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米中蜜月の終焉、経済戦争突入か
斉藤洋二 ネクスト経済研究所代表
[東京 26日] - 今秋に予定される5年に1度の中国共産党大会を控えて、北京では習近平総書記(国家主席)の権力基盤強化と「ポスト習」の行方を巡る権力争いが最終盤に至っている。その中で注目を集めるのが「ミスター・クリーン」こと王岐山・党中央規律検査委員会書記だ。
2008年のリーマン・ショック当時、副首相として、ポールソン米財務長官(当時)の依頼に応じ米国債を大量購入し金融危機脱出に協力したと伝えられる(国内においては4兆元の景気対策の取りまとめに主導的役割を果たしたといわれる)経済通だが、2012年以降の5年間は習氏の盟友として反腐敗闘争をリードしてきた。
王氏はすでに69歳であり、本来なら68歳という党中央政治局常務委員会(最高指導部)メンバーの年齢制限ルールに抵触するため、今回の共産党大会で定年退職となる。しかし、習氏が自身の権力基盤強化のため、年齢制限ルールを変更し、王氏を李克強首相の後継に据えるのではないかとささやかれている。このところ動静があまり聞こえず「王岐山失脚か」といった臆測も流れているだけに、その人事の行方は何よりも注目されるところだ。
一方、共産党大会を目前にして、事実上失脚したホープもいる。習氏の後継者として胡春華・広東省党委書記とともに常務委員会入りが濃厚とされていた孫政才・重慶市党委書記だ。
その手ぬるい政治手腕に批判の高まりが伝えられていたが、重大な規律違反容疑を理由に突如解任され、後任に習氏の側近である陳敏爾・貴州省党委書記が就いた。党中枢の権力闘争の激しさを物語る出来事だが、「ポスト習は習」を目指す習氏が大きくリードといったところだろうか。共産党大会を前にして、党長老との人事調整などが行われる今夏の北戴河(ほくたいが)会議(河北省のリゾート地、北戴河で開催)は例年にも増して注目されることになりそうだ。
<米中100日計画に成果はあったのか>
さて、このように激しい権力闘争を続ける一方で、習氏はもう1つ頭痛の種を抱えている。ほかならぬ米中関係である。
周知の通り、米中関係については、トランプ大統領が選挙期間中から中国批判を強めていたことから就任後の経済戦争勃発が懸念されていた。だが、トランプ氏が習氏をフロリダの別荘に招いた4月の米中首脳会談において、意外にもすんなり北朝鮮問題と経済対話で一定のディールが結ばれ、両国は蜜月演出に成功。特に米中貿易不均衡是正などを目指す「100日計画」策定での合意は両国関係の改善をもたらすものとして期待された。
実際、「100日計画」については精力的に協議が続けられ、5月に貿易不均衡是正に向けた取り組みとして両国政府が10分野で合意に至り、米国の液化天然ガス(LNG)の輸出拡大、さらに金融サービスの市場アクセス拡大などが発表された。また、中国側が米国産牛肉の輸入を14年ぶりに再開するなど象徴的な出来事も加わった。
とはいえ、中国側にはさまざまな国内規制が残っており、同国の米国製品の輸入量が一気に拡大する可能性は低いとの見方が大勢だ。北朝鮮問題に目を転じても、中国は北朝鮮からの石炭輸入を停止しているが、鉄鉱石の輸入を大幅に拡大するなど制裁どころか相変わらず同国への事実上の経済支援を続けている。
さらに、「100日計画」の総括と今後の行動に向け、7月19日に「米中包括経済対話」がワシントンで開催されたが、2016年において3470億ドルにも上った米国の対中貿易赤字の具体的な削減策や今後の工程表は示されず、共同記者会見も行われなかった。まさに「蜜月関係」は終わりつつあると言ったところだろうか。
確かに米中関係は4月以降友好的に進んだが、それは中国側において共産党大会を前に外交問題で失点したくないとの思惑があり、また米国側にも北朝鮮問題での仲介役として中国への期待があってのこと。つまり、この間は友好を演じることが両者の国益にかなうとされた。だが、今後は、両国関係は一気に冷え込む可能性が高いだろう。
特に米国側の出方が注目される。中国で過剰生産される鉄鋼製品に対し、より厳しい制裁関税や輸入割り当てを適用したり、中国を為替操作国に認定したりするなどの対中強硬策に出ることも予想しておく必要があるだろう。
<米中戦争は経済分野でとどまるか>
振り返れば46年前の1971年7月、ニクソン米大統領(当時)が、キッシンジャー大統領補佐官(同)を密使として極秘裏に進めていた米中国交正常化交渉と訪中計画(翌72年2月に訪問)を電撃発表し、「ニクソンショック」として世界を驚かせたことがあった。それ以来、両国関係は対立と和解の間を振れながら進んできたが、今後もそれを繰り返すとみるべきだろう。
とはいえ、米中関係の底流には覇権争いが存在し、中国の台頭が著しい現在、その争いは以前にも増して激しくなる可能性を秘めている。したがって、今秋の共産党大会以降はハードな関係へと大きく振れる懸念は拭えない。
