件等を定めてほしい。 第7に、この裁判を差し戻しされた広島高裁は、早期に本件の判断をすべきではなく、様々な調査結果と国民的な議論の行方をよく見極め、国から参加申出があった時は直ちに認めるべきである。 第8に、国はこれからでも法務大臣権限法と家事事件手続法に基づきこの裁判に利害関係人として参加すべきである。 第9に、国民は次の衆議院議員選挙における国民審査において、対象裁判官に罷免の意思を示すべきである。その対象は憲法の規定で10年以内に審査された裁判官を含まないこととなっているが、私は国民からの民主的統制を強めるために、毎回15人を審査できるように憲法を改正すべきと考える。 第10に、内閣は最高裁判官に定年等で欠員が出たならば、このような「性自認至上主義」に嵌っていない方をこそ指名すべきである。私はまた、任命の前に、国会で予定者への質問をする機会を作るべきと考える。 最高裁は今、 「性別」 を蔑ろにして法的性別の概念を弄び、 「性自認至上主義」 により、安易に 「女性」 「男性」 の定義を変更する道を歩み始めてしまった。 司法が暴走した時、それを止めるのは国権の最高機関、国会であり主権者国民である。 「性自認至上主義」 は欧米で猛威を振るい、女性の権利が剥奪されるなど、様々な混乱がもたらされてきた。 その反省から方針を転換、正常化させるべく悪戦苦闘しているイギリスのような例もあるのに、日本は周回遅れでこれから 「性自認至上主義」 に嵌ろうとしている。 何とか止めなければならない。 薬生衛発0623第1号 令和5年6月23日 都道府県 各 保健所設置市 衛生主管部(局)長 殿 特別区 厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長 (公 印 省 略) 公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001112499.pdf ○國重委員 (略)公衆浴場、いわゆる銭湯や旅館等の宿泊施設の共同浴室について、現在それぞれ衛生等管理要領が定められておりまして、その中で男女別の定めがされています。 これらは風紀の観点から混浴禁止を定めていることから、男女の別は身体的な特徴の性をもって判断することとされていると、事前に政府の方からも説明を受けております。 そこで、念のため確認をさせていただきたいんですけれども、これらの共同浴場における男女の判断基準はトランスジェンダーにも当てはまる、つまり、トランスジェンダーの場合も性自認ではなくて身体的特徴に基づいて判断することになると理解をしていますけれども、これで間違いないかどうか、答弁を求めます。 ○佐々木政府参考人 お答えいたします。 公衆浴場や宿泊施設の共同浴場につきましては、厚生労働省が管理要領を定めております。 具体的には、公衆浴場における衛生等管理要領や旅館業における衛生等管理要領になります。 この中で、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことなどと定めております。 この要領で言う男女は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、トランスジェンダーの方も含め、身体的な特徴の性をもって判断するものであり、公衆浴場等の営業者は、体は男性、心は女性の方が女湯に入らないようにする、こういう必要があると考えております。 実際の適用につきましては、都道府県等が条例を定めております。 この条例によって、基本的にこの要領と同じような形で男女の浴室を区別し、混浴を禁止しているものと承知しております。 ○國重委員 トランスジェンダーの方であっても、心ではなくて身体的特徴で判断するというようなことだったと思います。 では、共同浴場において、先ほど答弁いただいたとおり、風紀の観点から心の性ではなくて身体的特徴をもって男女を区別する、このような現在行われている取扱いというのは憲法十四条に照らしても差別に当たらないと、念のため確認しますが、差別に当たらないということで間違いないかどうか、答弁を求めます。 ○伊佐副大臣 憲法十四条、いわゆる法の下の平等でありますが、この原則が規定されております。 この趣旨としては、合理的な理由なしに区別をすることを禁止するという趣旨でございます。 つまり、合理的と認められる範囲内の区別を否定するものではないというふうに理解をしておりまして、先ほど委員御指摘の、公衆浴場における入浴者については男女を身体的な特徴の性をもって判断するというこの取扱いは、風紀の観点から合理的な区別であるというふうに考えられております。 憲法第十四条に照らしても差別に当たらないものというふうに考えております。 【決定全文】最高裁はなぜ、性別変更の生殖機能をなくす要件を「違憲」としたのか 最高裁15人の裁判官は、生殖機能をなくす「手術要件」を全員一致で違憲と判断。「過酷な二者択一」だとした ハフポスト日本版編集部 2023年10月26日 15時0分 JST |更新 2023年10月26日 JST https://www.huffingtonpost.jp/entry/japan-supreme-court-gender-change-rule-unconstitutional_jp_6538bcb5e4b0783c4b9f005a 裁判長裁判官 戸倉三郎 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也 裁判官 三浦 守 裁判官 草野耕一 裁判官 宇賀克也 裁判官 林 道晴 裁判官 岡村和美 裁判官 長嶺安政 裁判官 安浪亮介 裁判官 渡邉 惠理子 裁判官 岡 正晶 裁判官 堺 徹 裁判官 今崎幸彦 裁判官 尾島 明 最高裁も迷走 とんでもないことをしてくれた岸田LGBT 理念法と言いながら、地方自治体で独自の条例成立が加速する恐れが・・・ WiLL2024年1月号 港区議会議員 新藤加菜 作家 橋本琴絵 ■「女性ならでは」・・・ ★新藤 岸田首相が内閣改造で女性閣僚5人を登用した際に 「女性ならではの感性や共感力も十分発揮して頂きながら、仕事をして頂くことを期待したい」 と発言し、物議を醸しました。 ★橋本 うーん、 「女性ならでは」 という考え方は果たしてあるのでしょうか。 女性を積極的に活用しようと言われていますが、実際、どのように感じておられるのか。 ★新藤 率直に言って、LGBT法を成立させた岸田首相の口から、そんな発言が出ること自体おかしい。 ジェンダーロール(性的役割)の押し付けだと左派に批判されるとは思わなかったのでしょうか。 ★橋本 初入閣した女性閣僚はいずれも2世議員であり、特に女性起用という印象を受けません。 そもそも、例えば女性閣僚が増えたから、女性の支持層が増えると期待すること自体、性差別主義者の特徴的な考え方です。 「女性ならでは」 というのは、育児や助産などでは能力を発揮します。 しかし、そもそも政治とはあらゆる人の統治に関することですから、女性云々は考慮に値しません。 諸外国では既に 「時代遅れ」 として廃止の方向にある女性優遇枠を大学入試でも今後始めるそうですが、閣僚枠でもやるとは周回遅れも甚だしい。 ただ、政治の世界で女性が少ないのは懸念されます。 私が所属する港区議会は34人中14人が女性なので、バランスが取れていますが、他の区議会など、地方行政の世界は男性議員が圧倒的多数です。 女性の意見は排除されることも多いですから、それこそ 「女性ならでは」 の視点が尊重されるようになってほしい。 でも、 「女性だから」 と要職に就かせるなど、無理矢理下駄を履かせるのは本末転倒です。 ■ピントが外れている ★橋本 他にも岸田首相の発言で首を傾げたくなることがありました。 自民党の大家敏志議員が2023年1月の国会で 「育休・産休の期間に、リスキリング(学び直し)によって一定のスキルを身に付けたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、逆にキャリアアップが可能になることも考えられる」 と発言。 それを受け、岸田首相は 「育児中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々を後押ししていく」 と答えましたが、国会内外で批判を浴びました。 SNS上では 「育児は『休暇中』ではない」 「(育休中にリスキリングをしていたら)ママの負担が増えるだけ」 といった批判が巻き起こりましたが、私も同感です。 子育てはそんなに暇ではありません。 最近の岸田首相は眼鏡を取ったりして、イメージチェンジを図っているようですが、どうもピントが外れている。 ★新藤 「女性が活躍する社会」 とは耳に心地よいのですが、キャリアアップを望んでいない女性まで活躍させようとするのは間違い。 「専業主婦」=悪と見られていますが、そんなことは決してありません。 私自身は区議会議員としてキャリアを始めたので、妊娠・出産について悩むこともあります。 少子化対策を課題に挙げながら、女性の社会進出を強要するような風潮を作るのは矛盾です。 安心して家庭にいることができる社会という考え方も”多様性”の一環であり、 「女性ならでは」 の活躍でしょう。 ■不透明な中身 ★橋本 「異次元の少子化対策」 と言っても、中身については不透明で何も分かりません。 期待もできないでしょう。 とにかく女性が妊娠・出産を若い年齢の時から選択肢の1つとして入れられる社会にしてもらいたい。 出産可能年齢はどうしても決まっています。 でも、今の社会だと女性でも大学進学・就職するべきと考えられている。 若い時に出産し、その後、働きたいとか、柔軟な働き方ができるサポートを望みます。 ★新藤 それに、たくさん子供を産んでも、現行制度では見返り(報奨)がありません。 子供を産み・育てると、金銭面・体調面で負荷が掛かる。 たくさん産み・育てられるような制度を整備することは急務です。 橋本さんはSNSで子供の人数に応じて 「扶養控除にしてほしい」 と訴えられましたが、同感です。 後は所得制限を取り払ってほしい。 ★橋本 今の制度の多くはシングルマザーが得する構造になっています。 ★新藤 ええ、実におかしい。 更にシングルマザーで不安や鬱障害などの精神疾患を抱えていると認定されたら、所得控除の額が一気に増えます。 しかも優先して安い都営住宅に入居することができます。 港区の場合、湾岸エリアだったらタワーマンションのような所も都営住宅なので、月数万円で暮らせます。 そのように支援を受けるだけ受けて、それで生活しているシングルマザーが実際に居ます。 ★橋本 シングルマザーは、皆、港区に住みたくなりますね(笑)。 ■性愛の有無は関係ない? ★新藤 各自治体では、同性愛カップルにもシングルマザーと同じような優遇措置を取る所が増えています。 でも、一番お金が要る20代、30代の結婚している世代には回っていません。 ★橋本 不公平極まりない。 LGBT関連で地方自治体毎に条例がどんどん作られています。 ★新藤 ええ、今回のLGBT法は理念法と言っていますが、その法律によって地方自治体で独自の条例成立が加速する恐れがあります。 港区は2023年6月の議会で、同性パートナシップに対して婚姻関係と同等の手当てを認める条例案を可決しました。 今回は港区議員だけを対象にしていますが、今後は徐々に拡大していく可能性があります。 東京都から23区全体に通達があり、議案として上がり、進められた話です。 港区以外でも推進しています。 しかも同性パートナシップ制度は認定要件も各自治体で異なり、自治体間の情報共有もありません。 また既存の婚姻制度のように戸籍に一生残るものではないため、申請の心理的ハードルが非常に低いのです。 在住者でなければ認定されない場合や、さいたま市のように在勤・在学でもOKという場合やカップル同士で住む、もしくは片方在住でもいい、という場合もあります。 港区の議会では、 「性愛の有無は関係ない」 との”名言”も飛び出しました。 性愛がなくてもよいなら、制度の悪用を目的とした友達同士での申請も可能です。 ★橋本 不正が罷り通ってしまう。 ★新藤 しかも、虚偽の申告が判明しても、現段階で罰則規定はありません。 渋谷区の場合、公正証書なので刑法罰になるという意見もありますが、曖昧です。 実際に調査しようと一歩でも踏み込むと、 「人権侵害だ」 と批判される。 申請の重複も問題なくできてしまう可能性があります。 認定要件に 「社会一般で言う婚姻関係と同等であること」 とありますが、これは人により考え方が異なります。 既存の価値観に捉われない生き方を応援するためのものが、却って多様性を排除しているのではありませんか。 ★橋本 むしろ、LGBT当事者の方が、蔑ろにされている。 ★新藤 私は決して性的マイノリティの方の権利を否定したいわけではありません。 しかし今後、欧米のように過剰な保護により、社会の多くの人が不安と混乱に悩まされる事態を危惧しています。 男性・女性の定義も 「ジェンダーアイデンティティ」 などを持ち出して曖昧にしようとしている。 その一方で、どんどん制度を整備しているわけですが、将来どのように悪用されるか恐ろしい限りです。 ■性別は変えられない ★橋本 小学校の性教育でLGBTが積極的に取り上げられたら、どうなるのか。 自分の子供がそんな教育を受けることに懸念を抱くのは母親として当然です。 ★新藤 特に思春期の性教育は慎重にすべきです。 私は女子高出身ですが、多感な頃、異性が異質な存在として映っていました。 そんな中、 「私は女性の方が好きなんじゃないか」 と思い込んだこともあります。 実際に学校内でリアル・レズも盛んでした。 しかも、そういう女子たちは 「BL(ボーイズ・ラブ)」 にも嵌っていましたね。 ★橋本 ええ、大人になったら気持ちも落ち着き、男性と付き合ったり、結婚したりする。 ところが、若い頃、過度なLGBT教育を受けることで、性転換したいと、乳房の切除や、ホルモン投与を選択させられたらどうなるのか。 男性の場合は性器を切除することもある。 でも、手術をしたために元の体を取り戻せなくなったら、それこそ悲劇です。 実際に手術した後、後悔する人もいますし、ホルモン投与によって心臓に異常を来したり、関節や骨盤に痛み感じるようになり、ベッドから起き上がれなくなった例も海外ではあります。 『WiLL』2023年10月号の 「性別は変えられない」(ウォルト・ヘイヤー、聞き手:我那覇真子) は実に示唆に富んでいます。 ■法務省の人権意識の低さ ★橋本 ジェンダー平等やLGBT差別をなくそうという美名の下に、公金チューチュー制度がどんどん作られている。 実に憂慮すべき事態です。 実際に気になる動きがありました。 2023年10月11日、静岡家裁浜松支部では、遂に生殖腺の手術がなくても戸籍上の性別を変更できるという決定が出ました。 この事案は女性から男性への変更ですが、決定理由にはしっかりと2023年6月に成立した、LGBT法を根拠にしたことが述べられています。 この法律があるため、公共のトイレや浴場等施設の利用の在り方について社会で様々な議論があるものの、生殖腺手術要件について判断の可否を妨げるものではないと断言しています。 国会答弁で 「生物学的男性の女湯利用が認められるものではない」 などと言っていましたが、現実はこの通りです。 本当に恐ろしいことをしてくれたものです。 ★新藤 最高裁でも信じられない判決が出ました。 ★橋本 はい。 2023年10月25日に最高裁は、今までは性別変更には成人、現在独身、未成年の子供なし、生殖腺除去、希望する性別の性器に似た外観具備という5要件が必要でしたが、うち生殖腺切除を違憲だと判示しました。 ★新藤 今から約20年前、心の性別とは違う性器があるのは苦痛だから切除したいという人々の願いによって性別変更の法律ができたのに、20年経ったら今度は心の性別とは違う性器があることは全く苦痛ではなく、むしろ大切であるが戸籍上の性別表記が苦痛だという人々が現れ、最高裁がその訴えを認めたわけです。 本当におかしい。 ★橋本 今回は外観についての破棄差し戻しなので、今後は高裁で裁判をやり直しもあり得ます。 過去には2周つまり6審した例もありますから、確定的なことは言えませんが、少なくとも 「女性の父親」 や 「男性の母親」 が今後出現する可能性を最高裁は認めたと言えます。 女性の内性器とは違い、男性は外性器ですから 「外観具備要件」 さえ守られれば男性器は切り落とすか、股間に埋没させ縫合するため一応使用不能になりますが、これさえも違憲となれば、女湯や公衆女子トイレはもう女性が使用不可能になると言えるでしょう。 ★新藤 その理由には、やっぱり岸田政権が立法したLGBT法の存在が挙げられていますね。 全くとんでもない事をしてくれたと思います。 現在も、 「タック」 といって男性器を接着剤で股間に張り付け、女湯に侵入してくる男性がたくさんいますが、女性は怖くて何も言えない。 そうしたら最高裁は 「特に女性から抗議はなかったので問題ない」 と言う。 女性の人権を否定する限度がなく本当に怖い。 ■声が大きいフェミニスト ★橋本 一連の動きが推進される背景には一部のフェミニストたちや活動家などの声が大きいこともあります。 ジャニーズ(現在は「SMILE-UP.」に社名変更)の性加害問題についても、一部の活動家が署名運動する動きがありました。 例えば、任意団体 「PENLIGHT(ペンライト)ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」 がそうです。 ところが、 「PENLIGHT」 の正体は、韓国の慰安婦支援団体 「キボタネ」 であることがネット上で暴露されました。 フェミニズムも活発に発言しています。 『論点・ジェンダー史学』(山口みどり・弓削尚子・後藤絵美・長志珠絵・石川照子:編著/ミネルヴァ書房) が刊行されましたが、その中には 「ジャニーズと戦後日本」 というコラムも掲載されています(周東美材・著)。 「テレビ時代の茶の間(近代家族)の人気者となることを基本戦略とした」 「学生らしさ、可愛らしさを売りに、少女ファンばかりでなくその親にもアピールしていったのである」 と指摘していますが、ジャニーズ問題をジェンダー的観点から見ると、私はそこまで非難されるべきとは思いません。 というのも、日本の歴史を振り返ると、ジャニーズの一連の顛末は若衆歌舞伎と全く同じ構図です。 伝統芸能である歌舞伎は、最初、阿国(おくに)歌舞伎つまり女歌舞伎から発展しましたが、売春の横行によって寛永の頃(1624〜1644年)、取り締まりを受けました。 すると今度は、美少年を踊らせる若衆歌舞伎が台頭しましたが、まだデビュー前の 「陰の間」 にいるという意味で、美少年たちは 「陰間(かげま)」 と言われるようになった。 若い役者は出番もなく賃金も安いため、同性愛者のパトロンが付き、性的奉仕の対価に金銭的支援やデビューのサポートをしたのです。 「陰間(かげま)茶屋」 といって美少年を抱く専門のラブホテルまで建設され、幕府の許可を得て江戸市内に50カ所以上建てられ、天保の改革(1841年 - 1843年)で性病蔓延を理由に禁止されるまで続きました。 つまり、明治が始まるほんの26年前まで、日本では同性愛産業が活発だった。 ★新藤 そのような伝統があったのですね。 ■人権式の低い法務省 ★橋本 若衆歌舞伎は風紀の乱れをもたらしたため、幕府は重く見て慶安の頃(1648年〜1652年)に禁止し、以後、現代と同じく美少年の要素を排した野郎歌舞伎になります。 女歌舞伎は「AKB48」など美少女アイドルとして、若衆歌舞伎は「ジャニーズ」として現代に連綿と続いてきたのです。 美少女と美少年という2つの娯楽要素を取り除いたものが現代の野郎歌舞伎というわけです。 こうした歴史的観点から見れば、ジャニーズの性的な問題は非難に値しないのではないでしょうか。 ジャニーズの喜多川氏の特殊な性癖を別にすれば。 ★新藤 ジャニーズに入所させる親も、ある程度の覚悟はあったのではないでしょうか。 ジャニー喜多川氏の性加害については、噂が蔓延していましたから。 それでもスターになって、華やかな道を歩んでいるアイドルもいます。 ★橋本 もちろん、そうは言っても江戸時代と違い基本的人権の観点から見れば、御法度であるのは言うまでもありません。 特に、ウイグル民族強制労働による生産品を非難してきた立場から言えば、人権侵害を黙認してきたジャニーズを広告として企業が採用するのは看過できないでしょう。 特に最悪なのが、法務省が少年の人権擁護啓発でジャニーズを使い、この問題が露呈した後もしばらくジャニーズを使っていたことです。 法務省の人権意識の低さにはいつも驚かされます。 ■日本はジェンダー平等社会 ★新藤 そもそも今回のジャニー喜多川氏の性加害問題が大きく取り上げられるきっかけとなったのが、英BBCのドキュメンタリー番組 「プレデター(邦題・J・POPの捕食者)」 が放映されたためです。 制作を担当したモビーン・アザー記者は、日本のメディアにも登場し、 「日本のメディアが何十年もこの問題を無視し続けてきたことは、非常に問題です」 「事務所が何十年も力を持っていた、それは危険な事です」 「1つの組織や会社が何をニュースにすべきか、何に沈黙するかについて決める力を持つべきではない」 と発言しました。 外国の目を気にして、日本のメディアの対応が変化したと見えても仕方がありません。 ★橋本 実に情けないですね。 LGBT法にしても外圧が大きく作用した結果と言えます。 日本では、未だに 「欧米では〜」 と、 「出羽守(でわのかみ):他者の例を引き合いに出して物事を語る人」 的な発想が根強くあります。 欧米諸国で新しい価値観が出て来たら、それが正しいとすぐに飛びついてしまう。 一方で、日本人のそういうメンタリティを理解し、逆輸入させようとする日本人がいることも無視できません。 ★新藤 欧米の価値観が、日本人の幸せに繋がるかどうか、しっかり判断すべきです。 英国では公共のトイレを全てジェンダーレストイレにした結果、性被害が横行し、女性がトイレに行けなくなる事態に発展、結局、撤去されました。 日本はそういう動向を冷静に見るべきです。 ★橋本 新宿・歌舞伎町のジェンダーレストイレは、僅か4カ月で廃止されました。 ★新藤 当然の結果です。 ところが、日本は欧米の失敗例を積極的に取り入れようとする。 不思議で仕方ありません。 ★橋本 2023年版 「ジェンダーギャップ指数」 が発表されましたが、日本は146カ国中125位で、過去最低に後退したと大騒ぎする。 気にする必要はサラサラないのに。 こんなことを言ったら驚かれるかもしれませんが、日本ではジェンダー平等は既に実現しています。 それは運転免許を見れば分かります。 欧米諸国では女性が運転できるようになるまで大変な道のりがありましたが、日本では大正時代に男女同時に運転免許が交付されました。 また、女性の大学入試自体も大正初期からで(東北大学は1923年、九州大学は1925年、北海道大学は1930年、大阪大学は1935年)、そもそも女子大もあります。 欧米はとにかく男女を同じフィールドに入れることをジェンダー平等と定義しますが、日本では男女それぞれに特権があることでジェンダー平等を担保しています。 これは漫画の世界でも同様です。 欧米は1つの作品内に男女平等を盛り込もうとしますが、日本ではそもそも少女漫画という分野があります。 欧米は少女が経済力を持つことはなかったので少女漫画なる分野はほとんど存在せず、一方、日本では少女漫画雑誌が何十誌とある。 ★新藤 『論点・ジェンダー史学』(山口みどり・弓削尚子・後藤絵美・長志珠絵・石川照子:編著/ミネルヴァ書房) では、橋本さんが指摘されるような日本の性の歴史や観点がすっぽり抜け落ちています。 結局、欧米の流れを主流と捉え、そこから抜け出すことができないでいる。 ★橋本 実に浅い見方ですね。 真っ当なジェンダー論、今後ともよろしくお願いします! 世間知らずの最高裁 このままでは変態大行進 性別適合手術を受けずとも性別を変えられる?! この判決は日本に禍根を残す WiLL2024年1月号 美容研究家・トランスジェンダー 岡江美希 ■親から貰った身体が一番 私は22歳の時、性別適合手術(性転換手術とも)を受け、男性性に別れを告げました。 私はニューハーフ(出生時は男性の身体で生まれたものの、自分の事を女性と認識している人)つまり、トランスジェンダーであり、LGBTの当事者でもあります。 なぜ性別適合手術を受けたのか。 私自身は幼い頃から、精神的な性と身体的な性の不一致が原因で生きづらい思いをしていました。 当時、男に生まれたのだから男らしくしなければならないという考え方が普通で、女性化へのモラル的抵抗もありましたが、一方で、どうしても男性である自分を受け入れられず、女性になりたいという思いもあった。 思春期の頃は、自分の身体が大人の男性になっていくことへの嫌悪感がたまらなかったのです。 小中学校の修学旅行では、男性であることが嫌でたまらず、男風呂に入ることに抵抗があった。 成人し、性別適合手術を受けた時は 「やっと女性になることができた」 と気持ちが晴れ晴れとしたものです。 しかし、それから30年近く経ちますが、実感しているのは親から貰った身体が一番であるということです。 胸を作るためシリコンを入れますが、身体が拒絶反応を起こすので痛みが酷く、シリコンも硬くなったりするので、マッサージは必要です。 人工膣を作っても癒着が始まり、膣口が浅くなって性行為がしにくくなります。 それだけ性別適合手術は危険であり、身体のケアが他の人の何倍もかかってしまう。 世の中ではLGBTに対して寛容であれという風潮が蔓延していますが誤った知識で捉えられることに懸念を覚えます。 ■”無知な寛容”は危険 そんな私は、今回の最高裁の判決を非常に危惧しています。 今回の最高裁の判決では、戸籍上の性別を変更するために、生殖能力をなくす規定(生殖能力要件)が憲法に違反するかどうかが争われ、最高裁は2023年10月25日、規定を違憲、無効とする判決を出しました。 これまでは 「性同一性障害特例法」 に則り、性別適合手術をしていることが、性別変更において分かり易い条件であったのですが、今回、手術の必要がないという判断を最高裁は下した。 私は驚きました。 確かに、生殖腺(卵巣や精巣)の除去は身体に強い負担をかけることになりますし、性別適合手術にかかる経済的負担(手術方法により費用は様々だが、概ね100万〜200万円ほどかかる)を考えると、自由に性別が選べるようになることは良いことのように思えます。 でも、私は、身体を女性化すべく、性別適合手術を受けたくて受けたわけですが、これまで性同一性障害と診断された人は、性別適合手術をしなければ、自分の人生を開拓することができませんでした。 性別変更に手術が不要となると、これまで高い手術費用と手術に伴うリスクを覚悟して手術した人たちにとっては、やらなくてもいい手術をやったことになる。 これまでの 「性同一性障害特例法」 は何だったんだと不満が残るのは確かです。 しかし、そんなことは瑣末な問題であり、最も恐れなければならないのは、今回の最高裁の判決(性別適合手術なしで、性別の変更が可能になったこと)を悪用したい人が必ず存在するということです。 今回の判決を下した最高裁は、自分たちが理解できる範囲でしか物事を理解しようとしていない。 この判決を喜ぶ性犯罪予備軍の存在を無視しているのか、あるいは気付いていないのか。 LGBT法の成立以後、社会全体に蔓延りつつある”無知な寛容”は非常に危険です。 自由や平等、個人の解放といった 「性善説」 のみで人間を捉えてしまっては、どういった危険があるのか考えようとしなくなる。 世の中には、自分では理解の及ばないような人たちだっているわけです。 最高裁はそういった所まで配慮しているのか疑問が残ります。 実際に、性別適合手術をして、女性が男性になっても男性のことが好きになったり、男性が女性になっても、結局、女性のことを好きになったりする人がいるのを見てきました。 肉体を女性化したとしても女性が好きだったり、肉体を男性化したとしても男性が好きな人がいる。 つまり、手術した後であっても、恋愛対象が同性になることが普通にあるのであれば、性別の変更に手術の必要をなくしてしまうと、確実に 「性モラルの崩壊」 を招いてしまいます。 ■稲田さん、言ってた事と違う これまで、性別変更は、性別適合手術をしていることが分かり易い条件でした。 では、手術の必要がなくなれば、どうやって性別の判断を行っていくのでしょうか。 「変態が大手を振って街を闊歩できる世の中への足掛かりとなってしまう」 今回の最高裁の判決では私はこのように感じました。 既に問題は表面化しています。 最高裁の判決後、1カ月も経たないうちに、恐れていた事件が起こりました。 2023年11月13日、三重県桑名市の温泉施設の女湯に侵入したとして建造物侵入の疑いで43歳の男性が現行犯逮捕されました。 男性は、女湯に入ったことを認めた上で 「心は女性なのに、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか理解できない」 と話しているらしい。 LGBT法の成立を推し進めた稲田朋美議員は、かつて 「心が女性で身体が男性の人が女湯に入るということは起きない」 と発言していますが、この事件をどのようにお考えなのでしょうか。 性のモラルの低い人たちが、性別を自由に変えてしまう。 一部の人間の歪んだ社会的に認められない欲望の被害者は、常に女性です。 人間を見た時に、男女の違いさえ分からなくなるというのは、女性にとって恐怖でしかないと思います。 性自認を悪用する人たちにとって、性の多様性なんて言葉は、喜びでしかない。 男(と思った人)と出会っても男ではないかもしれない。 女(と思った人)を好きになっても女ではないかもしれない。 トランスジェンダーと教えられずに性行為をし、子供ができた後に、カミングアウトされた場合、生まれてくる子供はどうなるのでしょうか。 問題はそれだけではありません。 例えば、妻も子もいる男性が、離婚したいとなった。 そこで性自認を悪用し、 「実は言ってなかったんだけど、僕は女性なんだ」 と言って離婚に持ち込むケースも出てくるかもしれない。 ■性別は他人の問題でもある 大前提として男性と女性では、身体的特徴(体の作り)からして、差があり過ぎるのです。 事実、男性の身体に恐怖を覚える女性は一定数いますが、女性の身体に恐怖を覚える男性は極端に少ない。 先述した三重県桑名市の温泉施設の女湯に男性が侵入した事件が、仮に女性が男湯に侵入していたらどうなっていたでしょうか。 事件化すらしなかったと思います。 この、性差における非対称性が消えない限り、精神的な性と身体的な性を自由に選ぶことができるとは思えません。 私は、心の性別は別として”持って生まれた性”に対する責任を持つことが大切だと考えます。 何故なら、ほとんどの人が 「生殖能力」 を保有しているからです。 生殖能力とは、男性で言えば、パートナー(女性)を妊娠させる機能であり、女性で言えば、妊娠・出産する機能のことですが、人間がこうした機能を持っている限り、新しい命への責任が伴います。 であれば、心が男か女かの前に、自分が生物学的にどちらの性を保有しているのかしっかりと自認し、それによって起こり得るリスク(妊娠)をしっかりと理解するべきです。 自分の生殖能力への責任として、これまでの特例法通り、戸籍上での性別変更を望む場合は、性別適合手術を行う。 つまり生殖能力を断つべきです。 特に男性が女性になりたい場合は、絶対に 「女性化」 が必要です。 女風呂に入ったとしても違和感がないくらいの女性化は必要でしょう。 分かり易く言えば、男性器はない方がいい。 何故なら、相手の女性に不安を与えてしまう恐れがあるからです。 また、精巣の除去は男性ホルモンの分泌を減少させるため、性的衝動を抑えるのに極めて効果的です。 常識的に考えて、皆さんは青髭の生えたおじさんを女性として見ることができますか。 男性であっても女性であっても青髭のおじさんを女性と見ることはできないはずです。 つまり、性別とは、個人の問題でもありますが、同時に 「周り(他人)の問題」 でもあるのです。 人間は生きていく上で、他人がいて、その他人に配慮することが 「思いやり」 です。 ジェンダーにおいてもそうした周囲への思いやりを持つことが大切なのではないでしょうか。 今回の判決で今後困るのは、手術なしで性別変更を求める当事者ではなく、周囲の人間だということ。 これまでお付き合いしていた人が、突然 「私は女だから、女性として扱ってください」 と胸を張って言われた時、周囲の人間がそれを素直に受け止めて納得することができるのでしょうか。 むしろ、周りの人が苦痛を強いられてしまいます。 LGBT法や今回の最高裁判決では、トイレやお風呂といったことばかり取り沙汰されていますが、もっと低次元の話で苦痛を感じる人間も現れてくる。 私は自分の性自認を他人に押し付けてくる人間をたくさん見てきました。 男性のまま女性を気取っている人の有害さを知っています。 私の体験に基づくと、彼らは、人に合わせることをせず、自分勝手な人が多い。 納得させるまで自分の性自認を言い続けるので、自己主張も強いのです。 ジェンダーを振りかざす人ほど迷惑な人はいません。 だからこそ、今回の最高裁判決に懸念を覚えるのです。 行き過ぎた寛容性は、悪戯な混乱を招くことを肝に銘じるべきです。 最高裁をも籠絡したLGBT活動家 Hanada2024年1月号 元参議院議員 松浦大悟 ■歴史を大きく変える裁判 最高裁大法廷では、2003年に作られた性同一性障害特例法が憲法違反に当たるかどうかの審査が行われていた。 戸籍の性別を変更するには、5つの要件が課されている。 @18歳以上の成人であること Aその段階で結婚していないこと B未成年の子がいないこと C生殖機能がないこと D変更後の性別の性器部分に似た外観があること だ。 このうちCとDを達成するには性別適合手術を行わなければならず、健康な体にメスを入れることは人権侵害だとの訴えを受けてのものだった。 もし、CとDに違憲判決が出れば、ペニスが付いていても女性、子宮が付いていても男性として、国は制度を整えなければならない。 申し立て人は、身体男性のトランス女性。 2019年に起こした裁判では、岡山家裁と広島高裁岡山支部は共に変更を認めなかった。 最高裁も、4年前の2019年は手術を合憲としている。 ところがこの間、欧米の潮流は変わってしまった。 自分の性別は自分で決めるというイデオロギー、 「トランスジェンダリズム」(性自認至上主義) が席巻したのである。 今回の裁判も、その流れの中にあった。 案の定、最高裁は2023年10月25日、4号要件である 「生殖腺の除去」 について、個人の尊重を定めた憲法13条に反しているとの判断を示した。 最高裁は、5号要件である 「外観」 については憲法判断を避け、高裁に差し戻した。 しかしこの件について、トランスジェンダーで群馬大学准教授の高井ゆと里氏は、SNSに次のように投稿している。 <特例法。差し戻しの高裁では、5号要件が違憲判断となることがほとんど完全に確定しています。法曹の方に目安を伺いましたが、およそ半年くらいで、違憲判断が出ます> 何故か、LGBT活動家サイドでは内部の関係者しか知り得ない情報が出回っており、裁判官と裏で繋がっているのではないか、と疑いの眼差しが向けられている。 ■今後の展開は深刻だ 判事の1人、草野耕一氏が代表を務めていた西村あさひ法律事務所は、有名な活動家である松中権(ごん)氏が代表の 『work with pride』 に審査料を数万円払い、職場でのLGBTに関する取り組みが評価される 「PRIDE指標」 において、2020年から4年連続でゴールドを受賞している。 岸田総理は参議院予算委員会で、公明党の谷合正明議員の質問に答え、最高裁判決を 「厳粛に受け止める必要がある」 と述べた。 この法律は議員立法であるが、今、超党派で議論すれば何年経っても決着はつかない。 よって岸田総理は、4号5号要件削除を閣法(国会で、内閣が提出した法案のこと。内閣提出法律案。内閣発議立法。政府提案の立法。政府提出法案。)で提出してくる可能性がある。 谷合議員の母、谷合規子(のりこ)氏は埼玉県で新座市議を務め、どの政党よりも早くトランスジェンダーを支援してきた人物である。 そうした経験から、トランスジェンダーには公明党支持者が多い。 解散総選挙に向けてポイントを稼ぎたい公明党と、支持率低下に喘ぐ岸田政権の利害は一致しているように感じる。 岸田総理は軽く考えている節があるが、今後の展開は深刻だ。 まず、国賠訴訟(国家賠償請求訴訟)がなされるだろう。 戸籍変更のため性別適合手術を受けた人は1万人以上おり、 「やらなくてもいい手術をやらされた」 と不満を漏らす声が出てきている。 トランスジェンダーは極貧生活を送っている人が多く、手術にかかった莫大な料金を取り戻そうと考えてもおかしくない。 事実、スウェーデンとオランダでは国家賠償(国家賠償請求訴訟)を行った。 次に、戸籍表記の問題が出てくる。 現在は性別を改変したとしても最終的に国家が追跡できるように、手術を行った者の身分事項に 「平成15年法律第111号3条による裁判確定日〇年〇月〇日」 と記入されている。 こうしたトレーサビリティ(追跡可能性)は当事者の安全を脅かすとして、活動家は削除を要求している。 国会では、出生時の履歴を完全に抹消することの是非が必ず議論になる。 更には、マイナ保険証の問題も浮上してくる。 性別欄に、身体的性別ではなく性自認での性別を記載して本当に大丈夫なのか。 男女それぞれに特有の疾患もある。 患者の身体的性別が分からない中で診療し医療過誤が起これば、今度は医師が訴えられることになる。 一体、この裁判の背景には何があるのか。 以下、詳しく見ていこう。 ■代理人は有名な活動家夫夫 最高裁判決後に記者会見した代理人の2人の弁護士ー。 南和行弁護士と吉田昌史弁護士は 『同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』 という本も出版している有名なゲイカップルであり、今回の裁判だけでなくLGBTにおける様々な訴訟に関与している人物だ。 特に南弁護士は、2015年にアメリカ国務省から招聘され、オバマ政権の下でLGBT研修を受けている。 2013年には、ゲイである筆者たち4人が第1期生としてスカウトされ訪米したが、翌翌年2015年に選ばれた5人が南弁護士たち第2期生となる。 次世代のLGBT運動のリーダーを育成するための研修である。 約3週間に渡って行われるこの研修は、飛行機代は無料。 旅の始めにキャッシュカードが渡され、ホテル代や食事代、お土産代はそこから思うままに支払うよう申し渡される。 至れり尽くせりのアメリカ国務省プログラムの目的は何か。 それは、自由や多様性といったアメリカの価値観を全世界に広げるために、阿吽の呼吸で動いてくれるエージェントを育てることにある。 要は、ソフトパワー戦略の一環だ。 筆者たちがそこで習ったのは、社会の動かし方だ。 @メディアを使え A司法を使え Bアライ(支持者)を増やせ という3つの方法で、アメリカは社会変革を成功させた。 研修生たちは帰国後、それを日本で実践しているのだ。 最近、とみに増えたLGBTドラマには、全てLGBT活動家が監修に関わっている。 南弁護士も、同性愛カップルの親権問題を扱った映画 『his』 の監修を行っている。 これらは@を忠実に実行していると言えるだろう。 また、南弁護士は、情報番組にも数多く出演している。 2023年6月には大阪のABC朝日放送が制作している『正義の味方』でLGBT法案について解説し、その際の発言が物議を醸した。 「みんな大好き杉田水脈議員ですけどね、西宮が生んだ大スター」 「この人が(LGBT理解増進法の採決時に衆議院本会議を)欠席にとどめたというところは、僕は『この法律知らんかった。ごめん』という意味があったと思うんですよ」 「今迄の杉田さんだったら、ここでここぞとばかりに、この政治問題を『人、傷付けること言うたんねん』っていう場に使ったり、自分の炎上アピールに使わはったと思うんです」 「でも、『あっ、そんなんしたら私がアカンっていう風に思われるな』って思ったから、今回スッと欠席にとどめはったんやと僕は思うんです」 この揶揄に、同番組のレギュラーコメンテーターであるお笑いタレントのほんこん氏は激高し、すかさずツッコミを入れた。 「先程ね、先生がね、杉田さんのことを炎上とか言うてはったけど、俺は炎上でも何でもないと思ってるし、杉田さんが言うてたことは一文取られてね、報道されてる部分がある」 「『切り取り』であるから、それは全部読んであげたら分かることやし」 「そういうこともあるから、それもこうやって言うてたらヘイトになるじゃないですか」 「そういうことやと思うんですよ、何でも」 実は、この番組から最初にオファーを受けたのは筆者だった。 台本まで送られてきていたが、前夜にはプロデューサーから電話があり、キャンセルしたい旨を告げられた。 理由は、選挙が近いので日本維新の会秋田1区支部長の筆者を出すわけにはいかないとのことだった。 だが、レズビアンを公表している立憲民主党の尾辻かな子元議員は選挙前に同性結婚式を開き、テレビ各局は大特集を組んだ過去がある。 控えめに見ても、整合性に欠ける話だ。 そして、代わりに登板したのが南弁護士だったのである。 LGBT活動家は、 「松浦を使うな」 と方々のメディアに勧告しているやに聞いている。 自分たちとは違う意見をマスコミに流通させないことも、@の戦略なのである。 ちなみに南弁護士は、ほんこん氏に叱責された後、すぐに 「杉田さん、ごめん」 と謝罪し、その率直で誠実な姿を見た視聴者から、SNSで一定の評価を受けている。 ここが彼の凄い所であり、リスクマネジメントも含めた適応力の高さは流石だと言える。 南弁護士はロースクールに通わず、独学で司法試験に合格した叩き上げである。 彼のような人たらしの活動家たちが、メディアで、司法で、あるいはNGOで、日本のLGBT運動を牽引している。 テレビプロデューサーを懐柔することなど、赤子の手を捻るより容易いのである。 ■薄っぺらなパターナリズム 冒頭に記した通り、最高裁の判事たちも、LGBT活動家に折伏(執拗に説得して相手を自分の意見・方針に従わせること)されている蓋然性が高い。 筆者は月刊『Hanada』2023年10月号で、最高裁の戸倉三郎長官が2023年5月3日の憲法記念日の定例会見において、大法廷の判事たちにLGBT研修を受けさせると述べたニュースを紹介した。 「可哀相なトランスジェンダーを救えるのは我々しかいない」 と鼻息を荒くしているのだろうが、彼らの薄っぺらなパターナリズム(強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援すること)が眼鏡を曇らせているのだ。 まず押さえておかなければならないのは、性同一性障害特例法の対象は性同一性障害者であり、トランスジェンダーではないということだ。 性同一性障害者は、身体の性別と性自認が一致しないので苦しくて仕方がない。 故に、手術してまでも身体の性別を性自認に近づけようとする人のこと。 一方、トランス女性/トランス男性は、身体の性別と性自認にそれほどの違和感はない。 故に、異常装をしたり化粧をしたりすれば手術しなくても生きていける人のことである。 性同一性障害者をトランスセクシュアル(身体的性別を越境したい人たち)、トランス女性/トランス男性をトランスジェンダー(社会的性別を越境したい人たち)と区分けすれば分かり易いだろう。 このトランス女性/トランス男性の活動家たちが 「戸籍変更のために性別適合手術を強制することは国家による断種だ」 と叫んでいるのだが、むしろ性同一性障害者は手術がなくなると困るのである。 彼らにとって子宮を取り除くことが断種でない証拠に、次のようなエピソードがある。 筆者が参加した2018年のGID(性同一性障害)学会では医師が登壇し、子宮移植への協力を呼び掛けていた。 子宮が原因で懐胎(子をはらむこと。身ごもること。懐妊。妊娠。)できない女性は日本に6〜7万人いる。 子宮を臓器移植するしかないが、現行の臓器移植法は脳死の人からの子宮提供を認めていない。 たとえ合法となったとしても脳死ドナーは少なく、万一、遺体から取り出す場合でも生命維持臓器が優先されるので、新鮮な子宮は望めない。 そこで医学会が注目したのが、FTM(「女性から男性へ」の略)の人たちだ。 現在、FTMの人たちは、高い金を払って年間700〜800個の子宮を除去してもらっているが、もしドナー登録が可能になれば、タダで手術できることになる。 逆に、子宮提供を受ける側は2000万円かかるが、それでもウィンウィンの関係であることは間違いない。 アンケートでは、8割のFTMが協力の意志があるという。 取り出した子宮は、FTMにとってはただのゴミであり、通常はそのまま廃棄される。 これが、性同一性障害者にとっての子宮という臓器に対する感覚なのである(2023年10月、日本医学会の検討委員会は、子宮がない女性に対し、子宮の生体移植を認める報告書をまとめた)。 ■特例法ができた経緯 元々、性同一性障害特例法は、海外などで性別適合手術を受けていた性同一性障害者たちが、外見が変わっているのに元の性別で生活するのは困難なので戸籍の性別を変えてほしいと2001年に家庭裁判所に要求したところ、却下されたことから始まっている。 戸籍法第113条では 「その記載に錯誤」 があれば訂正を申請することになっており、多くの当事者はこれを利用しようとした。 ところが裁判官は、 「戸籍の記載に錯誤があるとは言えない」 と、にべもなく突き放した。 それで当事者たちは立法府に泣きついたのである。 恐らく、この時の贖罪意識が裁判官たちにはある。 性同一性障害特例法を作った中心人物は、南野知惠子(のおのちえこ)元法務大臣(現在87歳)だ。 助産師だった南野氏は、当事者の話を聞いているうちに赤ちゃんを取り上げた時の記憶が蘇り、 「私が出生証明書の性別欄に『男』とマルを付けた人が、成長して女になりたいとしたら・・・」 「不幸な生活を送る人の力になりたい」 と、自民党内をまとめたのであった。 手術は国が強いたわけではなく、ずっと前に手術によって体を変えていた人を救済するための法律だった。 ただし、手術をしたからといって生物学的に女性/男性になれるわけではない。 特例として、 「法律上は女性/男性と見做す」 としているだけなのだ。 それは、困った人たちを助けながらかつ社会秩序を壊さないための保守派のアイデアだった。 裁判官が活動家からどんな 「ご講義」 を受けたか知らないが、国民的コンセンサス(複数の人による合意)も取れていない性別の定義変更(ペニスが付いていても女性/子宮が付いていても男性)を一部のエリートだけで行おうとしているのなら、それは驕りと言う他ない。 ドイツでは1年間の期間をおけば、自己申告で何度も性別をチェンジできる。 我が国も、そんな 「先進国」 を目指すのだろうか。 ■男が妊娠・出産?! では、自己申請だけで性別変更が出来るようになると、社会はどうなるか。 北海道千歳市では2023年、男性が妊娠・出産した。 トランスジェンダー男性のゲイと、シスジェンダー男性のゲイの同性カップルから、赤ちゃんが誕生したのである。 「トランスジェンダー男性のゲイ」 というのは、身体は女性だが性自認が男性、そして好きなる対象も男性という人のことだ。 「シスジェンダー男性のゲイ」 というのは、身体は男性で性自認も男性、好きになる対象も男性という人のことだ。 つまり、トランス男性のゲイは子宮を除去していないので、シス男性のゲイと性交すれば子供が出来るのである。 当初、このトランス男性は性同一性障害と診断され、胸を切除し、ホルモン治療を続けていた。 いずれ子宮と卵巣も取る予定だった。 だが、妊娠が分かったことで 「産みたい」 との欲求が高まり、ホルモン療法を中止した。 札幌医科大学附属病院の担当医師は、 「心が男性の人であれば妊娠は希望しないはずだと思っていた」 「女性の体で生まれたが、男性として生きることを望む人が妊娠したというのはどういうことだろう」 「身構える感じはあった」 と、地元テレビ局の取材に答えている。 妊娠・出産は、自分が女性であることを一番感じなければならない行為だ。 女性であることが耐えられなくて男性に移行しようとしていた人が、何故それを受け入れることが出来るのか、疑問が湧いて来る。 その点について担当医師は何度も質問し確認しようとしたが、このトランス男性は口ごもり言葉を濁すのだそうだ。 取材した女性記者は 「妊娠・出産は女性だけのものではない」 と胸を張るものの、果たしてそのような整理の仕方で良いのだろうか。 リベラリズムは自由を際限なく拡張する。 しかし、どこかに 「定礎」 がなければ、人も言葉も国家も液状化していく。 ■悲劇を生む活動家の聖典 「自分が、男性だと思えば男性/女性だと思えば女性」 という考え方の源流は、ジョグジャカルタ原則にある。 2004年、イギリスでは世界で初めて、医療行為なしで法的に性別変更できるジェンダー承認法を成立させた。 その2年後の2006年、キングス・カレッジ・ロンドンのロバート・ウィンテミュート教授たちが、インドネシアのジョグジャカルタに集まり作成した国際文書がジョグジャカルタ原則だ。 法的拘束力はないが、世界中に多大な影響力をもたらした。 第3原則にはこう書いてある。 <各々が自分で定義した性的指向や性自認は、その人の人格と一体化しており、自己決定、尊厳、自由の最も基本的な側面の1つである> <何人も、自らの性自認を法的に認めるための要件として、性別適合手術、不妊手術、ホルモン療法などの医療行為を受けることを強制されない> これを 「医療モデルから人権モデルへ」 という。 つまり、科学的根拠は関係ないということだ。 以降、欧米を中心とした国では、男性器の付いた人でも自分が女性だと言い張れば女性となった。 性自認を第三者が否定することは差別となった。 ところが、ジョグジャカルタ原則を作った本人のウィンテミュート教授は、近年になって悔恨の念を述べている。 2006年当時は、セルフID(自己申告での性別)について理解が進んでいなかった。 男性器を持ったままの人が女性の空間にアクセスするとは誰も考えていなかった。 その後、イギリスでは女子刑務所に入り込んだトランス女性がレイプを繰り返したり、国1番の規模を誇るタビストック・ジェンダークリニックで1000人以上の少年少女が誤診によって第2次性徴抑制剤を投与されてしまったりしたため、2023年10月、遂にリシ・スナク首相がテレビカメラの前で演説する騒動にまでなった。 <我々は 「人間はなりたい性別になれる」 と無理矢理信じ込まされるべきではありません> <そんなことは出来ないんです> <男は男、女は女> <それが常識なんです> ロシアや中国の首相が演説しているのではない。 イギリスの首相がスピーチし、国民から拍手喝采されている所を公共放送のBBCが報道しているのだ。 これが世界の最先端の動きであり、日本のLGBT報道は10年遅れている。 トランスジェンダーの苦悩は分かる。 だがそれは、もう一方の当事者である生得的女性たちの苦悩を無視して良いことにはならない。 