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奇妙な米ロ関係、個人的利益で動くトランプとプーチン
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10294
2017年8月9日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
7月7日付のワシントン・ポスト紙は、ハンブルグG20会合に際し行われた初の米ロ首脳会談について、同紙コラムニスト、アン・アップルバウムの論説を寄稿しています。その論説の概要は、次の通りです。
会談に参加したのは、両大統領、外相、通訳の6名のみだった。前もって準備されたものはなかった。
米ロ関係は、これまでも典型的なものではなかったが、今や奇妙にさえなった。今回の会談は米ロの地政学的または経済的利益によって動かされていると言うより、二人の主役の個人的利益で動かされていた。
達成された合意は、大したものではなかった。ウクライナに関するオープンな通信チャネル、シリアの一部停戦、新大使などである。
もっと重要だったのは、双方の個人的関心事項であった。そこではプーチンが最初の数秒間でトランプの上を行き、トランプが彼の手を差し出すまで待った。数分後、ロシアのウェブサイトにはトランプがプーチンに手を差し伸べている写真が掲載された。プーチンにとり、この会談の価値の99%は国内プロパガンダにあった。ロシアのテレビは、会談の長さについて、これはトランプがどのリーダーよりもプーチンを重視している印であると報道した。ツイッターには「トランプはプーチンの隣で学校の生徒のように見える」など書かれている。非民主的で経済もうまく行かないプーチンは国民に彼を支持する理由を提供しなければならない。彼は世界の舞台での中心人物であり、ウクライナ、シリア、サイバー安全保障の問題で、寛大に解決策を提供していると見せている。
一方、トランプの側から見ても、会談は成功だった。ロシアの選挙介入は、FBI捜査もあり、採りあげざるを得なかったが、会談後、ティラーソン国務長官は「トランプがこの問題を追究し、それは否定された。二人は先に進むことを望んだ」と述べた。トランプはこの問題を再度取り上げなくてもよくなった。
トランプは、プーチンに受け入れられることを必要としていたように見える。トランプは「貴方に会えて光栄」と言った。プーチンは権力でお金を稼ぎ、友人、家族に権力を付与している。トランプも同じことをしている。ティラーソンは、二人は相性が良かった、どちらも会談をやめようとしなかったと述べた。
二人ともほしいもの、プーチンは自慢する権利、トランプは新しい友人を得た。我々がどう思おうが、この関係では、二人だけが問題なのである。
出典:Anne Applebaum ‘The Russian-American relationship is no longer about Russia or America’ (Washington Post, July 7, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/the-russian-american-relationship-is-no-longer-about-russia-or-america/2017/07/07/576c3ec6-634a-11e7-8adc-fea80e32bf47_story.html
今回の米ロ首脳会談はこれまでの米ソ、米ロ首脳会談とは大きく異なる奇妙な首脳会談でした。この論説はその背景を良く描写しています。印象操作を重視する両首脳間の会談でした。
議題の準備もなされない米ロ首脳会談と言うのは稀です。事前準備をしてこそ、外交上の成果が上がります。米ロ双方の利害の調整など、外交上の成果はほとんどありませんでした。
首脳同士の相性が良く、会談時間も長かったから、個人的には、いい関係が築けたと言えますが、それで今後の米ロ関係がどんどん良くなると言うことでもないでしょう。米ロ間には、利害の対立、そのうえに相互の不信があり、その調整はそう簡単ではありません。
ロシアの2016年米大統領選挙への介入については、トランプが提起し、プーチンが事実を否定しました。両者はこの問題を乗り越えて「前進する時だ」としたようです。しかし、7月10日付のニューヨーク・タイムズ紙は、社説でリンゼイ・グラハム上院議員(共和党)やアダム・シフ下院議員(民主党)など共和・民主両党からこれの批判が出ていると指摘しています。7月10日付のワシントン・ポスト紙の社説では、トランプが「先に進み、ロシアと建設的に協力していく」と明言したことについて、ロシアを信頼するのは危険で、ナイーブであり、ロシアは選挙介入について代償を払わされるべしと共和党、民主党ともにトランプの姿勢を批判しているとしています。
「ロシアゲート」問題が米ロ関係の躓きの石になりうる状況は何ら変わっていません。特にトランプの長男がロシア側と接触した問題はこれまでの説明が虚偽であったことを証明することにつながりうるもので深刻です。
7月7日のワシントン・ポスト紙は、トランプが隣国を侵略し、民主国家の選挙に介入し、国内の反対者やジャーナリストの暗殺を指揮するプーチンに「お会い出来て光栄」と述べたことを批判しています。
米国内の対ロ不信は根強く、トランプが米ロ関係を改善しようとしても、国内的な抵抗が出てくることをこれは示しています。
プーチンは米国を中心とする西側の団結を崩すことを主眼として政策展開をしています。国内的には、これまでロシアの苦境は制裁など西側の政策のせいであるとしてきたこともあり、こちらもそう簡単に方向転換できません。
そういうことなので、今回の首脳会談が米ロ関係の今後にどの程度の影響を与えるかについては、あまり大きな影響はないと考えられます。
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