国際通貨基金(IMF)によれば、2014年に購買力平価ベースで中国の経済規模が米国を上回った。IMFのラガルド専務理事は、今後10年でIMF本部がワシントンから北京に移る可能性があることにも言及している。
中国はソフトパワー(その国の文化や価値観などが持つ影響力)や軍事力において米国に及ばないものの、経済分野では米国を凌駕しつつあることは明らかだ。アジア太平洋地域における覇権争いの激化は避けがたいと考えるのが妥当だろう。
ちなみに、カリフォルニア大学の教授からトランプ政権の通商問題アドバイザーになったピーター・ナヴァロ氏は、自著「米中もし戦わば」において、目下の米中覇権争いが無益な戦争に至る可能性に言及している。著者が米中関係の将来を予測する根拠として、過去500年において英独関係のように15例の覇権争いがあり、うち11例において戦争になったという歴史的事実を挙げている。
現在は米国の軍事費が中国を圧倒しており、米国の方が技術的にも優れていることは確かだとしているが、中国の経済成長を考えると、少なくともアジア地域では米国が中国に「降参」する可能性を示唆している。
さらに両国が戦争遂行のための膨大な資源を有する大国であることから、短期戦とはならず、「経済に壊滅的な打撃を与える、明確な勝敗のつかない長期戦」となる可能性が高いと分析している(核戦争については、論外の選択肢としつつも、中国政府の最優先の目標が国民福祉の向上ではなく共産党の権力維持であることから、現実のものとなり得ると警鐘を鳴らしている)。
今後も米中は軍事、経済、サイバー空間、宇宙、国際金融など、さまざまな分野において覇権争いを続けることになるだろう。すでに北朝鮮問題で米中関係はきしみ始めており、米国が通商問題で圧力をかけるシナリオが現実化しつつある。米中関係の視界不良が広がれば、行き着くところはまず経済戦争への突入ではないか。
このように米中関係の悪化は米国保護主義の台頭をもたらし、さらに貿易摩擦の暗雲は国際金融市場を覆うと予想されるだけに、その動向を注意深く見守るにこしたことはない。
*参考文献:ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳「米中もし戦わば 戦争の地政学」(文藝春秋刊)
*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
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中国:SWF設立支援で発行の国債、ロールオーバーを計画−関係者
Bloomberg News
2017年7月26日 19:00 JST
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8月に期限を迎える2007年発行の国債、10兆円近くが対象と関係者
プライマリーディーラーに発行された後、人民銀が買い取りへ
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中国人民銀行(中央銀行)と財政省は政府系ファンド(SWF)設立を支援するため10年前に発行された国債をロールオーバーする方針だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。8月に期限を迎える国債6000億元(約9兆9400億円)相当が対象だという。
財政省は2007年に国債約1兆5500億元を発行。この調達資金を活用し、人民銀を介してSWFである中国投資(CIC)の設立を支援した。8月に期限となる国債は中国農業銀行向けに発行され、その後で人民銀が購入。人民銀が国債を直接買い入れることは認められていないため、こうした措置が取られたという。
非公開情報だとして関係者が匿名を条件に述べたところによれば、ロールオーバーされる国債は8月中旬か下旬にあらためて値付けされる。前回と異なり、債券市場のプライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)である複数の銀行向けに発行され、それを人民銀が買い取る。
人民銀はこの件についてコメントを控えた。財政省にファクスでコメントを求めたが、今のところ返答はない。
原題:China Is Said to Plan Rollover of Bonds Backing Sovereign Fund(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-26/OTOXU36TTDS301
【第1回】 2017年7月26日 大西 俊介
2016年グローバリゼーションの崩壊
トランプ政権発足後の新たなグローバル秩序の胎動の中、真に必要な組織モデル、人材像のあり方とは何か。大手日系IT、外資系ファームのマネジメントを経験し、現在も外資系IT企業の日本代表を務める筆者が論考する。
Brexitとトランプ政権誕生
インフォシスリミテッド 日本代表
