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子供にトランプを褒めさせる、米保守派の不気味な風潮
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9429.php
2018年1月31日(水)16時00分 グレアム・ランクトゥリー ニューズウィーク
コールは15年から動画でトランプ支持を表明してきた Maria Young
<極右思想に傾倒してトランプを褒めそやす子供たちを、保守派が政治利用する不気味な風潮>
ドナルド・トランプ米大統領と、彼が支持する団体や選挙候補者をどれほど好きか――動画の中で熱いトランプ愛を語るミリー・マーチとコール・マカファティは、アメリカの12歳の少女と13歳の少年だ。
2人の様子を見ていると、口調がトランプそっくりなことに気付く。しかも2人ともトランプと同じく、カメラの前で緊張したりはしないようだ。
ミリーは昨年12月、アラバマ州の連邦上院補欠選挙の共和党候補ロイ・ムーアにインタビューして愛らしさを見せつけた(ムーアが過去に少女にわいせつ行為をした疑惑があることを考えると不気味だが)。
ポピュリズム的ナショナリストの政治資金管理団体であるアメリカ・ファースト・プロジェクトのジェニファー・ローレンス副会長と語り合ったときには、ミリーはこう言った。「(トランプを)好きなもう1つの理由は『南側の国境に壁を造る。そのためのカネを払うのは、私たちではなくメキシコだ』と言ってること」
■極右のカムフラージュに
一方、コールは昨年10月、極右サイトのインフォウォーズを率いるアレックス・ジョーンズと対談。「(有名テレビキャスターの)メギン・ケリーとのインタビューを見ました。彼女はあなたをばかにする気でいたけど、あなたは逆に彼女が嘘つきだと証明してみせましたね」と持ち上げた。
これに対し、ジョーンズは子供相手にケリーのセクシーさを論評してみせた。「彼女が私をおだてて、はめようとしていることが分かったからね。彼女をセクシーだと言う人が多いが、私は魅力的だとは思わないな」
これらの動画を見れば、トランプ支持者が子供たちを極右の宣伝係に仕立て上げようとしているのは明らかだ。ジョーンズはコールを「グローバリスト」への抵抗の新たな波の一翼を担う存在だと持ち上げる。グローバリストへの抵抗とは、ユダヤ系団体が「反ユダヤ主義」の隠語と見なす表現だ。
「子供たちが武器として利用されている」と、作家でコロンビア大学教授のトッド・ギトリンは指摘する。ミリーやコールを登場させるのは極右の政治的立場を「カムフラージュ」するためであり、「人種差別や性的虐待を擁護する極右を心地よくて楽しげな存在」に偽装するためだという。
ギトリンによれば、子供を政治利用する試みは党派を問わずに行われている。民主党は16年の米大統領選で、「トランプは障害者をあざ笑う」と非難した脳性麻痺の12歳の少年を反トランプキャンペーンに活用した。
それでも、拡散目的の動画で子供を政治評論家に祭り上げる右派の手法は別次元の話だと、ギトリンは語る。「子供を広報の代弁者にして身を隠すやり方に嫌悪感を覚える」。幼ければ幼いほど、子供が自主的に思想を形成した可能性は低く、「不適当な方法で利用されている可能性が高い」。
ミリーが有名になったのは昨年2月。保守派の政治家などが出席する保守政治活動集会(CPAC)でアメリカ・ファースト・プロジェクトが、国境の壁の建設や不法移民に対するトランプの政策についてミリーが語る動画を公開したのだ。その視聴回数は75万回を超えている。
■ブライトバートとの関係
アメリカ・ファースト・プロジェクトは右派ニュースサイト、ブライトバートの複数の元社員が創始した組織で、ミリーによるムーアのインタビューを企画したのも彼らだった。
創始者の1人、パトリック・ハウリーがブライトバートを辞めたのは、主流派メディアになってしまったと感じたから。そのきっかけは、経営者のスティーブ・バノンが16年夏にトランプ陣営の選挙対策責任者に起用されて、ブライバートを去ったことだという(バノンは昨年ブライトバートに復帰したが、暴露本騒動で今年1月に会長を辞任した)。
バノンは米大統領選期間中にブライトバートを、ナショナリストや白人至上主義者から成るオルト・ライト(オルタナ右翼)のためのメディアと位置付けた。アメリカ・ファースト・プロジェクトはよりポピュリズム的ナショナリズムに軸足を置き、トランプの極右的政策に同調する共和党政治家を積極的に支持している。
ミリーのインタビューで、ムーアは不法移民を阻止すべく対メキシコ国境への米軍派遣を支持すると話した。過去には反同性愛的な発言をし、アメリカは奴隷制を廃止してから偉大でなくなったと語ったこともある。
ムーアの少女へのわいせつ疑惑についてミリーは何も質問しなかった。「ミリーは自分の頭で考えられないとの見方が出来上がっているが、それは才能ある少女をおとしめることだ」と、アメリカ・ファースト・プロジェクトのローレンスは語った。
ローレンスは「ミリー自身がアラバマへ行って(ムーアを)応援したいと言っていると、彼女の父親から連絡を受けた」と話す。「ムーアが弁護士のグロリア・オールレッドによって疑惑をかけられた後のことだ」
オールレッドはベバリー・ヤング・ネルソンという女性の代理人だ。ネルソンは16歳のとき、当時30代のムーアに暴行されそうになったと記者会見で語っている。ほかにも14歳のときにムーアに襲われたという女性や、10代の頃にムーアに付け回されたと証言する女性が複数いる。
民主党系の政治コンサルタントのポール・ベガラに言わせれば、ミリーにムーアをインタビューさせたのは、好意的に解釈しても保護者側のとんでもない判断ミスだ。「14歳の少女に性的暴行をした疑惑がある人物を、12歳の少女と同席させるなんて」。ベガラはCNNの番組でそう語った。
ミリーやコールは「注目されることを楽しんでいる」と、ギトリンは言う。「そこには邪悪な側面がある。子供はセレブになるという考えに魅了され、裏で操る者たちは『神聖なる十字軍』の少年少女部隊を結成しようとしている」
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