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世界的に高まるサイバー攻撃の脅威
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10246
2017年8月2日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
7月1日付のワシントンポスト紙の社説は、今回の「ランサムウェア」によるサイバー攻撃は、世界的な規模で行われ、今後サイバー攻撃はますます広がる恐れがある、と警告しています。社説の要旨は、以下の通りです。
先週世界的に見られたサイバー攻撃で、石油会社、航空会社、送電網、コンテナ船、港湾、銀行、省庁のコンピューターが動かなくなった。
今後病院が標的とされ、患者に多大な影響が出る等、さらに深刻な事態になる日が遠くないかもしれない。
最新のサイバー攻撃は、コンピューターを動かなくし、動かすために身代金を要求する「ランサムウェア」と称するマルウェアによるものであった。北朝鮮は2015年ぐらいから世界の銀行を狙ったランサムウェア攻撃を繰り返しており、今回の攻撃についても北朝鮮が疑われてもおかしくない。ただ専門家の中には、身代金の要求ではなく、混乱を引き起こすことが目的ではなかったかと考えるものもいる。
今回のサイバー攻撃を誰がしたのかの断定は容易でない。そもそもサイバー攻撃の犯人を割り出すのは難しく、時間がかかる。悪意のあるグループかもしれないし、北朝鮮といった国かもしれない。
このような脅威を防ぐ魔法の解決策はない。警戒を怠らず、特に重要なインフラなどを防護する以外にない。
出典:Washington Post ‘A cyberattack swept across the globe last week. We should be ready for more’ (July 1, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/a-cyberattack-swept-across-the-globe-last-week-we-should-be-ready-for-more/2017/06/30/1d697c88-5c2f-11e7-a9f6-7c3296387341_story.html?utm_term=.2a4a41416114
今回のサイバー攻撃で、サイバー攻撃の脅威が一段と高まったことが明らかになりました。
サイバー攻撃の問題は、国が対外政策の一環として使いうることです。
世界の安全保障に大きなかかわりを持つ国々は、いずれもサイバー軍を持っています。米国では2005年3月に、サイバー戦争用の部隊であるアメリカサイバー軍を組織したことを公表しました。ロシアではロシア連邦参謀本部情報総局(GRU)のほか、ロシア連邦保安庁(FSB)などがサイバー戦に従事していると見られています。中国については、2011年5月、国防省の報道官が、広東州広州軍区のサイバー軍の存在を認めています。
イスラエルでは、国防軍参謀本部諜報局傘下の8200部隊がサイバー戦の主力と言われています。
北朝鮮は約7000人規模のサイバー軍を持っていると推測されています。
これまでのところ、国レベルのサイバー攻撃については、特定の政治的目的のため行われるケースが目立ちました。米国とイスラエルが2010年、Stuxnetと称する不正ソフトウェアでイランのウラン濃縮施設をサイバー攻撃し、遠心分離機を破壊したことが典型的な例です。
最近では2016年の米大統領選挙に関し、ロシアが米民主党の全国委員会のシステムに侵入し、幹部の電子メールなど大量の重要情報を盗み出したことがロシアによる米大統領選挙への不正介入であるとして問題化しました。
しかし、サイバー攻撃が、このような政治的目的に限られず、軍事目的のために使われる危険は常に存在します。電力、鉄道などのインフラが狙われる危険は夙に指摘されており、さらにサイバーが、従来の兵器と同様に軍事作戦の一環として使われる可能性は現実のものと考えられようになっています。米国では2011年に国防総省が「サイバー空間作戦戦略」を発表し、それに合わせて、サイバー兵器を武器弾薬のリストに加え、サイバー兵器を通常兵器と同様に扱うようになっています。
サイバーは目に見えない兵器であるとともに、誰が使用したかの特定が容易でないので、戦力の比較、戦闘の形態の予測などが困難です。サイバー攻撃に対する抑止が可能かという問題もあります。
サイバー攻撃の危険が高まるにつれ、サイバーを含む武力紛争は、新しい戦略論を必要としています。
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