大西 俊介
おおにし・しゅんすけ/1986年、一橋大学経済学部卒業後、同年日本電信電話株式会社に入社、株式会社NTTデータ、外資系コンサルティング会社等を経て、2013年6月より、株式会社NTTデータ グローバルソリューションズの代表取締役に就任。通信・ITサービス、製造業界を中心に、海外ビジネス再編、クロスボーダーな経営統合、経営レベルのグローバルプログラムの解決等、グローバル企業や日本企業の経営戦略や多文化・多言語の環境下での経営課題解決について、数多くのコンサルティング・プロジェクトを手掛ける。NTTデータグループの日本におけるSAP事業のコアカンパニーの代表として事業拡大に貢献した。2017年1月1日、インフォシスリミテッド日本代表に就任
2016年11月9日の朝、私は成田空港にいました。12月末で当時社長を務めていた会社を去ることになっていたので、引継ぎに向けてのいろいろな準備を始めていました。行先はアメリカ合衆国。ニューヨーク州の地方都市にある日系企業のお客様のプロジェクト拠点を訪れ、ともにプロジェクトを進めているグループ企業のマネジメントメンバー達と自分が去った後のことについて、いろいろと話しておくことが目的でした。
朝9時過ぎに、ラウンジでニュースをチェックしました。すでにアメリカ大統領選の開票が始まっていましたがトランプ氏がリード、おまけにカギとなる州の1つと言われたフロリダ州がトランプ氏勝利の可能性と報道されていました。なんとなく気になって、先に客先の拠点に入っている社員にメッセージをいれると「海岸部の出口調査ではヒラリー氏が圧倒的みたいですよ」というレスポンスがありました。
とはいうものの、何かが起きそうな予感がして、離陸した後も有料のWi-Fiのチケットを買って、チェックしていると、どんどん信じられないような結果が目の前で起きていきました。
機内で昼食を食べ終わるころには、ほぼ大勢も決まり、この後、起きるかもしれないことを考えると「失望」の一言しかなく、そのまま眠り込んでしまいました。JFK空港から国内線へのトランジットの合間の時間で朝食を食べていると、ヒラリー氏の敗戦スピーチがLIVE放送されていました。彼女の後に続く、若い女性たちへの勇気づけのメッセージで有名なスピーチでしたが、時差ボケ、眠気もあって、未だに目の前に起きていることが信じられず、まさに「茫然自失」という体だったと思います。
お客様の拠点訪問を終えた後、自社グループ会社の幹部とのミーティングのためにアトランタに向かいました。アトランタは南北戦争で南軍の拠点だった都市ですが、公民権運動の指導者として有名なキング牧師が生まれた場所でもありますね。移民受け入れを拒否し、マイノリティを否定する発言を繰り返すトランプ氏の勝利から2日後、200年の歴史をもって、キング牧師ら多くの先人達の苦闘の結果として、黒人大統領を選出するまでになったこの国の歴史が根本から変わるかもしれない、そんな歴史的な大きな転換点に自分がいるような気がしました。
最終日はニューヨークに戻りましたが、マンハッタンでは至る所でデモがくりひろげられていました。
また、これより前、2016年6月23日にはイギリスの欧州離脱是非を問う国民投票(United Kingdom European Union membership referendum)が実施されました。開票の結果、残留支持が1614万1241票(約48%)、離脱支持が1741万742票(約52%)であり、離脱支持側の僅差での勝利でした。Brexit(英国のEU離脱)が方向づけられた日でした。
2016年という年は、後年、歴史の教科書において転換点として記載される可能性をもった1年だったのかもしれません。
世界はフラット化しなかったのか
ベルリンの壁の崩壊以降、ここ20年、世界は自由化の方向に大きく進んできました。人種や経済だけでなく、文化やライフスタイルの多様性という観点から、アメリカはその象徴でした。半面、世界中のいろいろなところで格差が広がっていったことも事実です。
移民を受け入れ、国内の大手企業がグローバリゼーションの名のもとに生産拠点等を海外に移転したことにより、国内の雇用が減少したというのがトランプ氏の主張です。
Brexitは歴史的にはかなり古くから存在する論点だったようですが、今回の転換の1つになったのは独首相アンゲラ・メルケルによる移民受け入れの発言だったとも言われています。国ごと経済情勢が異なるにも関わらず、経済政策はEUの判断に基づいて行われる。そのような中で移民を受け入れるということを他国の首相が口にし、それをEU参加国として、一定程度の負担を強いられるところにイギリス国民の一部に大きな反発が生じたのかもしれません。
ギリシアの問題もEUの制度的な限界にもあるのかもしれません。通貨発行の統制を国が自律的にできないとことは、アベノミクスにより、部分的に息を吹き返しつつある日本経済とは異なる状況です。