我々は、イデオロギーによって女性概念を人工的に改変するのではなく、トランスジェンダーのまま差別されずに生きていける社会を目指すべきではないだろうか。 LGBT異常判決と「電通利権」 Hanada2023年10月号 元参議院議員 松浦大悟 ■本当に「可哀相」か 男性器の付いている経済産業省トランスジェンダー職員(戸籍上は男性)が女子トイレを使用させてほしいと要求した。 ところが、勤務するフロアから2階以上離れた場所しか認められず、人事院に処遇の改善を求めたものの退けられたため国を訴えていた裁判で、最高裁はトイレの使用制限をした国の対応は違法だとの判決を出した。 今、多くのLGBT当事者から 「この裁判はおかしい」 との声が上がり始めている。 一体どこが問題なのか、ゲイを公表して政治活動を行っている筆者が考察してみたい。 マスコミは、原告の経産省職員のことを 「7年以上にも渡る法廷闘争の末、逆転勝訴した可哀相なトランス女性」 として伝えたが、実態は違う。 彼女のツイッターでのアカウント名は 『わきまえないトランスジェンダー 霞が関にゃんにゃんOL』 といい、市井のLGBTの間では有名な存在だった。 これは裏アカではなく、れっきとした本アカである。 「キンタマキラキラ金曜日」 「ちんちんフラフラFRIDAY」 が彼女の決め台詞だ。 <女性でヘテロで彼氏か旦那さんがいるのなら、夜はちんぽ咥えて、つっこまれて喜んでいるんでしょ?> といった卑猥な投稿を繰り返し、閲覧した人は 「これがあの原告なのか?」 と誰もが眉を顰めていた。 批判してきた人には <夜道に気をつけてね> <駅のホームも端っこには気を付けてね> と脅し、 <愚民どもは社会のシステムや法が分かっていないからな。やはり我々エリートの支配階級が正しい方向に指導してやらないといけない> と、臆面もなく本音を漏らす。 その”エリート”である彼女は、上司から 「(男性器を除去する)手術をしないんだったら男に戻ったらどうか」 と助言されたことに傷付いたとして1年間休職したが、国家公務員の身分は手厚く保証されており、休んでいる間も出勤していた頃と遜色のない額の給料を貰っていたという。 そもそも、彼女は 「手術を受けるためにRLE(*)が必要なのだ」 として女子トイレの使用を要求していたのであり、手術を受けないのであれば話は変わってくる。 *日本精神神経学会の「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」では、身体的治療を希望する者は、治療を行う前に移行先の性別での生活を行ってみる(実生活経験=RLEを行う)ことが推奨されている。 ■診断書の入手、実は簡単 生物学的女性たちが訝しく思っているのは、 「なぜ彼女は頑なに手術を拒むのか」 という点である。 「健康上の問題」 との説明がなされているが、どのような健康上の問題なのか、詳細は明らかにされていない。 また、判決文には <血液中における男性ホルモンの量が同年代の男性の基準値を大きく下回っており、性衝動に基づく性暴力の可能性が低いと判断される旨の医師の診断を受けていた> と書かれているのだが、ツイッターの投稿を見る限り、とてもそうは思えない。 本当にこの診断は正しかったのかどうか、最高裁は担当医師を呼んで確認すべきではなかったか。 実は、性同一性障害の診断書は簡単に入手できる。 本来なら時間をかけて診察しなければならないのだが、たった1日で診断書を書いてくれる医者が何人もいて、ネットではどのような受け答えをすればスムーズにいくのかマニュアルさえ出回っている。 身体的治療に移るためには2名以上の医者からの診断書が必要だが、セカンドオピニオンにおいても1回でOKを貰える場合が多い。 元SMAPの草場剛氏がトランス女性役を見事に演じ切った映画『ミッドナイトスワン』にも、商業主義に陥り、3分診療で診断書を出すジェンダークリニックの姿が描かれている。 「『性自認』は自己判断だからダメだが、『性同一性』は厳格な審査基準があるので女性の安全を脅かさない」 というのは、現場を知らない者の戯言に過ぎない。 精神科医によると、確かに 「性同一性」 の診断には、 その性別でどのくらいの期間を過ごしているかという 「時間軸」 と、 第三者から見てどのような性別に見えているかという 「社会軸」 が加味される。 しかしながら、24時間クライアントを監視カメラで見ているわけではないので、結局のところ、彼らの主観ベースの話を信じるしかないのだという。 自分史を書かせる医療機関もあるが、これさえも本当かどうか確かめる術はないのである。 経産省職員の彼女は自分のことをトランス女性だと自己規定しているが、そもそも性同一性者とトランス女性はイコールではない。 性同一性障害者、体の性別と性自認が一致しないため苦しくて仕方がない。 だから、自分の体にメスを入れてさえも性自認に体の性別を近付けていこうとする人たちのことだ。 しかし、トランス女性は違う。 身体的性別と性自認の乖離に違和感はあるものの、手術をするほどの苦しみはない。 そのトランス女性の彼女が性同一性障害の診断書を持っていたことで、最高裁は見誤ったのではないか。 ■裁判への布石だった? この訴訟は個別事案であり、直ちに公共施設全体に適用されるものではないという補足意見は付いたが、名古屋市、千葉県、茨城県などでは 「今回の判決を踏まえた対応をしていきたい」 と担当者が取材に答えている。 これは考えてみれば当然であり、同様の訴えを起こされれば最高裁まで戦っても負けることが証明されたわけで、行政職員として瞬時にコスト計算をしたのだとしても不思議ではない。 こうした動きについて、我が国では特段大きな反発の声は出ておらず、国民は概ね良好に受け取っている。 今後は中央政府や地方政府に倣う形で、小・中・高校や大学、民間施設に至るまで、横並びの対応が取られていくだろう。 今回の判決は、このような世間の反応を見るために最高裁が打ち上げたアドバルーン(観測気球)だったのではないか、というのが筆者の推測だ。 なぜなら最高裁大法廷では、今 「性同一性障害特例法」 が課している 「手術要件」 についての違憲審査が行われており、2023年9月27日には申立人側の意見を聞く弁論が開かれる。 こうした家事事件において、最高裁が国民に公開する形での弁論を開くのは初めてのことだという。 身体は男性で性自認が女性の申立人は、高額の手術費や後遺症への不安から精巣の摘出手術は受けていない。 最高裁は世論の涙をバックに、一気呵成に 「性別の定義変更」 を図ろうとしている可能性がある。 最高裁の戸倉三郎長官は2023年の憲法記念日における記者会見で、最高裁判事にLGBT研修を受けさせる旨を述べている。 経産省トイレ裁判の判決文には異例にも、5人の判事全員による意見が付されており、その内容が 「まるでLGBT活動家のようだ」 と、一般のLGBT当事者からも訝しがられている。 男性器の付いたトランス女性が女子トイレを使用することに不快感を持つなら、それはそう感じた女性の方がおかしいのだから、その人には研修を受けさせるべきという意見は常軌を逸している。 一体、裁判官は誰のLGBT研修を受けたのか、国民には知る権利がある。 裁判官の判断に影響を与えているわけだから、これは重要な情報だ。 国会議員は是非最高裁を呼んで、ヒアリングをしてほしい。 筆者が講師として招かれた 「性的マイノリティに関する特命委員会」 には最高裁の事務方が出席し、高階恵美子委員長から意見を求められていた。 三権分立とはいえ、最高裁を呼べない理由はない。 なぜ筆者がそこまで言うかというと、トランスジェンダー当事者の意見は真っ二つに割れているからである。 手術要件廃止派の一方的意見だけ聞いているとしたら、大問題だ。 キリスト教圏に影響を受けた日本のLGBT活動家は、生殖腺を取り除く性別適合手術を国家による 「断種」 だと言い募り、LGBT後進国の日本は非人道的な性同一性障害特例法を廃止しろと叫ぶ。 だが、この法律を欧米のような文脈で語るのは筋違いだ。 1964年に起きたブルーボーイ事件は、男性器を切除する手術を行った産婦人科医が優生保護法によって逮捕された事件である。 それ以降、我が国においては、性を移行したい者にとっての希望が断たれることとなった。 もちろん、これは拷問が目的だったわけではなく、当事者の苦悩に寄り添った結果としての手術だった。 そのことを当事者たちはよく分かっていた。 しかし、手術を受けた人たちが男娼だったため、センセーショナルに伝える週刊誌によって、性転換に負のイメージが付けられてしまった。 それから幾年、やっと手術が合法になったのが2003年。 性同一性障害特例法の成立を、多くの当事者は涙を流して歓迎したのだった。 ところが、そこから取りこぼされた人たちがいた。 手術をするほどの苦痛がないトランス女性/トランス男性たちである。 手術しなければ戸籍上の性別を変更できないこの法律では自分たちは救われないとの不満を抱えながら、それでも 「1人でも多くの仲間が助かるなら」 と利己を押し殺して法案の成立に合意したのだった。 だが、その思いは限界に達した。 当時は主流派ではなかった彼らが今、世界的な潮流に乗り、主客交代劇を繰り広げているのである。 「今度は俺たちが幸せになる番だ」 と。 しかし、手術要件がなくなってしまうと、今度は性同一性障害者たちが困ってしまう。 手術は 「医療」 ではなく 「趣味」 で行うものと見なされ、 「美容整形と何が違うの?」 と言われるからだ。 当然、安倍政権で導入した保険適用も廃止になる。 2021年現在、性別適合手術を受けた人は約1万1000人に達する。 社会の中で、男性/女性として真っ当に暮らしているこの人たちの人生を否定してはならない。 ■確信犯で嘘を付く 性別適合手術を廃止し、自己申告だけで戸籍の性別を変更できるよう要求しているのは、性同一性障害者ではなくトランス女性/トランス男性の活動家である。 彼らにしても、伊達や酔狂でやっているわけではない。 自分が信じる正義のために必死なのだ。 社会をグレートリセットさせるためなら少々の嘘は許容範囲だ、と思っている節がある。 例えば 「LGBT法連合会」 という団体は、LGBTの代表でも何でもないただの民間組織だ。 だがマスコミは、それを当事者代表の声として報道する。 2023年3月には、トランス女性へのデマが広がっているとして 「法律ができても、トランス女性は女湯や女子トイレに入りません」 と記者会見したのだが、スピーチに立ったトランス男性である杉山文野自身が戸籍の性別とは違う浴場やトイレに侵入しており、そのことを知る筆者たち関係者は、テレビの前で一斉に椅子から転げ落ちた。 渋谷でのレインボーパレードを主催しているNPO法人 「東京レインボープライド」 共同代表でもある杉山文野氏は自らのツイッターで、男湯に入って歌舞伎町の市川海老蔵氏と遭遇したことを報告している。 同じ内容を海老蔵氏のブログでも確認できるので、是非読んでみてほしい。 タイトルは『男湯に女いた』。 胸を切除しているが子宮は摘出していない杉山氏は、戸籍上は女性だ。 LGBT理解増進法施行に伴い、厚生労働省は 「公衆浴場の男女別は身体的特徴で判断を」 と通知を出したものの、日本で一番有名なLGBT活動家である杉山氏を警察は逮捕できるはずがない。 そんなことをすれば、国際的スキャンダルになるだろう。 杉山氏は信念の下に男湯や男子トイレを使っているのであり、今後もやめることはない。 厚労省の通知は無意味なのだ。 また、身体が男性のトランス女性が女湯に入っていることも、筆者たち当事者の間では常識だ。 「股間タック」 という言葉で検索してみてほしい。 睾丸を指で体内に入れて恥骨に引っ掛け、余った皮で包んで接着剤で止めれば女性器そっくりになる。 そのまま女湯や女性トイレに入っても恍惚とした表情で自撮りをしている画像が、SNSでいくらでも発見できるだろう。 東大教授のクィア学者、清水晶子氏はこれを 「埋没した棘」 と表現し、 「今だって彼女たちは女性スペースに存在する」 「でも女たちは気付いていない」 「気付かないのだからいいじゃないか」 という趣旨の論文も書いている。 よく保守論壇は、戸籍とは違う性別の浴場やトイレを利用する是非について、 「自分たちはトランスジェンダーを差別しているのではない」 「犯罪者との見分けがつかないことを問題にしているのだ」 といった議論をする。 だが、それは本質からずれている。 真の問題は、トランスジェンダーの当人たちが、既にそうした場所に入っているという事実だ。 経産省のトランス女性職員も、省内のトイレは理解が得られず使えなかったが、デパートなどの民間施設では当然女子トイレを利用しているとツイートしている。 三省堂の国語辞典は、2022年版から「男」「女」の項目を変えた。 <生まれたときの身体的特徴と関係なく、自分はこの性別だと感じている人もふくむ> としたのだ。 このように既成事実が積み上がっていき、最高裁は 「社会は変わった」 との最終判断を下すことになる。 ■りゅうちぇる氏の死 タレントのりゅうちぇる氏が自殺した。 そのこと自体は大変残念で悲しい出来事であるが、それに乗じて多様性の素晴らしさを説く生前の彼の言葉を何の躊躇もなく放送することはWHOの自殺報道ガイドライン違反に当たるため、厳に慎まなくてはならない。 自殺者を称賛することは、自殺の連鎖に繋がるからだ。 そして、それによって性同一性障害者の本当の思いが覆い隠されようとしていることにも注意を喚起したい。 りゅうちぇる氏は、同じくタレントのぺこ氏と結婚し、子供をもうけていた。 ところがその後、男性が好きだという気持ちが大きくなり、離婚。 どんどん容姿の女性化が進み、胸も膨らんでいった。 そんな彼に、SNSなどを通して誹謗中傷が届くようになる。 「子どもが欲しいからといってぺこに産ませておいて。女の人生をなんだと思っているんだ」 「家事も育児もぺこに押し付けて自分だけ綺麗になって。男だからできるんだよ。同じことを女がやったらバッシングの嵐だ」 など。 こうした心無い批判が原因で死に至ったと多くのコメンテーターは分析したが、性同一性障害者からは、そうではなくホルモン療法が原因だったのではないか、との問題提起がなされている。 男性から女性になるためには女性ホルモンを投与しなければならないが、ホルモン注射は精神のバランスを崩し、うつ病となって自殺するケースも少なくない。 人によって合う合わないが激しく、長年に渡り偏頭痛に苦しむ人もいる。 りゅうちぇる氏に必要だったのは 「あなた、綺麗ね。素晴らしいわね」 と持ち上げる表面上の友ではなく、 「ちょっと変化が早過ぎるよ。1年かけて考えてみたら?一旦ストップしようよ」 と警鐘を鳴らす真の友だったのだ。 しかし、保守派の性同一性障害者、奥田幸雄氏は、それでも愚行権としてホルモン注射を認めてほしいという。 「真の同一性障害は死んだ性同一性障害だけ」 と言われるくらい性同一性障害の時点で希死念慮はあり、これはホルモン以前の問題だ、もとより死は覚悟している、と。 言われてみれば確かにそうで、自分の体が苦痛でたまらない当事者たちは、親指を噛み切ったり、ガソリンをかぶって焼身自殺したりする。 見るに見かねた医師たちが、 「それだったら」 とホルモン注射を打ち始めたのだった。 打たなくても地獄、打っても地獄は承知の上だった。 こうした当事者の激烈な思いと向き合うことなく、ここぞとばかりに 「多様性」 や 「ダイバーシティ」 の必要性を煽る左派メディアは、無責任と感じる。 NHKで放送されたドイツのドキュメント番組『レインボーファミリー』は、母親が女性を好きになり離婚したことを美談として伝える。 異性愛者の夫婦であれば不倫となり、LGBTであれば褒め称えるというのは、二重規範以外の何物でもない。 婚姻の途中にジェンダーアイデンティティが変わることはないとは言えないが、子の福祉のことを考えると、りゅうちぇる氏の死を利用した 「ショックドクトリン」 によって、拙速に最高裁で性別の定義変更が行われないように切に願う。 ■LGBTにおける歴史戦 安倍晋三元総理は、拉致問題や慰安婦問題、佐渡金山世界遺産登録問題などで歴史戦を戦ってこられた。 月刊『Hanada』2022年6月号では、 「歴史戦で厄介なのは、日本の内部に敵がいること」 とおっしゃっていた。 筆者は、LGBTにおいても歴史戦が始まっていると感じている。 杉山文野氏は、複数のLGBT活動家と共に安倍元総理と会食をしている。 安倍元総理は筆者に、 「誰だか分からないが、昭恵が会ってくれと言ったから会ったんだよ」 とおっしゃっていた。 LGBT活動家は自らを保守と偽り、政権の中枢にまで入り込んでいるのである。 また、LGBT活動家には野党側の活動家だけではなく、自民党側の活動家もいることは案外知られていない。 LGBT理解増進法が成立後、自民党側の活動家のものと見られる音声がSNSで拡散され、大炎上したことがあった。 法律ができれば、学校や企業の講演会などで自分の所に大きな利権が回って来るという内容だ。 LGBT理解増進法の真の目的は、地方自治体でやりたい放題のLGBT活動家の動きを止めるためだと自民党は説明するが、野党側の活動家に代わって自民党側の活動家が元締めとなったところで、利権を貪る主体が変わるだけだ。 だいたい、LGBT理解増進法で左派の動きが止まるとも思えない。 その根拠は、野党側の活動家と自民党側の活動家の比率だ。 筆者の肌感覚で、99.5%対0.5%といったところだ。 これから学校や企業での研修を全国展開するには、左派LGBT活動家の力を借りるしかないのだ。 何故なら、彼らしか人材がいないからである。 そんな彼らが、これまでの主張を変えるはずがない。 石川県では、荒井秘書官の発言で岸田首相を謝罪に追い込んだLGBT活動家、松中権(ごん)氏が多様性条例有識者会議のメンバーになっており、 「LGBT理解増進法は地方の条例を縛るものではなく、運用上はこれまでの流れを受けて『性自認』という言葉を使っても良いということをきちんと明記すべきだ」 と発言している。 松中氏は前出の杉山氏と親友であり、杉山氏の女性パートナーに精子を提供し、子供を2人もうけている。 当初、杉山氏は女性パートナーと2人で生活を送るつもりだったが、途中で松中氏に父親心が芽生え、今では3人親として子育てをしている。 アメリカでは同性婚が認められた次に、こうした多重婚の婚姻形態を求める裁判が起こされている。 LGBT理解増進法は制御装置ではなく、LGBTイデオロギーを更に加速させる機能を果たす。 一旦導火線についた火を消すことはできないのである。 ■時給2000円で活動家が 松中氏は 「電通」 出身であり、各広告代理店は今後10年を見据えて動いている、と筆者は想像している。 通常、電通は自民党側、博報堂は野党側の担当なのだが、LGBTにおいては捻じれ現象が生じている。 元電通マンの松中氏が野党側に付き、自民党側には博報堂から出向しているゲイ当事者が付いているからだ。 こうした状況からも、自民党側の活動家が野党側を排して覇権を握ることは困難だと分かる。 いずれは電通の力を背後に持つ松中氏がピラミッドの頂点に立ち、全てを統合する。 自民党側の活動家は、おこぼれを貰うことで精一杯だろう。 LGBT利権についてよく例に出されるのが、一般社団法人 「社会的包摂サポートセンター」 が行っている国の自殺対策委託授業 「よりそいホットライン」 だ。 これを作ったのは、当時民主党政権だった福山哲郎議員。 自殺率の高い秋田県の筆者がPTの事務局長を担当した。 2013年の落選後、筆者にLGBT部門の電話相談員にならないかと誘いがあった。 しかし、面接と実地試験を受けたところ、筆者は見事に落とされたのである。 当時の時給は2000円。 朝から晩までLGBT活動家がシフトに入り、それだけで生活費を賄っていた。 公明党や共産党の市議も、お小遣い稼ぎをやっていた。 こうした事情を筆者に知られたくなかったのかもしれない。 問題は、情報がクローズドで行政事業レビューができないことだ。 筆者が出た電話には、妊娠出産したレズビアンから 「そろそろ浮気をしたいのだがどうすればいいか」 といった相談や、 「統合失調症ゆえに自分をゲイだと思い込んでいる男性が精神病院から電話をしてくる」 といった事案が目立った。 こうしたリピーターが多いので、本当に相談を必要としている人には繋がらないという欠点もあった。 利権と言えば利権に相違ないのだが、そんなレベルではない大きなお金が今後は動いていくだろう。 LGBT法 自民支持層の7割が反対「女性スペース守られない」「議論が拙速」 「くらするーむ政治部!」 2023/11/20 15:30 https://www.sankei.com/article/20231120-EFBL3IELIZA7BHNGZ7VEW24KB4/ 産経新聞グループのマーケティング会社「産経リサーチ&データ」は、岸田政権が2023年6月に成立させ、施行したLGBT理解増進法の是非について調査した。 その結果、「反対」「どちらかと言えば反対」が61.2%に上り、その理由(複数回答)は 「女性スペースの安全が守られないと思うから」 が79.8%で最多だった。 自民党支持者に限っても「反対」「どちらかと言えば反対」は69.6%と全体よりも高く、保守層を中心に批判的な傾向が目立った。 同社のウェブ上のアンケートモニターサイト「くらするーむ政治部!」の登録者を対象に2023年11月17日午後〜20日午前まで実施、全国の1751人(男性1238人、女性513人)から回答があった。 LGBT法の是非については 「反対」(40.4%)、 「どちらかと言えば賛成」(30.3%)、 「どちらかと言えば反対」(20.8%)、 「賛成」(8.6%) の順で約6割が反対側だった。 男女別では、 男性の「反対」が47.2%でより高かったが、 女性は 「どちらかと言えば賛成」(43.1%)、 「反対」(24%)、 「どちらかと言えば反対」(22%)、 「賛成」(10.9%) の順で、賛成側が過半数を上回っていた。 「反対」「どちらかと言えば反対」の理由を3つ選ぶ設問は、全体では 「女性スペースの安全が守られないと思うから」(79.8%)、 「法律制定までの議論が拙速だったから」(64.3%)、 「立法化するほどのLGBT差別が日本にはないから」(53.2%) の順。 男性はほぼ同様の傾向だったが、女性はトップの 「女性スペースの安全が守られないと思うから」 が84.7%で突出していた。 賛成側の理由は 「LGBTに対する理解が進むから」(88.2%)、 「立法化したほうがよいLGBT差別が日本にはあるから」(63.1%)、 「小中学生のうちから性の多様性について知ってほしいから」(50.4%) が男女共に上位を占めた。 支持政党別では、反対の立場が自民支持(69.6%)、日本維新の会支持(61.2%)と保守系政党の支持層で高く、「支持政党なし」層では42.1%だった。 自民支持層の反対理由は、全体の傾向とほぼ同様だった。 一方、 「女性用の公衆トイレや公衆浴場に、身体は男性で心の性別は女性の方が入ることについてどう思いますか」 の問いでは、男女ともに「反対」(54.5%)が最も多かったが、男性(57.4%)より女性(47.4%)のほうが割合は少なく、「仕方がない」と答えた女性も16%いた。 また、 「手術などで外形的特徴が女性であれば構わない」 は男性30.7%、女性34.7%だった。 回答者全体の政党支持率は「積極的支持」「消極的支持」を合わせると、自民38.2%、立憲民主3.5%、維新14%、国民民主2.6%、支持政党なし25.8%。 岸田文雄内閣の支持率は「支持する」「どちらかといえば支持する」は30.4%だった。 自民支持率は前回調査(2023年11月3日〜6日)の40.8%から2.6ポイント、岸田内閣の支持率は35.9%から5.5ポイント減り、2023年7月の調査開始以来最低となった。 通常の世論調査は、調査エリアごとの性別・年齢構成になど合わせて、電話番号を無作為に発生させるRDD方式で電話をかけ、回答数が得られるまで調査を行うなどの手続きを踏むが、「くらするーむ政治部!」ではインターネットアンケートのみに限定、国民の「今感じていること」に焦点を当て、スピード感を持った調査に取り組んでいる。 今回調査の年齢の割合は60代31.9%、50代23.4%、70代22.8%、40代11.5%、30代4.1%で50代以上が多かった。 「心は女」事件、稲田朋美氏の回答に有本香氏が怒りの反論=u誠意あるとは思えない…『逮捕されたからいい』で済ますのか」 2023.11/18 15:00 https://www.zakzak.co.jp/article/20231118-WYBKMNGAZNNM3JU6ENF6T7VBX4/ 稲田氏回答をジャーナリスト・有本香氏が指弾! 三重県桑名市の温泉施設で 「心は女」 と主張する男が女性風呂に侵入した事件は、LGBT理解増進法の慎重派・反対派が懸念する事態が現実化したものだった。 夕刊フジが同法制定に積極的だった自民党の稲田朋美衆院議員に見解を聞くと、 「事案の詳細を承知しませんが、理解増進法とは関係ないようです」 との回答だった=回答全文は別稿。 同法の問題点や、女性や女児に被害が及ぶリスクを追及し、稲田氏に説明責任を求めていたジャーナリストの有本香氏に聞いた。 「言葉尻の問題かもしれないが、事案を承知しない≠ネらば、関係あるかないかも分からないはずだ」 「この回答からも誠意ある対応とは思えない」 と語った有本氏。 桑名市の事件で男が逮捕されたことが報じられると、稲田氏が2023年4月2日にX(旧ツイッター)で発信した 「心が女性で身体が男性の人が女湯に入るということは起きない」 との投稿が掘り起こされ、批判の声が集まった。 稲田氏は夕刊フジの質問状に回答を寄せたが、内容はこれまでの主張から踏み込んだものではなかった。 