ま、トランプ政権なら安心だと舐められているとも言えるwhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51710 知らぬうちに中国に白旗を揚げたトランプ大統領 AI大国を目指す中国の野望、ツイートにかまけて気づかなかった? 2017.11.28(火) Financial Times (英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年11月23日付) 中国初の「無人運転地下鉄」となる燕内房線(2017年11月3日撮影)。(c)CNS/王龍〔AFPBB News〕
ロシアはソビエト連邦時代の60年前に、スプートニクという人工衛星を打ち上げて世界中にショックを与えた。 ドナルド・トランプ氏が11歳だったときのことだ。自分よりも優れた技術を見せつけられた米国は発奮し、ソ連を上回る資金を技術開発につぎ込み、その過程でインターネットや全地球測位システム(GPS)を生み出した。 今日のスプートニク・ショックはそれとは対照的で、71歳になった米国大統領を素通りしてしまったように見える。 中国が2030年までに人工知能(AI)の分野を牛耳る計画をぶち上げているのに、トランプ氏はツイートするのに忙しくて気づかなかったようだ。 しかし、米国の安全保障にとって、AIにおける中国の野心は北朝鮮の核ミサイルよりも大きな長期的脅威だ。 北朝鮮の方はおそらく、必ず全滅に追い込むという姿勢を取って封じ込めることができるだろう。一方、米国を追い抜こうとする中国を明らかに阻むものは存在しない。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先日、「(AIの)リーダーになる者が世界の支配者になるだろう」と語った。 中国が2020年までに米国に追いつき、2025年までに追い抜き、さらにその後の5年間で世界のAIを支配するという意図を明らかにしたことを受けた発言である。 米国の主要な科学技術者たちは、中国の野望が実現する公算はあると考えている。「いいかい、あの中国政府がそう言ったんだぞ」。アルファベットのエリック・シュミット会長はそう述べた。 スプートニクのときとは異なり、中国の1つの行動で米国が脅威に目覚めることはなさそうだ。 しかし、見たいと思う人の目には、脅威に至るトレンドラインがくっきりと映っている。習近平国家主席は、中国がAIの分野で優位に立つことを戦略的な目標に掲げて喧伝している。 一方のトランプ氏は、米国がどうしたいのかについて何も語っていないが、先日提出された予算案の方は饒舌だ。 これによればトランプ氏は、政府が支出する「インテリジェント・システム」開発資金を11%減らし、連邦政府全体の研究開発予算も20%近く削減することを望んでいる。米航空宇宙局(NASA)の予算も縮小されるだろう。 トランプ氏はまた、合法的な移民の流入も半減させたいと思っている。実行されれば、米国はトップクラスの研究者をこれまでのようには集められなくなるだろう。 そのような研究者には、グリーンカード(永住許可証)を発行する方が、はるかに理にかなっている。グーグル主催のコーディング(プログラミング)の大会では、中国の学生が優勝することが多いのだ。 「あの国の教育制度では私が言及しているような人々はとにかく輩出されないという・・・先入観のようなものを持っているのであれば、それは間違っている」。シュミット氏はそう言って憚らない。 トランプ氏が近視眼的なものの見方をしていても、米国は優勢であり続けられるのだろうか。その可能性は十分ある。何と言っても、米国の大きなハイテク企業は世界をリードする存在だ。しかし、2番手との差は縮小しつつある。 中国には有利な点が2つある。 第1に、中国では経済のオンライン化が米国よりも進んでいる。世界全体のeコマース(電子商取引)の40%は中国国内で行われており、そのほとんどが阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)、百度(バイドゥ)という中国の3大ハイテク企業で占められている。 この3社は、法的な制限をほとんど受けずに大量のデータを収集・処理することができ、その事業の規模も気が遠くなるほど大きい。 テンセントは先日、市場時価総額が5000億ドルの大台を超え、フェイスブックを上回った。 オンライン決済や画像認識、音声ソフトウエアなど一部の分野では、中国はすでにシリコンバレーの企業の先を走っている。自動運転の分野でも急速に追い上げている。 これらの技術はほぼすべて、軍事転用が可能だ。大量のドローンが飛び交う戦争がどんなものになるか、考えてみるといいだろう。 第2に、中国の民間セクターは政府と密接に協力し合っている。自由を高く評価するリバタリアンには、この関係が足かせに見えるかもしれない。 しかし、人は忘れやすい生き物だ。かつてドワイト・アイゼンハワーがシリコンバレーの台頭を財政面で支えたように、中国政府は中国が機械の深層学習で優位に立つために補助金を出しているのだ。 また、中国のデジタル・セクターは自給自足にますます近づいている。 米国がリードを保っているマイクロプロセッサーを除いて、中国はほとんどの技術を自国で編み出している。世界のサプライチェーン(供給網)が混乱しても、その影響を受けにくくなりつつある。 仮に世界的な貿易戦争が勃発しても、AIの開発については、おおむね影響を受けずに継続できるかもしれない。中国がグーグルやフェイスブック、ツイッターなどを閉め出したことには、ちゃんと理由があったのだ。 同じことは中国の宇宙技術についても言える。 米国の核兵器の管理を担当しているジョン・ハイテン戦略軍司令官は先日、たとえ大統領から核攻撃の命令が出ても、それが「違法」であれば抵抗すると述べて物議を醸した。しかし、この発言はすでに決められている手順を述べたにすぎない。 実はハイテン氏は、中国が21世紀の戦争の技術で長足の進歩を遂げていることについて、もっと不吉な発言をしていた。 中国の宇宙での脅威は旧ソ連との「ミサイル・ギャップ*1」と同じくらい誇張されているとの指摘に対し、「私が見る限り、(中国とロシアは)我が国の宇宙における軍事力全体に対抗する戦力構成を確立しようと、非常に積極的に行動している」と述べたのだ。 *1=ミサイルの分野におけるソ連と米国の差のこと。かつて、ソ連の方がはるかに先行していると信じられた時期があった 国が何を重視しているかを知りたければ、予算を見るのが一番だ。 トランプ氏の主たる目標は、米国の法人税率を20%に引き下げることにある。アイゼンハワーの時代には所得税の限界税率が90%を超えていたが、そのせいで米国の官民が独創性を発揮できずにソビエトの後塵を拝したということはなかった。 今日では、世界の科学技術をリードしているのは米国だ。しかしトランプ氏が操縦桿を握ったことで、明日には状況が様変わりしているかもしれない。 By Edward Luce
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