私はこれらの動きは、あくまでこれまでの多様化・自由化の手法に未成熟な部分があり、その結果、生まれた不整合に修正をかけようとする反動だと思っています。何がしかの論理的な根拠があるわけではありませんが、いってみればこれは免疫反応のようなものであって、世界大戦前のような保護主義に極端に回帰するものではないと信じています。
なぜならば、長い目で歴史をみてば明らかなように、人間は生まれながらにして自由で気ままな生き物であり、一時的であれば可能ですが、統制的(抑圧的)なマネジメントを継続的に行うことは不可能だからです。
免疫活動が効果を発揮すれば、さらなる反動が近いうちにおき、結果として多様性を受け入れ、より深化した自由化の方向に戻っていくと信じています。当然、課題を是正した結果として、これまでとは異なる、より高度化した構造やビジネスモデルを踏まえた経済圏になると思いますが。そんな風に考えると、最近のフランス大統領選挙とその後の総選挙、これがどんなことになるのか非常に興味深いですね。
まとめると、行ったり戻ったりのプロセスではあるものの、結果としては多様性を受け入れるためにより高度な仕組みが整備され、その効果を享受する方向に長い目で見れば進むということです。
企業経営における「多様性」と「一様性」
これは企業経営においても同じようなことがいえるのではないかと思います。
終身雇用制を前提とした日本企業の多くは、結果として同質的な価値観を有するモノカルチャー、一様性の企業文化になっていると感じます。もちろん海外に事業展開し、M&Aなども活発に行っていく企業は多いですが、本社の経営層に他業界や他社での経歴を有する方や女性、もしくは外人の方を役員としてそれなりの数で受け入れている企業がどれだけあるでしょうか。
外部からの要員を受け入れた企業もありますが、結果一時的にうまくいかない状況になったときに「それ見たことか」風な日本的ですが、ある意味、偏執的ストイックネスから、極端にそういった動きを排除することもしばしばです。
出所:2017 PwC Consulting LLC
出所:2017 PwC Consulting LLC
平均的にみればおよそ決まりきった任期の日本の役員からすれば、まったく異なる発想や価値観を有する人材を受け入れることはリスクとはとらえても好機とは考えら選れない人が多いのかもしれません。
異なる発想を有する人材が入ってくれば、それに対する“反応”が起きます。この反応を問題事象としてのみしか捕らえられない人もいるように思います。そのような経営層が進める海外事業展開など、全くの自己満足としか思えません。異なる意見を聞き、結論を導いていくのはそれなりに大変なもの、一様性の企業体質を維持しようとするのは経営の怠慢としか思えません。
成長にひずみはつきもの
「成長のひずみ」という言葉もよく聞きます。だけどこれは問題事象ではなく、免疫反応の一種として捉えるべきではないかと思います。
スタートアップ企業ならいざ知らず、すでにある程度歴史のある企業が、変革したり、事業拡大したりしようとすれば、それなりの「ひずみ」が生じるのは「当たり前のこと」です。
問題は対処の仕方で、「多様性」を否定し「一様性」のマネジメントに戻すのではなく、トップ自らが多様性を受け入れ、トップでなければできない改革に変えていくところがポイントだと思うのです。決して多様性を後退させ、結果的に停滞感につながるような後ろ向きの課題対処であってはなりません。
日立製作所は2009年3月期に7873億円と、製造業として当時、過去最悪の最終赤字となりましたが、2009年4月に会長兼社長に就任した川村隆氏を中心とする大改革で反転し、以降、素晴らしい規模とスピード感を持って変革を続けていると思います。
レジリエンス(resilience)という言葉もよく聞きます。「自発的治癒力」、つまりは免疫反応に近い用語ですが、先に書いたように世界経済にはそのような力があると思います。右派の代表格ルペン候補を否定した仏大統領選がそのいい例です。ところが日本企業はどうでしょうか。相対的に見て、日本企業はレジリエンスが弱いように思えます。治癒力はあるのかもしれません。でもそれは更なる投薬強化の方向に向かっているようにも見えます。
2016年の大きな変化を受けた後の2017年、世界情勢はまた大きく変わり始めています。そして新たなグローバリゼーションの方向性が見えつつあると思います。このままでは一部のすばらしい例外を除き、日本はどんどん取り残されるような気がします。
では、世界で起きている変化とはどんなことなのか、また、この変化に対し、結局われわれはどのような対応が求められるのか。より具体的なお話にするために、次回以降、私が属する業界及びその周辺から書いていきたいと思います。
http://diamond.jp/articles/-/134764
AIは人間殺せるだけの知性持つか、FBとテスラCEOが舌戦
7月25日、テスラのイーロン・マスCEO(写真)とフェイスブックのザッカーバーグCEOが、AIが人間を殺せるだけの知性を持つかどうかとの見方について、ここ数日舌戦を展開している。写真はワシントンで19日撮影(2017年 ロイター/Aaron P. Bernstein)