有本氏は 「今回のような事案は立法の時点から懸念されていたことだ」 「こうしたことの想像や予測もできずに立法をされては困る」 「稲田氏は法律家(弁護士)でもある以上、問題から逃げてはならないのではないか」 と指摘する。 厚労省は2000年に出した 「公衆浴場での衛生管理要領」 で、 「概ね7歳以上の男女を混浴させないこと」 と定めているが、LGBT法施行を受けて、施設側が身体的な特徴の性によって男女を判断することを容認する通知を改めて出した。 稲田氏は回答で管理要領について触れ、 「(身体的な男性が女性風呂に入ることは)法制定前も後も犯罪であるということをX上などで繰り返し申し上げてきました」 と説明している。 ただ、有本氏は 「管理要領よりも法律の方が上位にある」 「公衆浴場側が利用を拒否しても『差別』として訴えられる可能性も否定できず、犯罪者に免罪符を与えることになる」 「既に女性は裸を見られるという被害≠受けた状態だ」 「稲田氏周辺で同様の事件が起きた場合、『逮捕されたからいい』という考えで済ますのか、本人に聞きたい」 と強調する。 LGBT法に懸念を示し、 「女性スペース」 を守る法律の制定を求める声もある。 今後の稲田氏の 「責任」 について、有本氏は 「性転換した人や女装する人も包摂してきた日本社会には、LGBTに関する法律は不要だが、少なくとも法改正は必要だ」 「同様の事案が相次いで起きれば、LGBTに関する偏見を助長し、理解増進とは逆の方向に進みかねない」 「誤りは認め、是正するのが政治家の良心ではないか」 「議員バッジを外してほしいという思いもあるが、稲田氏自らの手で取り組んでほしい」 と語った。 稲田朋美衆院議員の回答全文は次の通り。 ◇ 事案の詳細を承知しませんが、理解増進法とは関係ないようです。 公衆浴場や温泉施設の利用に関して厚労省が管理要領を定めており、男女の判断基準は身体的特徴によるものとすることになっています。 これは理解増進法が制定される前後で全く変更はありませんし、法制定前も後も犯罪であるということをX上などで繰り返し申し上げてきました。 いずれにせよ犯罪行為に対して、引き続き厳正に対応していくことは当然です。 現実化した「心は女」事件を受け、自民・稲田朋美氏が回答「LGBT理解増進法とは関係ない」 慎重・反対派の対応策は 2023.11/17 11:48 https://www.zakzak.co.jp/article/20231117-P57FMCHY35LKPGG4CZ5ZUCXQYA/ 三重県桑名市の温泉施設の女性風呂に 「心は女」 と主張する男が侵入した事件が波紋を呼んでいる。 多数の慎重・反対論を押し切り2023年6月に施行したLGBT理解増進法については、 「性自認は女性」 と主張する男性が女性スペースに入り込み、女性や女児に危険が及ぶリスクが指摘されている。 推進派だった議員は、懸念された事態が現実化したことにどう答えるのか。 慎重・反対派は如何なる対応策を進めるのか。 それぞれに聞いた。 「事案の詳細を承知しませんが、(LGBT)理解増進法とは関係ないようです」 夕刊フジが2023年11月16日、同法制定に積極的だった自民党の稲田朋美衆院議員に事件への受け止めを聞いたところ、稲田氏側は書面でこう回答した。 稲田氏は2023年4月2日、X(旧ツイッター)上で 「心が女性で身体が男性の人が女湯に入るということは起きない」 などと書き込んでいた。 三重県の事件では、男は女装で侵入し、 「心が女なので、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか全く理解できない」 と供述しているという。 事件を受け、インターネット上では稲田氏の発信や姿勢に批判が集まっている。 夕刊フジは質問状で 「説明機会を設けるか」 や、 「法整備など今後取り組むべき課題」 についても聞いた。 稲田氏は従来の主張を崩さなかった=回答全文は別稿。 ■滝本弁護士『トランス女性』が女性風呂に入りやすい雰囲気になった 女性の安心安全を目指す 「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」 の世話役を務める滝本太郎弁護士は 「理解増進法により、性自認が女性で体が男性の『トランス女性』が女性風呂に入りやすい雰囲気になったことは認めざるを得ないのではないか」 「司直も逮捕や起訴に及び腰になったり、身体検査や収監の際に厄介な問題も生じかねない」 「厚労省の管理要領は公衆浴場についてのものだが、今後は女子トイレも課題となる」 「女性スペースを守る法整備が急務になる」 と語った。 ■片山氏「女性の不安を取り除く明確な対応策が必要だ」 事件を受け、夕刊フジのインタビューに応じた自民党の片山さつき元地方創生担当相は 「今回のような事例の発生は当然、想定された」 「弱者である女性のスペースを確保する法律、ガイドラインを早急に整備せねばならない」 と強調した。 片山氏は同法成立前、今回のようなリスクに警鐘を鳴らしてきた。 施行後は、自民党有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 を立ち上げ、トイレや更衣室などでの「女性専用スペース」の確保や、女性競技への参加を生来の女性に限るための取り組みを進めている。 最高裁は2023年10月、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律の要件について、違憲と判断した。 三重の事件のようなケースで警察が難しい判断を迫られる恐れがある。 片山氏は 「LGBT理解増進法の成立後、三重県のような件が増えたとの指摘がある」 「最高裁の判断も社会の認識に影響を与える可能性がある」 「女性の不安を取り除く明確なメッセージ、対応策が必要だ」 と語った。 ■稲田朋美衆院議員の回答全文は次の通り。 ◇ 事案の詳細を承知しませんが、理解増進法とは関係ないようです。 公衆浴場や温泉施設の利用に関して厚労省が管理要領を定めており、男女の判断基準は身体的特徴によるものとすることになっています。 これは理解増進法が制定される前後で全く変更はありませんし、法制定前も後も犯罪であるということをX上などで繰り返し申し上げてきました。 いずれにせよ犯罪行為に対して、引き続き厳正に対応していくことは当然です。 有本香の以読制毒 「心は女」の男、女性風呂に入って逮捕 LGBT法をゴリ押しした議員に説明を求める 稲田朋美氏はなぜ馬鹿げたことを 2023.11/16 11:32 https://www.zakzak.co.jp/article/20231116-EZZQ5V2RARKBFCKIW7BGTSRA4U/ 恐れていたことが遂に起きた。 2023年11月13日、三重県桑名市にある温泉施設の女性風呂に入ったとして、43歳の男が逮捕された一件だ。 男は女装して受付を通り、浴場で体を洗っていたという。 逮捕後、男は 「心は女なのに、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか、全く理解できません」 と供述しているという。 2023年6月、国会で強引に可決成立させられたLGBT理解増進法の理念≠ニやらに則り、仮にこの一件が不起訴にでもなれば、今後警察は類似事件での逮捕を躊躇するようになるだろう。 同法が、その後の、性別を巡る最高裁判決にも影響したことを考えれば当然の帰結である。 天下の悪法によって、日本の女性、女児の安全が脅かされつつある。 女性は温泉はもちろん普通の銭湯や、公衆トイレも容易に利用しにくくなる。 ネット上のX(旧ツイッター)では、 「稲田朋美」 「稲田さん」 がトレンド入りした。 LGBT理解増進法制定に積極的だった、自民党の稲田朋美議員の発言映像とX投稿が掘り起こされ、 「責任を取れ」 という声が溢れた。 稲田氏の発信はこうだ。 「公衆浴場における衛生等管理要領では浴場と脱衣所は男女を区別することになっています」 「厚労省によればこの男女は身体的特徴による区別を指します」 「従って心が女性で身体が男性の人が女湯に入るということは起きません」 「また理解増進法を制定することでこのようなルールが変わることもありません」 (2023年4月2日のX) 稲田氏が 「起きません」 と断言したことが、今、起きている。 もっとも、市井の国民の多くはこうした事態が起きることを当たり前に予測していたのだが、弁護士資格を持つ、法律のプロである稲田氏は何故、こんな馬鹿げたことを言ったのだろう。 ふと13年前、中国資本による土地買収の件で、稲田氏にインタビューした時の事を思い出した。 新潟で浮上していた中国総領事館の用地買収問題について、氏はこういった。 「法律はこちらにとって良いように読めば(解釈すれば)いいんですよ」 「条約だって同じ」 「日本の国益に適うように読めばいい」 私はこの発言を頼もしく思う一方、危うさを感じた。 稲田氏はLGBT理解増進法制定の過程でまさに、 「自分にとって良いように」 公衆浴場のルールを読み、法律案を読もうとしていたのではないか。 自民党の熱烈支持者の中には、 「変質者は逮捕されたのだから問題ない」 と強弁する人々がいる。 これこそ、とんでもないことだ。 本来、ルールは社会の秩序を守るために制定されるもの。 その大原則が一部の者の思い込みや利益のために歪められるなら、これは私たちの社会の重大な危機である。 稲田氏をはじめとするLGBT理解増進法をゴリ押しした議員、特に与党議員らに説明を求める。 そして、もちろん法改正を求める。 ダンマリを決め込むなら、国会議員のバッジを直ちに外してもらいたい。 性自認に基づく性別変更制度導入を否定 自民有志の議員連盟が声明「日本にはそぐわない」 2023/11/9 18:53 https://www.sankei.com/article/20231109-YDU7VYTRKZPFLFEKCKNOW64O2A/ 自民党有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 は2023年11月9日、国会内で総会を開き、海外の一部で導入されている、性自認に基づく性別変更を可能とする制度に否定的な声明を取りまとめた。 「心理的な性別だけで性別変更を認める制度は、日本にはそぐわない」 と指摘した。 戸籍上の性別変更の際に生殖能力の喪失を要件にした性同一性障害特例法の規定を憲法違反と判断した最高裁の2023年10月の決定については 「何らかの法改正を行う必要がある」 と明記した。 ただ、生殖不能要件が撤廃されれば、妊娠や出産が可能な戸籍上の男性が登場しかねず、声明は 「現行の多くの法令との整合性が取れない事態に陥らないか」 として関連省庁を挙げた対応を求めた。 法改正の議論では、生殖不能要件撤廃の妥当性や、新たな要件の可否などを検討する方針も示した。 議連の片山さつき共同代表は総会の冒頭、最高裁決定について 「性別の取り扱いの変更と社会一般の受け止めの調整を図り、立法府の責任を発揮していく」 と述べ、議連として対応に力を入れる考えを強調した。 自民・女性守る議連「心理的性別だけで性別変更そぐわない」手術不能要件違憲決定に 2023/11/9 14:50 https://www.sankei.com/article/20231109-FUOKJUBEJJGNPPYJG5PPOVV3C4/ 自民党有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連) は2023年11月9日、性自認に基づく性別変更を可能とする 「ジェンダー・セルフ・ID制」 の導入に否定的な声明をまとめた。 「心理的な性別だけで法律上の性別変更を認める制度は、LGBT理解増進法が成立したばかりで理解増進の流れを醸成していく段階にある日本にはそぐわない」 と指摘した。 議連は、最高裁が2023年10月25日に性同一性障害者が性別変更する上で生殖能力の喪失を要件とする性同一性障害特例法の規定を憲法違反と判断したことを受け、国会内で会合を開き、声明をまとめた。 約20人が参加した。 最高裁の決定に伴い、与党内では特例法の改正など対応に当たる必要性が共有されている。 一方、 「生殖不能要件」 が完全に撤廃されれば、妊娠や出産が可能な法的な男性が登場しかねない。 声明も、 「何らかの法改正を行う必要がある」 とした上で、 「現行の多くの法令との整合性が取れない事態に陥ることとならないか、危惧される」 と指摘し、内閣の責任で関連省庁を挙げた法令の調査の必要性を訴えた。 議連の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相は会合の冒頭、 「性別の取り扱いの変更と、社会一般の受け止めの調整を図りつつ、立法府に身を置く者の責任をフルに発揮しないといけない」 と強調した。 共同代表の山谷えり子元拉致問題担当相は、 「先行する欧米が修正する混乱に周回遅れで敢えて突っ込み、社会的分断や対立を起こすことにならないかを考えねばならない」 と訴えた。 <独自>千葉県の多様性条例案、LGBTに「懸念」175件 意見公募の内容判明 2023/11/7 21:26 https://www.sankei.com/article/20231107-PW4RQ3NHGNPKHNJOWJBQFB6364/ 千葉県が 「(仮称)千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」 の骨子案へのパブリックコメント(意見公募)への意見提出状況をまとめたことが2023年11月7日、分かった。 669人・団体が提出し、延べ1279件の意見があったとしている。 2023年12月議会に条例案を提出する方針の県は、各会派に2023年11月8日、意見提出状況など条例案について説明する予定。 意見提出状況では、単純な賛成、反対の集計は困難であるとして、主な意見に分類し、件数(暫定値)などを紹介している。 主な意見の内訳では 「条例の趣旨に賛同」47件、 「条例制定後の施策への期待」42件、 「条例制定に対する懸念(外国人関係)」81件、 「条例制定に対する懸念(LGBT関係)」175件、 「『性自認』の文言を修正・削除すべきとの意見」42件、 「条例化する必要性がないとの意見」112件、 「時期尚早・議論不足との意見」58件、 「社会の活力向上や活躍よりも、その人らしく生きられることや生きづらさの解消を重視すべきとの意見」155件、 「差別禁止や罰則規定を設けるべきとの意見」44件、 「男女共同参画条例に関する意見」56件。 趣旨に賛同では 「在住外国人が増える中、今まさに必要とされている」 など2つの意見を紹介した。 施策への期待では 「性別を問わず、法律婚を選ばなかったカップルの権利を守るパートナーシップを県全体で認めていただく流れになることを期待している」 といった3つの意見を紹介している。 一方、外国人関係の懸念では 「外国籍の人による様々な問題が起きており、課題解決が先ではないか」 など2つの意見を載せた。 LGBT関係の懸念に関しては 「性自認を主張するだけでそれが尊重されることには反対」 「一般的な県民や女性や子供の安全な暮らしが損なわれ性犯罪などの可能性が増加してくると思われ不安」 など2つの意見を記している。 条例化する必要性がないとの意見では 「日本は元々多様性に富んだ国柄なので、わざわざ条例は作る必要はない」 など2つを紹介した。 その他として、 「東京2020五輪・パラリンピック県内開催、成田空港の機能強化、道路ネットワークの整備進展は、多様性尊重と関係ないのではないか」 といった3つの意見が示されている。 集計では、参考値として女性407▽男性211▽団体21▽不明30−から意見が寄せられたと明記している。 県政策企画課は取材に対し、 「2023年11月22日の議会開会の前には集計結果の詳細を公表したい」 と応えた。 性別適合手術は受忍限度内の措置 正論 2023年12月号 麗澤大学教授 八木秀次 「性同一性障害者の取扱いの特例に関する法律」(特例法)は、家庭裁判所が性同一性障害者の請求によって、その者の性別の取扱いの変更を審判する際に5つの条件を定めている。 @18歳以上であること(年齢条件) A現に婚姻をしていないこと(未婚条件) B現に未成年の子がいないこと(子無し条件) C生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(生殖不能条件) Dその身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること(外観条件) 5つの要件を全て満たし、性同一性障害に係る医師2名の診断書の提出がなされれば、家庭裁判所はその者の性別を変更する審判をすることができる。 審判を受けた者は、民法その他の法令の適用について、他の性別に変わったものと見做され、変更した性別による婚姻や養子縁組等が可能となる。 尚、審判前に生じた身分関係や権利義務関係への影響はないとされている。 2020年末までに性別の取扱いの変更を行った者は累計で1万301人になる(「日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会」調べ)。 5つの要件のうち、CDを合わせて性別適合手術と言うが、現在、最高裁でその合憲性が争われている。 大法廷が2023年10月25日に決定を出す予定になっており、2023年9月27日には申立人(男性)側の弁論が行われた。 判断次第では手術要件が撤廃されるが、親子関係などの社会秩序や性別で区別される制度・慣行を揺さぶり、社会を大きく混乱させる可能性がある。 性別適合手術とは、精巣や卵巣などの生殖腺の切除(C)と、例えば、男性から女性への性別移行には陰茎の切除(D)を指す。 女性から男性への性別移行には男性ホルモンの投与で陰核が肥大し陰茎に近似した形状になるため、男性から女性への性別移行よりも負担が少ない例が多い。 性別移行には身体を傷付ける手術を必要とすることから憲法13条(個人の尊重、幸福追求権)と14条1項(法の下の平等)に反すると主張されている。 2023年10月12日、静岡家裁浜松支部は 「生殖腺を取り除く手術は、生殖機能の喪失という重大で不可逆的な結果をもたらすもの」 で、 「性別変更のために一律に手術を受けることを余儀なくされるのは、社会で混乱が発生する恐れの程度や医学的見地から見ても、必要性や合理性を欠くという疑問を禁じ得ない」 と、Cの生殖不能要件を違憲とし、無効とする決定を出した。 最高裁判断に先立ったもので注目される。 ■性自認と生殖能力は別物 最高裁は同じテーマについて2019年1月23日、第2小法廷で 「現時点では、憲法13条、14条1項に違反するとまでは言えないものの、その疑いが生じていることは否定できない」 としたため、約5年後に改めて大法廷で結論を出すことになった。 2019年時点で最高裁が性別適合手術を是認したのは 「変更前の性別の生殖腺により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じかねない」 からだった。 明示はないが、性自認と生殖能力は別物で、性自認は生物学上の性別から別の性に変わっても、変更前の性別の生殖腺が残れば、それに伴う生殖能力が残るとの認識があるものと考えられる。 また、性自認は変化する。 即ち性同一性障害者を含むトランスジェンダーであった者が生物学上の性別に伴う性自認に戻るケースも多く確認されているという事情への理解も前提にあったものと思われる。 生物学上の性別に伴う性自認に戻るケースが多くあることは、米国のトランスジェンダーの相談サイトの主宰者ウォルト・ヘイヤー氏が本誌で語っている(「『男→女→男』の私が言う『性』は変えられない」『正論』2022年5月号)。 同氏は自らも元トランスジェンダーでこれまで1万人以上の相談を受け、性自認が元に戻るケースを多く確認している。 その意味では性別適合手術は元の性別に伴う生殖能力を完全に失わせ、子が生まれることがないようにするための不可逆的な措置だと考えられる。 法律上の性別を変更した以上、変更前の性別に伴う生殖能力は完全に失わせ、肉体を変更後の新しい性別に近似させ、たとえ性自認が生物学上の性別に伴うものに戻ったとしても、再び法律上の性別変更がないようにするための措置だと考えられる。 性別適合手術を行い、その後は生涯に渡って変更後の性別で生きていくことを決意させる措置とも言える。 本人の性自認を尊重する考え方からすると、性自認に合わせて法律上の性別を変更しても構わず、身体を傷付ける性別適合手術を要件とするのは苛酷ではないか、ということにもなろう。 性別適合手術は社会保険適用がなく、高額な自己負担が必要にもなる。 同情の余地がないわけではないが、問題はそう簡単ではない。 ■性別の概念が壊れるケースも 2019年に最高裁が 「変更前の性別の生殖腺により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じかねない」 として性別適合手術を合憲とした際には具体例を示していないが、性別変更前の生殖腺を残したまま法律上の性別変更ができ、婚姻も可能であれば、以下の事例が生じ得る。 1)「女性から男性に性別変更した人」(FtM)が女性との間に非配偶者間人工授精(AID)で第三者の男性の精子提供で子を儲ける場合、法律上は夫の摘出子となるが、その子の法律上の父は女性の生殖腺を残した生物学上、女性である。 外見が女性であることも考えられ、性自認も元の女性に戻る可能性もある。 事実上の女性同士による同性婚ともなる。 2)「女性から男性に性別変更した人」(FtM)が女性と結婚するが、自分も子を産みたいとして第三者の男性の精子提供で出産した場合、生まれた子の母は法律上、男性である。 この場合も性別変更前の女性の生殖腺を残していることから妊娠・出産は可能である。 外見が女性であることも考えられ、性自認が元の女性に戻ることも考えられる。 事実上の女性同士の同性婚であり、双方が妊娠・出産する場合も考えられる。 3)「女性から男性に性別変更した人」(FtM)が女性と結婚するが、不貞行為によって第三者の男性との間に子を儲けた場合、子の母は法律上、男性である。 この場合も性別変更前の女性の生殖腺を残していることから妊娠・出産は可能となる。 性自認が元の女性に戻ることも考えられる。 この場合も不貞行為は別として、女性の生殖腺を持つ者同士の関係であり、婚姻の段階で同性婚が成立していることになる。 4「男性から女性へ性別変更した人」(MtF)が男性と結婚するが、不貞行為によって第三者の女性を妊娠させ、出産した場合、子の父は法律上、女性である。 この場合は男性の生殖腺を残していることから第三者の女性を妊娠させることは可能となる。 外見が男性で性自認が元の男性に戻る場合もあり、この場合は事実上の男性同士の同性婚となる。 5)「男性から女性へ性別変更した人」と「女性から男性に性別変更した人」が結婚して子を儲けた場合、子の母(出産した者)は法律上、男性であり、父は戸籍上、女性となる。 男女が逆転しているケースだが、共に性別変更前の生殖腺を残していれば、元の性別での生殖能力により、妊娠・出産できる。 外見が元の性別のままであり、性自認も元の性別に戻る場合もある。 こうなれば、最早性別は意味を持たなくなる。 性別の概念自体が壊れる。 実際には稀なケースだろうが、生じない可能性はない。 性別変更前の生殖腺が残っており、それに伴う生殖能力が維持されていれば、十分に生じ得るケースだ。 まさに 「親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じかねない」 事例と言ってよい。 その間で生まれ育つ子供の福祉についても考慮しなければならない。 少数でも生じれば、受け入れるよう家族制度全体の変更も余儀なくされる。 1)について補足しておくと、性別変更によって女性から男性となった人(夫)の妻がAIDによって第三者の提供精子で子を懐胎・出産した場合、かつては、その子の夫の摘出でない子(非摘出子)として取り扱ってきた。 しかし、最高裁第3小法廷は2013年12月10日に 「性別の取扱いの変更の審判を受けた者については、(中略)一方でそのような者に婚姻することを認めながら、他方で、その主要な効果である同条(民法第772条)による摘出の推定についての規定の適用を、妻との性的関係の結果儲けた子であり得ないことを理由に認めないとすることは相当ではない」 との決定を出し、法律上、夫の摘出子となるとした。 夫の摘出子としなくとも、特別養子縁組で法的な親子関係を生じさせることもできる。 それを敢えて夫の摘出子と正面から認めることで生物学上は女性である父親の存在を公認したことになった。 この問題は本誌でも西部邁氏との対談で批判したところだ(「《対談》何サマや最高裁!婚外子・性転換『父』子裁判の浅慮と傲慢を糺す。」『正論』2014年3月号)。 ■性別の再変更による混乱 2013年の時点では最高裁は性別適合手術を行って女性には再び戻らない存在を法律上の父と認める判断をしたが、10年後には性別適合手術の撤廃を求める判断をし、女性の生殖腺を維持し、場合によっては外見や性自認も女性のままの法律上の父を認めることになるかもしれない。 これは 「女性の肉体をした法律上の父親」 「男性の肉体をした法律上の母親」 を誕生させるなど親子関係を混乱させる。 しかし、実は既に元女性で現在は男性の母や元男性で現在は女性の父は存在する。 