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「トランプ氏の日本車叩きどうする?」安倍総理と豊田社長が緊急協議 正論が通じない相手にどう振る舞うか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50829
12017.01.28 歳川 隆雄 ジャーナリスト 「インサイドライン」編集長 現代ビジネス
■豊田章男氏との会食
マスコミ各社は情報を全く掴んでいないが、安倍晋三首相は2月3日夜、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急内の日本料理店「水簾」でトヨタ自動車の豊田章男社長と会食する――。
異例なことだが、菅義偉官房長官も同席する。安倍首相は2月10日、この間、度重なる「日本車叩き」を展開しているドナルド・トランプ米大統領と会談するため、その前に「標的」にされているトヨタ自動車の豊田社長と協議しておく必要があるとの判断からセットされたものだ。
ただ、この会食はトヨタ側からの要請で実現することとなった。その理由は、トランプ政権の当面の通商・貿易政策が貿易不均衡是正に力点が置かれ、対日貿易赤字解消のために米国市場での販売台数が約600万台に達する日本車が標的にされていることへの対応策を話し合うためだ。
実は、これだけではない。一昨年の秋、安倍首相は官民対話の場で経済界に対して「投資の本格化に加え、3巡目のしっかりした賃上げが行われなければ経済の好循環は実現できない」と発言、2012年から14年までに企業の経常利益は33.2%増、内部留保が16.4%増、さらに預金残高も10.6%増だったにも拘わらず従業員の給与・賞与は僅か0.2%に留まったことに警鐘を鳴らした。
ところが昨年の春闘時、首相官邸側は15年並みの4000円のベースアップ(基本給上げ)を求めたが、トヨタ側の回答は1500円のベアに留まった。
もちろん、トヨタ側には定期昇給とベアを合わせて8000円超の賃上げとなっているという言い分がある。しかし官邸サイドは、世界一の収益を得た同社が率先して大幅ベアを実現して消費回復に協力すべきところなのに「なぜ、できない」と、官邸サイドは同社への不満を隠さなかった。
第2次安倍政権発足以降、アベノミクスの恩恵を受けた同社を含めて二桁増益を挙げてきた大企業は一時金支給を実施しているものの、ベア交渉で満額回答をした企業が殆どなかったことへの不満がその背景にあるのだ。
今回の安倍・豊田会談では、今春闘のベア問題も話し合いの俎上に乗る。消費マインドは冷え込んだままだ、デフレ脱却はまだ道半ばだ、規制改革は進んでいない、などアベノミクスが十分機能していないという批判が少なくない。
こうしたことから安倍首相は、トヨタに賃上げのリーディング・カンパニーになってもらいたいと強く求めるものと思われる。官邸とトヨタの大和解の場になる。
■オールジャパンで対米交渉を
それにしても、である。トランプ政権の保護主義的な通商・貿易政策は目に余る。
「正論」が通じないトランプ大統領の「2国間貿易主義」に押し切られて、終に安倍政権は内閣官房に置くTPP(環太平洋パートナーシップ協定)政府対策本部(本部長・石原伸晃経済再生相)を改組し、安倍首相自らが議長となるTPP・経済連携政府対策本部にパワーアップすることを余儀なくされた。
米側の司令塔であるウィルバー・ロス次期商務長官のカウンターパートは石原経済再生相だが、安倍首相は訪米に同行する麻生太郎副総理・財務相をヘッドに岸田文雄外相、世耕弘成経済産業相を交えた通商政策チームを結成、オールジャパンで対米交渉に臨む腹積りである。
いずれにしても、トランプ大統領は既存メディアを敵視しており、情報は自分が発信したいものだけ発信するという独善的な「指先介入」は知性や寛容の対極に位置する。自分の主張と近い考えや自分を高く評価してくれる人には「Great」と賛辞を送り、批判する人は徹底攻撃する。敵か味方かを峻別するのがトランプ流だ。
こうした“厄介な人”とホワイトハウスで対峙する安倍首相は、さぞかし気が重いことだろう。そして、昨年11月17日にニューヨークのトランプタワーで会談した時と日米を取り巻く風景が大きく変わったことに戸惑うはずだ。
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