[サンフランシスコ 25日 ロイター] - 米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、人工知能(AI)が人間を殺せるだけの知性を持つかどうかとの見方について、ここ数日舌戦を展開している。
マスク氏は25日、ツイッターで「(ザッカーバーグ氏の)この問題に対する理解は限定的」と批判的な投稿を行った。
これより先、ザッカーバーグ氏は23日に動画を配信中、ロボットの危険性に対するマスク氏の見方について視聴者から質問され、「私は非常に楽観的だ」とコメント。「否定的な見方をする人たちは終末のシナリオを吹聴しようとするが、私には理解できない。きわめて否定的な態度で、ある意味で大変無責任だと思う」と回答した。
一方マスク氏は、今月行われた米国の州知事の会合で、AIの危険性はそれほど架空のものではないと述べ、規制に動くべきと発言した。
AIは医療や娯楽、銀行などの部門で広く活用されるようになったが、マスク氏とザッカーバーグ氏は、各国政府による規制強化が必要かどうかで激しく対立している。
http://jp.reuters.com/article/musk-zuckerberg-idJPKBN1AB0F0
【第246回】 2017年7月24日 桃田健史 :ジャーナリスト
自動運転推進に米政府が急ブレーキをかけた理由
AUVSI オートメイテッド・ヴィークル・シンポジウム 2017の全体講演の様子 Photo by Kenji Momota
アメリカの自動運転に関する動きに急ブレーキがかかった。
そうした、日本にとって“ヤバい雰囲気”を7月10日の週にサンフランシスコで強く感じた。トランプ政権の下、自動運転バブルはこのまま崩壊してしまうのだろうか?
注目の国際協議の場だったのだが…
アメリカの運輸交通委員会(TRB)及びDOT(運輸省)が関与する、自動運転や自動飛行に関する産学官連携での協議体である無人移動体国際協会(AUVSI) が主催する、AUVSI オートメイテッド・ヴィークル・シンポジウム2017(7月11日〜13日、於:ヒルトンサンフランシスコ・ユニオンスクエア)を取材した。
自動運転に関する国際協議は、国連の欧州経済委員会における自動車基準調和世界フォーラム(WP29)や、道路交通法等の整備に関する委員会(WP1)、また高度交通システム(ITS)の世界会議などが主体である。
だが、グーグルやアップル、そしてインテルやエヌビディアなど、人工知能を活用した自動運転技術の研究開発を進め、デファクトスタンダードを狙う大手IT産業、及び自動運転を活用した新しい移動体サービス事業(MaaS :モビリティ・アズ・ア・サービス)の拡大を狙うウーバーやリフト等のライドシェアリング大手を抱えるアメリカが、法整備においても自動運転の世界をリードしているのが実情だ。
筆者は直近の2ヵ月間、世界各国で自動運転に関する取材を立て続けてに行っている。具体的には、米サンノゼ市でのインテルの自動運転ワークショップと、エヌビディアの開発者会議GTC、仏ストラスブール市でのITS EU会議、また日本国内では経済産業省によるラストマイル自動走行実証に関する取材で福井県永平寺町、石川県輪島市、そして沖縄県北谷町。この他、日系及び欧州系の自動車メーカーが主催した各種の技術フォーラムで自動運転技術開発の担当者らと直接、意見交換している。
その上で、AUVSIの自動運転シンポジウムに対して期待を持って参加したのだ。
行政の色がまったくない
自動車メーカーとしての技術展示は、ホンダ1社のみ Photo by Kenji Momota
毎年1回のペースで開催され、今年で6回目となる同シンポジウムをすべて取材してきた筆者にとって、今年の講演内容は筆者自身の想定を遥かに下回るショボいものだった。
なにせ、自動運転の法整備を行う政府機関である、連邦高速道路交通安全局(NHTSA:発音はニッツァ)による講演がゼロだったのだから。
昨年7月の同シンポジウムには、NHTSA長官の他、NHTSAを所管するDOTの長官も講演し、自動運転に関するガイドラインについて意見を述べた。本来、同ガイドラインは昨年7月頃には公開される予定だった。しかし同年2月にフロリダ州内で、テスラ・モデルSの自動運転技術を使ったオートパイロットの誤作動による死亡事故が発生し、自動運転に関する社会の関心が高まったため、米連邦政府として自動運転の法整備について再協議を行っていた。
同年9月には、同ガイドラインが発表され、それに続いて自動車と道路インフラ(V2I)や、自動車と自動車(V2V)、そして自動車と歩行者(V2P)などの総称である、V2Xに関する規制法案についてもNHTSAが公表に踏み切った。
そうした流れは明らかに、政権交代前の“駆け込み”だった。そして今、その反動を食らっているのだ。
オバマの決定は何でも反対!?