特例法が規定する5つの要件のうちの 「B現に未成年の子がいないこと(子無し要件)は2003年の制定当初は 「現に子がいないこと」 とされていたが、2008年に現行の規定に改正された。 当初の 「現に子がいないこと」 との要件は 「女である父」 や 「男である母」 が生じることによる家族秩序の混乱や子の福祉への影響を懸念する議論に配慮したものだった。 最高裁も2007年10月19日、第3小法廷で 「(この規定は)合理性を欠くもとは言えないから、国会の裁量権の範囲を逸脱するものと言うことはできない」 と合憲判断したが、既に子がいる性同一性障害者について一律に性別変更ができないとすることへの批判が強まり、 「現に未成年の子がいないこと」 へと改正され、要件が緩和された。 これにより成年に達した子との関係では 「女である父」 や 「男である母」 が生じることになった。 性別変更前の生殖腺を残したまま性別変更し、婚姻できるとすることは、1)2)3)4)の事例のように事実上の同性婚を認めることを意味する。 女性の生殖腺を維持し、外見も女性だが、法律上は男性である者と、生まれながらの女性との婚姻を可能にする。 場合によってはその法律上の男性の性自認は女性に戻っている可能性もある。 その逆に男性の生殖腺を維持し、外見も男性だが、法律上は女性である者と、生まれながらの男性と婚姻を可能にする。 場合によってはその法律上の女性の性自認は男性に戻っている可能性もある。 次には性自認が女性に戻った法律上の男性は、法律上の性別を男性から女性に再変更することを求めてくるかもしれない。 逆に性自認が男性に戻った法律上の女性は、法律上の性別を女性から男性に再変更することを求めてくるかもしれない。 もうこうなってくると法律上の性別が何を意味しているのかも分からなくなる。 現行法では性別の再変更は不可能だが、可能にする法改正を求めるかもしれない。 性別の再変更が実現すれば、法律上の女性同士、法律上の男性同士の婚姻となる。 ■外見とは別の法律上の存在 最高裁は既に2023年7月11日、第3小法廷で経済産業省に勤めるトランスジェンダー女性職員が職場の執務階の女性トイレを使用することを制限されたことについて、制限は 「違法」(国家公務員法違反) として撤回を求める判断をした。 裁判官の補足意見には 「(原告は)性別適合手術を受けておらず、戸籍上は尚男性であっても、経済産業省には、自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益をできる限り尊重した対応を取ることが求められていた」 [宇賀克也裁判官(学者出身)] 「自認する性別に即した社会生活を送ることは、誰にとっても重要な利益であり、取り分けトランスジェンダーである者にとっては、切実な利益であること、そして、このような利益は法的に保護されるべきものと捉えること」 [長嶺安政裁判官(外交官出身)] とする意見もあった。 本人の性自認の尊重を 「切実な利益」 「法的に保護されるべき利益」 と擁護している。 この判決の原告は性別適合手術を健康上の理由から受けていない。 宇賀裁判官は補足意見で 「性別適合手術は、身体への侵襲が避けられず、生命及び健康への危険を伴うものであり、経済的負担も大きく、また、体質等により受けることができない者もいるので、これを受けていない場合であっても、可能な限り、本人の性自認を尊重する対応を取るべきと言える」 と性別適合手術要件の撤廃を主張している。 性別適合手術が不要になれば、専門医の診断が必要であるが元の生殖腺や外性器を残したまま性別変更ができる。 そうなれば、これまでの性別概念は崩れる。 生殖腺や外性器で判断せず、本人の性自認を重視することになれば、男性の外見をした法律上の女性や女性の外見をした法律上の男性が存在することになる。 生殖腺や外性器、外見などで男女の性別を区別してきた性別概念が意味を持たなくなり、性別を前提とした社会制度や慣習が瓦解する。 性自認を虚言して性別変更すれば、同性婚も可能だ。 性自認や外性器を残したままであれば、性自認は別として生殖能力もある。 ■性自認は主観的な領域 性自認は心の問題で優れて主観的な領域だ。 性自認が固定せず、流動的な人もいるとされ、極端な場合は日替わり、ある時は男性、またある時は女性という場合もある。 更に性自認と性的指向は必ずしも対応せず、様々な組み合わせがある。 性自認を女性とする自分や女装した自分に、男性として性的に興奮を覚えるというケースもある。 性的嗜好(好み)は多様で、性自認だけを取り上げて尊重すればよいというものでもないらしい。 例えば、トランスレズビアンと呼ばれる生物学上は男性だが性自認は女性で性的指向は女性に向かう人たちは、性別適合手術をしていない場合が多数だが、彼らには男性の生殖能力があり、かつ女性を性愛の対象にする。 性自認の尊重が 「法的に保護される利益」 となれば、こういった人たちの性自認は可能な限り尊重されなければならない。 性自認は女性であるからトイレを含む女性専用スペースへの立ち入りも認められなければならない。 しかし、生まれながらの女性には拒否感情や恐怖の念がある。 男性の生殖能力や性欲を持つことへの恐怖心だ。 海外では女性刑務所にトランスレズビアンを収容し、女性受刑者がレイプされ、妊娠した事件もある。 女子スポーツ界へのトランスジェンダー女性の参入についても、性別適合手術が不要になれば、男性の生殖能力や外性器を持つ人たちを女性として受け入れることになる。 体格や心配能力、腕力が一般の女性より優れていることに加えて、男性ホルモンを分泌しており、闘争心が強い。 スポーツの公平性が問われる。 性別適合手術は身体を傷付ける外科手術であり、当人には苛酷だが、変更した性別で生きることと社会を混乱させないことを両立させるための不可避の受忍限度内の措置と言える。 最高裁には社会全体の在り方を考えた賢明な判断を期待したい。 産経抄 国会と司法にはびこる善魔たち 2023/11/4 5:00 https://www.sankei.com/article/20231104-62SHDIERSRM4DJIFPLB3LIAKEQ/ 芥川賞作家、遠藤周作さんは度々悪魔ならぬ 「善魔」 という言葉を用いた。 特徴は 「自分以外の世界を認めないこと」 と 「他人を裁くこと」 だと遠藤さんは述べている。 「自分の愛や善意の感情に溺れ、眼が眩んで自己満足しているのだ」。 日本社会では今、この善魔が跋扈してはいないか。 ▼性的少数者らへの理解増進を図るLGBT法成立に始まり、心と体の性が一致しない経産省のトランスジェンダーの女性に、職員女性用トイレ使用を制限するのは違憲だとし、更に戸籍上の性別変更に、生殖不能手術を条件とする特例法条項を違憲とした一連の最高裁判決…。 背景に国会議員や判事の善意があるのは事実だろう。 ▼だが、この急速な動きは意見や立場が異なる人々を置き去りにする結果となり、新たな対立と分断を生んだ。 社会の変容に息苦しさを覚える者にとっては、 「悪意のように見える不遜な善意もある」(哲学者、ニーチェ) のである。 ▼「当事者が警戒の目で見られ、差別が一層深まることも考えられる」。 性適合手術を経て女性に性別変更した 「特例法を守る会」 の美山みどり代表は、最高裁判決に憤る。 安心な場所を求める女性の権利と保護も阻害される。 ▼立憲民主党の長妻昭政調会長は2023年11月2日、最高裁判決を受けて特例法改正案の国会提出を検討する考えを明らかにした。 国会は最高裁判決に対応せざるを得ないが、近年、司法は立法府に対して越権的ではないかとも感じる。 ▼社会学者、ウェーバーは善からは善のみが生まれるものではなく、しばしば逆になると喝破した。 「これが見抜けないような人間は、政治のイロハも弁えない未熟児である」。 社会常識が善魔には通じないのがもどかしい。 性別手術は違憲?最高裁の立法乗っ取り 米弁護士ギブンズ 2023/11/1 7:00 https://www.sankei.com/article/20231101-QG2B2I7ZZJLMNFUR27QH2ZDVLQ/ これは最高裁判所が判断すべきことなのか。 民意によって選ばれた国会が決めるべきことであり、司法による立法権の侵害なのではないか。 こう危惧せざるを得ない。 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには、生殖不能にする手術などを条件とする 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法) の条項を違憲と判断した先日(2023年10月25日)の最高裁決定は、司法はあくまで国会が制定した法律を尊重すべきだという憲法原則から大きく逸脱していたと言うべきだろう。 裁判所には、国会の法律が憲法に適合しているか審査する 「違憲審査権」 はあるが、憲法13条には 「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」 とあるのみである。 その曖昧な文言を用いて、特例法の条項を無効とした15人の最高裁判事の判断は、司法権の適切な領域を超え、立法権を乗っ取ろうとしているように見える。 私はここで、戸籍上の性別変更を認める条件として、生殖を不可能にする手術を義務付けることの、政策として良し悪しを問題としているのではない。 これに関しては大いに政策的な議論がなされるべきだ。 私が問いたい本質的な問題は、その政策を決定する主体は、国会と裁判所のどちらかということなのである。 戦後80年近く経つ中、日本の最高裁が法律を違憲と判断したのは、今回の事例を含め僅か12例に過ぎないが、それは、政策は国民の代表たる国会や政府が決めることであり、裁判所はあくまで憲法上の審査をする司法機関に徹すべきだいう 「司法消極主義」 という原則が守られてきたからと言ってよい。 しかし、最高裁は今回、その司法消極主義を捨て、憲法解釈を積極的に利用し、自らが政策形成の主体となろうとする 「司法積極主義」 へと舵を切った。 ■利用された「違憲審査権」 憲法の曖昧な言葉の解釈を利用した司法積極主義が、極めて反民主的な結果をもたらすことは、私の母国である米国の経験からも明らかである。 米国で、人の体に宿った新しい生命を断つ中絶という行為を権利として認めるべきかという重大な問題を巡り民意が2つに分かれた時、連邦最高裁は憲法修正14条の定める 「Due Process(適正手続き)」 や 「Equal Protection(平等保護)」 といった抽象的で曖昧な理念に基づき、これを女性の権利であると宣言した。 そのことによって、この重大な問題は議会が判断することではなくなり、事実上、民主的な議論と交渉の場から排除されることになった。 決定権は裁判官だけに握られることになった。 つまり、国民から中絶の是非について決定する権利を奪ったのである。 また、米国で同性婚条例について、多くの州議会が民衆の支持を得られないために制定を断念した時、活動家たちは同性婚を憲法上の権利として定めるために、この問題を自分たちの意に沿うような裁判所に持ち込んだ。 つまり民主主義の結論を覆すために、司法の違憲審査権が利用されたのである。 今回の日本の最高裁による違憲判断は、これらと何ら変わることはないものと言えるが、判断を下した最高裁判事たちは、その重大さを全く認識していない。 その決定が如何に従来の司法権の範囲を超えた急進的なものだったか。 判事たちが新たな政策決定の主体になろうとしたか。 15人の判事が、過去の判例を覆した点に注目すべきだろう。 今回の決定では、前述の曖昧な憲法13条の文言について 「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」 を保障するものだとした上で、性別変更を求める人に手術などの条件を付ける特例法の条項は、その自由を制約するのだという論理が展開されている。 しかし、4年前の2019年、同じ最高裁はこの条項について 「意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約する面もあることは否定できない」 としながらも、 「現時点では、憲法に違反するものとは言えない」 と、全く反対の合憲判断をしていた。 司法は、判事が個人の考えで法律を運用しないように、過去の判例の集積の上に立つべきものとされている。 だから通常、裁判所は極めて客観的な法的理由がない限り、自らの判例を、特にこれほど短期間で覆すことには消極的だが、今回の15人の判事たちは、4年前の2019年の判断の破棄を正当化するため、2つの理由を述べた。 第1に、性同一性障害について、 「医学的知見が進展」 し手術は最早必ずしも必要な治療とは言えなくなったこと。 しかし、性同一性障害患者を治療するために、手術が必須ではなくなったことと、戸籍上の性別を変更するための要件は何であるべきか、ということは全く別の話である。 これは単なる医学的な事実の問題ではなく、非常に政治的な問題なのだ。 第2に、性自認が国内外で広く尊重されるようになったこと。 要するに、2019年から2023年の4年間で社会の価値観が変わったというのだが、もしそうであれば、この新しい価値観を法律に反映させる適切な機関は裁判所ではなく、国民の声を直接聞く機能を持つ国会である。 時代遅れとなった法律の改正の責任は国会にあるのだ。 ■民主的な議論はどこへ? 今回の最高裁の決定は、実に広範で厄介な影響を及ぼすことになるだろう。 最高裁は、性自認によって自らの性別を選択する権利が憲法上の権利であると明言しているわけではないが、そのことを強く示唆している。 だとすれば、性同一性障害者に対し手術以外にも性別変更に条件を付けている現在の特例法は、今後も違憲訴訟の対象となり、存在意義が問われることにもなる。 だからといって、国会が特例法を完全に廃止すれば、今度は性同一性障害者の性別変更手続きを正当化する法的根拠はなくなる。 それが憲法13条違反になるだとすれば、国会は新たな法制定を求められることになる。 その意味では、最高裁の判断は、司法が国会に法制定を命じているに等しい。 最高裁の論理は、それだけに止まらず、例えば同性婚を巡る議論にも影響を与え得る。 現状では、同性婚は憲法上保障されていないというのが国の立場だが、それも揺らぐことになり得る。 もちろん、性同一性障害や同性婚を巡る議論も、国会が民主的な議論の末に結論を出すならば、それは、どんなものであっても最終的には認めざるを得ない。 ただ、世論が大きく分かれるこのような重大な問題を、選挙で選ばれたわけでもない裁判官が決定するのは誤っている。 国民は個々の裁判官についても、彼らがどのような理由で選ばれたのかについても、全くと言っていいほど知らされていない。 その彼らが、本来、民主的議論で決められるべきことを、自分たちだけで決めるのは、国民に対する反逆と言わざるを得ない。 最高裁の唐突な司法積極主義への傾倒に、日本国民は抗議すべきである。 「15人で国の根幹変えてよいのか」ジャーナリストの櫻井よしこ氏、性別変更手術要件の違憲決定に 2023/10/25 20:05 https://www.sankei.com/article/20231025-NQVS2A2S6JMJNCKNLNQTMACDU4/ 性別変更に生殖機能をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定を最高裁が2023年10月25日の決定で違憲としたのは、要件を外すことに反対する性同一性障害当事者の多くの意見が無視されたものだ。 強い違和感と危惧を覚える。 決定の多数意見には 「(特例法施行後)これまでに1万人を超える者が性別変更審判を受けるに至っている中で、性同一性障害を有する者に関する理解が広まりつつあり」 とある。 だが、自らも手術を受けて性別を男性から女性に変更した 「性同一性障害特例法を守る会」 の美山みどり代表らは、1万人以上が手術を受け、手術要件が社会制度として定着しているにもかかわらず、手術をせずに男性の姿のままで女性であるということが通じるのは良くないと主張してきた。 美山氏らは、手術要件が違憲となれば 「女性専用スペースに男性器のある女性が入ることが可能になったり、出産する男性が出てきたりして社会が混乱する」 とも訴えてきた。 多数意見は 「手術を受けずに性別変更審判を受けた者が子をもうけることにより親子関係等に関わる問題が生ずることは、極めて稀」 としているが、 「混乱は限定的だから無視してもいい」 という理屈は成り立たない。 15人の最高裁裁判官が幾百世代も繋がって来た日本の価値観や社会の根幹を変えようとしている。 たった15人の判断でこんなに大事なことを変えていいのだろうか。 日本では最高裁の裁判官について1人1人のキャリアや考え方など詳細な情報はほとんど知られていない。 指名・任命権は内閣にあるが、弁護士会枠や外務省枠などがあるのが実態だ。 法律は日本国民の望む方向に社会を作っていくためのものだ。 何故こんなに多くの国民が不安を感じ、多くの女性が信頼できないと思っているような方向に社会を変えていくのか、理解できない。 最高裁の裁判官は国会同意人事にすべきだ。 主張 性別変更 社会の不安招かぬ対応を 2023/10/26 5:00 https://www.sankei.com/article/20231026-WPBHCKJ6B5MB3P4E6DXCRU45AA/ 性同一性障害を巡り戸籍上の性別を変更する場合、生殖能力をなくす手術を必要とする法律の規定について、最高裁は 「違憲」 との初判断を示した。 4年前の2019年に最高裁は 「合憲」 としており、性別変更要件を緩和する転換である。 今後の家事審判や法改正など影響は大きく、社会不安や混乱を招かぬよう対応すべきだ。 戸籍上は男性でホルモン治療などを行い、女性として暮らす人が性別変更を求めていた。 性同一性障害特例法では複数の医師の診断を必要とし、未成年の子がいないことなど5つの要件を満たせば家事審判を経て性別を変更できる。 1、2審は生殖能力喪失の要件を理由に性別変更を認めなかった。 最高裁は精巣や卵巣をなくす手術は憲法13条が保障する 「身体への強度の侵襲を受けない自由」 を制約するなどとして違憲と判断した。 性同一性障害の場合、元の生殖機能で子が生まれる状況は極めてまれで、混乱は限定的と見た。 個人の人権をより重く考えた判断だが、社会生活を営む上で周囲の理解は欠かせない。 決定の補足意見には、生殖能力喪失に代わる要件を設けることを含め、立法府の裁量に委ねるとの言及もあった。 法改正に当たっては多くの理解を得られるよう検討を重ねてほしい。 最高裁は変更後の性別の性器に似た外観を備える要件については高裁に審理を差し戻した。 この問題は終わっていない。 LGBTなど性的少数者への理解増進法が成立したが、女性と自称する男性が女性専用スペースに入ることを正当化しかねないとの不安は拭えぬままだ。 厚生労働省が公衆浴場で 「身体的特徴」 で男女を取り扱うことを確認する通知を出したのは、この不安の表れだ。 女性らの権利を守る団体など7団体は手術要件を外せば 「社会的にも法的にも大変な秩序の混乱が起きる」 とし、合憲判断を求める要請書を出していた。 耳を傾ける必要がある。 自己申告による性自認と、医学的見地からの性同一性障害は明確に線引きし考える必要があることも改めて指摘したい。 今回の 「違憲」 判断が強調されるあまり、 「性別は自分で決められる」 といった誤った認識や行き過ぎた性差否定教育に繋げてはならない。 保守派が強いアメリカのフロリダ州等では、 「法令上の性別」 は出生時の生物学的特徴によって定まり、以後、性転換手術を受けようが受けまいが変えられないとの立場を州法で成文化した。 手術で法的な性を変更できるとすると、性別違和を感じる若年者が手術を急ぎ、後に激しく後悔する、取り返しのつかない事態を招きかねないからである。 本人がトランスジェンダーを主張し、周りがそう遇するのは自由だが、 「法令上の性別」 は変えられない、となれば手術を急ぐ理由は少なくとも法的にはなくなる。 日本のように、手術を要件とした 「特例法」 を作ると、必ず次の段階として、肉体的、経済的に負担の大きい手術を強いるのは人権侵害だとする今回のような訴訟が起こされる。 特例法を廃止し、 「法令上の性別」 変更は不可とした上で雇用差別を禁じるなどの措置を講じるのが正解ではないか。 医学・社会の変化対応 性別変更要件、手術必要の「制約」判断変える 2023/10/25 20:36 https://www.sankei.com/article/20231025-QKT7DJVHPFPIXB2FHCFJRISTLU/ 性同一性障害者の性別変更を巡る手術要件について、最高裁大法廷が2023年10月25日、 「違憲」 の判断を示した。 前回の 「合憲」 判断から4年。 手術を望まない当事者にも体に強い負担を強いる 「制約」 と生殖機能が温存されることで生じる 「混乱」 を比較し、医学面や社会的な変化も考慮して変更した形だ。 ■「必要性は低下」 性同一性障害特例法が定める性別変更要件のうち、手術が必要とされるのは生殖能力をなくす 「生殖不能要件」 と性器の見た目を近づける 「外観要件」 の2つ。 今回、最高裁が違憲としたのは生殖不能要件だった。 設けられた大きな理由は、変更前の性別の生殖機能により子が生まれるなどした場合、親子関係などの問題が生じ、社会に混乱を生じさせかねない−という 「配慮」 だった。 この日の家事審判の決定で大法廷は、実際に問題が生じることは極めて稀で、 「必要性は低下している」 と指摘。 医療の進展もあり生殖不能要件を課すこと自体が 「医学的に見て合理的関連性を欠くに至った」 とも言及し、要件による制約は 「必要かつ合理的なものということはできない」 とした。 性同一性障害の人のうち、戸籍上は女性で性自認が男性の人は、男性ホルモンの投与で外性器が男性器の形状になり、外観要件を満たすケースが多いとされる。 今回の最高裁決定で、こうした人が手術をせずに、性別変更ができる可能性が高まったと言える。 ただ、戸籍上男性の人は女性ホルモンを投与しても外性器が 「似た外観」 になるとまで言えるかどうかは難しく、依然手術が必要になる余地も指摘される。 ■「外観要件」は差し戻しも また決定では、家事審判の1、2審段階で判断の対象外となっていた外観要件について、15人の裁判官のうち12人が 「審理が尽くされていない」 と判断、高裁に差し戻した。 だが、3人の裁判官は外観要件についても 「違憲だ」 と踏み込み、反対意見を付けた。 三浦守裁判官(検察官出身)は 「規定がなかったとしても公衆浴場の風紀は事業者によって維持されており、混乱が生じることは極めて稀だ」 と指摘。 草野耕一裁判官(弁護士出身)は、外観要件が違憲とされる社会は 「憲法が体現する理念に照らし、合憲とされる社会より善い社会と言える」 とした。 宇賀克也裁判官(学者出身)は 「生殖能力要件と同様、過酷な二者択一を迫る規定だ」 と指摘した。 一方、岡正晶裁判官(弁護士出身)は12人の多数意見に賛同した上で、どんな法改正をするかは 「国会の裁量に委ねられている」 と補足意見を付けた。 性別変更の家事審判は争う相手方がいないため、高裁に差し戻された今回の家事審判は外観要件が違憲と判断されれば、そのまま確定する。 ただその場合、最高裁で審理されないため効果は申立人に限られる。 もし合憲とされ、申立人が特別抗告すれば最高裁が改めて憲法判断を示すことになり、結論は当事者全体に及ぶ見込みだ。 自民議連幹部「困った判決」 性別変更を巡る最高裁決定で 2023/10/25 20:28 https://www.sankei.com/article/20231025-6UTCMWTJ7JMITKHNCEUDOKGO6Y/ 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定について、最高裁が2023年10月25日、 「違憲」 と判断したことを巡り、自民党内から今後の影響を懸念する声が上がった。 安易な性別変更などに繋がれば、社会が混乱しかねないためだ。 「手術要件」 の堅持を訴えてきた自民有志の議員連盟などは慎重に対応を検討する構えだ。 「困った判決だ」 「戸籍そのものが壊される恐れがある」。 自民党の議員グループ 「日本の尊厳と国益を護る会」 の代表を務める青山繁晴参院議員は2023年10月25日、産経新聞の取材にこう述べ、危機感を隠さなかった。 自民有志で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相は2023年10月25日、記者団に対し、 「他の共同代表と相談した上で今後の対応を考えたい」 と述べるにとどめた。 議連は2023年9月、斎藤健法相(当時)に対し、 「手術要件が違憲になれば、(戸籍上)男性になった後に生物学的な母であり得たりと、大きな混乱が生じる」 とする声明を提出した。 議連のヒアリングでは、母親団体の代表者が 「手術することなく戸籍を変更すると、体が男性のままの母親≠ェ生まれてしまう」 として、授乳室を元男性と共有する事態などを懸念。 性別適合手術を経て戸籍上の女性になった性同一性障害の人たちも 「手術要件」 の維持を訴えていた。 そもそも、同法は2003(平成15)年に自民議員が立法化を主導した。 党内の慎重論を抑えるため、手術要件などを盛り込んだ経緯がある。 自民若手は最高裁の決定について 「社会の理解が追い付いていない」 「女性や子供の安全を確保するための対応を考える」 と強調した。 