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「慰安婦問題」民進・共産の国際常識がここまで欠如しているとは… これで「共闘」とは笑わせる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50728
橋 洋一経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス
■詭弁だらけの「野党共闘」
先週の土曜日午後、ニッポン放送主催のトークイベントに出演した(http://www.1242.com/lf/articles/17843/)。同局のラジオ番組のレギュラー出演者らが集まったものだ。
会場は、東京国際フォーラムホールA。有名アーチストらがコンサート会場としても利用するところで、2階席までいっぱいで5000人の参加者があった。決して安くない参加費も払ってくれ、寒い中集まっていただいた方々には感謝している。
ちょうどそれと同じ時に、渋谷で「安倍政権NO!」というデモ行進があったという(http://mainichi.jp/articles/20170115/k00/00m/040/008000c)。参加者は主催者発表で約2000人だったようだ。
主催者発表というのは、「実数より多め」が世間相場であるが、それにしても、カネを払って5000人が来たのと比べると、主催者発表2000人は寂しいモノだ。私が参加したトークイベントでは、このデモに参加していた民進、共産らの野党4党批判を思い切りやらせてもらった。
野党共闘の動きのひとつかなと思っていたら、案の定、翌15日の共産党大会でこんな一幕があった。
志位委員長が「安倍政権を倒し、自民党政治を終わらせ、野党連合政権を作るために、ありとあらゆる努力を傾ける決意を表明するものであります」と述べたのだ。
同大会には民進、自由、社民3党の幹部が初めて出席してあいさつした。民進党の安住淳代表代行は「できる限りの協力を行うための話し合いを、積極的かつ具体的に進めていくことを約束する。一日も早く態勢を整え、来るべき決戦に備えたい」とし、共通政策に関しても、「ある一定の幅の中に寄せ合うことは可能だ」と述べた。
野党4党の共闘はどの程度可能であろうか。
筆者からみれば、憲法についての考えでは、民進と共産では超えがたい壁があるはずだ。そもそも憲法については、民進党内もまとまるのかどうかさえあやしいものだ。特に、自衛隊に関しては、民進党は合憲、共産党は違憲である。どうしたら「一定の幅の中」になるのか不思議だ。
消費税増税では、民進党は賛成、共産党は反対である。
これも、どのように「一定の幅の中」に納めるのか。「幅」は限りなく広い、というのであれば話は別だが。賛成と反対を同じというのは詭弁である。
■民・共の決定的な見解の違い
さらに具体的な問題を考えてみよう。それは、慰安婦問題への対応である。
釜山の日本総領事館前に昨年末、慰安婦像が新設された。これは、2015年12月の「日韓合意」に反することは言うまでもない。
そもそも、「ウィーン条約」にも反する行為のため、日本側は駐韓日本大使を一時帰国させ、日韓通貨交換(スワップ)協定の協議再開の中断などを打ち出した。
慰安婦問題に関する日韓合意は、「慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認する」という日本政府と韓国政府との合意である。日本政府の予算10億円で元慰安婦を支援するための財団を設立するとともに、ソウルの日本大使館前の慰安婦像について、韓国政府は「適切に解決できるよう努力する」と発表している。
日本側は、10億円の拠出は済んでいるので、韓国側によるソウルの慰安婦像の撤去を待っていたところ、新たに釜山の日本総領事館前に新設されるという事態になって、日本側が反発したのだ。
筆者の役人経験からいっても、非は韓国側にある。実は、2015年末の日韓合意に関わった韓国人の多くは、「今回の韓国の対応は不味い」と顔をしかめている。
民進党の蓮舫代表は、15日、駐韓大使の一時帰国措置は「仕方がなかった」とした上で、「日韓両国政府、国民は冷静に対応し、両国政府が正式に約束したことをとにかく履行することに尽きる」と述べた。
一方、共産党の小池晃書記局長は12日、「日本政府は、過去に元慰安婦の人権を著しく侵害したことへの誠実な謝罪が必要だ」と述べた。
民主党の蓮舫代表の意見は、日本側がすでに10億円拠出したことを無視して日韓両国に対応を求める点はおかしいが、政府の措置には一定の評価をしている。
一方、共産党の小池書記局長は、あくまで日本政府が悪いという言い方である。小池氏がそういったのは、在日本大韓民国民団(民団)の新年会での挨拶である。民団の呉公太団長が「慰安婦像を撤去すべき」と話したこととは好対照であった(さらに、呉公太団長は2015年12月の「日韓合意」も評価していた)。
この問題でも、民進党と共産党は、どのように「一定の幅の中」にできるのだろうか。
意見を調整するときには、原理原則がカギである。
慰安婦像問題については、ウィーン条約第22条に「接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とある。
要するに、各国政府は外国公館の安寧を妨害したり、品位を損なったりすることを防止するため、適切なあらゆる措置をとるべき特別な義務を持つ、ということだ。
ソウルの日本大使館前の慰安婦像については、この条項違反のおそれがあると日本政府は主張している。韓国政府の外交部当局者も、日本の主張が国際的に通用する可能性が高いことを認めている。そうであるからこそ、2015年末の日韓合意が成立したわけだ。
ロジカルにいえば、慰安婦像がウィーン条約違反だから、韓国側に撤去する義務がある、でおしまいだ。しばしば「民間団体が立てたのだから、政府が撤去できない」という意見も聞こえてくるが、道路を使用しているのだから政府で撤去できる。
現に、釜山市では一度撤去されているが、一部の住民の声に屈して設置を黙認してしまった。もし、そうした国内法がなければ法整備を行うという義務も韓国側にある。
■野党にまともな国家観はナシ
こうした意味において、10億円の拠出は必ずしも日本政府の責務でない。ただし、問題解決を円滑に行うための措置であった。
安倍首相が、「10億円を拠出したので、後は韓国の誠意を待っている」との発言が、韓国国内で反発していることを受け、日本のテレビの左派コメンテーターは、韓国国民の感情を煽るような発言を安倍首相はするべきではないという。
しかしこの左派コメンテーターが、「そもそもウィーン条約違反である」ということをいわないのはフェアでない。10億円を日本に返すからといって、慰安婦像が大使館前に存在していいはずはないのだ。
13日、韓国の韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相は「外国公館の前に造形物を設置するのは国際関係や儀礼上、望ましくないのが一般的だ」と韓国国会で答弁し、日本側の認識を認めている。
今の民進党にも共産党にも、国際常識を判断基準にするのは期待できない。実際、両党関係者から「ウィーン条約」という言葉はまず聞こえてこない。であるから、場当たり的な意見調整はあるかもしれないが、しっかりした判断はできそうもない。
慰安婦像問題でも、当初民進党はだんまりであった。13日、韓国外相の国会答弁があり、それを受けて日本政府が、一時帰国していた大使の訪韓を検討していることが新聞で報じられると、ようやく蓮舫代表は上に書いたように「一時帰国は仕方ない」と容認するようになった。まともな国家観、外交観なんぞみられたものでない。
最後に、民進党と共産党がすぐに意見一致することがひとつある。それを指摘しよう。
それはアベノミクスのひとつである金融緩和への反対である。
本コラムで何回も書いたように、雇用を創出する金融緩和に、日本の左派政党が反対するのは、単なる理解不足によるものだ。アベノミクスに反対というだけで金融緩和に反対しているようだが、それは失業率が改善したことを全く評価していない。つまり、労働者の「敵」になるわけだ。
わざわざ労働者の敵になろうとするのも、世界の非常識であると言っておこう。
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