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アメリカ支配層の内紛(その2)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201801110000/
2018.01.11 櫻井ジャーナル
支配層の間では2015年5月頃、次期大統領をヒラリー・クリントンにすることが内定していた可能性が高いのだが、16年に入ると状況に変化が生じる。2月にヘンリー・キッシンジャーのロシア訪問は象徴的な出来事だったが、民主党の内部でも流れが変化していた。バーニー・サンダースを支持する声が高まり、有力メディアからの逆風に遭遇する。
クリントンとサンダースは国内問題で対立していた。クリントンはジョージ・ソロスやリン・フォレスター・ド・ロスチャイルドのような富豪を後ろ盾とし、ロッキード・マーチンという戦争ビジネスの代理人とも言われ、巨大金融資本とも結びついているのに対し、サンダースは金融改革を打ち出し、社会的な弱者を救済する政策を掲げていた。
国際問題では軍事力の行使に消極的で、ロシアとの関係を悪化させる政策にも反対。ドナルド・トランプもロシアとの関係修復を訴えていたが、イスラエルとの関係ではトランプやクリントンと違い、一線を画す姿勢を見せていた。民主党と共和党の大統領候補のうちで、イスラエル・ロビーであるAIPACからの招待を断ったのはサンダースだけだ。ただ、そのサンダースでも昨年(2017年)6月にアメリカ上院で行われたエルサレムをイスラエルの首都と認めてアメリカ大使館をそこへ建設するべきだとする採決で賛成している。
そのサンダースを民主党の幹部や有力メディアは攻撃することになった。WikiLeaksが明らかにした電子メールでもそうしたDNC(民主党全国委員会)の幹部によるサンダース潰しの動きがわかる。
結局、民主党の候補者選びでサンダースを離脱させることにDNCは成功するが、その前にトランプが立ち塞がり、大方の予想を翻してトランプが勝利する。WikiLeaksなどによって明らかにされたクリントンの電子メールでDNCの不公正な動きを知ったサンダース支持者が離れたことも無視できない。
明らかにされた電子メールがクリントン陣営にダメージを与えたことは間違いない。その内容がダメージの原因だが、DNCや有力メディアは内容を問題にせず、ロシア政府がハッキングしてWikiLeaksに流したと叫び始め、ロシアゲートなる幻影を流し始めた。冷戦時代の洗脳が今でも効力があるようで、西側にはロシア嫌いが多く、この幻影に飛びついた人は少なくない。
しかし、本ブログでは何度も書いているように、その主張が事実なら証拠をNSAは握っているはずで、FBIもすぐそれを手に入れることができる。そうした証拠が提示されていないのは、証拠がないからだとしか考えられない。少なからぬ情報関係者は技術的な分析から、電子メールは内部から漏れていると指摘している。
ロシアゲートに国家機関が介入する切っ掛けは、アダム・シッフ下院議員が昨年(2017年)3月に下院情報委員会で行ったアメリカ大統領選挙にロシアが介入したという発言。同議員の主張はクリストファー・スティールという元イギリス情報機関員の報告書に基づいているのだが、FBIのチームはシッフ発言の5カ月前、2016年10月にスティールと会うためにヨーロッパへ出向いたとされている。
スティールはイギリスの対外情報機関MI6のオフィサーだった人物で、MI6のために働いていたアレキサンダー・リトビネンコのケース・オフィサーだったとも言われている。情報機関を離れてからはオービス・ビジネス・インテリジェンスという民間情報会社を経営している。このスティールが作成した報告書は伝聞情報や噂話をつまみ食いした代物で、信頼度は低い。
フリンに対し、ロシア政府の高官と接触するように支持したのはトランプの義理の息子、ジャレッド・クシュナーだと伝えられている。この人物はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子と親しい。
フリンがロシア政府高官と接触した目的は、2016年12月23日に予定されていたイスラエルのヨルダン川西岸などへの違法入植を非難する国連安全保障理事会の決議について話し合うことにあったという。なお、この決議は賛成13カ国、棄権1カ国で採択されている。勿論、棄権したのはアメリカ。
この報道が正しいなら、イスラエルを支援するというクシュナーの政策に基づいてロシア政府の高官と接触したことになる。つまり、ロシアゲートではなくイスラエルゲートだ。ただ、イスラエルを支持するという政策は民主党を含め、アメリカ議会の圧倒的多数が支持している。
「ミフスド教授」は「プーチンの姪」とパパドプロスの会談をアレンジしてくれただとする記事をニューヨーク・タイムズ紙が12月30日に載せた。大統領選挙でトランプの政治顧問を務めていたパパドプロスは2016年5月、ロンドンのバーでオーストラリアの外交官に対し、モスクワはヒラリー・クリントンのキャンペーンにダメージを与える目的で盗み出されたと思われる数千件の電子メールを持っていると聞いたと話したとしている。それを知ったFBIが7月に捜査を始めたというわけだ。
パパドプロスによると、彼にその話をした「ミフスド教授」は「プーチンの姪」とパパドプロスの会談をアレンジしてくれたというのだが、第2次世界大戦の最中、子どもだったプーチンの兄弟はレニングラードで死亡しているため、姪はいない。この「教授」はかなり如何わしいということだ。
ちなみに、プーチンの兄弟が死んだ当時のレニングラードはドイツ軍とフィンランド軍に攻撃されていた。29カ月間包囲され、約70万人が餓死したという。プーチンが戦争回避に努める理由のひとつはこの体験にあるとも言われている。
パパドプロスがFBIに協力しはじめたのは昨年(2017年)10月の前半で、そのひとつの結果としてFBIのチームがスティールとあったという筋書きだ。その直前、トランプのキャンペーンで幹部だったポール・マナフォートがビジネス仲間と一緒にマネー・ロンダリングなどの容疑で起訴されていた。
勿論、この起訴で「ロシアゲート」の捜査が進展したなどということはない。この容疑はロシア疑惑と無関係だが、パパドプロスとFBIとの取り引きに関係していると考える人はいる。
FBIの上層部には反トランプ派がいた。司法長官代理を務めたサリー・イェーツもそのひとりで、トランプ大統領の中東旅行禁止に反対している。そのイェーツの発言を電子メールで賞賛していたアンドリュー・ワイツマンはムラー特別検察官の側近だ。
トランプは安全保障分野をマイケル・フリン中将を据えた。DIAはフリンが局長を務めていた2012年8月、反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラの実態は同じだとしている)で、バラク・オバマ政権が「穏健派」に対する軍事支援を継続したなら、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告している。
いうまでもなく、サラフィ主義者の支配国はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。退役後、アル・ジャジーラの番組に出演したフリンはこの報告について質問され、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると明言しているが、その通りだ。
バラク・オバマ政権はリビアやシリアを侵略、ウクライナでクーデターを実行するために偽情報を流し、サラフィ主義者やイスラム同胞団を中心とするスンニ派武装勢力、あるいはネオ・ナチを傭兵として使い、他国を侵略、破壊と殺戮をもたらしたが、その実態をフリンは熟知している。
そのフリンをイェーツは事情聴取した。その段階でマイケル・フリン中将とセルゲイ・キスリャク駐米露大使との会話をNSAが盗聴した記録をFBIは持っていた。後にFBIはフリンを偽証したと主張、フリンもそれを認めるが、中身は問題にされていない。記録と証言との間に違いがあるというだけのことだ。
(続く)
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