http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/458.html
Tweet |
トルコをロシア側に追いやってはならない
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10432
2017年8月30日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのガードナーが、7月24日付け同紙にて、西側とトルコの対立は、中東の不安定を増大させ、トルコをロシアの側に追いやることにもなるとして、EUにトルコとの関税同盟更新などの配慮をするよう求めています。要旨は次の通りです。
トルコが西側から離れ東を向き始めていることは長い間明らかであったが、今やトルコにおける不安定が如何に地域全体に影響を与えているか、明らかになってきた。
トルコとドイツは、トルコの警察によるドイツ人人権活動家の逮捕をめぐり対立している。トルコと他のNATO加盟国との関係も悪化している。
トランプはサウジ陣営とトルコの同盟国カタールとの危機をもたらし、中東における米国最大の基地をリスクにさらしたが、米英仏はシリアとイラクにおけるイスラム国(IS)との戦いでシリアのクルド人民兵に頼り、NATOのインジルリク空軍基地(トルコ南部)へのアクセスを危険にさらしている。
シリアでは、トルコが支援する反乱軍が米主導の対IS有志連合の代理者と既に戦っている。
トルコは、クルド問題での西側の同盟国との対立の反動で、ロシアおよびイランとの戦術的同盟関係に入っている。トルコは、カタールとともにこの同盟に引き込まれている。カタール問題は、トルコをスンニ派陣営から切り離し弱体化させ、内部的不安定をもたらし得る。
トルコは昨年のクーデタ未遂の後始末をしている最中である。軍は縮小、官庁、大学、メディアは粛清され、10万人以上が解職され、5万人が投獄された。しかし、トルコはISとクルド労働者党(PKK)(米が支援するシリアのクルド人も結びつきがあるとされている)の反乱にもさらされている。
西側は時には、トルコがプーチンの手に落ちることを傍観し、トルコを失うことをすでに諦観、許容しているように見える。EUには特別の責任がある。EUは、かつてはトルコにとり戦略的な要であり改革の原動力であったが、10年前、トルコのEU加盟を妨害し始め、それ以来態度が定まらない。
エルドアンは、4月の憲法改正国民投票により、権力均衡の束縛なしに統治できるようになった。EUとの経済的関係を、面倒な政治的制約や司法的監視なしで維持することを望んでいる。欧州、NATOとの亀裂が加速している限り、それは幻想である。
トルコ経済は、低利の融資に依存しており、脆弱である。クーデタ後、約1000の企業が収用され、法の支配には大きな疑問符がつき、投資を妨げている。外交・防衛政策は、その場しのぎの様相を呈し、クルド人勢力の伸長への対応という一点でしか繋がりがないように見える。シリアのクルド人がISの拠点ラッカを奪い、イラクのクルド人自治政府が9月に独立についての住民投票をしようとしている中、トルコは攻撃の誘惑にかられるかもしれない。
ドイツとトルコは、制裁の報復合戦に至る寸前である。独政府はトルコへの武器売却を見直し、トルコ政府はトルコにおける独企業のブラックリストを作成しているとされる。しかし、EUには何らかの梃子があるはずだ。
双方は、冷静になれば、防衛とテロ対策における協調、トルコが存亡にかかわると見なすクルド問題へのEUの関与拡大に価値を見いだすかもしれない。トルコのEU加盟は問題外だが、9月の独総選挙後、EUはトルコとの関税同盟の劇的な更新を推進すべきである。それは、ぐらついているトルコの法の支配の立て直しに助けとなり得る。トルコとの取引があるとすれば、何らかの価値あるものにしなければならない。
出典:David Gardner,‘Turkey’s eastward shift can be halted’(Financial Times, July 24, 2017)
https://www.ft.com/content/ad65e8d4-7049-11e7-aca6-c6bd07df1a3c
この論説には、基本的には賛成できます。
エルドアン政権はクーデタ未遂事件後非常事態宣言を発出、その後、その宣言を4回延長し、エルドアンの独裁といってもよい政治が続いています。クーデタ後、10万人が職を解かれ、投獄された人は約5万人に上ります。メディアの抑圧、人権の侵害が頻発しており、とても民主主義国とは言えません。欧州、米国などでトルコ批判が巻き起こっていることは自然なことです。外交の分野でも対ロ接近、イラン接近など問題があります。
こういうトルコのやり方を批判しつつも、トルコとの関係を重視する姿勢を示していくことが重要です。トルコを非難し、トルコをロシアの方に追いやっていくことは避けるべきです。この論説が言うように「Turkey’s eastward shift can be halted」(トルコの東向きは止め得る)のです。
そう判断する理由は次の通りです。
トルコの対ロ不信は歴史的に相当根強いものがあります。エルドアンはプーチンと今は親しくしていますが、ついこの間までは鋭く対立していました。こういう独裁的指導者間の関係は不安定であり、国民の意識に根付いている歴史的不信感の方を重視すべきです。
トルコには、世俗主義、民主主義の伝統があります。エルドアンは今、この伝統に対し革命を起こしていますが、この革命の成果を永続させられるか否か、分かりません。世俗主義に対する革命はともかく、民主主義からの逸脱は永続しないのではないでしょうか。非常事態宣言を4度も更新していますが、ずっと非常事態を続けるというわけにはいきません。
エルドアンを「新しいスルタン」という人がいますが、やはり選挙で選ばれた大統領です。
大統領の任期は5年であり、エルドアンは5年ごとに選挙の洗礼を受ける必要があります。任期は最大2期10年です。新憲法で任期の数え方を変えたので、新憲法で定める大統領選出後10年、2029年まで大統領であり続けられますが、そこまで国民的人気を保持し続けるのは困難でしょう。ロシアの場合は、皇帝信仰、書記長信仰の伝統があるが、トルコにはそれはありません。
経済的実利については、トルコにとり、EUとの関係のほうがロシア、イランとの関係よりずっと重みを持ちます。EUがトルコとの関税同盟を更新し、トルコがEUとの関係に利を見出す状況を強めていくことが肝要でしょう。
トルコは西側に引き寄せていく必要がある重要国であり、そうできる国です。エルドアンよりもトルコ国民の良識に期待すればよいのです。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。