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日米外交、親密と信頼をはき違えるな
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
2017年2月3日(金)
田原 総一朗
(写真=Alessandro Di Ciommo/アフロ)
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、シリアやイランなど7カ国から米国への入国を禁止する大統領令を発令した。
サリー・イエーツ司法長官代理が「大統領令が合法だという確信がない」として、従わない意向を司法省に伝えたところ、腹を立てたトランプ大統領は彼女を即座に更迭した。これは無茶苦茶な話だ。
入国禁止に反対するデモには、おびただしい数のアメリカ国民が参加している。トランプ政権内部、例えば国務省の官僚たちも約900名が反対しているという。米国内だけではない。英国やスコットランド、香港や日本など世界中で抗議のデモが起こった。
企業からも批判の声が上がる。自動車大手のフォードやゼネラル・モーターズ、金融大手のゴールドマンサックス、IT大手のアップル、グーグルやフェイスブックなどの米国企業のトップらも反対を表明している。
その中で、日本の安倍晋三首相はどうか。1月30日の衆議院予算委員会で、安倍首相は野党からの質問に対して「コメントをする立場にはない」と回答を避けた。
首相というのはコメントする立場にないどころか、一番コメントしなければいけない立場にあるのではないだろうか。
2月10日に控える安倍・トランプ会談に悪影響をもたらすことを危惧しているのだろう。しかし、1月27日にトランプ大統領と会談したメイ首相ですらも反対を表明している。メイ首相だけではない。カナダのジャスティン・トルドー首相は1月28日に、「カナダはどんな宗教の人も歓迎する」とツイッターでつぶやいた。彼もまた、近くトランプ氏と会談予定であり、安倍さんとは同じ立場にある。それでも、一国のリーダーとして自分の意見をきちんと表明した。
それに比べると、コメントを控えた安倍首相の弱気な姿勢が目立つ。このような姿勢で、10日の安倍・トランプ会談できちんと日本の意見を主張できるのだろうか。
安倍・トランプ会談では、防衛費増額を要求される
今、日米間には様々な問題が横たわっている。
例えば、トヨタ自動車がメキシコに新工場の建設を進めていることに対して、トランプ大統領は強く反発し、「アメリカに建てろ」と言った。
あるいは、トランプ大統領は日米自動車貿易について「公正ではない」と批判している。しかし、前回書いた通り、実際には米国からのクルマの輸入に関税はかかっておらず、日本からの輸出には2.5%の関税がかかっている。公正でないとするならば、それは米国有利の不公正だ。
こんな問題もある。2月2日から、ジェームズ・マティス国防長官が韓国と日本を訪問する。3日には安倍首相を表敬し、稲田朋美防衛大臣と会談する予定だ。
トランプ大統領は選挙の時に、「在日米軍の駐留費用を日本は全額負担すべきだ。しないのであれば、在日米軍は日本から撤退する」と主張していた。しかし、日本は在日米軍にかかる費用の75%を負担している。これは韓国の40%やドイツの30%と比べたら、格段に多い。そういうこともあり、マティス国防長官は日本に対して、「防衛費の増額を要求するのではないか」という声が関係者の間から漏れ聞こえてくる。
先日、トランプ大統領はイギリスのメイ首相との会談で、北大西洋条約機構(NATO)の重要性を強調していた。NATOが加盟国に求める防衛費負担の目標値は、国内総生産(GDP)比2%だ。しかし、このノルマを果たしているのは、米国を除くと英国やポーランドなど4カ国しかない。トランプ氏はこの点を指摘し、「少なすぎる。同盟国はもっと負担すべきだ」と主張している。
一方、日本の防衛費はGDP比で約1%だ。おそらく3日の会談では、マティス氏はその部分を指摘し、「もっと増やせ」と要求してくるのではないだろうか。
