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トランプ氏が日銀に感謝すべき理由とは 安倍首相はポピュリスト台頭の犠牲とならずに済むか
By WILLIAM PESEK
2017 年 1 月 26 日 17:33 JST
ドナルド・トランプ米大統領が仕掛ける「口撃」の中でも、中銀に対するものが最も的外れかもしれない。同氏が当選できたのは、むしろ中銀のおかげだ。
トランプ支持派は、女性や公民権運動指導者、中国政府、気障りな企業トップに対する口撃を好むかもしれない。だが、米連邦準備制度理事会(FRB)に対する痛烈な批判は、ユーロ圏と英国、日本、米国で行われた量的緩和がトランプ大統領を誕生させる上で中心的な役割を果たしたことを見過ごしている。量的緩和こそが、世界的なポピュリスト(大衆迎合主義者)の台頭を招くことになった状況を悪化させたと言えるだろう。
当初から罪深いとされている日銀について考えてみたい。確かに、日本は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を促したような機運を今のところ回避している数少ない先進国だ。日本人は非常に礼儀正しく、政治的な憎しみより調和を重んじる傾向がある。相対的に見て平等主義であることも、社会的反発を和らげる役目を果たしている。だが日本でさえ、アベノミクスの成果が4年たっても出ない中、緊張が高まっていることが世論調査からうかがえる。
日本の問題は何だろうか。超緩和的な金融政策に依存しすぎで、政策当局が雇用創出や生産性向上、経済価値を生み出す新たな原動力の育成で十分な成果を上げていないことだ。これらはポール・クルーグマン氏やケネス・ロゴフ氏といった著名経済学者が何年も前から警告してきた。だが最も痛烈だったのは、著書「21世紀の資本」で知られるフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏かもしれない。
日銀がデフレ対策として「量的・質的金融緩和」を導入した2013年以降、ピケティ氏は追加的な量的緩和は裏目に出ると警告してきた。この批判はユーロ圏や英国、米国の中銀当局にも言えることだが、ピケティ氏は日銀が債券や不動産、株式などの資産を大量に購入しても富裕層しか豊かにならないことを特に疑問視しているようだ。その一方、アベノミクスの円安誘導で円相場は一時30%余り下落した。これで日本はエネルギーや食料品を通じてインフレを輸入しているも同然となった。こうした政策で持てる者と持たざる者の格差は拡大した。
何よりもこの現実を見れば、さまつな要因から生じたポピュリストの怒りがなぜ英国や欧州、米国の選挙で最重要の問題となったのか説明がつく。オランダ中央銀行のエコノミストらは14年に発表した論文「非従来型の金融政策は格差にどう影響するか」で、「日銀の非従来型政策は所得格差の拡大につながった」と結論付けた。金融政策にできない所得格差の解消は、構造改革で可能だという。
日本は一種の実験として量的緩和を考え出した。08年のリーマン・ショック以降に大量の金融緩和を実施し、構造改革をないがしろにすることで、自ら次なる「ポピュリスト・ショック」のお膳立てをしている可能性がある。日本国内では、ツイッター愛好家でトランプ支持派として知られる橋下徹・前大阪市長なら、日本がこれまで回避してきたブレグジット機運を盛り上げ、安倍政権を打倒できるのではないかとみる向きが多い。
責めるべき点は多々ある。選挙で選ばれた政治家が務めを果たし、経済の活力や競争力、公正さを高める改革を行っていれば、中央銀行が主導権を握ることはなかったかもしれない。だがその一方、中銀は金利をゼロやそれ以下へ引き下げることで、金融システム再編の緊急性を薄れさせてしまったのではないか、という正当な反論もある。
こうした疑問にエコノミストらはいら立つ。例えば、日銀がむしろ利上げという形で先行きへの自信を示し、金融環境をもう少し平等なものにしていたらどうなのか。超低金利の恩恵が最も及ぶのは紙の資産を持つ人(資本家)であって、労働者ではないのは確かだ。英中銀イングランド銀行のカーニー総裁は昨年10月、「あらゆる金融政策行動には分配上の影響がある。それに対処するのは中銀ではない。包括的な成長政策の一環としてそうした行動を選択する場合、影響を相殺するのは政府の役割だ」と語った。
こうした分配上の影響を政府が相殺できなかったことこそ、ブレグジットやトランプ大統領誕生、イタリアのレンツィ前首相辞任に道を開いた。中間層が取り残されている、というこれらの場面での基本的な主張は次第に勢いを増している。中銀当局者、特に日銀の黒田東彦総裁はこれを反面教師にしなければならない。
繰り返すが、弱腰の政府にも責任はある。政府は緊縮財政にこだわり、ハンドルを金融政策当局に委ねたことを反省すべきだ。だが、あり得ないことが当たり前になった16年の衝撃的な出来事は、幻滅した有権者がいかにして08年以来の繁栄を取り戻そうとしているかを物語っている。また、トランプ氏の当選につながった政策を強化するよう安倍首相が日銀に求めるべきではないことも示唆している。安倍首相もポピュリスト台頭の犠牲にならないよう願うばかりだ。
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中国国債利回りが急伸−中銀MLF金利引き上げで
