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ロヒンギャ問題、アウンサンスーチーへの批判と落胆 岡崎研究所(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/757.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 10 月 04 日 22:05:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

ロヒンギャ問題、アウンサンスーチーへの批判と落胆
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10675
2017年10月4日 WEDGE Infinity


 ミャンマーのラカイン州で続くロヒンギャの迫害とこれに伴う暴力の抗争について、アウン・サン・スー・チーが問題の解決に動こうとしないことに失望を表明する社説を9月1日付のワシントンポスト紙が掲載しています。要旨は以下の通りです。

 2012年、ノーベル賞の受賞に際し、アウン・サン・スー・チーは「餓え、病、排斥、失業、貧困、不正、差別、偏見、偏狭」そして戦争に苦しむ人々を忘れないようにと熱烈に訴えた。「苦しみが無視される時、苦しみは増し、怒りは募り、憤激するが故に、紛争の種が撒かれる」とも述べた。

 今日、ミャンマーでは、長く迫害されて来たムスリムの少数民族ロヒンギャを巡って続く暴力と苦しみの連鎖が、彼女の言葉の真実をますます明確にしつつある。多数派の仏教徒によそ者だと誹謗され、基本的権利を拒否され、惨めなキャンプに押し込まれ、苛酷な軍の取り締まりの下に置かれ、ロヒンギャは怒りを募らせ、中には憤激する者もある。

 8月25日、アラカンロヒンギャ救世軍を名乗る小さな武装グループがラカイン州で30の警察署と軍の基地を急襲した。10名の警察官と多くの武装勢力を含む110人が死亡したが、これが軍による弾圧の引き金を引いた。軍は村を焼き払い、数千人が国境のナフ川を超えてバングラデシュ(既に40万のロヒンギャの難民が滞在する)に逃げ込んだ。貧弱なボートで川を渡ろうとしたロヒンギャもある。3隻のボートが転覆し、26人の女性と子供が死亡したという。

 これは国の実権を握るアウン・サン・スー・チーにとって試練の時である。彼女は強力な軍部の圧力に常に晒されている。その軍部は議会の議席の4分の1、枢要な省を支配する。ロヒンギャの弾圧を求める仏教徒強硬派の要求もある。未だ民主主義への途を手探りで進む国にとって、これらは無視出来る勢力ではない。彼女の抵抗する能力は無限ではない。

 しかし、人権と民主主義のチャンピオンとして、彼女はその約束を果たす時である。長年の自宅軟禁と孤立に耐えて、彼女は炎を燃やし続けて来た。ロヒンギャとの暴力的な抗争を終わりにするインスピレーションを彼女に求めることは、彼女に酷というものであろうか。ロヒンギャとの長期的な和解への施策を含め、行動すべき時である。

出 典:Washington Post ‘When will Aung San Suu Kyi speak out against the violence and suffering in Burma’ (September 1, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/when-will-aung-san-suu-kyi-speak-out-against-the-violence-and-suffering-in-burma/2017/09/01/8a98d542-8f24-11e7-84c0-02cc069f2c37_story.html?utm_term=.ab3fea9c9f35

 ラカイン州におけるロヒンギャに対する非人道的で冷酷な処遇、処置が国際的な非難の対象となるとともに、アウン・サン・スー・チーが行動しないことについて批判と落胆が広がっています。8月25日の事件について、彼女は「ラカイン州の平和と調和を築こうとする人達の努力を損なうための計算された企てだ」と武装勢力を非難する一方、それは「残酷な兵士」による「残虐行為」から身を守るためだという武装勢力の主張については語ろうとしませんでした。

 彼女は依然として大衆には人気があるようです。しかし、ミャンマー国内でも彼女を観察する人々の間では彼女は変わった、あるいは腰が引けていると受け取る向きがあるらしいです。打ち解けないと見る人もいます。軍政と対峙していた時代には大衆に物事をあれ程明確に話したのに、黙り込んでいるというわけです。その説明は様々で彼女は不可能なことに立ち向かう悲劇のヒロインだというもの、軍に弱みを握られた隠れた権威主義者だというものもありますが、要するに、軍との関係で彼女は民主主義や人権のアジェンダを推進し得る立場にないというのが最も一般的な説明のようです。

 昨年8月、スー・チーはラカイン州の問題の永続的な解決の方途について諮問するため、コフィー・アナン元国連事務総長を委員長とする9名のパネルを組織しました。8月24日、このパネルが報告書を提出しました。この報告は、ロヒンギャに国籍を拒否している1982年の市民法を見直すこと、ロヒンギャに課せられている移動制限(教育、医療へのアクセスを阻害している)を解除すること、12万人のロヒンギャが収容されている悲惨な避難民キャンプを撤去し、元の住所に帰還せしめること、など多数の勧告を行い、勧告が早急に実行されない場合には暴力が続くと警告しています。

 スー・チーは国際社会の批判に対して煙幕を張るためだけにこのパネルを組織したわけでもないでしょうから、何とか解決への道筋を着けたいとは思っているのかも知れません。しかし、勧告されていることの実行には大変な政治力を要します。ロヒンギャとラカイン(仏教徒)との対立は憎悪であり根深いです。中央政府に対する信頼は厚くありません。とても楽観的にはなれません。彼女に対する欧米の失望と落胆は彼女に余りに多くを期待したこと、彼女の政治力を買い被ったこと、の反動でもあるでしょう。


 

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