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トランプは何を隠しているのか?ロシアゲートの捜査の行方
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11306
2017年12月5日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
トランプ政権のマイケル・フリン前大統領補佐官がロシアゲート事件に絡んで検察側と司法取引、捜査に全面協力することになり、疑惑解明が一気に進む可能性が出てきた。当面の焦点は、フリン氏にロシア側との接触を指示したのは誰なのか、トランプ大統領はフリン氏の連邦捜査局(FBI)に偽証した事実を知っていたのか、の2つだ。
眠れない最高権力者
(Photo by Alex Wong/Getty Images)
トランプ大統領は1週間ほど前、感謝祭の休暇をフロリダ・パームビーチの別荘「マー・ア・ラゴ」で機嫌良く過ごしていた。大統領就任以来、最初の最大の業績になるはずの税制改革法案も、もめていた上院で可決の可能性が見え始めていた。
トランプ氏が上機嫌だったのは、ホワイトハウスのコブ法律顧問から最大の懸案であるロシアゲートについて、モラー特別検察官の捜査が年内に終了するという見通しであることを再三に渡って聞かされていたからだ。別荘からワシントンに戻った時も、お得意のCNNなどメディアに対するフェークニュース批判を連発して意気軒昂なところを見せた。
しかし、12月1日早朝になって状況は暗転、ロシアゲート捜査が年内に終了するというトランプ氏の希望を打ち砕いた。トランプ氏はフリン氏が罪を軽くするためFBIへの偽証を認め、モラー特別検察官と司法取引した、という事実をケリー首席補佐官の電話で知った。
ケリー氏はテレビの報道に驚き、大統領にすぐに伝えたのだ。大統領の反応は「フリンはトラブルにはまった」だったが、機密情報を知る最側近だった人物が検察側の協力者に変わったというニュースはホワイトハウスを震撼させるに十分だった。
トランプ氏はフリン氏が偽証罪で起訴された後、ツイッターなどで反撃に出た。2日朝には「フリン氏を解任したのはペンス副大統領とFBIにうそをついたからだ」とツイート。記者団にも「ロシアとの共謀は絶対にない」と強く否定した。同夜には「フリン氏の人生が偽証で破壊されるのは不公平」「不正直なヒラリー・クリントンの私的メール問題を捜査しないのはおかしい」と連発。
注目されたのは3日夜明け前のツイッター。「解任したコミー前FBI長官にフリン氏の捜査をやめるよう要求したことはない」などとして、新たに浮上した「司法妨害」疑惑を否定した。夜明け前にツイートしたことはトランプ氏が眠れずに事件のことを憂慮していることを示唆するものだった。
共謀より司法妨害か
だが、こうしたトランプ氏の反撃は逆に大統領の首を絞めることになっている。トランプ氏は2日のツイートで解任した理由を「副大統領とFBIに嘘をついたから」としたが、ホワイトハウスはこれまで、解任理由についてFBIへの偽証については指摘していなかった。
しかし、今回のツイートは2月13日の解任時点で、大統領がフリン氏の偽証を認識していたという新たな疑惑を惹起している。大統領は解任した翌日の2月14日にFBI長官だったコミー氏をホワイトハウスに招いて夕食を共にして会談。同氏のメモによると、この席で大統領がフリン氏の捜査をやめるよう求めた。
偽証を知っていて、捜査に手心を加えるよう要求したとなれば、「司法妨害が成立する。大統領はアウトだ」(米識者)ということになり、大統領弾劾に通じる犯罪が構成されることになる。クリントン氏がセックス・スキャンダルで弾劾を受けたのも捜査にうそを付いたという司法妨害容疑だった。
米メディアなどによると、今回も「昨年の大統領選でロシアと共謀した」という本筋の容疑よりも、司法妨害の方が立証しやすいとの見方が有力になっており、大統領がフリン氏の虚偽の供述をいつ、どうやって知ったのかが捜査進展のカギだ。それだけ、フリン氏の捜査への協力が重要になる。
指示した高官は誰か
フリン氏はトランプ政権が正式に発足する前の昨年の12月29日、ロシアのキスリャク駐米大使と電話で会談した他、イスラエルの入植地建設を批判する国連安保理決議に反対するよう何カ国かの当局者と接触していたが、こうした動きは「政権移行チームの幹部からの指示だった」(フリン氏声明)。
ホワイトハウスはフリン氏の行動は“独走”だったとして、大統領ら高官と切り離すのに必死だが、指示した高官に大統領の娘婿のクシュナー上級顧問が含まれていることは判明している。高官は複数とされているが、フリン氏よりも地位の上の高官は極めて限られていた。取り沙汰されているのは、クシュナー氏に加え、次期シンガポール大使に指名されているマナフォート元顧問らだ。
しかし、最大の焦点はトランプ氏自身、ロシアなどとの接触をフリン氏に直接、間接的に指示してはいなかったか、指示をしないまでも、指示されたことを知っていたのではないか、という点だ。
米メディアによると、フリン氏がロシア大使と接触した際、政権末期のオバマ大統領によるロシア制裁問題についても協議し、オバマ政権の制裁措置に報復しないよう要請していた。ロシア大使はフリン氏に対し、ロシアが報復しない決定を下したと通告したが、その通告通り、プーチン大統領が報復措置を取らないことを発表。その理由についてさまざまな憶測が飛び交った。
フリン氏はトランプ政権が正式発足したあかつきには、ロシア制裁を解除する旨をロシア大使に伝えていた可能性がある。対ロ関係改善に意欲を示していたトランプ氏の意向が反映されたと見るのが自然で、ロシアに対する融和姿勢は大統領選挙でクリントン氏を追い落とすためにロシアから協力を受けたことの見返りだった、という説も真実味を帯びてきた。
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