人民銀行は市場の流動性調節手段の一つである中期貸出制度(MLF)の金利を引き上げた。一部のアナリストはこの動きを事実上の利上げと受け止めている PHOTO: REUTERS FILE PHOTO/REUTERS
By
RACHEL ROSENTHAL
2017 年 1 月 26 日 18:46 JST
中国人民銀行(中央銀行)が24日に金融機関に対する主要貸出金利を引き上げたことを受け、中国の国債利回りが急伸している。
指標となる10年物国債利回りは25日、前日の3.296%から3.336%に上昇し、12月半ばにつけた直近の高水準である3.387%に近づいた。
人民銀行は24日夕、市場の流動性調節手段の一つである中期貸出制度(MLF)の金利を引き上げた。一部のアナリストはこの動きを事実上の利上げと受け止めている。中国が最後に利上げしたのは2011年。
すさまじい勢いの信用の伸びを抑えるため、中国は金融政策を調節しながら同時に銀行の資金需要を満たして市場にパニックが起きないようにするため金融システム内の流動性を十分維持するよう努めている。24日の金利引き上げはこうした動きの一環だ。
HSBCホールディングスのアジア太平洋地域金利戦略部門ディレクター、ピン・ルー・タン氏は「これが引き締めの合図であることは間違いない」とし、「中国政府の今年の最優先事項の一つは、金融レバレッジを縮小して資産バブルや金融システムの危機を回避することだ」と語った。
人民銀行は先週、春節(旧正月、今年は1月28日)の連休を前に、週ベースで過去最高となる1兆1300億元(約18兆6200億円)の資金を短期金融市場に供給した。現金需要が急増する例年この時期は流動性が引き締まる傾向がある。特に金融市場が1月27日から2月2日まで休場となることが大きく影響している。
中国の10年物国債利回り
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AU673_CBOND_16U_20170125040306.jpg
中国政府はレバレッジの引き下げを17年の最重要課題に挙げている。金融危機後、不動産から社債、鉄鉱石および大豆先物に至るまで金融資産市場では、割安な資金の大量流入によって価格が押し上げられた。中国のマネーサプライ(通貨供給量)は07年以降4倍以上に膨らみ、魅力的な投資先を求める資金が拡大の一途をたどってきた。当局が資本統制を敷いているため、資金は海外資産ではなく国内資産に流れ込んでいる。
経済成長てこ入れを目的に人民銀行が短期貸出金利を非常に低い水準に抑え始めた15年以降、債券市場の資金は増加傾向にある。16年の夏までに銀行間市場における借り入れのうち翌日物が約90%を占めるようになった。
多くの投資家は安く調達した資金で債券などの金融商品を買い入れ、それを担保にさらに投資を拡大した。こうした借り入れの大半はバランスシートに載らない形で行われたため、規制当局の目の届かないところでレバレッジや金融リスクが膨らんだ。
政府当局は16年8月、これらの取引に対する厳しい取り締まりに着手した。当局の要請で長期の借り入れへのシフトが進む中、短期資金の調達コストは押し上げられた。国内でこうした緩やかな引き締めが進む一方で米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派姿勢を強めた上、デフォルト(債務不履行)懸念が広がった影響で、12月半ばに中国本土の債券市場は大きく売り込まれた。昨年12月15日、債券売りの急増に伴い10年物と5年物の国債先物価格がそれぞれ2%、1.2%下落すると、中国当局は一部の国債先物取引を停止した。史上初めてのことだ。
レバレッジ解消に向けた当局の努力が実を結び始めた兆候は見受けられる。BNPパリバによると、銀行間市場における翌日物の1日の取引量は1兆9600億元で、昨年夏のピーク(約4兆元)を大きく下回る。現在、銀行間取引全体に占める翌日物の割合は約70%だ。
MLFの6カ月物金利と1年物金利をそれぞれ2.95%、3.1%へ0.1%ずつ引き上げるという人民銀行の決定は、驚くほど劇的なものでもない。市場ウォッチャーにとってより重要なのは、当局の引き締め姿勢が当面は変わらないことが確認されたことだ。
ゴールドマン・サックスのエコノミストはリポートで、「金利の引き上げ幅は小さいが、人民銀行が引き締めバイアスを強めたことを示すシグナルであることは明確だ」と指摘した。
中国債券市場は一時的に大荒れとなったものの、同市場の長期見通しが明るいことを示す兆候は幾つかある。
ブルームバーグは25日、中国本土市場で取引されている国債と政策銀行債券などに連動する二つの新しい指標を3月1日付で導入すると発表した。
スタンダード・チャータードの中国マクロストラテジスト、ベッキー・リュウ氏によると、こうした動きを受け、JPモルガン新興国市場国債インデックスなど、ベンチマークとして広く使われているその他の国際的な債券相場の指標の間でも、中国国債を組み込む動きが加速するかもしれず、中国本土の債券市場への海外投資家の参入に拍車が掛かる可能性もある。本土市場で発行された債券の海外投資家による保有率は現在2%に満たない。
市場の指標を提供している企業は、中国金融市場における自由化の前進が中国の国債などを指標に採用する条件の一つと考えてきた。ドイツ銀行の推計によると、中国が指標に組み込まれれば、中国市場には今後5年間で海外から7000億〜8000億ドルの投資資金が流れ込む可能性がある。
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