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2年目トランプの注目点は「精神状態」と言わざるを得ないワケ
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11769
2018年1月26日 海野素央 (明治大学教授、心理学博士) WEDGE Infinity
今回のテーマは「2年目のトランプ」です。就任1年目の総括として「フェイク(偽)ニュース大賞」を発表したドナルド・トランプ米大統領は、2年目に入ってもメディアに対する攻撃の手を緩める気配はまったくありません。トランプ大統領は、相変わらず「フェイク戦略」を展開しています。
その一方で、トランプ大統領の精神的安定さに欠けた発言を懸念するメディアや医師たちから、精神面の健康診断を求める声が上がっています。本稿では、まずフェイクニュース大賞を読み解き、次に同大統領の主治医とホワイトハウスの記者団との激しいやり取りに焦点を当ててみます。そのうえで、2年目の同大統領の懸念について指摘します。
(Alex Wong/iStock)
■フェイクニュース大賞
トランプ大統領は17日、「フェイクニュース大賞」を合計11件発表しました。構成が、トップ10プラス1になっている点に注目です。
第1位は、米ニューヨーク・タイムズ紙でノーベル経済学者ポール・クルーグマン氏が2016年米大統領選挙後に「経済は回復しないだろう」と予測した記事でした。確かに、この記事は誤っていました。現在、ダウ平均は史上最高値を更新しており、失業率も低く、経済は好調です。そこで、トランプ大統領は、この記事を利用して強い経済をアピールしたのです。
トランプ大統領は翌日18日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグにある企業で演説を行い、アフリカ系、女性及びヒスパニック系における失業率の低さを強調しました。そこにも狙いがあります。アフリカ諸国並びにハイチを「屋外便所」と呼んだと報じられ、しかもセクハラ疑惑が再燃しているので、非白人と女性の低い失業率を用いて批判を封じ込めようとしたのです。
米ABCニュースとワシントン・ポスト紙が行った共同世論調査(2017年1月15日−18日実施)によりますと、トランプ大統領の支持率は36%です。ところが、ロイター通信とグローバル世論調査会社イプソスの共同世論調査(同年1月12日−16日実施)の結果をみますと、同大統領の雇用政策に対する支持率は50%、経済政策は49%で共に全体の支持率よりも高いです。同大統領にとって、経済と雇用は間違いなく生命線になっています。フェイクニュース大賞第1位に経済記事を載せた理由はここにあります。
■ロシア疑惑を払拭できないトランプ
トップ10には、ロシア疑惑に関するニュースが4件も入っており、11番目でトランプ大統領自身が「米国民に対する最大のでっち上げ。ロシアとの共謀はない!」と反論しました。5日に販売されたトランプ政権に関する暴露本『炎と激怒』の中で、スティーブ・バノン元首席戦略官兼大統領上級顧問がロシア疑惑に関して注目に値するコメントをしたからでしょう。
側近中の側近であったバノン氏は本書で、ドナルト・トランプ・ジュニア氏が、ニューヨークのトランプタワーで面会した「ロシア政府の手先と思われる女性弁護士らを、26階にある父親の執務室に連れていったんだ。そうでない可能性なんてゼロだ」と、かなり自信に満ちた口調で語っています。さらに、同氏はマネーロンダリング(資金洗浄)でジュニア氏とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が、司法取引に応じることになれば、大統領が追い詰められると予測しています。トランプ大統領は、これらの発言を意識したのでしょう。フェイクニュース大賞の11番目で、自身の言葉で同疑惑を全面否定しました。それほどロシア疑惑は、同大統領にとって精神的重荷になっているわけです。
ABCニュースとワシントン・ポスト紙の同調査では、50%が2016年米大統領選挙でトランプ陣営のメンバーがロシアと「共謀した」と答え、40%が「共謀していない」と回答しています。米国民は疑いの目を向けており、トランプ大統領は一向に疑惑を晴らすことができません。フェイクニュース大賞の効果は、FOXニュース以外の主要メディアをフェイクであると信じているトランプ信者をつなぎ止めるのみで、極めて限定的であるといえます。
■トランプの健康診断
トランプ大統領の主治医であるロニー・ジャクソン氏は、16日ホワイトハウスで同大統領の健康診断の結果について「健康状態は極めて良好で、認知機能も正常」と、記者団に説明しました。トランプ大統領自ら「認知機能障害の検査を受けたい」と、語ったというのです。
ジャクソン氏は「すべての検査結果は、大統領が非常に健康で、任期を全うできることを示している。2期目も大丈夫」と結論づけました。しかも、同氏は「トランプ大統領は、神が与えた素晴らしい遺伝子をもっている」とまで主張して太鼓判を押したのです。約1時間にわたる検査結果の説明の意図は、ホワイトハウスによるトランプ大統領に対する情緒不安定説の払拭でした。
しかし、ホワイトハウスの狙い通りにはいきませんでした。ABCニュースのセシリア・ベガ記者は「大統領は認知症の初期段階にあるのではないか」と、質問を投げかけました。もちろん、ジャクソン氏は「極めて良好」の立場を崩しませんでした。
CNNのジム・アコスタ記者が注目したのが、ジャクソン氏がトランプ大統領の認知機能障害を検査するために用いた「モントリオール認知評価検査」でした。この認知評価検査は、注意機能、集中力、記憶などの認知機能を評価します。例えば、同検査(日本語版)では動物の名前をあげたり、午前11時10分を示した時計を描きます。立体を書き写すことができるのか、読み上げた5つの単語を覚えているのか、などの検査も行います。10分間の検査で、30点満点です。
ホワイトハウスでの記者会見でジャクソン氏は、「トランプ大統領は30点満点であった」と述べました。これにアコスタ記者は反応し、同認知評価検査は精神障害検査ではない点を確信したのです。ホワイトハウスの記者団は、主治医の説明にまったく納得していない様子でした。
■2年目の展望
トランプ大統領は、好調な経済と低い失業率を保ち、それにメディア攻撃を加えれば、2年目も支持基盤をつなぎ止めていけると読んでいます。ただし支持率は、今後も30%後半から40%前半で安定しながら低空飛行を続ける可能性が高いです。
その理由は、経済に対する有権者の認識にあります。上で紹介したABC ニュースとワシントン・ポスト紙による共同世論調査では、米国民は経済の好調さの原因は、50%がオバマ政権、38%がトランプ政権にあると捉えています。有権者のこの認識を変えない限り、2年目も全体の支持率上昇は難しいといえるでしょう。
支持率の変化に加えて、2年目のトランプ大統領の注目点は「精神状態」であると言わざるを得ません。偽証罪及びマネーロンダリングで、これまでにマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ジョージ・パパドポロス元外交政策顧問、ポール・マナフォート元選対会長、同会長の元ビジネスパートナーであったリック・ゲイツ氏が起訴されました。身内であるジュニア氏やクシュナー氏までが起訴される事態になると、トランプ大統領はさらに追い詰められ、精神的安定さを欠いた言動をとることが予想されます。
周知の通り、今年は米中間選挙の年です。すでに、野党民主党のピート・アラギール下院議員(カリフォルニア州第31選挙区選出)は、トランプ大統領の大統領職に対する適性や精神的能力に関するアンケート調査をネット上で実施して、同大統領の精神的不安定さを11月6日に行われる中間選挙の争点の一つにしようとしています。
言うまでもなくトランプ大統領の精神的不安定さは、外交・安全保障にも影響を及ぼします。北朝鮮の核・ミサイル問題に直面するアジア地域にとって、2018年は核のボタンを握るトランプ大統領の精神的安定さの欠如が、本当の脅威になるかもしれません。
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