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米国がダーイッシュをラッカから脱出させたことを英国系の有力メディアも伝える状況で、米は窮地
トルコへ亡命したSDF(シリア民主軍)の元広報担当、タラル・シロによると、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の戦闘員数千名はアメリカとの秘密合意に基づき、ラッカを脱出してデリゾールなどへ向かった とロイターの記者に語ったという。BBCは脱出に加わった運転手のひとりから脱出にはトラック50台、バス13台、ダーイッシュの車両100台が使われと聞いたと伝えている。またトルコのメディアによると、SDFはアメリカ政府が武器をYPG(クルド人民防衛隊)へ供給するために作り上げた隠れ蓑で、実態はYPGだとシロは話している。こうした脱出作戦を秘密裏に行うため、ラッカでの戦闘も演出したという。トルコ側はシロと同じ主張をしているが、アメリカ側は否定している。
ラッカだけでなく、イラクのモスルなどからアメリカはダーイッシュやアル・カイダ系武装集団をデリゾールへ移動させているという情報は以前から伝えられていた。デリゾールの南東地域、ユーフラテス川沿いには油田地帯た広がり、それをアメリカは押さえたがっていたのだ。武装集団の幹部クラスや金庫番をヘリコプターでアメリカ軍が救出していたとも伝えられている。
しかも、クルドがアメリカの思惑通りに動かず、YPGとロシアが共同記者会見を開くという事態。アメリカは逃がした戦闘員で「穏健派」を編成しようとしているが、そうした「穏健派」がインチキだということは2012年8月の段階でアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)がホワイトハウスへの報告という形で明らかにしている事実だ。それは今も変わらない。
反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラの実態は同じだとしている) で、バラク・オバマ政権が「穏健派」に対する軍事支援を継続したなら、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告している。この報告が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。この事実の基づき、フリンは退役後、アル・ジャジーラの番組でダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。
アメリカ/NATO軍がアル・カイダ系武装集団と連携して侵略作戦を展開していることはリビアで明白になり、シリアではダーイッシュという別のタグをつけた武装集団が登場してきた。その集団が売り出されたのは2014年。1月にイラクのファルージャでイスラム首長国の「建国」を宣言、6月にファルージャを制圧したが、その間、アメリカの軍や情報機関は傍観していた。ジェームズ・フォーリーの首をダーイッシュが切ったとする映像が公開されたのはこの年の8 月。この映像はフェイクだった可能性が高く、凶暴性を演出してアメリカ軍が介入する環境を作ろうとしたという見方もある。
こうしたアメリカのシナリオを狂わせたのが2015年9月30日のロシア軍による空爆の開始。アメリカ軍とは違い、シリア政府の要請を受けてのことだった。これでダーイッシュやアル・カイダ系武装集団は劣勢になる。ロシア国防省のスポークスパーソンは12月9日に会見で、アメリカ軍がロシア軍のダーイッシュに対する攻撃を妨害してきたと非難している。その一例としてあげたのが11月23日の出来事。2機のSu-25がダーイッシュの拠点を破壊する作戦を展開中、アメリカ軍のF-22が現れて攻撃を妨害、Su-35が救援に現れるまでそうした行為が続いたとしている。F-22はイラク領へ逃げたという。
アメリカ軍はシリア北部に基地を建設、7000名とも言われる部隊を侵入させているのだが、クルド軍がアメリカの手先になっていないことから戦闘になるとアメリカ軍は厳しい戦いを強いられるだろう。
こうした状況を打開するためにアメリカは新たな戦争を目論んでいると推測する人が少なくない。ドナルド・トランプ大統領のエルサレム発言で中東の軍事的な緊張が高まり、レバノンへの軍事侵攻が現実味を帯びてきた。
しかし、この発言で分裂していたパレスチナ陣営が連携する動きを見せ、イスラム諸国では庶民の突き上げで支配層はアメリカやイスラエルと対峙せざるを得なくなるかもしれない。これまでアメリカのネオコンはウクライナのクーデターでロシアを締め上げようとしたが、それが原因でロシアと中国との同盟を強化させ、中東や北アフリカでの侵略戦争によってイラク、イラン、シリア、トルコ、カタール、ロシアを結びつけてしまった。パキスタン軍もアメリカのドローンを撃墜すると警告している。
最終更新日 2017.12.10 12:09:17
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