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「人を殺してみたかった」事件の真相は
3月24日 22時52分
「人を殺してみたかった」。
おととし、知り合いの女性を殺害したとして逮捕された元女子大学生が捜査段階で語った動機です。それから2年余り、元女子大学生の裁判が24日に開かれ、無期懲役の判決が言い渡されました。これまでの裁判で、元女子大学生は何を語り、その心の闇はどこまで明らかにされたのか。傍聴を重ねた記者の目を通して見えた“真相”を伝えます。
社会に大きな衝撃
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平成27年1月。1か月以上前から行方が分からなくなっていた名古屋市の77歳の女性が、市内のあるアパートの一室で遺体となって発見されました。
この部屋に住んでいたのは、当時19歳の名古屋大学1年の女子学生。
女性を殺害したことを素直に認める一方で、供述したのが、冒頭の「人を殺してみたかった」でした。
その後、およそ5か月にわたって捜査が行われた結果、高校時代に同級生に劇物のタリウムをひそかに飲ませるなど、信じられない事件が次々と明らかになり、社会に大きな衝撃を与えました。
不可解な動機
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裁判では、その動機の異常さが際立ちました。その流れは大きく3つに分けられます。
@「タリウム中毒の症状を観察したかった」
仙台市の高校2年生の時に、同級生2人にタリウムをひそかに飲ませ、殺害しようとした事件
A「人を殺して死ぬ過程が見たかった」
大学1年生の時、知り合いの77歳の女性を殺害した事件
B「焼けて死んだ遺体を見たい」
大学1年生の時、実家に帰省した際、2度にわたり、住宅に火をつけて焼こうとした事件
裁判が始まったのはことし1月。元女子大学生は事件当時、未成年でしたが、成人と同じ裁判員裁判を受けることになりました。
名古屋地方裁判所の初公判に現れた元女子大学生は、髪の毛を後ろで束ね、紺の上着と黒のズボン姿、ごく普通のどこにでもいる21歳といった印象でした。裁判官の問いかけには、落ち着いた声ではっきりと答え、凄惨(せいさん)な事件に関わったとは信じられませんでした。
裁判では刑事責任が問えるかどうかを最大の争点に審理が行われ、計6回の被告人質問のほか、母親や精神鑑定を行った医師などに対する尋問が行われ、そのすべてを傍聴しました。
殺人への強い関心
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審理が進むにつれ、元女子大学生に対する当初の先入観が、誤りであったことが明らかになっていきます。
身上や経歴の中で、高校時代は人あたりがよく、クラスの中心的な存在だったとされた元女子大学生。なぜ、いつごろから人を殺すことに興味を強めていったのでしょうか。
被告人質問では“人を殺すこと”に興味を持つようになったのが「中学2年生の時だった」と明かしました。きっかけは、母親との会話の中で、平成9年に神戸市で起きた、当時14歳の男子中学生による連続児童殺傷事件について聞いたときだと話しました。このとき初めて「人を殺すということ(の意味)を知った」と説明しました。
一方、証人として出廷した母親は当時を振り返り「『自分と同じ年でそんなことができるなんて尊敬する』という反応だったので、がく然とした」と証言しました。
その後、元女子大学生はインターネットで過去に起きた殺人事件などを調べるようになり、“人を殺すこと”への関心を深めていったといいます。
高校に進学してからは、クラスメイトに対し、殺人事件の話題を一方的に繰り返し話したり、学級日誌に、過去に殺人に関わった人物の誕生日などを書いていました。なかでも、同年代の少年らが起こした事件に強い興味を抱き、共感を持つようになったといいます。「人を殺したいという理由で殺すのは、少年のうちにしかできないと思い込んでいた」。殺人への欲求は高校時代に大きく膨らんでいったのです。
裁判では、このころ、今回の事件で使用するオノやナイフを購入したこともわかりました。その理由について「人を殺したいという欲求を抑えるために持っていたい気持ちと、ナイフを使って誰かを殺したい気持ちがあった」と説明しました。
さらに、大学に進学すると“殺すための相手”を探して人間関係を築くようになり、そして「殺さずにはいられない」という衝動に駆られた結果、最終的な目的を果たします。
どうやって知り合いの女性を“殺すための相手”として選んだのか。裁判では、この女性のほか、同じ大学の友人2人も殺す候補と考え、具体的な計画を立てていたと明らかにしました。そして、たまたま最も早く自宅に招く機会があったから殺害を決意したとしました。
女性の頭を背後からオノで殴りつけると、抵抗され「どうして?」と聞かれたので「人を殺してみたかった」と答え、首を絞めて殺害したと話しました。