2023年6月に施行されたLGBTなど性的少数者への理解増進法の法案作成に自民特命委員会のアドバイザーなどとして携わった一般社団法人 「LGBT理解増進会」 の繁内幸治代表理事は、産経新聞の取材に 「増進法はゆっくり、じっくりとLGBTへの理解を広げるためだ」 「国民的な議論が不十分なまま、性別という社会倫理を覆すような判決は増進法の理念に合わない」 と指摘した。 「手術は唯一の客観的基準」 手術で性別変更の女性、最高裁決定に憤り 2023/10/25 18:49 https://www.sankei.com/article/20231025-SCSXJVEAIZKYDEW5IQSMYJI6FA/ 「性同一性障害特例法の規定は私たちと社会との『約束』」 「それを覆す判断は認められない」。 性別適合手術を経て女性に性別変更した当事者で 「性同一性障害特例法を守る会」 代表の美山みどりさん(61)は、生殖不能要件を 「違憲」 とした2023年10月25日の最高裁決定に憤りを露わにした。 「私たちは手術を受けることで社会に受け入れられてきた」 とする美山さんらは2023年8月以降、最高裁に生殖不能要件をはじめとした手術要件を違憲としないよう求めて署名活動を行ってきた。 性同一性障害の当事者を含め、2万筆を超える賛同が集まったという。 美山さんは多様な生き方を尊重しつつも 「手術は、客観的に性別変更の証明が可能なほぼ唯一の手段」 「それが社会の判断の根底に置かれるべきだ」 と説明。 今後、生殖不能要件が撤廃されれば 「当事者が警戒の目で見られ、差別が一層深まることも考えられる」 と懸念する。 海外でも性自認を巡って社会の分断が生じており、 「社会全体で丁寧な議論を積み重ねていくことが重要だ」 と訴えた。 手術要件の条文削除など法改正へ 性同一性障害特例法 2023/10/25 18:31 https://www.sankei.com/article/20231025-QAT2SHYDNFKFVLE7ERNFHZCFA4/ 性別変更に生殖機能をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定が2023年10月25日の最高裁決定で違憲で無効とされたことで、政府は特例法の改正を目指すことになる。 平成16年に施行された特例法は、戸籍上の性別が性自認の不一致から公的手続きなどで生じる障害を取り除くのが目的。 複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で、 @18歳以上 A結婚していない B未成年の子がいない C生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態 D変更後の性別の性器に似た外観を備えている の要件を全て満たせば、家事審判を経て性別変更できると定める。 Bは当初、単に 「子がいないこと」 とされていたが、平成20年に要件が緩和された。 @についても、民法改正による成人年齢の引き下げに伴い、2022年4月から性別変更可能な年齢が20歳から引き下げられた。 今回の最高裁決定を受けて、政府は法務省を中心に、Cの規定を条文から削除するか、文言を変更するなどして特例法の改正案をまとめ、国会に提出することが求められる。 一方、決定ではDの要件についての憲法適合性は判断されなかったが、審理が差し戻された高裁での判断や国会などの議論の行方次第では、この要件についても改正の対象になる可能性があり、幅広い検討を迫られそうだ。 戸籍上の性別変更、認められたのは20年間で1万人超 2023/10/25 18:11 https://www.sankei.com/article/20231025-YEXLYKD7KRJOZCRTDGEYATQBXQ/ 戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定について、最高裁は2023年10月25日、規定を 「違憲」 と判断した。 自認する性別が出生時と異なるトランスジェンダーの人が同法に基づき戸籍上の性別を変更するケースは、年々増加している。 最高裁によると、全国の家庭裁判所などで性別変更が認められたのは特例法の施行翌年の平成17年には229人だったが、令和元年は過去最多の9480人に。 その後も年間600〜800人台で推移し、令和4年までの累計で1万1919人にのぼっている。 一方、生殖機能をなくす手術要件を巡っては、2014(平成26)年に世界保健機関(WHO)などが手術の強要は人権侵害で、自己決定や人間の尊厳の尊重に反するとして廃絶を求める共同声明を発表。 海外では要件としない国も増えている。 森屋官房副長官「関係省庁で精査し適切に対応」 性別変更を巡る最高裁決定 2023/10/25 17:21 https://www.sankei.com/article/20231025-LL3AO4NPV5JWRDST7LJM7TN5RM/ 森屋宏官房副長官は2023年10月25日の記者会見で、性同一性障害の人が戸籍上の性別変更を行うのに生殖能力喪失を要件とした特例法の規定を違憲とした最高裁決定に関し、 「関係省庁で決定内容を精査の上、適切に対応をしていく」 と述べた。 生殖不能手術要件は「違憲」 性別変更規定巡り最高裁が初判断、4年前から変更 2023/10/25 15:16 https://www.sankei.com/article/20231025-PHRZXWXMHBPZTB3MDTZENUM3CE/ 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術が必要だとする法律の規定の合憲性が争われた家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は2023年10月25日、規定を 「違憲」 と判断した。 裁判官15人全員一致の結論。 4年前の2019年に 「合憲」 とした最高裁判断を変更。 国は規定の見直しを迫られることになる。 最高裁が法令を違憲としたのは12例目。 性同一性障害特例法は、複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で、 @18歳以上 A結婚していない B未成年の子がいない C生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態 D変更後の性別の性器に似た外観を備えている の5つの要件を全て満たせば、性別変更できると定めている。 Cを満たすには精巣や卵巣を摘出して生殖能力をなくす手術が欠かせず、Dについても外観の手術が必要となるケースが多いとされる。 家事審判の申し立て人は、戸籍上は男性だが性自認は女性の社会人。 手術は心身や経済的な負担が大きく、ホルモン治療などにより手術なしでも要件を満たしていると訴えた。 1、2審段階ではCの規定を理由に性別変更を認めず、Dについては判断していなかった。 大法廷は2023年10月25日付の決定で、Cの規定について違憲と判断。 Dについては憲法適合性を判断せず、審理を2審に差し戻した。 Cの規定を巡っては、最高裁第2小法廷が平成31年1月、手術せずに性別変更前の生殖機能で子が生まれると 「社会に混乱を生じさせかねない」 として 「現時点では合憲」 と指摘。 ただ 「社会の変化などに応じ変わりうる」 としていた。 2023年10月に入り、女性から男性への性別変更を求めた別の家事審判で静岡家裁浜松支部がCの規定を違憲とする初の司法判断を出していたが、下級審への拘束力はなく、15人の裁判官全員で審理する最高裁大法廷の判断が注目されていた。 性別変更要件 決定要旨 2023年10月26日 産経新聞 性同一性障害特例法の規定を違憲とした2023年10月25日の最高裁大法廷の決定要旨は次の通り。 【多数意見】 特例法は性別変更の要件として 「生殖腺がない、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」 と規定し、該当するには原則、生殖腺除去手術を受ける必要がある。 規程は、治療としては手術を要しない性同一性障害者に対し、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという、個人の人格的利益を実現するために、手術を受けることを余儀なくさせる。 この制約は、憲法13条が保障する 「身体への侵襲を受けない自由」 の重要性に照らし、必要かつ合理的と言えない限りは許されない。 合理的かどうかは、規定の目的のために制約が必要とされる程度と、制約される自由の内容、性質、具体的な制約の態様などを衡量して判断すべきだ。 規定の目的は、性別変更審判を受けた人が変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、親子関係の問題が生じかねないなどの配慮に基づくと解される。 しかし、規定がなかったとしても問題が生じることは極めて稀だ。 法律上の親子関係は、法令解釈、立法措置により解決を図ることができる。 加えて、特例法施行から約19年が経過し、1万人超が性別変更審判を受けた中で、性同一性障害への理解は広まりつつある。 制約の必要性は、前提となる諸事情の変化により低減している。 特例法の制定当時は、性別適合手術は段階的治療の最終段階として位置付けられていた。 生殖腺除去手術を受けたことを前提とする要件を課すことは医学的にも合理的関連性があった。 しかし、特例法制定後、段階的治療という考え方が採られなくなり、このような要件は合理的関連性を欠くに至った。 規定は、治療としては手術を要しない性同一性障害者に対し、強度な身体的侵襲である手術を受けることを甘受するか、または性自認に従った取り扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を断念するかという過酷な二者択一を迫るものになった。 生殖能力の喪失を性別変更の要件としない国が増えていることも考慮すると、制約の程度は重大だ。 以上を踏まえると、規定による制約は、現時点で必要かつ合理的ではなく、憲法13条に違反する。 これと異なる平成31年の最高裁決定は変更する。 申し立てを却下した高裁決定は破棄を免れず、高裁で判断していない特例法3条1項5号の 「性別変更後の性器に近似した外観を備えていること」(外観要件) に関する主張について、更に審理を尽くすため、高裁に差し戻す。 【三浦守裁判官の反対意見】 外観要件に該当するには、外性器の除去や形成術、または相応のホルモン治療を受ける必要があり、同様に身体への侵襲を受けない自由を制約する。 公衆浴場など社会生活上の混乱を考慮したと考えられるが、性同一性障害者が公衆浴場などを利用して混乱が生じることは極めて稀だと考える。 外観要件による制約の必要性は相当に低い。 他方、憲法13条に反する。 申立人の性別を変更する決定をすべきだ。 【草野耕一裁判官の反対意見】 公衆浴場などで 「自己の意思に反して異性の性器を見せられて羞恥心や嫌悪感を抱くことのない利益」 が損なわれる事態を懸念する人がいることは理解できる。 ただ性同一性障害者の全人口に占める割合の低さなどを考えれば、利益が損なわれる可能性は低い。 外観要件も違憲だ。 【宇賀克也裁判官の反対意見】 外観要件も過酷な二者択一を迫り、違憲だ。 申し立てを認めるべきだ。 性別変更には手術を…は違憲か 25日に最高裁大法廷が判断 2023/10/23 16:36 https://www.sankei.com/article/20231023-H65BJQF72FN3VCD2U3QFKJUVCI/ 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する場合、生殖能力をなくす手術は必要か−。 こんな争点の家事審判で最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)が2023年10月25日に決定を出す。 4年前の2019(平成31)年1月に最高裁で 「合憲」 とされたが、2023年10月に入り家裁で 「違憲」 とする初の司法判断が出た。 社会情勢の変化などを踏まえ、最高裁がどう判断するか注目される。 性同一性障害特例法は、複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で @18歳以上 A結婚していない B未成年の子がいない C生殖腺がないか、生殖機能を永続的に欠く状態 D変更後の性別の性器に似た外観を備えている を全て満たせば、家事審判を経て性別を変更できると定める。 Cを満たすには男性は精巣、女性なら卵巣の除去手術などが必須。 Dについても、特に男性から女性への性別変更では手術が必要な場合が多い。 今回、家事審判を申し立てたのは戸籍上は男性で性自認が女性の社会人。 手術は心身への負荷や経済的な負担が大きく、ホルモン治療で生殖機能も減退しているなどと訴えた。 1、2審はCの規定を理由に性別変更を認めず、Dについては判断を示さなかった。 Cの規定を巡っては最高裁第2小法廷が2019(平成31)年1月、手術せずに性別変更前の生殖機能で子が生まれると 「社会に混乱を生じさせかねない」 として 「現時点では合憲」 と指摘。 ただ 「社会の変化などに応じ変わり得る」 とも言及していた。 一方、女性から男性への性別変更を求めた別の家事審判で静岡家裁浜松支部が2023年10月11日付で出した決定では、2019(平成31)年の最高裁決定を踏まえ、生殖腺除去手術を受ける場合のリスクと社会への影響を検討。 ▽性別変更後の出産は稀で、混乱も限られる ▽国際的に手術要件は廃止される傾向にある ▽性的少数者への理解増進法が今年施行されるなど社会情勢の変化がある などとして規定を違憲として性別変更を認めた。 今回、最高裁がCを違憲と判断すれば、特例法の要件自体を見直す必要が生じ、手術を受けずに性別変更を望む当事者全体に影響する。 判断されていないDについて、どの程度踏み込むかもポイントとなる。 性別変更「手術要件」堅持を 女性団体、最高裁に要請 2023/10/19 22:17 https://www.sankei.com/article/20231019-LC5UOI3XKVJNVELVOVCJCBFOTQ/ 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する場合、性別適合手術を要件とする現行法の規定の合憲性が争われている家事審判を巡り、女性有志の市民団体 「女性の定義を守る会」 は2023年10月19日、最高裁判所に要件の堅持を求める要請書を提出した。 家事審判は2023年10月25日に最高裁大法廷が決定を出す。 2004(平成16)年施行の性同一性障害特例法は、性別変更の審判を受ける要件に 「18歳以上」 「未婚」 などに加え、 「生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある」 と定めている。 特例法で性別を変更するには、性別適合手術を受けた場合がほとんどだ。 同会は要請書で、法的な性別変更を可能にした特例法そのものが 「女性の尊厳を著しく侵害している」 と主張。 「性別の在り方を自分で決められる権利は他者の人格を侵害する」 と訴え、家事審判について合憲判決を求めた。 同会の青谷ゆかり共同代表は産経新聞の取材に、要件緩和の流れについて懸念を示し、 「(性犯罪目的の男が制度を悪用し)性犯罪が今よりも起こりやすい環境になってしまう」 「(自らの性を自身で決める性自認で法的な性別の変更を可能とする)『ジェンダー・セルフID』の制度化に繋がりかねない」 と語った。 「手術要件」 を巡っては、2023年10月11日に静岡家裁浜松支部が、別の家事審判で 「違憲」 とする初の司法判断を出している。 性別変更の手術要件、25日に再び判断 最高裁大法廷 2023/10/18 17:44 https://www.sankei.com/article/20231018-6JUWKZPBBVM35ARNRN5EBG2MNY/ 性同一性障害のある人が戸籍上の性別を変える場合、生殖能力をなくす手術が必要とする法律の規定が合憲かどうかが争われた家事審判で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は2023年10月18日、決定を2023年10月25日に出すと当事者側に通知した。 規定を巡っては最高裁が4年前の2019年1月に 「現時点では合憲」 とする初判断を示しており、改めて判断される。 この規定を巡っては、2023年10月に入り静岡家裁浜松支部が、別の家事審判で 「違憲」 とする初の司法判断を出し、確定。 ただ他の裁判所を拘束する効力はなく、社会情勢の変化などを踏まえて最高裁が再び出す結論に注目が集まる。 性同一性障害特例法は、複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で、 @18歳以上 A結婚していない B未成年の子がいない C生殖腺がないか機能を永続的に欠いている D変更後の性別の性器に似た外見を備えている の要件を全て満たせば、家事審判を経て性別変更できると定める。 今回、最高裁で審理されている家事審判を申し立てたのは、戸籍が男性で性自認が女性の社会人。 長年のホルモン治療で生殖能力は減退しており、手術しなくても要件を満たしていると訴えている。 最高裁第2小法廷は2019(平成31)年1月、Cの規定について、親子関係や社会の混乱への配慮に基づいており 「現時点では合憲」 としつつ 「社会の変化に伴い継続的な検討が必要」 とする判断を示していた。 今回の家事審判は最高裁の裁判官15人全員で審理する大法廷に回付され、2023年9月に当事者側の訴えを聞く弁論や、当事者が非公開で陳述する審尋が開かれていた。 性別変更時の手術要件は「違憲」 静岡家裁浜松支部が初判断、当事者の申し立て認める 2023/10/12 20:36 https://www.sankei.com/article/20231012-XBK4I5HQLRL5TB5RB4MTKFIAAE/ 性同一性障害の診断を受け、戸籍上は女性で性自認が男性の鈴木げんさん(48)が生殖機能をなくす性別適合手術をしないまま、戸籍上の性別変更を求めた静岡家裁浜松支部への申し立てについて、同支部は2023年10月12日までに、性別変更に手術を求める現行法の規定は 「憲法違反で無効」 との判断を示し性別変更を認めた。 2023年10月11日付。 弁護団によると、初の司法判断。 鈴木さんは、幼少期から女性として扱われることに違和感があり、40歳で性同一性障害の診断を受けた。 2021(令和3)年10月に家裁に申し立てた。 正論 最高裁のあり方根本的見直しを 福井県立大学名誉教授・島田洋一 2023/10/9 8:00 https://www.sankei.com/article/20231009-RWMFL5NWYFM65L2RBJ2QQVDQCY/ ■米最高裁人事を巡る闘争 民主国家においては、最高裁人事は最高度の政治闘争である。 米国では良くも悪くもその意識が徹底している。 議会の上下両院が通し大統領が署名して成立した法律を、連邦最高裁(定数9人)はその多数決で、即ち僅か5人の判断で無効化できる。 あるいは議会全体として合意が得られない、ないし議会は通過したが大統領が拒否権を発動して成立に至らない問題についても、国民の選挙を経ていない 「5人の法官」 が判断を下し得る。 その決定は往々にして、米国社会を根底から揺るがす。 特に保守派が 「判事席からの立法行為」 と批判する営為である。 最高裁人事が政治闘争の最激戦地と見なされるのは当然だろう。 よく 「大統領を獲るのは2権を獲ること」 と言われる。 上院の承認という関門が待つものの、最高裁に空席が生まれた時、後任を指名する権限を持つのは大統領である。 行政の頂点であるホワイトハウスの鍵を摑むことが、同時に司法の最高機関の構成を左右することに繫がる。 現在、米最高裁の勢力図は、保守派6人対左派3人だが、2016年の大統領選で民主党のヒラリー氏がトランプ氏に勝っていれば、全く逆の構図になっていただろう。 左派が好む判決が次々出されたはずである。 分断が先鋭化する米国で、大統領選がますます 「仁義なき戦い」 の様相を呈する大きな理由の1つがここにある。 ■日本の最高裁はどうか 翻って日本の状況はどうか。 現行憲法は 「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」 と規定する(第81条)。 日本の最高裁は法文上、米最高裁以上に強大な権限を有する(米国憲法は裁判所の違憲立法審査権を明文化しておらず、最高裁が判例を通じて自己付与してきた)。 ところがその極めて重大な最高裁の人事に関して日本社会は、余りに無防備であり続けている。 長官、判事合わせて15人の思想傾向はおろか経歴や名前すら知る国民はほとんどいないだろう。 上院の承認が必要な米国と違い、日本では事実上、内閣総理大臣(および側近数名)の一存で判事人事が行われる。 現在、会計検査院はじめ39機関の委員等のポジションが、衆参両院の承認を要する 「国会同意人事」 となっている。 ところが、それらより遥かに重要な最高裁人事に国会は全く関与できない。 「こんなバカな話があるか」 「憲法を改正して国会の同意人事とし、首相が指名した候補者に公開で質疑応答を行い、個々の議員の賛否を明らかにする透明性ある形に変えるべきだ」 との声が、当事者たる国会議員の間から当然上がるべきだと思うが、なぜか全く上がらない。 そのため、各種利益集団による密室談合の結果を首相が惰性で追認する不適材不適所人事が後を絶たない。 還(かえ)ってきた5人の拉致被害者を北朝鮮に送り返すよう主張した外務事務次官や、平和安全法制に反対した内閣法制局長官を 「論功行賞」 で最高裁判事に任用した例など正に言語道断だろう(詳細は拙著『腹黒い世界の常識』参照)。 その最高裁が2023年9月27日、生殖能力をなくす手術を性別変更の要件とした現行の 「性同一性障害特例法」 は差別的で違憲とする申立人の弁論を聞き、即日結審した。 かつて合憲判断を示した最高裁が改めて大法廷で審理する以上、判例を覆し、手術なしで性別変更可能とする方向で決定を下すのではないかと見られている。 ■憲法改正すべきだ ちなみにトランスジェンダー問題について米最高裁は、雇用差別は許されないとした以外は、多数を占める保守派判事が、連邦議会や各州の動きを見守る 「抑制的司法」 の姿勢を堅持しているため、何らの判断も下していない。 そうした状況下、保守派が強いフロリダ州等では、 「法令上の性別」 は出生時の生物学的特徴によって定まり、以後、性転換手術を受けようが受けまいが変えられないとの立場を州法で成文化した。 手術で法的な性を変更できるとすると、性別違和を感じる若年者が手術を急ぎ、後に激しく後悔する、取り返しのつかない事態を招きかねないからである。 本人がトランスジェンダーを主張し、周りがそう遇するのは自由だが、 「法令上の性別」 は変えられない、となれば手術を急ぐ理由は少なくとも法的にはなくなる。 日本のように、手術を要件とした 「特例法」 を作ると、必ず次の段階として、肉体的、経済的に負担の大きい手術を強いるのは人権侵害だとする今回のような訴訟が起こされる。 特例法を廃止し、 「法令上の性別」 変更は不可とした上で雇用差別を禁じるなどの措置を講じるのが正解ではないか。 最後に繰り返せば、最高裁判事は 「内閣が指名し国会が承認する」 と憲法改正すべきである。 まさか反対する国会議員はいないだろう。 主張 LGBT法案 分断招かぬ慎重な議論を 2023/2/17 5:00 https://www.sankei.com/article/20230217-7LACMM3WKFKKVDUKMOXNZQIQ2Q/ 超党派の議員連盟が国会提出を目指しているLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を巡って、与野党の間で議論や駆け引きが続いている。 立憲民主党や日本維新の会、共産党などの野党の他、自民党と連立を組む公明党も同法成立に積極的だ。 これに対し、自民内では法案の内容に意見が割れている。 性的少数者への理解を深め、差別や偏見をなくすのは当然だが、法案には課題が多く、慎重に議論しなければならない。 法案は2021(令和3)年に議連を中心にまとめられた。 しかし 「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」 との表現が不明確などとして自民内から慎重・反対意見が強く、党内の了承を見送った経緯がある。 「性自認」 は内心に関わる問題であり、しかも 「差別」 の定義が不明確なまま 「許されない」 と規定することで、逆に女性らの権利が侵害されかねないとの指摘がある。 例えば女性であると 「自認」 した男性が、女子トイレや女湯に入った場合、混乱が予想される。 不安に思う女性も出てこよう。 心と体が一致しない性同一性障害に関しては、2004(平成16)年に特例法が施行され、複数の医師による診断など一定の条件で、戸籍上の性別を変更することなどが認められている。 医学的知見からの議論も欠かせない。 今回法案が再び俎上に載ったのは、更迭された荒井勝喜元首相秘書官が、同性婚を巡り不適切な発言をしたことが契機だ。 だからといって2023年4月の統一地方選を控え、支持率を意識して取り組む問題ではない。 政治的思惑で法律の成立を焦っては、却って信頼を損なう。 超党派議連の会長に選出された自民党の岩屋毅元防衛相は、2023年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)までに成立させるよう全力を尽くす考えを示した。 