防衛関係者が懸念しているのは、防衛費の増額を求められるだけでなく、その増加分でアメリカの兵器を買えと言ってくるのではないか、ということだ。
安倍・トランプ会談の前に、マティス国防長官の訪問があることは、アメリカの1つの戦略だろう。マティス氏は稲田防衛大臣との会談で、日本に対して国防費の増強などの要求をする。その上で後日、安倍首相がトランプ氏との会談に向かう。すると安倍首相は、何かしらの答えを持っていかねばならない。
そういったアメリカの要求に対して、安倍首相はきちんと対応出来るのか。僕はいささか心配だ。
マティス国防長官が先に韓国を訪問するのは「THAAD」配備に釘を刺すため
一方で、安倍さん自身が元々防衛費を増やしたいと考えているのではないか、という見方もある。
そもそも保守派の多くは、日本が中国や北朝鮮への対応で防衛費を増やすべきだという考え方を持っている。安倍さんも例外ではない。しかし、自民党が「防衛費を増やしたい」と言えば、野党や国民から反対の声が上がるのは目に見えている。
そこで、アメリカから「防衛費を増やせ」と言われれば、これ幸いと主張することができる。こういった思惑も、安倍さんにあるのかもしれない。
もう1つ、今回、マティス国防長官が日本より先に韓国を訪問する点にも注目したい。
先に韓国に行く理由は、北朝鮮問題に“釘を刺す”ためだろう。韓国では、朴槿恵大統領の弾劾裁判が決まり、この夏にも大統領選挙が行われると言われている。今の情勢では、野党候補が大統領になる可能性が高い。
朴槿恵政権は、反日親中だった。ところが昨年、在韓米軍へ「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を配備すると米韓が共同声明を発表した時、中国が強く反発した。反日路線は続き、かつ中国との関係が悪化したままとなると、韓国は八方ふさがりの状態が続く。
ここでもし、韓国で野党の候補者が大統領になり、北朝鮮に対して融和路線へと転換すれば、THAADの配備を破棄する可能性がある。アメリカはそれを心配して、「THAAD配備を覆すな」と念を押すために先に韓国を訪問するのだろう。
日本もアメリカも「保護主義」ではやっていけない
安倍・トランプ会談の大きなテーマは、国防費と貿易均衡の問題になる。特に、アメリカは環太平洋経済連携協定(TPP)に参加しない意向を示しているから、日本に2国間貿易協定の交渉(FTA)を持ちかけるだろう。これは、日本にとって相当妥協を強いられる厳しい交渉になると思う。
現に米韓でFTAの交渉をやった時、韓国は相当不利な条件を飲まされた。日本にも同じような交渉をしてくる可能性がある。
日本としてどうしていくのか。アメリカに対して何を求めるのか。安倍さんは10日の会談でトランプ氏にきちんと打ち出さなければならない。
もし、僕が安倍さんの立場であれば、トランプ氏の進めている政策がアメリカにとってプラスにならなないことを指摘する。アメリカは、確かに自動車などの第二次産業においては輸入が多いが、金融やソフトウエアなどは大輸出国だ。アメリカはむしろ、グローバリズムの中で繁栄している国なのだ。そういった矛盾を示した上で、日米貿易の交渉をすべきだと思う。
日本もグローバリズムの中で成長していく国だ。トランプ氏は「アメリカ人は、アメリカで作ったものを買い、雇用を増やしていく」という完全な保護政策を進めようとしているが、これでは日本経済は非常に厳しい状況に陥るだろう。
安倍さんがトランプ氏との会談でどこまでがんばれるか。ゴルフを一緒に回って親密ぶりをアピールしたとしても、それは世界では全く評価はされない。交渉相手として信頼されるためには、自らの意見をきちんと社会に伝える必要がある。国の代表として、毅然とした態度で日本の意見を主張してほしい。
このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/020200006/?
危うい幻想「日本のコメは世界一」
続「vs米国産」、おいしいのはどっち?
