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説得力に欠ける「一代限り」 天皇退位、特例法で 有識者会議見解
「苟(いや)しくもその才無くんば即ちその位に処(お)るべからず」
学識随一といわれた鎌倉時代末期の花園天皇が、甥(おい)である光厳天皇(北朝初代)に与えた『誡太子書(かいたいしのしょ)』の一節である。天皇は常に研さんを怠らず、その地位にふさわしい能力を備えていなければならないとする「帝王学」の書だ。
皇帝は徳を示さねばならないとする中国思想の影響もあり、歴代天皇の多くは自身を高める努力を続けた。政治権力のあるなしにかかわらず、天皇の「義務」でもあった。
「存在するだけで何もしなくてもいい」という天皇観は、こうした天皇の克己の歴史への理解不足によるものだろう。
ただ、天皇のあり方についてどのような意見を表明しようと言論は自由である。問題は退位を論じる政府機関の有識者会議のヒアリングに、適任とは言い難い“専門家”も招いたことだ。人選は選ぶ側のレベルも表す。これからの時代を担う若い世代と女性の研究者の意見が聞かれることはなかった。
このため実際的ではない方向に議論が拡散した。これが目くらましのようになり、核心的な問題を素通りして、当初からの政府方針といわれている「一代限り、特例法での退位」の結論が拙速ともいえる形で出されようとしている。
核心的な問題とは退位の要件である。有識者会議は「年齢を要件にするのは難しい」「将来の天皇の退位要件を現時点で決められない。各時代で判断すべきだ」として、深く議論することを避けた。
不可解である。例えば「80歳を過ぎたら」という必要条件を設けることがどうして困難なのか。今回の問題は超高齢化にあるのだから年齢を要件にするのは当然であり、むしろ恣意的、強制的な退位を排除できる。
そして「各時代で決めればいい」は問題の先送りそのものである。将来の天皇が必ず直面する高齢化問題から目をそらして真摯に議論したと胸を張れるのか。
「有識者会議は政府方針の追認機関」との批判も出ているが、その責任は政府にある。超高齢化時代と天皇の退位は構造的な問題だ。国民各層から幅広く意見を聞く前から、現在の天皇陛下だけの問題に収束させる方針を固めていたとしたら、一内閣の権限を越えた判断ではないだろうか。
昨年末に日本経済新聞が実施した世論調査では、65%が退位について恒久的な制度を支持している。これを覆す説得力のある理屈が見いだせていない。
(編集委員 井上亮)
[日経新聞1月12日朝刊P.38]
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