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米・イランの対決新段階に、トランプ核合意の順守否認へ(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/780.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 10 月 10 日 15:43:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

米・イランの対決新段階に、トランプ核合意の順守否認へ
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10779
2017年10月10日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity


 イラン核合意をめぐり、トランプ米大統領は12日にもイランが「合意の精神を順守していない」と発表する見通しである。新たな制裁や合意からの離脱については議会にゲタを預ける格好になるもようだが、イランが強く反発するのは必至。両国関係は一気に険悪化、対決は新段階に突入する。

■公約のための政治的ポーズ

 イランの核合意は2015年7月、オバマ前政権と、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6カ国が調印した。イランの核開発を最低限にまで抑制する代わりに、米欧が科している経済制裁を解除するというのが骨子。米欧や国連などにより、合意順守が確認される一方、経済制裁は昨年1月から解除された。

 しかし、トランプ氏は選挙期間中から合意を「史上最悪の協定であり、破棄する」などと非難を繰り返してきた。合意については、ホワイトハウスが3ヶ月ごとに、イランの合意条項の順守を確認して、議会に報告することが義務付けられており、トランプ氏はこれまでに2回にわたって合意が守られている旨、報告してきた。

 次回の報告期限は10月15日だが、米ワシントン・ポストなどによると。トランプ氏は期限直前の12日にも声明を発表、イランが合意を順守していることを否定し、合意に留まることは米国の国益にかなわない、と表明する見通しになった。しかし、大統領は議会に対して、制裁を復活させることなどの勧告は行わず、厄介事を議会に預ける形だ。

 ホワイトハウスはここ数週間、トランプ氏が公約で掲げた通り、合意を破棄できないかどうか、検討してきた。しかし、イランが基本的に合意を順守していることから、合意条項違反自体を問うことは無理だったようだ。

 このため、イランが弾道ミサイル実験を繰り返し、“テロ集団である”レバノンの武装組織ヒズボラやパレスチナの原理主義組織ハマスを支援している点に着目。これが合意の前文でうたわれている「国際的かつ地域の平和と安全保障に寄与すること」というくだりに反するとし、「合意の精神を順守していない」との判断を下した。ベイルート筋はこれについて「無理筋のこじつけ」と指摘している。

 しかし、マティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長、ティラーソン国務長官、議会指導者らが条件付きながらも、合意を順守する価値があるとして、合意から一方的に離脱することには反対の姿勢を示している。

 こうしたことからトランプ氏はイランによる合意順守を否定しながらも、議会には制裁措置の発動を勧告せず、議会にその後の対応を委ねるという腰の引けた決定になったようだ。

 米紙は「合意を破棄したいトランプ氏と、合意にとどまる価値があるとする政府高官らとの“間を取った”もの」と指摘しているが、トランプ氏が最大の公約の1つを実行した、という政治的ポーズを示す国内向けの戦略にすぎない、との声もある。

■勢いづくイラン保守強硬派

 しかし、現実問題として、トランプ氏の今回の決定が合意を自動的に破棄することにはならない。議会はトランプ大統領の報告を受け取った後、60日以内に対イラン制裁を復活させるかどうかを決定する必要がある。

 しかし、議会の日程が詰まっている上、来年に中間選挙を控えることもあり、与党共和党指導者らは新たな厄介事を抱えることには消極的だし、民主党は合意の離脱に導くような制裁を復活することには、恐らくほとんどが反対だ。

 このため議会で制裁を復活させる法案が成立する見通しは小さく、トランプ政権に対し、核合意の内容を厳しくするためイランと再交渉するよう、ボールを投げ返すかもしれない。

 今回の大統領のイラン新戦略に関与した当局者らも核合意から即離脱するというよりも、欧州諸国を説得して、核開発の恒久的な停止、厳格な査察、弾道・巡航ミサイル開発の禁止、テロ支援の停止を盛り込んだより厳しい合意に修正するよう、再交渉を開始させることを狙っている。

 しかし、欧州諸国は米国には追随しない姿勢を示しており、米国の思惑通りには運ばないだろう。イランのロウハニ大統領は再交渉には絶対に応じないと言明、核交渉を担当したザリフ外相も米国が離脱すれば、イランも離脱し、核開発を再開すると述べ、強く反発している。

 トランプ大統領のこうした姿勢は核合意に反対してきたイランの保守強硬派を勢いづかせ、ロウハニ大統領ら穏健改革派を窮地に追い込むことになりかねない。権力闘争の道具に利用される恐れが強いということだ。

 すでに保守強硬派が牛耳る司法当局は核交渉に携わった大統領の弟を一時的に逮捕し、このほど、交渉チームの一員だったアブドルラスル・ドリエスファニ氏に対し、スパイ罪で禁固5年の実刑判決を言い渡した。これらは核合意に伴う欧米との関係改善を嫌う保守強硬派の巻き返しと見られている。

 トランプ氏の今回のイラン新戦略は、イランの宿敵であるイスラエルが後押ししているのは間違いないところだが、イラン側の反発次第によっては“イラン危機”が再燃する懸念もあり、トランプ氏の国内向けの政治的ポーズがペルシャ湾の軍事的緊張を高めかねないリスクをはらんでいる。


 

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