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安倍首相は政府保有米国債売却可能性を明示すべきだー(植草一秀氏)
http://www.twitlonger.com/show/n_1spj8kk
2nd Feb 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
米国のトランプ大統領が1月31日に、
日本の為替政策について「円安誘導」だと批判したことについて、毎日新聞が次のように伝えている。
「トランプ米大統領は先月31日、米製薬大手幹部との会合で
「他国は通貨安に依存している。
中国はやっているし、日本が何年もやってきたことだ」
と発言し、日本の為替政策を批判した。
米大統領が主要国の為替政策を名指しで批判するのは異例。
安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で
「円安誘導という批判はあたらない」
としたうえで、
「首脳会談の際には、反論すべき点があれば反論していく」
と話し、日本側の立場を説明する姿勢を強調。
10日に開かれる日米首脳会談で、為替政策が論点となる可能性が浮上した。」
http://mainichi.jp/articles/20170202/k00/00m/030/156000c
2月10日、11日に予定されている日米首脳会談で為替政策が論点になる可能性が浮上しているが、
安倍首相は国会答弁で、為替政策はトップ同士で論じるべき話題ではないと発言している。
しかし、時と場合によっては、首脳が為替政策について論議することもあり得るわけで、
為替政策が首脳会談の議題となる可能性をあらかじめ排除することは適正でない。
米国財務省は、半期に一度の外国為替報告書で、2016年4月、初めて
「監視リスト」
を公表し、中国、日本、ドイツ、韓国、台湾の5カ国・地域を指定した。
「為替操作国」
として認定していないが、その前段階となる外国為替報告書では、
上記5ヵ国に加えて、スイスが「監視リスト」に掲載された。
10月の報告書では、日本について、約5年にわたって為替介入をしていないが、
日本の当局者らは「円高抑制を狙って」何度も公に発言したと指摘している。
米国財務省のチェック項目は、
1.対米貿易黒字が年200億ドル超
2.経常黒字が国内総生産(GDP)の3%超
3.一方的な為替介入による外貨買いがGDPの2%超
であり。
3項目に該当すれば「為替操作国」との認定を受ける。
中国は、経常収支黒字が引き続き基準を下回り、
為替介入の目立った動きが見当たらない場合、本年4月に監視対象から除外される可能性がある。
ブルームバーグニュースは次の事実を伝えている。
安倍首相は2月1日午後、衆院予算委員会でトランプ大統領の通貨安誘導発言について、
日本は「2%の物価安定目標を到達」するために、適切な金融政策を日本銀行に委ねており、
「円安誘導という批判は当たらない」と言明。必要なら米側に日本の姿勢を説明する考えを示した。
これに先立ち、浅川雅嗣財務官は同日午前、記者団に対しトランプ氏の発言について、
「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策目的のためにやっている」のであり、
「為替を念頭に置いたものでは全くない」と述べた。
その上で、「為替相場はマーケットで動いている。
操作をしている訳ではない」と反論。日本はしばらく為替介入もしていないとも話し、
真意について「もう少し説明がないと分からない」と述べた。
しかし、事実は違う。
安倍首相は、2012年12月に首相に再就任する直前、日銀による量的金融緩和の目的について、
円安誘導とインフレ誘導である
ことを明言している。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19359610
(3分〜3分15秒の部分参照)
財政出動のための国債発行金額分を全額、15〜20兆円の国債を日銀が市場から買い取る、お金を刷る、
このお金は直ちに建設に向かうわけで、このことによって、間違いなく、円安とインフレが誘導される、
と述べている。