シェアリングサービス大手のウーバー、リフトが参加したパネルディスカッション。一般論での議論であり、法整備に関する具体案は特になし Photo by Kenji Momota
今回のシンポジウム開催時点で、NHTSA長官は未任命のままだ。今年1月に就任したDOTのイエーン・チャオ長官は、昨年の自動運転ガイドラインを発表の1年程度後に改訂することを示唆しているのだが、具体的な動きはまったく見えてこない。また、DOTの肝いりとして企画された、自動運転を活用した未来型の街づくり政策『スマートシティ』についても、今年9月からオハイオ州コロンバス市での実施が決まっているものの、具体案については未だに公開されていない状況だ。
また、アメリカにおける自動運転の法整備はこれまで、公道での走行実験を許可してきたネバダ州、カリフォルニア州、オハイオ州、テキサス州など、州政府の意向が強く反映されおり、それをNHTSAがどのように連邦法として取りまとめるかの段階にある。その中で、昨年までのAUVSIシンポジウムでは、州政府担当者も講演し、それぞれの地域における自動運転の社会受容性について議論を進めてきたが、今回は全体講演で州政府の発表はゼロだった。
トランプ政権は「反オバマ政策」を唱えるイメージが根強い。自動運転に関する政策も、パリ協定からの脱却に見られるような大胆な方針転回で、葬り去るようなことはないと信じたい。だが、今回のシンポジウムで日米欧の各自動車メーカー関係者などと意見交換するなかで、全員の共通認識は「これからどうなるか、さっぱり分からない」だった。
そのうえで、結局は自動車メーカーが90年代から徐々に進めてきた、高度運転支援システム(ADAS)が徐々に発展し、2030年頃には高度な自動運転に「なるのかもしれない?」という、自動車メーカーの商品企画として“夢物語”へと、自動運転の議論が逆戻りしてしまうような感覚を抱いた自動車メーカー関係者が多かった。
自動運転バブル崩壊の予感
基調講演は、トヨタ・リサーチインスティテュート(TRI)だったが、話題は自社で行う113億円の投資ファンド Photo by Kenji Momota
ちなみに、今回の全体講演に自動車メーカーとして登壇したのはトヨタと日産のみ。ホンダが日本政府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を代表して講演した他は、トラックの縦列自動走行のパネルディスカッションでボルボが登場しただけ。コンチネンタル、ボッシュ、デルファイなど大手自動車部品メーカーの全体講演もゼロだった。これでは、米連邦政府の動きが見えないなか、自動運転の開発動向について積極的にはしゃべりたくない、と思われても仕方がない。
もう1点付け加えると、自動車メーカー主導ではなく、いわゆるロボットタクシーのような公共交通に近いかたちの自動シャトルサービスが、2020年頃には世界各地で実用化されるという“青写真”がある。
この分野では、グーグルからスピンアウトしたWaymo (ウェイモ)がある他、欧州では仏Navyaなどが各地で実証試験を行っている。だが、6月開催のITS EU会議での各種協議を見聞きし、またEU(欧州委員会)の担当者や欧州の自動運転シャトル事業関係者らと直接話してみたが、「現状での実証試験は、実施の各自治体の警察が個別に判断しており、EUとして総括的な法整備を行うのは、かなり先になる」という意見が多かった。
こうした世界各地での“生の声”と接する中で、筆者が感じるのは、自動運転バブルの崩壊だ。
自動運転、自動運転と、自動車産業界やメディアが大騒ぎし始めたのは、いまから4年前の2013年頃。その起点は、グーグルカーの量産計画に対する“噂”だった。
そしていま、先行き不透明なトランプ政権の意思決定プロセスによって、自動運転という次世代の技術開発や、そこに対する投資がスローダウンしてしまう危険性がある。
そうしたなかで、日本にとって最も大きな問題は、日系自動車メーカー関係者らが今回のシンポジウムの現場で実際に話していたような「元の鞘に収まるのだから、まあ、のんびりやろう」という、“心の隙間”ができてしまうことだ。
その隙に、世界各地では水面下で、新たな動きが着々と進む。自動車産業界ではティア2(二次下請け)である半導体メーカーらのサプライチェーン改革。世界最大の自動車市場・中国では、燃料電池車の本格普及を想定し、その前段階としての電気自動車の普及政策と自動運転政策が融合する。
日系自動車業界関係者におかれては、いまこそ、しっかりと、気を引き締めていただきたい。
追記:本稿作成後、米下院のエネルギー商業委員会が、自動運転の販売や使用を緩和する法案を可決した。こうした議会の動きについては、今回取材した現場でも、参加者らは米自動車大手メディアのAutomotive News等を通じて承知していた。それにもかかわらず、現場の空気感はトランプ政権による自動運転の今後について、不透明感が拭えていなかったのが大きな問題だ。
(ジャーナリスト 桃田健史)
http://diamond.jp/articles/-/135829
ロンドンを揺さぶるタクシーvsウーバー大戦争、その真の勝者は?