ニッポン農業生き残りのヒント
2017年2月3日(金)
吉田 忠則
「日本のコメは世界一おいしい――。そう言われると、多くの人は自尊心をくすぐられるし、本当にそうだと思っている人も少なくないだろう」
こんな書き出しで昨年、この連載で記事を書いた(2016年8月5日「検証!日本vs米国、うまいコメはどっち?」)。書き出しのトーンで予想できる通り、記事の内容は日本のコメが米国よりも一方的においしいとは言えないというものだった。
なぜ国産米だけで競うのか
「豊葦原の瑞穂の国」の日本人のプライドをゆさぶる根拠になったのが、日本炊飯協会が実施した食味検査だ。検査で使ったのは米国を代表するコメのカルローズと、山形産のササニシキ、はえぬきの3種類。コメを炊き、酢飯にして味を比べたところ、総合評価で軍配が挙がったのはササニシキで、カルローズとはえぬきに有意差はなかった。
この検査のポイントは、ご飯を酢飯にして比べた点にある。米国のすし店で働く日本人の職人のあいだで「カルローズは酢飯に合う」という評判が高まっているからだ。あえて相手の「土俵」に上がることで、日本のコメが本当に優位にあるのかどうかを確かめたわけだ。
結果は、酢飯としての評価が高く、高級すし店で使われるササニシキはカルローズに負けなかった。だが、スーパーのすしや回転ずしで使われることの多いはえぬきは、カルローズと有意差はなかった。
すると当然、つぎの疑問が浮かぶ。「酢飯ではなく、白米で食べ比べたら、どうなるのだろう」。日本穀物検定協会が毎年実施しているコメの食味検査に代表されるように、日本中の産地がコメの味を競い合っている。「今年は特Aがこれだけ増えた」といったことが、稲作の活況を示すかのように語られる。
ところが不思議なことに、外国のコメと正面から比べることはほとんどない。海外からの輸入を心配するどころか、「稲作の活路は輸出にある」などの指摘が農業界にはある。にもかかわらず、品質で比べてみようとしない姿勢は奇妙なことと言わざるをえない。
今回、日本炊飯協会はこの難題に挑戦した。中食や外食に炊いたご飯を提供する企業の集まりである日本炊飯協会にとって、内外のコメの味をいかに客観的に評価するかは切実な問題だ。利幅の薄い中・外食業界にとって、「値ごろ感」は重要な要素だからだ。値ごろ感は品質と価格のバランスで決まる。そして、年10万トンと枠は小さいが、海外からコメを輸入することはできる。
カルローズvs国産米、再び
検査は1月17日に実施した。炊いたご飯を食べ比べ、味を評価した官能検査員は16人。炊飯メーカーの社員など、いかにご飯をおいしく炊くかを仕事にしている専門のメンバーだ。周囲の検査員の判断に影響されないようにするため、机にはパーテーションを立てた。
日本炊飯協会が実施したコメの食味検査の様子(日本炊飯協会提供)
比較に使ったカルローズは、USAライス連合会を通し、サンプルとして直近の2016年産を取り寄せた。外国米の需要が十分にはないなかで、一般に輸入されているカルローズは、必ずしも上質のものではない可能性があるからだ。それと比べたのでは、米国に住む日本人の「こっちのコメも結構おいしい」という感覚とズレが出る恐れがある。
比較対象の国産米は4種類。山形つや姫、茨城コシヒカリ、北海道きらら397、栃木あさひの夢だ。前2者は業界でA銘柄と呼ばれているもので、家庭の食卓で食べることが多い品種だ。これに対し、あとの2者はB銘柄と呼ばれ、中食や外食など業務用で使われることが多い。そして、値段は一般的にA銘柄のほうが高い。
結果は、つや姫とあさひの夢はカルローズよりも総合評価が高く、評価数値には有意差があった。一方、きらら397と茨城コシヒカリの数値はカルローズより高かったものの、有意差はなく、ほぼ同程度という結果になった。
検査ではコメの外観や香りなど、細かい品質も比較した。例えば、粘りを比べると、カルローズより茨城コシヒカリのほうが粘りが強いという結果が出た。ただ、総合評価と違い、個別の項目は必ずしも品質の優劣を示すわけではない。例えば、家庭で食べるコメは粘りの強いものが好まれる傾向があるが、レストランではあまりに粘りが強いコメは敬遠される。丼物の汁が通りにくかったり、コメが食器にひっついて洗いにくかったりするからだ。
検査方法は日本穀物検定協会の基準に準拠した(日本炊飯協会提供)
2回の検査を通し明らかになったのは、カルローズにとって有利とみられた酢飯だけでなく、白米で食べても必ずしも国産米がおいしとは限らないということだ。しかも、国内では比較的おいしいとされるA銘柄でさえ、はっきりとカルローズより上だと言えないケースがあることもわかった。