多くの凶悪事件の取材経験がある記者でも、強烈な戦慄を覚える状況を淡々と話す様子からは、深い心の闇と同時に、元女子大学生が自身が犯した罪の大きさを実感できないむなしさのようなものを感じざるを得ませんでした。
中毒症状への関心
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人を死なせる過程を確かめる実験ともいえる事件。それが高校生のときに同級生らに劇物のタリウムを飲ませた事件です。
化学が得意で、さまざまな薬品に興味を持つようになり、2年生になると年齢を偽って、劇物のタリウムや亜硝酸ナトリウム(致死量はわずか2グラム)を薬局で購入しました。「コレクションという気持ちが半分。人に投与したいという気持ちが半分」。
特にタリウムは12年前に静岡県で当時16歳の女子高校生が母親に飲ませて殺害しようとして逮捕された事件を知り「中毒の症状を観察したい」という強い興味を持つようになりました。
そして、「どうしても人に投与したい」という思いが抑えられなくなり、中学の同級生だった女子生徒をカラオケ店に呼び出し、ひそかに飲み物に混入させました。
さらに、その翌日、高校の教室でも同級生の男子生徒が持っていたペットボトルの飲み物にタリウムを入れて飲ませます。男子生徒は目に重い後遺症が残りました。
被害者は人ではなくヒト
人を殺したくて殺し、中毒の症状を観察したいからタリウムを飲ませる。
審理では常に感情をあらわにすることがなく、聞かれたことには淡々と答えますが、被害に遭った人や遺族の気持ちについて、どう思うか尋ねられると「わからない」を連発。他人の身になり、気持ちを推し量ることができないということが伝わってきました。
「被害者は“人”ではなく、実験対象としての“ヒト”」。「人は死んだ瞬間にモノになる」。「人はコンピューターより少し複雑なだけで修理可能」。
タリウムを投与した2人を「2個体」と表現し、観察ノートに症状を記録するなど、被害者やその家族に対する理解や共感をまったく持ち合わせない言動に、裁判を傍聴していてるこちらが混乱してしまうこともたびたびありました。
こうした行動の原因について、精神鑑定を行った3人の鑑定医は発達障害と双極性障害、いわゆるそううつ病の影響を指摘しています。
鑑定の結果、IQ=知能指数は120あったとされ、勉強や表面的な他者とのコミュニケーションに支障をきたすことはありませんでした。
一方、障害の影響で、興味が1つのことに限定したり、他者への共感性が欠如していたと指摘しています。
人を殺さない自分になりたい
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逮捕から2年余り。勾留中に医師の診断を受け、投薬治療などを受けた結果、気持ちが落ち着いてきたという元女子大学生は「人を殺さない自分になりたい」、「こういう事件を二度と起こしたくない」と何度も口にするようになりました。
その一方で「謝罪をしたいという気持ちはあるが、謝罪や反省のしかたがわからない」といい、今でも「週に1〜2度、人を殺したいと思うことがある」とも話しています。
見過ごされた兆候
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裁判の中では、事件の兆候を見抜く機会がたびたびあったことがわかりました。
中学生時代、学校に通えなくなり精神科を受診した時。高校時代、父親が化学薬品やナイフを見つけて警察に連れていった時。タリウムの投与を妹に打ち明けた時。
さらに、殺人事件の4か月前。犯罪者を礼賛するような言動を聞いた母親が仙台市の発達障害の支援センターに連れていったこともありました。そこで殺人に対する願望を打ち明けていたという元女子大学生。
しかし、母親にその結果が伝わったのは1か月後。すでに名古屋に戻っていた元女子大学生に、近くの支援センターに相談するよう伝えましたが、実際に訪問することはありませんでした。
家族や周囲が、その深刻さに気付かず、事件の芽を摘み取ることができなかったのです。
元女子大学生は、弁護士から幼いころの思い出について尋ねられ「泥団子を作るのがうまかったり、かけっこで1位になったことを先生にほめられた」と話しました。研究者を目指したこともあるなど、事件を起こさない道を歩もうとしていたこともあります。
24日の判決で、裁判所は発達障害の影響は限定的で、みずからの意思で犯行に及んだとして、責任能力があったと認定しました。一方で、刑務所で適切な治療などを受けさせるべきだとも指摘しました。
「人を殺してみたかった」。なぜ、そう思い、実行してしまったのか。裁判を通して考え続けてきましたが、最後まで納得のいく言葉を聞くことはできませんでした。過去には同じような動機で起きた事件も少なからずあります。
今回の事件を特異なケースとして片づけるのではなく、事件を防ぐために何ができるのか、これからも取材を続けていきたいと思います。
絹田峻
名古屋局
絹田峻 記者
管野彰彦
ネット報道部
管野彰彦 記者
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