グローバリゼーションの落とし穴
笠原 敏彦ジャーナリスト
長崎県立大学教授・元毎日新聞欧州総局長プロフィール
「ロンドン・タクシー」vs「ウーバー」
グローバリゼーションと技術革新の破壊力とは、ここまで凄まじいものなのか。
7月5日付ニューヨーク・タイムズ紙国際版の記事「タクシー戦争に反響するブレグジット問題(Echoes of ‘Brexit’ in cabby war)」を読んだ感想である。
記事によると、伝統のロンドン・タクシーが今、米国発の配車サービス「Uber(ウーバー)」との乗客争奪戦により危機に追い込まれているのだという。
ロンドンで暮らした者にとって、あのどっしりとした「ブラックキャブ」は街の景観と不可分のものとして蘇る。通り名と番地を告げればどこへでも運んでくれる熟練の運転手らは、ひと時のバトラーのように感じられたものだ。
グローバリゼーションの行きつく先とは、伝統であれ、文化であれ「守るべきもの」を一切許さない津波が襲ったような世界なのだろうか。
記事を読み、グローバリゼーションの犠牲者だと感じている人々が「主権国家の再生」に望みを託そうとするムーブメント、すなわちナショナリズム台頭の背景がより説得力を持って理解できた。
その文脈で、イギリスの欧州連合(EU)離脱「ブレグジット」とアメリカの「トランプ現象」を捉えるなら、グローバリゼーションの先頭に立つ「二つのアングロサクソン国家」でナショナリズムが共鳴していることは、やはり偶然ではないのである。
2017年4月6日、Uberに抗議して通りを埋め尽くしたロンドン・タクシー2017年4月6日、Uberに抗議して通りを埋め尽くしたロンドン・タクシー〔PHOTO〕gettyimages
世界で最も厳しい試験
まずは、ニューヨーク・タイムズ紙国際版の長大かつ詳細なルポ記事(筆者はKatrin Bennhold氏)の概要を背景説明とともに紹介したい。
ロンドン・タクシーの資格認定は、1662年に始まる辻馬車の認可制度(ハックニーキャリッジ法)に由来するものだ。誇張はあるとしても、その資格を取るには「世界で最も厳しい」試験をパスしなければならない。
「Knowledge of London(ロンドンに関する知識)」と呼ばれる試験の内容はざっとこんな感じである。
ロンドン市内の約2万5000に上る通りと、約10万の名所・建物・施設などを全て覚えなければならない。筆記試験以上に難儀なのは、数段階に渡って行われる口頭試問であり、その中身がまた尋常ではない。
1対1で行われる試験では、面接官が挙げる始点と終点を結ぶ最短ルートを答えるだけでなく、そのルート上の全ての通り名や交差点、交通ルールなどを即座に答えなければならない。
試験をパスするには平均で4年を要し、受験者たちはこの間、座学だけでなく、バイクや自転車で市内を走り回ってロンドンの地理を頭に叩き込む。脱落率が7割という狭き門だ。
なんともイギリスらしい厳格さである。もちろん、その一方で、こうした厳しい試験をパスしたロンドン・タクシーの運転手に対し、市民たちが敬意を払ってきたことは言うまでもないだろう。
NEXT ?? それがウーバー以後…
ウーバーがロンドンに進出したのは2012年のロンドン五輪直前。ブラックキャブより3割程安い運賃と、空き時間を使って自家用車で稼げるという手軽さにより、急速に拡大してきた。
ウーバーの登録運転者数は約4万人で、ブラックキャブの2万1000人のほぼ2倍近い。両者のコントラストは鮮明である。
移民中心のウーバーに対しブラックキャブは白人中心、カーナビなどIT技術を駆使するウーバーに対し、蓄えた地理的知識と客をつかまえる勘で営業するブラックキャブ、という具合だ。
それぞれの言い分
ルポは、白人で労働者層出身のブラックキャブ運転手、ポール・ウォルシュさん(53)と、モロッコ移民でイスラム教徒の女性、ザラ・バカリさん(38)の日常を丹念に追う内容で読ませる。
ポールさんは3年間、週6日スクーターでロンドン市内を走り回って1994年にようやくブラックキャブの免許を得た。この間、口頭試問の悪夢から通り名をつぶやきながら夜中に目を覚ますことが何度もあったという。
彼は苦々しく語る。
「俺は(免許取得に)3年もかかったんだ。なのに、ウーバーはその知識をアプリに変えてしまった」
一方、ザラさんはモロッコ系の男性と結婚するために電気もない村から18歳でロンドンに移住。その差別体験を振り返る。
ある日、妊婦の彼女が4人の子供を連れてバスに乗ると、黒人のバス運転手から罵倒された。
「この外国人野郎。お前らはこの国に来てただ子供を産み続けるだけなんだ」
ウーバーの運転手としても、ブラックキャブに異常接近されたり、道を譲ってもらえなかったり、罵られたりしているという。
