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サウジアラビアでは粛清が継続中のようで、国家警備隊長官や放送局を所有する富豪が逮捕された
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201711050000/
2017.11.05 櫻井ジャーナル
サウジアラビアで粛清が続いている。11月4日にサウジアラビア国家警備隊を率いていたムトイブ・ビン・アブドゥッラー、衛星放送のMBCを所有するワリード・ビン・イブラヒム・アル・イブラヒム、ロタナTVを含むエンターテイメント会社のロタナ・グループの大株主であるアル・ワリード・ビン・タラル王子、ネットワーク局ARTを創設したサレー・アブドゥッラー・カメルを含む人々が汚職やマネーロンダリングなどの容疑で逮捕された。中国で展開されてきた反汚職キャンペーンを真似したとも言われている。
こうした粛清を指揮しているのはサルマン・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウド国王とその息子であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子。国王は6月21日に皇太子を甥のムハンマド・ビン・ナーイフからビン・サルマンへ交代させ、ナーイフは自宅で軟禁されたと言われている。
この新皇太子は国防大臣で、軍事部門や情報部門に大きな影響力を持ち、その兄弟も要職についている。今年4月にエネルギー担当大臣へ就任したアブドラジズ・ビン・サルマンや駐米大使になったハリド・ビン・サルマンだ。次のステップとして、ビン・サルマン皇太子が国王に就任するのではないかと見られている。
こうした動きは昨年(2016年)から始まっているようで、12月には数十名の王子や王女が国外へ脱出し、カタールに対する兵糧攻めに反対した人々は逮捕され、今年9月には聖職者や司法関係者も逮捕されたと報道されている。
ビン・サルマン皇太子はサウジアラビアを穏健なイスラムへ戻すとしているが、こうした逮捕者の中にはサウジアラビア王室のシリア侵略やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を批判してきた人も含まれているようだ。
シリアやリビアへの侵略戦争が始まった時点でサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)、あるいはチェチェンの反ロシア勢力を動かしていたのはブッシュ家と親しいことで有名なバンダル・ビン・スルタン。2005年10月から15年1月まで国家安全保障会議の議長、12年7月から14年4月まで総合情報庁(サウジアラビアの情報機関)の長官を務めていた人物だが、ロシアが軍事介入した時点ではビン・サルマン皇太子に交代していたと言われている。今回の粛清劇を「穏健なイスラムへ戻す」だけで説明することはできないだろう。
こうした粛清に対する反発が暴力の行使につながっている可能性もある。例えば、8月にビン・サルマン皇太子の暗殺未遂事件が伝えられ、10月7日にはジッダにある宮殿近くで宮殿への侵入を図った人物と治安部隊との間で銃撃戦があったという未確認情報も流れている。
ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団はタグを付け替えただけで、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする勢力の傭兵部隊にすぎないことは本ブログで何度も説明してきた通りだが、2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍によってそうした武装勢力は壊滅寸前だ。アメリカやイスラエルはクルドを新たな傭兵にしようとしているが、クルドを敵視しているトルコは三国同盟から離反、カタールも離れてしまった。トルコとカタールはイランやロシアへ接近している。
三国同盟が使ってきた傭兵の中核はサラフィ主義者とムスリム同胞団だが、そのムスリム同胞団への影響力はカタールの方が強いとされている。トルコも戦闘員を供給していたと言われているが、その2カ国が三国同盟から離脱したわけだ。
この2カ国に続き、サウジアラビアもロシアへ接近していることは本ブログでも書いたことがある。サルマン・ビン・アブドゥルアジズ・アル・サウド国王は10月4日から7日にかけてロシアを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談、ロシアの防空システムS-400を含む兵器の取り引き、石油価格の安定化、シリア情勢などが話し合われたと言われている。
サラフィ主義者やムスリム同胞団を主力とする武装勢力の劣勢が明らかになり、アメリカが手駒をクルド勢力へ切り替えたのは今年5月から7月頃。その間にサウジアラビアでは皇太子が交代、支配層での粛清が始まっている。イラクのサダム・フセインはCIAによって権力者になった人物であり、リビアのムアンマル・アル・カダフィやシリアのアサド親子はアメリカ支配層に協力してきたが、状況の変化で排除された。サウジアラビア国王が「疑心暗鬼を生ず」ということになっても不思議ではない。
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