http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/387.html
Tweet |
期待以上のスタートを切った米印関係
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10385
2017年8月22日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
ピッカリング元米国務次官らが、Project Syndicateのサイトに7月19日付で掲載された論説において、先般の米印首脳会談を振り返り、米印関係は安全保障分野で進んでおり、経済分野では立ち遅れているという構造を指摘しつつ、両国関係の将来に期待を表明しています。
最近の米印首脳会談への事前の期待は余り大きくなかったが、両国首脳は、チャレンジを機会に転換する外交の力を示した。
米印関係は、緊密さの高まりにもかかわらず、相互の疑念があった。トランプ政権は、米国の対印貿易赤字拡大、インド人情報技術専門家が米労働者に取って代わること、インドが気候変動パリ協定を用いて多額の援助を得ようとしているのではないか、などを懸念していた。インド側は、トランプ政権の孤立主義的世界観、特にアジアからの撤退に懸念を募らせていた。 しかし、モディとトランプは、不一致なく良いムードを示し、共同声明では、なぜ米印関係が貴重なのかについて認識が示された。
インドは、多くの理由で米国にとり重要である。インドは、世界で最も経済成長の著しい経済大国であり、世界最大の中産階級を擁し、間もなく世界最大の人口となる。さらに、インドはインド洋の重要なシーレーンに面している。そして、アジアにおける民主主義の砦である。
トランプ政権は、アジアにおける急速なパワーシフトが地域の安定に影響を与え得る時期にあって、インドがアジア政策の要となり得ると見ている。インドは米国とともに、台頭する中国に対し建設的に関与し、中国にアジアの平和と安定を維持するよう決定するよう仕向け得る。
この認識は、これまでの武器売却拡大、合同演習増加、インド洋での協力強化、昨年のサイバーセキュリティ合意に加え、首脳会談で発表された新たな防衛取引にも反映されている。公式声明は、米印がこうした領域で従来の賢明な政策を継続することを示唆している。
モディとトランプは、パキスタンに過激派の聖域根絶をさらに求めることで、テロとの戦いについての更なる団結を明確に示した。
しかし、モディとトランプは、貿易、商業的関係については意見の一致を見なかったようである。米印関係では安保防衛が強調される傾向にあったが、両首脳の物の見方は、事態をさらにアンバランスなものにする恐れがある。
モディとトランプは、製造業主導での国内雇用の拡大に重点を置く、ナショナリストの指導者である。しかし、現代のグローバルなサプライチェーンにおいては、数多くの機会がある。相互の利益となる共通の基盤を見出すには、両国関係の経済的側面を再考する必要がある。
米印は、労働者のスキルと利用可能な就職口のギャップに苦しんでいる。この点が、労働者訓練と競争力についての対話の出発点となるべきだ。
米印間でのH-1Bビザなどの問題の克服や、インフラ整備での米印協力の深化が求められる。
トランプの「アメリカ第一」とモディの「メイク・イン・インディア」の間で相乗効果を得るには、創造力、忍耐、柔軟性、戦略的焦点が必要である。両首脳は、生産性、競争力、イノベーションといった面で、相互に利益となる結果をいかに達成するかという、大局に集中する必要があろう。
こうしたチャレンジにもかかわらず、トランプとモディの下での米印関係は、予想を上回る強力なスタートを切った。双方は、取引だけに終始せず、互いの将来に投資する意欲を示した。今や、彼らの共同の戦略的ビジョンを発展させ、それを一貫して実行すべき時である。
出典:Thomas R. Pickering & Atman Trivedi,‘Trump’s Surprisingly Strong Start with India’(Project Syndicate, July 19, 2017)
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-modi-meeting-india-us-relations-by-thomas-r--pickering-and-atman-trivedi-2017-07
筆者のうち、ピッカリングは、米国務次官を務めたほか、駐印米大使の経験もある人物です。トリヴェディの方は、米商務省、国務省、上院外交委員会に勤務していたことがあります。
去る6月25、26日のモディ首相とトランプ大統領の首脳会談は、期待以上の成果を上げたといえます。これは一つには、論説も言うように、そもそも期待値が低かったためです。インドは米国にとって、さしたる懸案がないうえに、北朝鮮、中東と言った米国の優先的関心事へのかかわりが多くありません。また、インドにとってトランプ政権の政策への懸念がありました。
ところが、ふたを開けてみると、モディもトランプも首脳会談に満足した模様です。基本的に二人は波長が合うらしいです。そのうえ、トランプはインドに好意を持っているようで、選挙期間中、「もし大統領になったらインドは真の友人をホワイトハウスに持つだろう」と言っていました。
今回の首脳会談で重要なのは、安全保障面における米印の協力関係の強化が確認されたことです。
モディは声明で、「インドの国防力強化に対する米国の支援に深謝する」と述べ、トランプは「米印の安全保障上の協力関係は、非常に重要である」と述べています。
具体的には、米国がインドにC17輸送機1機と、インド洋上の哨戒任務用の非武装無人偵察機22機を供与することとなりました。
また米、印に日本も加わった合同海軍演習(マラバール演習)の実施が発表され、7月10~17日、インド洋ベンガル湾で実施されました。米印の合同海軍演習は1992年以来行われていますが、今回はこれまでにない規模で、しかも日本が参加する形で行われ、そのデモンストレーション効果は小さくありません。
声明では中国には直接触れていませんが、両首脳が両国の安全保障上の協力関係の重要性を強調したのが、中国を念頭に置いてのことであるのは間違いありません。これは、日本にとっても心強いことです。
今後アジア地域の安全保障が論じられる場合、米印の協力が一つの重要な要因になります。これは、トランプが戦略的思考に欠けると言われている中で、特筆に値することです。
懸念された経済問題では、年300億ドルにのぼる米国の対印貿易赤字、インドの熟練労働者に対するH-1Bビザの問題などは、共同声明では触れられませんでした。逆に、インド航空による米旅客機100機の発注が発表され、トランプ大統領が満足の意を表しています。
今後、米印関係は、ニュースのハイライトになるようなことは少ないにせよ、着実に進展することが期待されます。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。