ザラさんが連日のように運転して1週間で得る収入は300ポンド(約4万5000円)ほど。契約料や配車の在り方などでウーバーへの不信や苦労はあっても、自分で稼いだお金を自分で管理できることには喜びがあるという。
そんな両者がライバルを見る目は厳しい。
ザラさんにとって、ブラックキャブは「人種差別の代名詞」だ。一方、ポールさんにとってウーバーは「伝統文化の破壊者」だ。
グローバリゼーションで利益を得る者と、生活を脅かされていると感じる者。昨年6月に行われたEU離脱の是非を問う国民投票で、ザラさんは残留に投票し、ポールさんは離脱に投票した。
Uberに抗議し、イギリス国旗を振るブラックキャブの運転手〔PHOTO〕gettyimages
ポールさんは、EU域内を自由に移動できる労働移民への不満を口にする。
「ロンドンは歴史的に難民を歓迎してきた。しかし、難民と経済移民は別物だ。彼らは我々の生活水準を押し下げているんだ」
ポールさんは、「ウーバー以前」には1日20回の乗客があったが、「ウーバー以後」は5回ほどになり、「大抵の週は経費を補うだけだ」と話す。
そして冷笑的に続ける。
「(自動運転が普及すれば)ブラックキャブの運転手もウーバーの運転手も歴史になってしまうんだろうな」
取材したブラックキャブ運転手の大半が国民投票ではブレグジット支持に投票していたという。
NEXT ?? 結局、勝者は誰なのか?
消費者としてはいいかもしれないが…
このゲームの勝者は、IT技術によりグローバルなマーケット支配力を手にしたウーバーなのだろう。
7月15日付の毎日新聞で浜矩子・同志社大学教授はこう書いている。
「ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズは、自分たちは運転手さんたちの雇用主ではないという。タクシーに乗りたい人と、タクシーサービスを提供したい人を結びつける。そのためのITプラットフォームを提供しているだけである。それがウーバーの言い分だ」
スマホをタップするだけで割安のタクシーを迅速に呼べるのは、消費者としては有難い話だ。また、「誰もが自分の都合に合わせた時間で臨時収入を得ることができる」というウーバーの謳い文句は、稼ぎたい、働きたい者にとって魅力的だろう。
「消費者」と「働き手」の心理をIT技術で結びつける手法は、ビジネスモデルとしては称賛に値するものなのかもしれない。
しかし、一人ひとりが「消費者」の立場を離れて、「働き手」の立場に身を置いたとき、グローバリゼーションの「勝者」と「敗者」のバランスはいかなるものなのだろうか。
この点を考えるとき、現在のグローバリゼーションの在り方がより豊かで安定した社会を導き得るとはとても思えない。
グローバリゼーションの「魔力」とは、消費者にとっての魅力(自由競争・輸入による価格低下)を、マーケット支配力を持つ企業・組織がアピールすることで醸し出されているように見える。
そして、ウーバーのケースを見るまでもなく、国際的なマネーの流れが支配力を持つ企業などに集中することは火を見るより明らかである。
ブレグジットとトランプ現象はつながっている
少々話は逸れるが、こうした視点で見たとき気になるのは、自由貿易協定をめぐるメディアの報道ぶりだ。
最近で言うなら、7月6日のEUとの経済連携協定(EPA)での大枠合意のケースである。
日本のメディアはこぞって、「ワインやチーズが安くなる」と喜ぶ消費者サイドの話と、悲鳴を上げる生産者サイドには補助金など政府の支援策が必要という話、マクロ経済的に積極評価する専門家のコメントという、いつものパターンが繰り返されたように思う。
しかし、そのような数字的な損得、帳尻合わせで豊かと感じられる社会、安定した社会を本当に築けるのだろうか。政府から補助金などの支援を受けることで生業を続けることができたとしても、働き手としてのプライドは保てるのだろうか。立ち止まって考えるべきときが来ているように思う。
人々は自らの日々の生活さえもコントロールできない無力さを覚えるとき、アイデンティティに回帰して「強い国家」に頼ろうとするのだろう。
イギリス国民がEUから「主権」を取り戻すために下したブレグジットという選択と、アメリカ国民が「ワシントンから政治を取り戻す」と訴えたドナルド・トランプ氏を大統領に選んだ「トランプ現象」の根底には、同じメカニズムが働いているように思えてならない。
ふしぎなイギリス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52376?page=3
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