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欧州はイラン核合意を救えるか 岡崎研究所(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai21/msg/264.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 11 月 20 日 15:32:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

欧州はイラン核合意を救えるか
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11106
2017年11月20日 岡崎研究所 WEDGE Infinity


 英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのルーラ・カラフが、10月19日付け同紙掲載の論説で、イラン核合意に対する欧州の関心を説明し、欧州はどうやれば核合意を救えるかを論じています。要旨は次の通りです。

     
     (iStock.com/DanielVilleneuve/bellanatella/Ilyabolotov)

 トランプがイラン核合意を毀損しようと準備をしている時、欧州はその弊害を封じ込める努力をしていた。英国はイラン原子力庁長官アリ・アクバル・サレヒの訪問を受けた。来年にはマクロンがフランスの大統領としては1979年の革命以来初めてイランを訪問することを検討中である。

 イランの合意遵守を認定しないというトランプの決定は、問題を議会に預けることになった。議会は法律の重要規定の変更を成すか、またはイランに対する制裁を復活させ合意を殺すか、をせねばならない。トランプの決定はまたEU3(英、仏、独)に合意を生かし続けるという問題含みのミッションを課すこととなった。

 イランと核問題について了解を遂げることについての欧州の関心は一貫したもので、かつ米国のそれよりも古い。10年前にイランを交渉に引き出したのはEU3であり、2003年にはイランの核活動の凍結を勝ち取った。凍結は短時間で崩壊したが、その後、オバマ政権が交渉に参加し、イランへの核拡散を10年間防ぐ合意を達成した。

 従って、欧州はトランプの決定には痛く失望した。これまで米国に強く働きかけて来たが、失敗した。今後は二つの戦線――即ち、対イラン・タカ派が蝟集する米国議会、および進路変更のため強硬派が急襲を狙って待ち構えるテヘラン――で戦わねばならない。

 欧州は、トランプが合意から未だ技術的には離脱しなかったことに安堵している。イランの反応もこれまでのところ抑制されている。目下のところは、イランを合意にとどめ置く上で合意に対する欧州の政治的支持で十分なようである。イランの強硬派といえども合意崩壊の責任は取りたくないのである。

 しかし、今後状況は厳しくなる。トランプの決定は合意の基底にある経済的恩恵を損なうことで合意の先行きに暗雲を投げかける。もし、イランに対する投資が干上がれば、ロウハニは核計画を抑制することの最大の論拠を失う。トランプの決定がなくても、主要な銀行はイランとの取引きを依然として怖がっており、経済的恩恵は貧弱なものであった。トランプは合意を破ったわけではないが、イランとの投資と貿易を阻害するには充分である。

 もう一つのリスクは、トランプがより厳格な合意の実施とイランの弾道ミサイル計画に対する新たな制限を要求したことである。またトランプは近隣諸国へのイランの干渉に対抗する決意でもある。これらの変更が成されなければ、合意を終了させるとトランプは述べた。しかし、再交渉の企てはイランの離脱を招きかねない。

 米イラン間で、EU3は妥協を見出すのに苦労するであろう。一つの途は弾道ミサイルと中東におけるイランの役割について別個の協議を新たに設けることである。それは欧州の関心事でもある。ロシアと中国の支持を得られれば、イランの参加を促すことが出来よう。協議が核合意の枠外のものとして工夫されるのであれば、イランを説得することは不可能ではないかも知れない。核合意の教訓は、主要国が結束を示せればイランの協力のチャンスはうんと大きくなるということである。

出典:Roula Khalaf,‘How Europe can save the Iran nuclear deal’(Financial Times, October 19, 2017)
https://www.ft.com/content/130a6bbc-b35f-11e7-aa26-bb002965bce8

 論説は、イラン核合意(JCPOA)を救うためにEU3(英、仏、独)が成し得ることとして、イランの弾道ミサイル開発、およびイランの中東における振舞いについて、核合意の枠外で協議の場を設けることを提案しています。しかし、核合意を参加国全てが擁護している状況であればまだしも、合意をトランプ大統領が一方的に壊すかも知れないと脅し、イランの経済的利益を損なおうとしている状況では、イランがこの種の協議に応ずるはずがありません。よしんば、その種の協議が成立したとしても、トランンプの注文を満たしたことにはなりません。EU3がやれることは、米国議会と密接な連携を保ち、巧く行けば、議会が検討中の立法をもってトランプの注文に応えた体裁をとりつつ、実際にはその注文を骨抜きにし、米国が一方的に制裁を復活するという合意の違反行為をさせないことではないかと思われます。

 トランプが10月13日の演説で指摘した合意の欠陥は次の3つです。(1)10年から15年でイランの核計画に対する制限が解除されるというサンセット条項、(2)不十分な履行監視、(3)ミサイル計画の欠落。

 これらの欠陥を是正せよとのトランプの注文にどう応えるか、コーカー上院外交委員会委員長は、かねてティラーソン国務長官とも協議して来たらしく、立法の考え方を公表しています。それによれば、新たな法律はイランが次の制限を破る場合には、自動的に米国の制裁を復活させるとしています。その趣旨は、イランが核兵器1個を製造し得る核物質を取得する「ブレークアウト」までの時間が一年を切った場合に自動的に制裁を復活させることだと説明されています。具体的には、(1)核計画の制限は無期限に有効とし、米国の制裁に関する限りサンセット条項を排除する、(2)IAEAの査察権限を強化する、(3)イランの高速遠心分離器の研究開発に制限を設ける、などです。

 コーカーは、この立法の狙いは米国のコミットメントに違反することなく核合意の欠陥を是正することにあると説明しています。彼は「我々は核合意の欠陥を克服し、政府を合意にとどまらせる道筋を提供する。それはそもそも最初からそうあるべきであった種類の合意にするものである」とも説明しています。

 今後米議会がどう動くかはまだ分かりません。しかし、コーカーは悪知恵が働く人物のように見えます。コーカーは核合意には反対の立場をとり、核合意を議会の承認を必要としない政治的合意として処理することを望んだオバマ政権と対立しました。しかし、議会が課した制裁を停止することが妥当かの判断に議会の役割を絞る趣旨の立法(イラン核合意検討法)をもってオバマ政権と妥協を遂げました。コーカーは対ロシア制裁をトランプに勝手に解除させないために、その法制化を主導しました。コーカーは最近、「ホワイトハウスはデイケアセンターだ」と揶揄したことがあります。彼はトランプに義理立てする心境にはないのかも知れません。彼であれば、巧みに動いて米国が合意違反しないよう封じ込めることが出来るかも知れません。



 

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