安倍首相がアベノミクスとして提示した日銀の金融緩和政策強化は、
インフレ誘導とともに
円安誘導
を目指すものであった。
ところが、米国から「円安誘導」との批判が生じたために、途中から、
「円安誘導ではなくインフレ誘導である」
と説明を変えたのである。
過去の経緯について、事実と異なる説明をすることはやめるべきだ。
トランプ大統領は日本や中国の通貨が下落することを警戒する発言を示すが、
他方で、米国は中長期の為替政策について、
「強いドルは米国の国益」
との説明を折に触れて示す。
ドル高を求めているのか、ドル安を求めているのか分かりにくい部分がある。
過去の政策スタンスを検証すると、
米国経済が強い局面ではドル上昇を容認し、
米国経済が弱い局面ではドル下落を容認する
傾向がある。
ドル上昇は米国経済やインフレ率を抑制する効果を持つ。
また、ドルの購買力も上昇する。
しかし、景気が悪く、対外貿易収支が悪化する局面では、
ドル下落を求める傾向が強い。
2008年〜2009年にかけてのサブプライム金融危機に対応して、
最初に金融緩和政策を大幅強化したのは米国である。
ドルは下落し、米国経済が改善。
米国株価も大幅反発した。
この路線の二番手を演じたのが日本である。
2012年末以降、日本が金融緩和政策を強化し、日本円が下落。
日本経済が改善し、日本株価も上昇した。
2015年初からは、ECBが量的金融緩和政策に進み、
ユーロが下落、欧州株価も上昇した。
さらに、2015年央以降、中国も人民元切下げに動いたが、
株価急落局面での通貨切下げになったため、
資本の国外流出加速のリスクが表面化して、中国金融市場の混乱を招いてしまった。
つまり、2009年以降、世界はある種の「通貨切下げ競争」の様相を示してきたのである。
トランプ大統領は二国間の貿易収支の不均衡に着目して、
貿易収支を均衡化させるための為替変動を求めているとも考えられるが、
米国がドル下落誘導を行うことには大きなリスクが伴う。
現在、日本や中国が大量の米国財務省証券を保有している。
日本や中国がドル下落を誘導する、保有米国国債売却に突き進めば、
ドル急落、米国債価格急落、米国株価急落が表面化するリスクがある。
いわゆる「ドル暴落」のリスクである。
日本政府は過去の「ドル買い介入」で購入した米国国債を売ったことがない。
本来の介入は、
ドルが安すぎるときにドル資産を購入するもの
であり、
介入後に、ドルが値上がりした場合には、
購入した米国国債を売却
するのが正当である。
日本政府が米国国債を溜め込む理由は皆無である。
米国国債を大量保有しながら、米ドルが下落することを傍観していれば、
巨額の為替損失が発生してしまう。
日本政府は保有している米国国債が満期になっても、米国政府から資金の償還を受けていない。
満期償還金は、そのまま新発国債に乗り換えさせられている。
つまり、日本政府は米国政府に「貸したお金」を返してもらったことがないのである。
安倍首相は2月10日の日米首脳会談で、為替政策論議を避けるべきでない。
米国から「円安誘導をやめろ」と言われたら、
「円安誘導をしない」
ことを明言するとともに、
「保有している米国国債については、市場売却を含めて適宜適切に対応する」
ことを明示するべきだ。
これが、対等な日米関係である。
米国の言いなりになって、米国の要求を、ただ丸呑みするのでは、独立国の首相の行動とは言えない。
トランプ大統領がTPP離脱を決定した。
これは、トランプ氏が公約に明記し、米国の主権者が、
その公約を踏まえてトランプ氏を新大統領に選出した結果である。
これは、「米国の正当な決定」であり、頭ごなしに否定するべきものでない。
米国の決定に敬意を表するべきである。
その上で、トランプ大統領が「日米二国間協議」を提案する場合には、
その提案を拝聴する段階に留めるべきだ。
「日米二国間協議」を実行する必要があるのかどうか。
冷静に検討する必要があるからだ。
トランプ大統領が「二国間協議」を提案して、安倍首相が直ちに、
「イエス、サー」
と回答するようでは、対等な日米関係など構築しようがない。
この対応で誤りがないよう、主権者は厳しく監視しなければならない。
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