期限ありきで議論する性格のものではあるまい。 法を拙速に通して本当に大丈夫なのか。 差別解消の名のもとに、逆に権利侵害や不安を招くようでは法の趣旨を損なおう。 行き過ぎたジェンダーフリー(性差否定)は社会の分断に繋がりかねない。 各党は党利党略から離れ、冷静でバランスのとれた議論をしてもらいたい。 主張 LGBT法案 女性守れぬ危うい代物だ 2023/5/12 5:00 https://www.sankei.com/article/20230512-3PBEUXO7DBPQFIZWKPGHW4RFGU/ LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案の国会提出が検討されている。 修正案が議論されているが、女性の権利と安全が損なわれるなどの懸念は払拭されていない。 このような代物ではだめだ。 超党派の議員連盟を中心に 「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法案」 が検討されている。 これに対し自民党内で反対・慎重論があり、同党で修正を議論中だ。 2023年5月19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前の提出を目指すというが、問題は解消されていない。 LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの他、生まれつきの性と心が一致しないトランスジェンダーの頭文字を取った略称だ。 自民内の修正原案ではトランスジェンダーについて 「性自認」 の言葉を 「性同一性」 に変えるという。 医学的知見からの性同一性障害に関しては2004(平成16)年に特例法が施行され、複数の医師による診断など一定の条件で戸籍上の性別を変更することが認められている。 だが、今回の自民の案でも性同一性障害とは規定していない。 人の内心は分からない。 申告により性を決める 「性自認」 は、極めて危うい結果をもたらす恐れがある。 男性が、自身は女性だとして女子トイレや女湯に入った場合、混乱が予想される。 カナダでは2023年4月、トランスジェンダーを自称する男が女性施設に入り、女性に性的暴行を加えた疑いで逮捕される事件が現実に起きた。 自民の案では 「差別は許されない」 を 「不当な差別はあってはならない」 と変える。 不当でない差別などあるのか。 言葉遊びの修正は意味がない。 エマニュエル米駐日大使はLGBT法制定を促す言動を取っているが、控えるべきだ。 米国にもそのような法律は、共和党の反対で存在していないではないか。 内政干渉である。 G7で同種の法律がないのは日本だけと喧伝されるのは誤りだ。 法律は、各国の歴史や文化、宗教に基づく価値観に沿って制定される側面がある。 日本は憲法や男女雇用機会均等法などの法律で差別の禁止や平等原則を定めている。 取り沙汰されるLGBT法案が権利の侵害を招くようでは元も子もない。 差別禁止としながら、女性を守れない法律は不必要だ。 主張 LGBT法案 廃案の道しかない内容だ 2023/5/23 5:00 https://www.sankei.com/article/20230523-6JF6SBS5FZNNFOV7WKJZ3WENTQ/ 自民、公明両党は、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を国会に提出した。 与党案に批判的な立憲民主、共産、社民の野党3党は、与党を含む超党派の議員連盟が約2年前にまとめた 「原案」 を対案として出した。 与党案も、立民などの対案も、女性を守れない代物で、この内容ではだめだ。 女性の権利と安全が損なわれかねない。 家族観に影響を与える重要な法案であり、どちらの法案も採決は論外である。 廃案にしなければならない。 立民などの対案には 「性自認を理由とする差別は許されない」 と明記している。 申告により性を決める 「性自認」 が罷り通れば、女性であると自認した男性が、女子トイレや女湯に入るなどの混乱が予想される。 スポーツ競技の女子種目への出場を認めるのかという問題もある。 極めて危うい内容と言わざるを得ない。 与党案では 「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」 などと改められたが、事実上、性自認と同義であると見做される懸念は拭えない。 「性同一性」 に変えても、性同一性障害特例法で医学的知見に基づき定めている 「性同一性障害」 を指すと読むことができる一方、 「障害」 が付いていないため、性自認を含むと解釈することが可能だ。 差別に 「不当な」 を加えても、不当でない差別などあり得ない。 小手先の修正でお茶を濁すのは、本末転倒である。 両案は、学校に対し、児童や生徒に教育や啓発に努めるよう明記している。 性教育が十分行われていない段階の児童や、多感な時期を迎えた生徒が、LGBTを巡る問題にどう向き合うべきかも、慎重な議論が必要だ。 自治体や事業者にも対応を求めており、混乱が予想される。 衆院解散が囁かれるる中、よもや自民は、早期成立を訴える公明の支援を選挙で得るために、採決し、顔を立てるようなことはしまい。 岸田文雄首相(自民総裁)ら党執行部が、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に間に合わせるために提出を急いだのは、異様な光景だった。 自民は会合で異論が相次いだが、幹部が強引に一任を取り付け、 「了承」 とした。 成立させようというのなら、保守政党・政治家を名乗る資格はない。 主張 LGBT法案 採決を見送り廃案にせよ 2023/6/9 5:00 https://www.sankei.com/article/20230609-LZRH2YOQR5IRXLLPQDCK5TI7EY/ LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を巡り、衆院内閣委員会は2023年6月9日にも、与野党の案を審議し採決する方針という。 いずれの案も、女性の安全と安心が損なわれかねないという問題は解消されない。 このような危うい法案は、採決すべきではなく、廃案にしなければならない。 衆院内閣委での審議時間は80分を予定している。 たったそれだけで終わらせるのは、国民を馬鹿にしている。 自民党は衆院本会議で可決後、参院内閣委も短時間で済ませ、来週の参院本会議で成立させるのだという。 何をそんなに急いでいるのか。 公明党はかねて同法案の成立を求めている。 2023年6月21日の国会会期末を前に、自民総裁でもある岸田文雄首相が、公明の意向に配慮したとの見方がある。 自民、公明は次期衆院選の選挙区調整で対立している。 公明との関係を修復し、選挙での支援を得るために、成立を急いでいるのであれば、党利党略という他ない。 公明への配慮より、女性の安全確保を優先すべきである。 立憲民主、共産、社民各党の共同提出案は、与党を含む超党派の議員連盟が以前まとめたものだ。 「性自認を理由とする差別は許されない」 と明記している。 申告で性を決める 「性自認」 が罷り通れば、女性だと自称する男性が、女子トイレなど女性専用のスペースに入る恐れは否定できない。 与党案では性自認を 「性同一性」 に修正したが、医学的知見に基づく 「性同一性障害」 を意味するのか判然とせず、性自認の問題を排除することはできない。 日本維新の会と国民民主党の案では、性自認、性同一性のいずれにも訳せる 「ジェンダーアイデンティティー」 という表現に変えたが、よく分からない。 「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」 との条文も追加したが、これでも、女性の危険が回避できるとは思えない。 市民で作る 「女性スペースを守る会」 や性同一性障害者らによる 「性別不合当事者の会」 などは、法案を廃案にし、出直すよう求めている。 各党は調整を続けたが、どの案を組み合わせても、女性の不安は解消され得ない。 採決があるなら、各党議員は信念に基づいて行動し、否決してもらいたい。 主張 LGBT法成立 女性を守る新法の策定を 2023/6/19 5:00 https://www.sankei.com/article/20230619-HTBEJK2K45O77LYMYZDSZNKUAI/ LGBTなど性的少数者への理解増進法が、参院本会議において賛成多数で可決し、成立した。 欠陥の多い悪法であり極めて残念だ。 このままでは、女性を守ることが難しい。 国会では、衆参両院の内閣委員会で1日ずつ審議しただけだ。 議論不足も甚だしい。 危機感を覚えた自民党の有志議員が、トイレなどの女性専用スペースを守るための法整備に向け、議員連盟を発足させるという。 早急に法律を制定し、女性の安全・安心を確保してもらいたい。 与党案にあった 「性同一性」 という表現は 「ジェンダーアイデンティティー」 に置き換わり、益々分かりにくくなった。 同法では 「性別についての認識に関する意識」 と定義している。 「性自認」 が含まれるのは明らかだ。 「ジェンダーアイデンティティーを理由とする不当な差別はあってはならない」 と定めている。 しかし、差別の定義ははっきりとせず、女性だと自称する男性が女性専用スペースに入ることを正当化しかねないという懸念は、依然払拭されていない。 「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意する」 との条文が追加されたものの、これだけでは女性の安全・安心が十分に担保されたとは言い難い。 この条項で政府に求めた運用指針の策定が急がれる。 学校において、子供の理解を増進させる教育・啓発を行うよう定めたことについても、慎重な運用を求めたい。 性教育が十分行われていない段階の児童や、多感な時期を迎えた生徒がLGBTを巡る問題にどう向き合うべきか。 このことはもっと議論が必要だ。 自治体や企業にも対応を求めており、混乱が予想される。 成立の過程で、エマニュエル米駐日大使がLGBT法制定を促す言動を取ったのは、内政干渉であり、看過できない。 性自認に特化した法律は先進7カ国(G7)には存在しない。 連邦レベルで米国にも存在しない法律を他国に求めるのは、容認できない。 参院内閣委員会で、自民の有村治子氏は 「日本を見下し評定するような不遜な態度は、日米関係を大事にしたい国民(各)層を逆撫でし毀損する」 と語った。 その通りである。 岸田文雄政権はこのようなことを、やめさせなければならない。 LGBT法案 拙速な議論は理解を遠ざける 2023/5/13 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230512-OYT1T50280/ 心と体の性に違和感がある人たちに対する差別は許されないが、現在議論されている法案は、課題が多過ぎる。 慎重な検討が不可欠だ。 自民党の一部議員が、性的少数者(LGBT)への理解を深めるためだとして、理解増進法案の国会提出を目指している。 法案は、LGBTに関する施策を推進するため、政府が基本計画を作り、毎年、その実施状況を公表することを国に義務付けている。 企業や学校に対しても、必要な対策の実施を求めるという。 しかし、理解増進法案は、どのような行為が差別に当たるかを明示しておらず、肝心の対策も、今後の検討に委ねている。 具体策を曖昧にしたまま法整備を急げば、法律の趣旨を逸脱した過剰な主張や要求が横行し、社会の混乱を招く恐れがある。 例えば、出生時の性は男性で、自認する性は女性というトランスジェンダーの人が、女性用のトイレを使いたいと主張した場合、どうするのか。 スポーツ競技で、トランスジェンダーが女性の種目に出場することを認めるのか。 トランスジェンダーにこうした権利を認めることになれば、女性の権利が侵害されかねない。 多様性を認めるためだとして、安易に法整備を図ることは慎むべきだ。 「これも差別だ」 「あれも差別だ」 といった過激な主張に振り回される可能性もある。 先進7か国(G7)の中で、LGBTに関する法律がないのは日本だけだ、といった主張は事実に反している。 各国は、差別禁止の一般的な規定を設けているが、日本は最高法規で法の下の平等を定めており、大きな違いはない。 2023年5月19日からのG7首脳会議(広島サミット)前に法案を提出すべきだ、といった主張はおかしい。 それぞれの国の歴史や文化、社会通念を認め合うことも、多様性の尊重と言えよう。 そもそも、今回の法整備の進め方には問題が多い。 岸田首相は2023年2月、LGBTを差別する発言をした首相秘書官を更迭すると共に、自民党に法案の提出に向けた準備を指示した。 岸田政権は多様性を尊重していない、という批判を避ける狙いがあったのだろうが、法案提出の表明は拙速と言わざるを得ない。 米国では、LGBTを子供たちに教えるべきかどうかを巡って、対立が深まっているという。 海外のLGBT対策を参考に、日本社会に相応しい施策について議論を深めることが大切だ。 LGBT法案 首相と自民の見識が問われる 2023/6/13 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230612-OYT1T50193/ この法案の内容で、女性の安全を守れるのか。 教育現場は混乱しないのか。 様々な懸念を残したまま、拙速に法整備を図ることは許されない。 性的少数者(LGBT)への理解の増進に関する法案は2023年6月13日今日、衆院を通過する見通しだ。 衆院での審議は3時間に満たない。 2023年6月16日にも成立する公算が大きい。 法案は、自民、公明両党と、日本維新の会、国民民主党の4党の修正協議でまとまったものだ。 当初の与党案は 「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」 と規定していた。 このうち、 「性同一性」 の表現を、維新・国民案にあった 「ジェンダーアイデンティティ」 に改めた。 意味は同じだというが、余りにも分かりにくい。 理解しにくい言葉を使いながら、 「理解増進」 とは何事か。 心と体の性に違和感がある人に寛容な社会を作ることは大切だ。 だが、憲法は 「法の下の平等」 を定めており、差別は今でも許されていない。 新たに性的少数者に特化した法律を、内容も曖昧なまま制定する必要はあるまい。 各党は、新法がもたらす影響を真剣に考えるべきだ。 悪意を持った男性が 「女性だ」 と自称し、女子トイレなどを利用する事案は現実に起きている。 こうした行為は現行法で禁じられているが、新法を盾に、現行の禁止規定を 「不当な差別だ」 と主張する口実に使われかねない。 法案に、LGBTに関する教育を 「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う」 と記したことも問題だ。 過激な主張を掲げる団体が学校に圧力をかけ、発育を無視した性教育を迫る事態が外国では起きているという。 自民党の法案提出者は 「法案は理念法で、新しい権利を加えるものではない」 と説明している。 しかし、新法を契機に 恣意的な解釈が横行し、性や結婚に関する民法などの規定を巡って違憲訴訟が相次ぐ恐れは否定できない。 そもそも自民党には法整備に慎重な議員が多かった。 2023年5月18日に法案を提出した後も、継続審議になるとの見方が広がっていた。 会期内成立に舵を切ったのは、岸田首相だという。 法制化を強く求めてきた公明党への配慮からだとされている。 衆院選の候補者調整を巡って、ぎくしゃくした公明党との関係を修復する狙いがあるのだとすれば、筋違いも甚だしい。 首相は、自らの見識が問われていることを自覚してもらいたい。 LGBT法成立 社会の混乱をどう防ぐのか 2023/6/18 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230617-OYT1T50287/ 数々の懸念は何1つ 払拭されぬまま、必要性の疑わしい法律が制定されてしまった。 政府は、早急に社会の混乱を防ぐ手立てを講じるべきだ。 国会の会期末を控え、性的少数者(LGBT)への理解増進法が成立した。 先進7か国(G7)で、LGBTに特化した法律を持つ国はない。 LGBT法は、国際社会でも極めて特異な立法と言える。 そもそも日本は最高法規で 「法の下の平等」 を定めている。 LGBTに特化して差別禁止を定める理由は、見当たらない。 にもかかわらず、衆参両院ともに3時間前後の審議で決着が図られたのは、岸田首相が自民党に強く指示したためだとされる。 LGBT法が欠陥を抱えていることは、明らかだ。 成立を急がせた首相の責任は重い。 法律は、LGBTへの 「不当な差別はあってはならない」 と規定した。 だが、差別の定義は曖昧で、悪用される恐れがある。 悪意のある男性が 「自分は女性だ」 と主張し、女湯や女子トイレに入る犯罪は現実に起きている。 今後は、侵入を罪に問おうとしても、LGBT法を盾に 「不当な差別だ」 と反論されかねない。 個人の性の認識を 「ジェンダーアイデンティティ」 と表記したことも、分かりにくい。 法律にはまた、小中学校で、性的少数者についての教育を 「地域住民や関係者の協力」 を得て、促進することも盛り込まれた。 精神的に未熟な段階で、機微に触れる性の問題を教え込む必要があるのか。 過激な主張をする活動家や市民団体が、教育現場に介入してこないとも限らない。 このように様々な混乱が生ずる恐れがあるだけに、今後はトラブルをどう防ぐかが重要となる。 政府は新法に基づき、性的少数者への理解増進に向け、基本計画を策定することになっている。 女性専用のスペースをどう犯罪から守るのか。 プールや温泉などの事業者は、男女の区別を守ることを前提としてどのような対策を取るべきか。 法整備がもたらす弊害を軽減することが急務だ。 差別解消を訴えていた人たちは、同性婚の法制化も唱えている。 首相はこれについても、 「理解が進むことが重要だ」 と、同調するかのような発言をしている。 首相自身が言うように、同性婚が 「社会が変わってしまう課題」 である以上、多様性の尊重という言葉に流され、安易に判断することは許されない。 主張 トイレ制限「違法」 個別事情踏まえた判断だ 2023/7/12 5:00 https://www.sankei.com/article/20230712-4RD4X2D4ANA7RIVDI52TDBMJJE/ 心と体の性が一致しないトランスジェンダーを巡り、最高裁は職場の女性用トイレの使用に制限を設けたことを 「違法」 とする判断を示した。 原告は戸籍上、男性だが、医師が性同一性障害と診断するなど個別事情を考慮したものだ。 制限が 「違法」 とされたからといって、誰でも女性と自称すれば女子トイレに入っていいわけではない。 定義が曖昧で自己申告による性自認と、医学的見地からの性同一性障害は線引きして考えるべきである。 原告は経済産業省に勤務する50代の職員で、同僚への説明会などを経て女性の身なりで勤務している。 性同一性障害に関する特例法では、複数の医師の診断など一定の条件で戸籍上の性別を変更することなどを認めているが、健康上の理由から戸籍変更に必要な性別適合手術は受けていない。 原告に対し、勤務するフロアから2階以上離れたトイレを使うよう求めた使用制限について 1審は「違法」、 2審は「適法」 とし、判断は分かれていた。 2審は使用制限について 「他の職員の性的羞恥心や不安」 を考慮し、全職員にとって適切な職場環境を作る対応だったとした。 周囲の理解を重く見た形だ。 これに対し最高裁は、原告は女性ホルモンの投与を受けている他、性衝動に基づく性暴力の可能性は低いとの医師の診断があり、職場でのトラブルもないことなど具体的な実態を挙げた。 最高裁が今回 「違法」 と判断したからといって、他の職場などでも同様に考えるのは早計だ。 各裁判官の補足意見では、職場状況などは多様なため、今回の判決が 「一律の解決策」 とはならないとクギを刺した。 不特定多数が使う公共施設の使用のあり方に触れるものではないともした。 LGBTなど性的少数者への理解増進法が2023年6月に施行されたが、女性と自称する男性が、女性専用スペースに入ることを正当化しかねないという不安は払拭されていない。 厚生労働省は、公衆浴場ではこれまで通り 「身体的特徴」 で男女を取り扱うことなどを確認する通知を自治体に出している。 同法は不安を踏まえ 「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意する」 と条文が追加された。 周囲の理解を欠いてはその実現も叶わない。 トイレ制限訴訟 判決の拡大解釈避けるべきだ 2023/7/12 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230711-OYT1T50256/ 心と体の性が一致しない人の事情は様々であろう。 判決は、1人1人の状況を踏まえ、求められる職場環境を個別に検討すべきだとする判断を示したと言えよう。 戸籍上は男性だが、女性として生活する性同一性障害の50歳代の経済産業省職員が、庁舎内の女性用トイレの使用を不当に制限されたとして国に制限の撤廃を求めた訴訟で、最高裁は国の対応を違法だとする判決を言い渡した。 原告は入省後に性同一性障害と診断され、2010年以降は女性の身なりで勤務してきた。 経産省からは 「他の女性職員とのトラブルを避けるため」 との理由で、職場から2階以上離れた女性用トイレを使うよう求められた。 1審・東京地裁は使用制限の違法性を認めたが、2審・東京高裁は違法ではないと判断した。 これに対し、最高裁は、原告が女性用トイレを使っても性暴力を起こす可能性は低く、他の女性職員ともトラブルになっていないと指摘した。 他の職員への配慮を重視し過ぎて、原告の不利益を軽んじていると考えたのだろう。 最高裁判事の1人は 「判決は不特定多数が使用する公共施設について触れるものではない」 と補足意見を述べた。 判決は原告とその職場について論じており、デパートや公園などのトイレにまで拡大して解釈するのは誤りだ。 トイレに異性が入ってくることに抵抗感を持つ人は少なくない。 悪意のある男性が 「自分は女性だ」 と主張し、女性用トイレに侵入するような行為は許されない。 判決に触発され、性自認に応じたトイレ使用を広く認めるべきだという極端な議論が起きれば、社会に混乱が生じる恐れもある。 先の国会では、議論が不十分なまま性的少数者(LGBT)への理解増進法が成立した。 女性団体などからは、トランスジェンダーによる公衆浴場や女性用トイレの利用が、女性の権利侵害になると不安視する声も上がっている。 厚生労働省は2023年6月、公衆浴場の利用について、身体的な特徴によって男女を区別するという通知を出した。 性自認を過度に重視する傾向が強まれば、男女を身体で区別する考え方も、不当な差別だとして否定されかねない。 トランスジェンダーの中には、性自認を伏せて生活している人も多い。 職場や教育現場では、プライバシーに十分配慮しながら、本人とその周囲の人の権利を守れるような解決策を、その都度検討していくことが大切だ。 美しき勁き国へ 櫻井よしこ 性別訴訟 最高裁を危惧 2023/10/2 8:00 櫻井 よしこ https://www.sankei.com/article/20231002-XRBBA2EEWFJD3J2IWP52FF4BBE/ 自分は男性として生まれたが本当は女性だと考える性同一性障害の人が戸籍上の性別変更をするのに、生殖能力をなくす手術を要件とした現行法は憲法違反か否かが争われた家事審判の弁論が2023年9月27日、最高裁大法廷で開かれた。 最高裁が性別変更の申し立てで弁論を開いたのも、弁論前日に家事審判で申立人の意見を直接聞く審問を非公開で開いたのも初めてだ。 大法廷は2023年年内にも憲法判断を示すとみられる。 2004(平成16)年施行の性同一性障害特例法(以下特例法)は、戸籍上の性別を変更する前提として、元の性別での生殖機能を永続的に欠く状態であることを含む5つの条件を定めた。 一般的には卵巣や精巣などの摘出手術が必要だとされている。 今回、最高裁が特例法の規定を憲法違反と判断したら、手術なしで本人の性自認で法的性別の変更が可能になる。 男性の生殖機能を持ったままの 「法的女性」 や、 女性の生殖機能を持ったままの 「法的男性」 が出現する。 社会への影響は計り知れず、女性の安心安全は危機に瀕する。 男女の定義変更で親子関係も混乱しかねず、戸籍法も含め国会には法改正の義務が生じてくる。 極めて大きな問題を扱っているにもかかわらず、大法廷の裁判には2つの重大な欠陥がある。 弁護士の滝本太郎氏の指摘だ。 「第1にこの裁判には相手方、被告がいません」 「様々な問題点を示す訴訟当事者がいない状況で果たして裁判所は全体像を把握し適正に判断できるのか」 「第2にこの件で先行した国々は多くの問題や犯罪に直面し、今、揺り戻しが来ています」 「最高裁は海外の失敗事例を十分に把握しているのか、懸念されます」 第1の点について、自民党の 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 の片山さつき共同代表らが2023年9月8日、斎藤健法相(当時)と面会し、 「手術要件が違憲となれば、元の生殖能力を維持したままの性別変更が可能になり、大混乱が生ずる」 として、法務省が審理に参加して意見を述べるよう求めた。 