100円の違い「使ってみたい」
この結果をどう受け止めるべきなのだろう。検査結果を公表した日本炊飯協会の1月26日の総会では、会員企業から「値段はどうなっているのか」という質問が出た。値ごろ感を重視する業界として当然の質問だろう。これに対し、福田耕作会長はつぎのように答えた。
「カルローズはマークアップ(政府が受け取る輸入差益)を乗せると1キロで150円で、さらに異物などを取り除く調整費を乗せると170円になる。かたや、きらら397は270円。100円の違いがある」
「ただし、輸入枠はわずか10万トンしかない。100円の差があっても簡単には手に入らず、基本は国産を使わざるをえない」
集まった企業はこの結果に考え込むとともに、「使ってみたい」という声がもれた。後述するように業務用のコメは品薄状態が続き、コメ卸が売り先に値上げを求めているからだ。
このやりとりには補足が必要だろう。取材で福田氏にあらためて検査結果への感想をたずねると、「食品企業は味がよく、安全な食品をできるだけ安く提供する義務がある。100円の差があるのに提供しないのは、消費者にとっていいことなのだろうか」。福田氏は「できる限り国産を提供するのが基本」という立場だが、それでも品質がほとんど変わらず、値段には大きな違いがあるという現実に複雑な表情をみせた。
品質が同じで安いから、ただちに外国産を選ぶべきかというと、必ずしもそうではない。食料は国民生活にとって極めて重要で、しかもコメはなお日本の主食だ。値段の安さだけで外国産に飛びついて、国産米が衰退することに賛同する国民は多くないだろう。
問題は、日本の稲作が国民にできるだけ安いコメを提供するための努力をつくしているかというと、そうでない点にある。全国の産地が特Aを競い合い、ブランド力を高めようとしている努力は否定しない。だが農政が、補助金を使った生産調整(減反)でコメの需給を絞り上げ、その結果、業務用のコメが足りなくなり、米価が上がる現実をどう肯定すればいいのだろうか。
非効率の原因は狭さだけではない
そう書くと、「日本の稲作を米国のように効率化するのは無理」という声が出るかもしれない。だが、日本の稲作が非効率なのは、米国と比べて田んぼが狭いことだけが原因ではない。同じ面積で比べても、日本のほうがずっと収量が少ないのだ。
いまから約半世紀前、コメの減反を始める前は、日本の稲作の反収は世界でトップレベルにあった。だが、減反開始とともに収量の向上は政策目標から外れ、研究面でもタブーになった結果、いまや米国やオーストラリア、エジプトなどに大きく引き離された。かつて、反収が日本よりずっと少なかった中国も、日本と肩を並べつつある。
向かうべき方向は明かだろう。効率の向上には限度がある兼業農家にまで幅広く補助金をばらまく農政をあらため、担い手に支援を集中して生産効率を可能な限り高める。それでもおそらく、米国や豪州に効率で張り合うことは難しいかもしれない。だが、ぎりぎりまで努力する姿をはっきり示したうえで、それでも無理な部分を税金で守ることを、国民は否定しないだろう。
ちなみに、今回は安全面には触れなかったが、世界の農業大国と比べて湿度の高い日本は、一般的に農薬の使用量が多い。病害虫のリスクがより高いからだ。日本の農業を強くするためにこそ、「国産だから安心」という漠然とした思い込みに安易に乗っかる危うさを、最後に強調しておきたい。
効率の向上が稲作の将来を左右する
新たな農の生きる道とは
『コメをやめる勇気』
兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。
日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売
このコラムについて
ニッポン農業生き残りのヒント
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加が決まり、日本の農業の将来をめぐる論議がにわかに騒がしくなってきた。高齢化と放棄地の増大でバケツの底が抜けるような崩壊の危機に直面する一方、次代を担う新しい経営者が登場し、企業も参入の機会をうかがっている。農業はこのまま衰退してしまうのか。それとも再生できるのか。リスクとチャンスをともに抱える現場を取材し、生き残りのヒントをさぐる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252376/020100083
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