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2022年2月8日 07時28分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/158942?rct=editorial
子の父が誰かを決める「嫡出推定」の規定見直しが、法制審議会の部会で了承された。「無戸籍の子」の解消が狙いで、早期の法改正を望みたい。ただ不十分な点は残る。さらなる見直しが必要だ。
「嫡出」は婚姻中の夫婦間で子が生まれることを意味する。
現行の民法では離婚から三百日以内に生まれた子は前夫の子、結婚や再婚から二百日を経過した後に生まれた子は現夫の子と規定している。前夫と現夫の間での推定重複を避けるため、女性には離婚後百日間は再婚を禁じてきた。
つまり、女性が離婚直後に別の男性との子を出産しても、子は前夫の子と見なされる。それを回避したいと出生届を出さず、子が無戸籍となる事態が起きてきた。
こうした無戸籍者は全国で一万人を超すと推計されている。戸籍がないと原則として、住民登録やパスポート、運転免許の取得ができず、銀行口座の開設なども難しい。就職すらままならない。
こうした状況をなくすため、部会の改正要綱案では離婚後、三百日以内に生まれた子を前夫の子と見なす原則は維持しつつも、女性が再婚している場合は現夫の子として見なす例外規定を新設。この見直しで重複が解消されるため、女性の再婚禁止期間も撤廃する。
例外規定に当たらない場合も、父子関係を否定する「嫡出否認」の権利を従来の父親のみから母親と子にも広げ、期間も出生を知ってから一年から三年に延ばした。
待たれていた見直しだ。政府は速やかに法案化し、国会に提出すべきだ。ただ、この見直しで問題が全て解決するわけではない。
例外規定は女性の再婚を条件とするが、DV被害で夫から逃げている女性の場合、再婚の前提である離婚すら容易ではない。
嫡出否認についても、女性が訴える場合、前夫との接触の恐れや裁判費用の負担がためらいを生みかねない。依然残る問題に対応するための支援が必要だろう。
「嫡出」という区分そのものを再考する必要もあるだろう。嫡出か否かに基づく相続分の格差も、二〇一三年の民法改正でなくなった。民法が制定された明治期とは家族観も様変わりしている。
国民の命と財産を守るための法律が、人権の妨げになっては本末転倒だ。部会案を一歩前進と評価しつつも、より踏み込んだ規定の見直しに期待したい。
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