斎藤氏の反応は慎重で、法務省は同裁判に関わろうとしない。 この姿勢は大いなる間違いだ。 国として申立人であるトランス女性の権利や自由を守るべきなのは当然だが、社会の圧倒的多数を占めるトランスではない男女の権利や自由も同様に守ることも重要だ。 これら圧倒的多数の国民の立場や権利を代表して意見を言うのが法務省の責任である。 今からでも遅くはない。 最高裁の審理参加を申し入れるべきだ。 性同一性障害の人々の中に、今回の申立人とは異なる意見を持つ人は少なくない。 最高裁はこれら異なる意見にも耳を傾けるべきだ。 例えば2023年7月10日、最高裁による判断の帰趨に懸念を抱き、 「性同一性障害特例法を守る会」 を設立し、代表となった美山みどり氏らの主張だ。 美山氏は性同一性障害で性転換手術を受け、戸籍上も男性から女性になった。 美山氏らは 「性同一性障害」 という自らのアイデンティティーと、手術というエビデンスによって社会との協調を図っていく立場から、特例法の廃止にも手術要件の廃止にも強く反対する。 性別適合手術と特例法の手術要件は自分たちが望んで戦い取った権利であり、決して人権侵害や過酷な断種手術ではないと断言する。 また、約20年間で1万人以上が特例法を使って戸籍の性別変更をした現実を指摘し、制度として既に定着していると主張する。 「社会の様々な場面に性別による区別」 が存在するからこそ、社会的に見て 「性別を安定させ、社会に適合しようとする人」 に法的な保護を与えているのが特例法の趣旨であり、これは差別ではないとの見解も示している。 美山氏らは7団体、数千人とその他有志と協力して 「手術要件が違憲となれば、男性器のある女性が女性スペースに入ることが可能になったり、出産する男性が出てきたりして社会が混乱する」 として、違憲判断をしないよう求める約1万5000人の署名を最高裁に提出した。 このように申立人と反対の立場に立つ性同一性障害の人々は少なくない。 しかし、美山氏らの反対意見を報じた全国紙は私の見た限り、産経新聞と読売新聞だけだった。 他の全国紙はおよそ全て手術要件は違憲だとの見方しか伝えていない。 偏った報道は最高裁の全体像把握を妨げかねず、メディアの責任は重大である。 先に滝本氏が指摘した第2の点、海外では行き過ぎた対応の結果、多くの犯罪が起きたことなどで揺り戻しが起きていることもメディアは十分に報じていない。 そのため最高裁がそうした事情を十分把握しているのかも疑問だ。 欧米諸国では生殖機能を維持した 「法的女性」 による性犯罪の事例に事欠かない。 性自認の概念に基づいて性別で区分されたスペースを変えてきた英国は、その結果としての混乱に堪えかねて2022年春から明確に方針を切り替えた。 まず女子トイレを復活させ、法的女性は女子刑務所には入れないと決定した。 「手術要件があるからこそ、自分たちは一定の信頼を勝ち得ている」 との美山氏らの指摘を軽視してはならないということだ。 司法、とりわけ最高裁についても疑問を抱く。 司法は公正中立の立場で日本社会の良き価値観を守らなければならない。 幾世紀にも渡って育み受け継いできた文化、価値観を大事にするということだ。 滝本氏は、欧州諸国は同性愛に罰を科したソドミー法への反省から同性愛のみならず性自認に傾きがちだと指摘する。 こうした考えが日本に伝わり、メディア、司法関係者、学者らの間で共感を得ているのではないか。 しかし我が国の文化や価値観にソドミー法的な影はおよそない。 欧米の潮流に過度に影響される必要はなく、日本の文化や価値観にもっと自信を持って良いのである。 最高裁判事15人の考え方で日本社会の根幹や価値観を根底から変えようとするのは許されない。 最高裁に暴走させないために、法務省は国民を代表して最高裁の審理に参加し、堂々と意見表明すべきである。 自民女性守る議連、性別変更に手術要件維持を 法相に声明提出 2023/9/8 14:13 https://www.sankei.com/article/20230908-MXZYO3Q7UZLVFA7ILC7PY7EQJ4/ 自民党の有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連) のメンバーは2023年9月8日、法務省内で斎藤健法相と面会した。 戸籍上の性別を変える上で性別適合手術を求める現行法の規定の合憲性が争われている家事審判について 「手術要件が違憲になれば、(戸籍上)男性になった後に生物学的な母であり得たりと、大きな混乱が生じる」 と指摘する声明を提出した。 斎藤氏は 「重く受け止める」 と応じたという。 会談後、議連共同代表の山谷えり子元拉致問題担当相は記者団に 「欧米では自分が思えば男性でも女性でもなれるということで、社会の混乱、分断、対立が起きている」 「先行する国々の実態調査をしてもらいたい」 と述べた。 また、医師である松本尚衆院議員は 「解剖学的に、外形的に性別を決めていくことは国民全体で認識しないと、社会秩序に大きな影響を及ぼす」 と語った。 家事審判は2023年9月27日に最高裁大法廷で弁論が行われる。 自民議連 性別変更の手術要件「違憲は混乱」声明へ 2023/9/7 19:12 https://www.sankei.com/article/20230907-SOW3MC73CNIW5KNNTISARGPEXA/ 自民党の有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連) が、性別変更する場合は性別適合手術を要件とする現行法の規定の合憲性が争われている家事審判を巡り、 「手術要件が違憲になれば、(戸籍上)男性になった後に生物学的な母であり得たり、大きな混乱が生じる」 と懸念する声明をまとめたことが2023年9月7日、分かった。 2023年9月8日に斎藤健法相に声明を提出する。 現行の性同一性障害特例法は、性別変更の審判を申し立てる要件に生殖能力がないことなどを挙げており、規定を満たす場合は性別適合手術を受ける必要がある。 家事審判は男性から女性への性別変更が申し立てられ、2023年9月27日に最高裁の弁論が予定されている。 議連の声明は、性別適合手術を受けていないトランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)に更衣室などの女性用スペースの利用を認めた欧米諸国で生じた問題や事件について、法務省に調査・公表を求めた。 また、議連によると、家事審判に国は参加しておらず、違憲になれば各種法制度に大きな影響を与えかねない。 そのため、利害関係人として戸籍制度を所管する法務省などの参加も要請した。 議連はLGBTなど性的少数者への理解増進法の成立に伴い、2023年6月下旬に設立された。 国会議員102人、地方議員98人で構成する。 自民議連、性別変更で適合手術要件維持訴え 安易な変更防ぐ 2023/8/30 19:20 https://www.sankei.com/article/20230830-BWA5UJSYRJNF7NXEWI4ODIOKKU/ 自民党有志議員で作る 「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」 は2023年8月30日、党本部で会合を開き、性別を変更する場合は性別適合手術を要件とする現行制度を維持する必要性を確認した。 安易な性別変更が横行することで社会の混乱を防ぐ狙いがある。 性別変更を巡っては性別適合手術を求める現行法の規定の合憲性が裁判で争われており、議連は近く声明をまとめる。 「自分さえ思えば性別変更ができかねない」 「大きな社会の混乱になる」 議連の共同代表を務める山谷えり子元拉致問題担当相は会合でこう語り、現行制度の維持を訴えた。 性同一性障害特例法は性変更の審判を申し立てる要件に、 ▽18歳以上 ▽結婚していない ▽未成年の子供がいない ▽生殖の機能がない ▽身体的特徴が似ている の5項目を挙げており、規定を満たすには、性別適合手術を受ける必要がある。 ただ、一部のLGBT団体や日本学術会議は手術要件の撤廃を求めている。 性的少数者に関する法整備を提言する 「LGBT法連合会」 は同法の要件について、 「人権侵害の懸念が極めて強い手術要件を中心に撤廃すべきだ」 と主張する。 手術を必要とする法律の規定が合憲かどうかは家事審判でも争われており、2023年9月27日には最高裁大法廷で弁論が行われる。 自民議連の会合ではLGBTの当事者らにヒアリングを行い、手術要件撤廃に否定的な意見が相次いだ。 性別適合手術を経て、戸籍上の女性となった 「性同一性障害特例法を守る会」 の美山みどり代表は、 「自身の性的機能に嫌悪感を持ち、医学的な救いとして手術した」 「手術要件は(女性として)社会に信頼されるためだ」 「要件の撤廃は認められない」 と主張した。 バイセクシャルを公言する作家の森奈津子氏は 「LGBT活動家は性別適合手術を断種(強制不妊手術)で人権侵害と主張するが、LGBT当事者は賛同していない」 「活動家は当事者の代表ではない」 と強調。 過剰な性教育に否定的な立場を取る 「子どもたちの未来を繋ぐお母さん連合会」 の山崎恵共同代表は 「手術することなく戸籍を変更すると、体が男性のままの母親が生まれてしまう」 として、授乳室などを共有することを懸念した。 議連共同代表の片山さつき元地方創生担当相は記者団に、手術要件に関し、 「身体的特徴が分からなくなれば(女性更衣室などの)女性スペースの立ち入りについても判断ができなくなる」 と語った。 会合では、自身の性に違和感を覚える子供に対し、性転換を図るホルモン治療や外科手術を受けさせてしまうことを問題視する意見も出た。 戸籍上の性別変更には「適合手術」要件維持を 性犯罪被害の支援者らが記者会見 2023/8/11 0:28 https://www.sankei.com/article/20230811-VQH7D5M6WVPETGQEM2HM4SGJ4U/ 性犯罪被害の支援者や性的少数者の団体などで作る 「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」 が2023年8月10日、東京都内で記者会見を開き、戸籍上の性別を変更する場合は性別適合手術を受ける必要性を訴えた。 自民党や立憲民主党など与野党に理解を求めていく。 性別変更を巡っては、性別適合手術を必要とする法律の規定が合憲かどうかが裁判で争われており、2023年9月27日に最高裁大法廷で弁論が開かれる。 ■「性犯罪へのハードル下げてしまう」 性同一性障害特例法は、性別変更の審判を申し立てる要件として、 ▽18歳以上 ▽結婚していない ▽未成年の子供がいない ▽生殖能力がない ▽身体的特徴が似ている の5項目を挙げており、規定を満たそうとすれば、性別適合手術を受ける必要がある。 「性同一性障害特例法を守る会」 の美山みどり氏は会見で、手術要件が撤廃された場合は、 「(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーを装った性犯罪者と、トランスジェンダーの区別ができなくなる」 「性犯罪へのハードルを下げてしまう」 と訴え、 「緩い基準で性別変更を認めた諸外国では社会が混乱している」 と指摘した。 ■「心は女性」の男がわいせつ行為 トランス女性を自称する男が女性に性暴力を働いた事例は国内外で確認されている。 大阪府高石市では 「心は女性だ」 と説明していた男が2021(令和3)年に複数の女性にわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつ罪で起訴されている。 「女性の人権と安全を求める会」 の石上卯乃共同代表は、 「悪用の道があれば必ず悪用される」 「外から確認できない本人の自認が性別の根拠とされれば、被告のような人物が女性たちに入り込み、警戒することも問題視される」 と懸念を口にした。 ■議論が封じられる傾向 複数の会見出席者によれば、トランス女性の権利と女性の権利の衝突を懸念すると 「トランスジェンダー差別」 と非難され、議論が封じられる傾向にあるという。 「性暴力被害者の会」 の郡司真子氏は、 「性暴力の被害者がX(旧ツイッター)に『(トランスジェンダーの)身体男性が怖い』と書けば、『トランス差別だ』と詰め寄られ、言論の機会を失っている状況だ」 と説明した。 性同一性障害特例法の規定を巡っては2019(平成31)年1月に最高裁が 「社会の変化に伴い継続的な検討が必要だが、現時点では合憲」 とする判断を示している。 一方、性的少数者に対する法整備を提言する 「LGBT法連合会」 などは性別変更の手術要件の撤廃を求めている。 LGBT法は公金チューチューに利用される LGBT法は誰のための法律なのか 拙速な議論で成立した背景に迫る WiLL2023年10月号 参議院議員 神谷宗幣 ■異常な速さで法成立 LGBTなど性的少数者らへの理解を増進するための法(以下、LGBT法)は、野党3案が乱立する異例の状況にもかかわらず短時間で審議を終え、2023年6月にスピード成立しました。 本来、様々な立場からの指摘を取り上げて慎重に審議していくべき論点であるにもかかわらず、このような成立経過を見れば、何か 「ウラ」 があるのかと勘繰ってしまいたくなります。 一部の議員は 「日本は先進7カ国(G7)で唯一、LGBT差別禁止法が制定されていない」 「議長国として開催する2023年5月の広島サミットまでに成立させないと恥をかく」 などと主張していいましたが、そもそも、前提事実に誤りが含まれていますし、法律は、他国に恥をかかないために作るものでもありません。 このような主張は、欧米を中心とした国々が性的少数者の方々とどのように接してきたのか、日本との違いがどこにあるのか、その背景や歴史などを考慮しない無責任な主張だと思います。 そもそも、私は、歴史を振り返れば、日本は性的少数者の方々に対して比較的寛容な社会であったと考えます。 近代の日本では同性愛を法律で処罰したり、敢えて社会から排除したりすることはせず、多様な性の形が受容されてきたと理解しています。 これとは対照的に、外国では宗教的な倫理観から、同性愛者に対して極めて厳しい対応があったことは歴史の事実です。 そういった国々で性的少数者の方々を守ろうという法律の議論が出てくるのは、私も理解できます。 しかし、性的指向に関連する法を作った国や地域では法律によって別の弊害が生まれており、日本人が、日本よりも性的少数者への理解が進んでいると思っている欧米でも多くの地域で、これらの法律に対して反対の運動が起きています。 この現状を知らない国会議員が実に多いのは嘆かわしい限りです。 ■2つの歪んだ思惑 大前提として、参政党は、性的少数者の方々の権利や理解の増進に反対しているわけではありませんし、性的指向を理由とした差別は、許されないと考えています。 ただ、性的少数者の方々の困難は、個別の問題に焦点を当てて解決していくべきであり、包括的な理念法を作る必要はないと考えています。 更に言えば、LGBT法は性的少数者の方々を利用した政治運動である側面が強いと考えています。 一見、性的少数者の方々を守っているようで、実は、当事者に全く配慮していない。 だからこそ当事者から不満や、疑問、怒りの声が上がっているのでしょう。 では、何故今回、LGBT法が成立してしまったのか。 そこには2つ要因があるのではないでしょうか。 1つは、性的少数者の方々の権利を、政治的・イデオロギー的な闘争に利用しようとする勢力の意向が働いたこと。 つまり、社会の対立や分断を煽る人たちが一定数存在しているということです。 LGBT法は1つの例であって、以前から、一部の活動家がジェンダーフリーや男女共同参画などを通じて、女性が社会的に差別を受け、虐げられてきたと声高に叫ぶことで、これに対処する法律が制定されてきました。 その結果、女性の社会進出は増えましたが、家庭を守って子育てをすることは社会への貢献度が少ないとされ、家族の在り方が変わってしまいました。 もう1つは、LGBT法を通じて、ビジネスに繋げたい勢力の存在です。 例えば、トランスジェンダーの人は、心と体の性が不一致という特殊な症状を抱えており、法律で守られるべき存在であるとされています。 このような考え方自体が差別であると言えなくもないと思いますが、この治療に税金が投入され、ホルモン剤の注射や性転換の手術などをビジネス化しようとしている動きがあることが懸念されています。 日本にはまだ大きな団体は存在しませんが、海外では既に医療分野に関与し始めています。 言わば、彼らのしていることは、自分たちで問題を作り、自分たちで救済するというシステムの構築です。 問題解決のために法律が制定され、法律を根拠とした税金投入がされるという流れです。 LGBT法も、このようなビジネスモデルができるきっかけとなってしまうのではないでしょうか。 繰り返しますが、私は、性的少数者の方々を差別する意図は全くありません。 LGBT法に反対している理由は、そういった勢力の手の平に乗ってしまうことを拒否したいからなのです。 ■最終目的は国家破綻 1958年に、元FBI捜査官クレーオン・スカウセンの『裸の共産主義者(The Naked Communist)』(未邦訳)が出版されました。 冷戦下の米国で書かれた本ですが、米国内の共産主義者がどのような手段で国家破綻を狙っているのか、45の目標として挙げています。 その中の 24番は 「猥褻(わいせつ)を規制する全ての法律を検閲と呼び、言論の自由と報道の自由の侵害として排除する」 としている。 つまり、性的なことをオープンにして社会風紀を乱すことで、国のレベルを下げることを目標にしているのです。 更に、 25番には、 「本、雑誌、映画、ラジオ、テレビで、ポルノや猥褻なものを宣伝し、文化的な道徳基準を崩壊させる」、 26番には、 「同性愛、堕胎、乱交を正常、自然、健康的なものとして国民に認知させる」 とあり、これらが共産主義者の目標として掲げられています。 共産主義者は、伝統的な価値観を破壊することで、社会を崩壊させようと考えています。 つまり、グローバリズムや性の解放といった新しい言葉で、伝統的価値を否定すれば、社会が分断され、弱体化していくことで彼らの革命を目指しているのです。 LGBT法を端緒として、左派連中が家族制度や結婚の否定、戸籍の不要論などを求め、究極の個人主義的思想を謳う恐れがある。 一見、旧弊な社会制度を打破し、個人の解放を成し遂げるといった良いイメージを抱くかもしれませんが、行き着く先は個人と国家の対立となり、やがては国家の否定に繋がりかねないのです。 LGBT法の推進を促したと言われる岸田総理はこのような左派の意図を理解しているとはとても思えません。 むしろ、見えている範囲がとても狭いように感じます。 岸田総理は、グローバリズムが悪いものだとは思っていないのでしょう。 むしろ、日本の国益というよりも、国内の支持率をどう上げて政権を維持するのか、その点にしか興味がないように見受けられます。 ■おかしな評価で狂う企業 日本人のほとんどが知らないことですが、米国ではHRC(Human Rights Campaign)という性的少数者の平等推進に取り組む米国最大の公民権団体が存在します。 これは、性的少数者のための政治ロビー団体です。 この団体がCEI(Corporate Equality Index)という企業平等指標を毎年発表しており、企業がどれだけ性的少数者に対して理解があるか、評価を付けています。 この評価が低い会社は銀行からの融資が受けにくくなり、マスコミから性的少数者への理解が足りない企業であると叩かれ、悪いイメージを植え付けられます。 評価が高ければ、優良企業として認められ、融資を受けやすくなったり、マスコミが宣伝してくれたり、優秀な人材が集まりやすくなる。 しかし、HRCの圧力で弊害も発生しています。 日本ではほとんど報道されていませんが、米国で最も売れていたビール「バドライト」の売り上げが急落しました。 理由は、トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルベイニー氏と提携し「バドライト」の宣伝を展開したところ、保守派の猛反発を招き、SNSを中心に全米規模での不買運動に発展したためです。 問題が発覚して1カ月以上経っても事態は収束せず、株価は急落し、「バドライト」は、このままではナンバーワンブランドの座を失いかねない事態になりました。 バドライト側が宣伝にトランスジェンダーを起用したのは、HRCが圧力を掛けたためです。 これはあくまで米国国内での出来事ですが、日本も対岸の火事とは言えません。 日本でHRCから最も高い評価を受けている企業が存在します。 広告代理店最大手の電通です。 電通を通じて日本国内の企業にも海外からの圧力が掛かっている。 いずれ日本でも「バドライト」のような騒動が起こらないとも限りません。 米政府の政治的圧力だけでなく、間接的に日本の経済界も影響を受けていることを、我々日本人は認識すべきです。 ■今の参政党にできること 共産主義者やグローバリストが何を狙っているのかを知ることが大切です。 最早そこに性的少数者の差別云々は関係ありません。 何故この短期間でLGBT法が成立したのか、その意図は何なのかを理解し、彼らの土俵に乗らないこと。 感情的におかしいと言い続けても、彼らにとっては痛くも痒くもない。 LGBT法を成立させたい人たちがどのような思惑を持っているのか。 それを分析・検証し、彼らの狙いとやり方を国民に積極的に伝えなければなりません。 とは言え、LGBT法は成立してしまいました。 廃止にするのか、カウンターになるような法律を作るのかを考えなければなりません。 残念なことに、参政党は、国会議員としては1人しかいないため、法案提出ができません。 しかもLGBT法に反対と大きく発信している政党は、参政党しか存在していませんから、味方も少ない状態です。 トイレや更衣室、共同浴場などの場を、女性が安心して利用することができなくなっています。 そうした女性の不安をきちんと取り除いていかなければなりません。 その他にも、社会文化、慣習を壊したいためにLGBT法を推進する人たちが、子供たちに過激な性教育を実施しようとしています。 この問題に不安を抱えているのは子供を持つ親です。 参政党は地方議員が全国に約130人おり、子供のいる親の声を聞きながら、どういった性教育を実施しようとしているのか、調査を行いたいと考えています。 もう1点、我々ができることとして、現在、性的少数者の方々は、法制度として婚姻を認められていませんが、信頼し合う関係であれば、婚姻関係がない場合でも法的な支え合いをサポートする制度を検討すべきであると考えています。 参政党としては、法制度としての同性婚には賛同しませんが、その手前で出来ることはやっていく。 現実に起きている問題は個別に解決していくべきであると考えています。 ■真実を訴え続ける 既存のマスメディアは、参政党の主張を全く取り上げてくれません。 私が参議院議員になってから1年が経ちますが、キー局の地上波の番組に1度も呼ばれていません。 LGBT法の問題については、新聞からのインタビューもゼロ、今回のLGBT法でも、政党として積極的に反対の意見を示したのは参政党だけですが、メディアは何故LGBT法に反対したのか取材に来ません。 触れられないことへの悔しさは当然ありますが、参政党の党員の皆さんには、 「メディアに取り上げられない悔しさがあるから、メディアが取り上げざるを得ないくらい参政党を大きくしよう」 と伝えています。 参政党は 「子供の教育と大人の意識改革」 「食の安全の担保と西洋医療に依存し過ぎない健康の増進」 「情報戦、経済戦も含んだ国の守りの強化」 を3つの重点政策として掲げています。 参政党の政策や公約を 「陰謀論だ」 と言う人がいますが、陰謀論という言葉自体、海外の諜報機関が作った、人々の思考を停止させるための言葉と言われており、考えることを放棄してしまった人の台詞です。 今回のLGBT法も、我々が思い付きや思い込みで反対したのではありません。 過去の流れや海外の事例を提示しているだけなのです。 我々の主張のどこが陰謀論なのか、逆に教えてもらいたい。 参政党に陰謀論というレッテルを貼ることで、一般の人たちに、 「参政党は怪しい政党である」 という印象を植え付けたいだけではないかと感じます。 しかし我々は怯むことなく、国民に真実を訴え続ける覚悟です。 来たる衆議院選挙に向けて、既に100人以上の公認を出しており、最終的には120〜130人の候補者を擁立したいと考えています。 8人当選させるという大きな目標を掲げていますが、まずは重点ブロック(東京、北関東、南関東、東海、近畿、九州)での比例の当選を確実にしたい。 6人当選すれば、私と合わせて7人になるので、地上波の番組にも主演できます。 5人以上いなければ討論番組などに出演できないという暗黙のルールがあるそうですから。 我々の意見をテレビの場で主張すれば、国民にも少しずつ理解して頂けると確信しています。 そして、発信力を高めて国民の意識改革を促したい。 国民世論の喚起が何よりも重要です。 現在は、議論するための土台すらない状況ですから、我々の発言も全て陰謀論で片付けられ、メディアにも無視される。 こんな状況は一刻も早く変えなければなりません。 参政党が政治を変えるのではなく、参政党が伝える情報によって、国民の意識が変わり、国民の行動が変わっていくことを我々は目指しています。
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