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[13日 ロイター] - バージニア州シャーロッツビルなど全米各地のリベラル寄りの町で最近開かれた人種差別的な抗議集会にショックを受けた多くの米国人は、「白人国家主義」の政治的台頭を、不快なサプライズだと感じている。
だが本当のところ、こうした勢力は長年存在してきた。
公民権運動が勝利を収めた1960年代以降、それは様々なヘイト(憎悪)運動が寄り集まった連合体となり、人種の混合を防いで自分たちが「真の米国文化」とみなすものを守るため、たびたび暴力を用いてきた。それはつまり、ユダヤ教徒やイスラム教徒を除外した欧州系白人文化のことだ。
トランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問を先月解任されたスティーブ・バノン氏は10日、解任後初の、そして自身初めてとなるテレビインタビューで、この文脈を解説してみせた。
10日放映のCBSテレビ「60ミニッツ」で、バノン氏は司会のチャーリー・ローズ氏に対し、米国のネオナチは「ドナルド・トランプにただ乗りしている」に過ぎないと述べた。
だが実際のところは、トランプ氏とバノン氏が米国で台頭する白人至上主義運動の追い風に乗っているというべきだろう。
トランプ氏の選挙対策責任者に指名される前、バノン氏は、自身が創設した保守系ニュースサイト「ブライトバート」を極右運動「オルトライト(alt-right)」の発信塔に育て上げたと誇っていた。オルトライトは白人国家主義運動家のリチャード・スペンサー氏が広めた言葉で、極右人種差別主義者と白人分離独立主義者の緩い連合を指す。
バノン氏が解任後に会長として復帰したブライトバートは、トランプ大統領の就任前は、全米で政治サイトの閲覧数上位50位内に入っていた。また2016年の大統領選の期間中は、臆面もなくトランプ共和党候補の称賛記事を、イスラム嫌悪に満ちた作り話や、「黒人犯罪」についての誤った記事、反フェミニストの文章に交えて掲載していた。
ネオナチ勢力と秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)を1970年代に最初に引き合わせたのは、KKKの元最高幹部デービッド・デューク氏だ。同氏はその後、ルイジアナ州議会議員に当選している。
2016年の大統領選で、デューク氏は自分のラジオ番組でトランプ氏への投票を呼び掛けた。トランプ氏はデューク氏との関わりを渋々ながら否定している。
こうしたシグナルを受け取ったオルトライト側は、勢いづいた。彼らはトランプ陣営を支持していた。選挙戦で白人至上主義的なソーシャル・メディア上の発言が問題になったにもかかわわらず、トランプ氏は大統領に当選した。
シャーロッツビルで8月11日、前出のスペンサー氏が数百人の白人国家主義者を率い、バージニア大の構内にあるトーマス・ジェファーソンの銅像を取り囲んだ。松明を掲げながら、「ユダヤ人はわれわれを追い落とせない」と叫んだり、ナチスのスローガンだった「血と土」のシュプレヒコールを上げたりした。白人至上主義に抗議する反対派デモ参加者に暴力を振るうものもいた。
その翌日、人種差別グループのデモ参加者は市街地に繰り出し、人種差別に反対するデモ参加者と衝突。ネオナチの1人が、自動車で群衆に突っ込み、若い女性1人が死亡した。その後数週間にわたって、極右グループによるデモや大学構内のイベントが、ボストンやバークレーなどでニュースを賑わせた。
シャーロッツビルでの衝突の責任は「双方」にあると発言して大きな非難を浴びたトランプ大統領は、その後、ネオナチや白人至上主義者、KKKを名指しで非難した。だが同じ週の後半には、左派・反ファシストのデモ参加者に対する非難を蒸し返した。
白人至上主義者は、これに大統領の「目くばせ」を見た。
「トランプ大統領、シャーロッツビルで起きたことの真実を語り、左派のテロリストを非難した誠実さと勇気に感謝します」と、デューク氏はツイート。彼も事件当日に「トランプ氏の公約を成就させるため」として、シャーロッツビル入りしていた。
トランプ氏の公約の中でも最重要とされたのは、南のメキシコ国境沿いに壁を作り、ラテンアメリカ系移民を締め出すというものだった。これは、議会による予算確保のメドが立たず、実現困難となっている。
だがトランプ大統領は、違うやり方で、人種差別主義で排他的な支持基盤を引きつけるパフォーマンスを行った。
8月29日、人種差別的な不法移民の取り締まりで有罪判決を受けたアリゾナ州のジョー・アルパイオ元保安官を恩赦した。さらに今月5日、子ども時代に親に連れられ不法入国した若者に一時的に強制送還を猶予する移民救済制度「DACA」の撤廃を表明した。
トランプ政権下の司法省と選挙における不正を調査する超党派委員会は、投票権に対する攻撃を始めた。
シグナルは、初めからそこにあった
大統領選出馬を表明した日、トランプ氏はメキシコからの不法移民は「レイプ犯」だと述べた。選挙戦を通じて、トランプ氏は白人至上主義者の投稿をリツイートし続けた。中には、ドル紙幣を背景に、(ユダヤ教を象徴する)ダビデの星と民主党候補者だったヒラリー・クリントン氏の画像を重ねて同氏の腐敗を主張したものや、「黒人犯罪」に関する虚偽の統計を載せたものもあった。
選挙集会では、反人種差別を訴える抗議者を、乱暴に排除するよう参加者に呼びかけた。こうした抗議者は、黒人であることが多かった。
1930年代に親ナチス派が好んだテーマを復活させ、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を標榜。また、女性器を「つかんだ」ことを自慢げに話す会話の録音が明白に語るトランプ氏の女性蔑視は、彼を深く尊敬するヘイトグループ内で共有されている。
3度の婚姻歴があるニューヨーカーのトランプ氏は、南部の信心深い保守派が主導権を握る共和党の大統領候補として、もともと最適とは言えなかった。
だがトランプ氏は、共和党右派の活力の源は、「小さな政府」志向やキリスト教ではなく、人種や性別、宗教、性的指向、性アイデンティティに関わらず、全ての人に完全な公民権を与えることへの抵抗にあることを見抜いていた。
後任大統領として女性候補者を支持すると表明した米国初の黒人大統領に対する煮えたぎる敵意が、トランプ氏にチャンスを与えた。
トランプ氏は、ソーシャル・メディア網を通じてヘイトグループ・メンバーが持つ影響力を認識していた。出馬準備の一環として、トランプ氏は当時のオバマ大統領が米国生まれではないと主張する人種差別的な「バーサー運動」の先頭に立ち、こうしたヘイト・グループの関心を引いた。アルパイオ元保安官も、著名なバーサー運動家だった。
出馬表明までに、トランプ氏は、反イスラム主義者やゼノフォビア(外国人嫌悪)、人種差別主義者との信頼を築きあげていた。「アメリカを再び偉大な国にする」というトランプ氏の公約は、彼らにとって過去の父権主義的な人種や民族の秩序を再興する約束を意味した。
したがって、いまの米国政治を形成しているヘイトグループの台頭に、ショックを受けることはない。彼らの要求は、トランプ氏の政策に織り込まれており、大統領はその実現を目指している。
*著者は米誌「アメリカン・プロスペクト」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/opinion-trump-akihiko-yasui-idJPKCN1BQ0V1
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