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2016年に亡命した北朝鮮の元高官テ・ヨンホは自らを危険に晒しながらも積極的に発言している Kim Hong-Ji-REUTERS
金正恩の望みは「在韓米軍撤退」 亡命元北朝鮮高官が米議会で証言
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11/post-8816.php
2017年11月2日(木)16時30分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<金正恩の描く在韓米軍撤退シナリオのお手本は、アメリカが唯一敗北を喫したベトナム戦争だった>
韓国に亡命した北朝鮮高官の中で最高位となる在イギリス北朝鮮大使館のテ・ヨンホ元公使は11月1日(現地時間)、アメリカ議会下院の公聴会で証言台に立ち、北朝鮮が描く戦略を説明した。
テ・ヨンホによると北朝鮮の戦略はベトナム戦争を手本にしている。アメリカが支援した南ベトナム軍が劣勢になり、アメリカがベトナムから撤退を余儀なくされたケースを研究しているという。
現在の韓国を南ベトナムに見立て、そこから在韓米軍が引き揚げるように仕向けるため、北朝鮮は核やミサイルで圧力をかける。圧力に屈したアメリカが在韓米軍を撤退させれば、南ベトナム同様に韓国の体制崩壊に繋がるというのが金正恩国務委員長の狙うシナリオだ。
脱北高官のアドバイスは強気
金正恩の思惑に、アメリカはどのような態度を取るべきか――。この質問に対し、北朝鮮がこのまま強硬路線を続けるようであれば「すべての軍事的選択肢を用いる準備がある」とドナルド・トランプ米大統領から金正恩に強いメッセージを発する必要性を説いた。
さらにアメリカの軍事行動に対して北朝鮮が取りうる行動に言及し、「北朝鮮の軍人は、有事の際は通常の命令を無視して発射ボタンを押すように訓練されている」と明かした。
「米軍から(北朝鮮へ)銃撃や砲撃などの攻撃があれば、(ロケット・ミサイルによる支援攻撃を担う)砲兵が出動。短距離ミサイルが韓国に発射される」
【参考記事】韓国が目指す平昌「平和五輪」を北朝鮮が吹き飛ばす?
「アメリカの対北諜報は手抜き」
北朝鮮の内部機密を知りうる元高官として命を狙われる危険もかえりみずワシントンで証言台に立ったテ・ヨンホは、「金正恩政権のテロ政策を変えることはできないが、我々は北朝鮮人民に外部の情報を広めることによって立ち上がるよう教育することは可能だ」と議会やメディアに訴えた。
一方でアメリカの手痛い部分も突いた。北朝鮮の危険性は指摘されながらも、「アメリカは軍事的脅威に対処するために何十億ドルも使っているのに、北朝鮮に関する諜報活動にあてられる予算はわずか」で「非常に残念」だと語った。
テ・ヨンホは、これまでもアメリカにとって北朝鮮体制に関する貴重な情報を提供してきた。北朝鮮の外交高官として在イギリス大使館に在任中だった2016年8月に家族とともに韓国に亡命。以来、北朝鮮指導部に近い立場にいたテ・ヨンホの証言は重宝され、メディアでも多く引用されている。過去には金正恩の性格にも言及。金正恩は幼少期の大半をスイスで過ごしたため、政府高官から正統な指導者とは見られていないと話している。
今回はテ・ヨンホにとって初のワシントン訪問で、11月5日から始まるトランプのアジア歴訪での焦点の1つとなる北朝鮮対応について、アメリカ政府高官と協議する予定。
【参考記事】トランプは北朝鮮核問題を外交解決へと導けるか
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