http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/122.html
Tweet |
平壌の高級品店の様子。多くの日本製品が置かれている(写真:NK News提供)
驚愕実態!対北朝鮮制裁は「ザル状態」だった 平壌には今も多くの日本製品が並んでいる
http://toyokeizai.net/articles/-/181107
2017年07月20日 高橋 浩祐 :国際ジャーナリスト 東洋経済
■対北制裁は、抜け穴だらけのザル状態
北朝鮮がシンガポールにある貿易会社を通じて、数々の制裁逃れをしてきた実態が明らかになった。この貿易会社は平壌で高級品店2店舗を経営する。そして、そこで、国連制裁で北朝鮮への輸出が禁止されているはずの宝石や高級時計など「ぜいたく品」を販売している。店内には、ヤマハの楽器や缶コーヒーのポッカなど日本ブランドの商品も数多く陳列されており、対北制裁が依然、抜け穴だらけのザル状態となっていることがうかがえる。
ザル状態になっていることは、この問題で筆者が取材協力してきた北朝鮮関連ニュースの専門サイト「NK News」による調査報道で明らかになった。問題の貿易会社は、シンガポールに拠点を置く「OCNシンガポール」(以下、OCN)。株主となっている同社のオーナー陣はシンガポール人の兄弟らだが、実態は北朝鮮のフロント企業と化しているようだ。OCNはNK Newsの取材に応じていない。
NK Newsの有料会員制サイトNK Proの記事によると、OCNは、故金正日総書記が金一族の秘密資金を管理するために1974年に創設した外貨獲得機関の「朝鮮労働党39号室」と深いつながりを持つ。NK Newsの取材に対し、北朝鮮の元幹部は39号室がOCNの売り上げの大部分をせしめていると証言している。国連安全保障理事会は昨年3月、39号室を経済制裁の対象に指定。今年6月には39号室と関連がある高麗銀行など4団体も制裁対象に加えた。
NK Proによると、OCNは1990年代半ばから北朝鮮で商業活動を開始した。現在、北朝鮮で経営する2店舗は、平壌市民から「シンガポールショップ」と呼ばれているという。これらの店舗で買い物ができるのは、平壌の上級支配階層や平壌駐在の外国人外交官に限られ、観光客は立ち寄ることができない。
世界の名だたるブランドが並ぶ(写真:NK News提供)
NK Newsが入手した平壌の2店舗内を撮影した写真には、グッチやシャネル、プラダ、バーバリー、モンブランといった世界の名立たるブランド品が写っていた。
日本ブランドでは、ソニーやパナソニック、ヤマハ、セイコーの製品も陳列されていた。具体的な商品としては薄型テレビやノート型パソコン、宝石のほか、ランコムやロレアルの化粧品、さらにはヴィダルサスーンのヘア製品も並んでいた。
■禁輸対象としているが…
シンガポール政府は2010年以降、国連の北朝鮮制裁決議に基づき、葉巻や毛皮製品など14の品目をぜいたく品(奢侈品)と定め、禁輸対象としている。このうち、平壌にあるOCNの2店舗では、洋酒と香水化粧品、楽器、革製バッグ・衣類、プラズマテレビ、葉巻、高級宝石、高級時計の8つの品目が販売されていた。
シンガポールから北朝鮮への禁輸措置の対象(写真:NK News提供)
日本はシンガポールよりもさらに厳しく、マグロのフィレや万年筆、楽器、酒類を含め、24品目を北朝鮮への禁輸措置の対象にしている。
ヤマハ製品が陳列されている(写真:NK News提供)
NK Newsが入手した平壌の店の写真には、ドラムやサキソフォン、キーボードといったヤマハ製品が陳列されている。シンガポールにあるヤマハ子会社の広報担当者はNK Newsの取材に対し、平壌でヤマハ製品が販売されていることに同社として驚きを隠せない様子で、調査にも乗り出したことを明らかにしている。
平壌の店内で販売されている日本の「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」の缶コーヒーをめぐっては、2008年に同地で撮影された製品には、OCNが販売元として記載されていたが、今年撮影された缶コーヒーからはOCNの名前が消えていた。
「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」の缶コーヒー。左が2008年撮影、右が今年撮影のもの(写真:NK News提供)
なぜか。OCNは2012年まで、ポッカのシンガポール子会社(PCS)が製造するコーヒー缶製品を販売元として北朝鮮に輸出していたことがわかっている。PCSのアラン・オングCEOはNK Newsの取材に対し、日本が北朝鮮に対する全面禁輸を科した2012年当時、自社製品が北朝鮮に直接輸出されるいかなる取引をやめることを決定、それに伴ってOCNのラベル記載をやめたことを明らかにした。
しかし、OCNの別のフロント企業で、シンガポールに法人登記されている T SPECIALISTは2012年以降、OCNの事業を引き継ぎ、今日までPCSの缶コーヒーを北朝鮮に輸出し続けている。
■ポッカ日本本社は把握しているのか?
ポッカ日本本社はこうした北朝鮮との取引を把握しているのか。
ポッカの広報担当者は筆者の取材に対し、「2012年にPCSがOCNとの取引停止を検討した際、ポッカ社がPCSから相談を受け、それによりPCSの商品がOCNを通じて北朝鮮に輸出されていることを認識しました。その後、PCSがOCNとの取引を停止したことも認識しております」と電子メールで回答した。
しかし、PCSとT SPECIALISTの取引については、ポッカ本社は「認識をしておりませんでした」と回答した。
ポッカ日本本社がPCSの売り上げの一部をキャッシュあるいはロイヤルティといった形で得ていたかどうかについて、ポッカの広報担当者は、PCSがブランドオーナーである日本本社にPOKKAブランドの使用料を支払っていることを認めた。しかし、日本本社としてはPCSの商流への関与はしていないと述べた。
平壌の2店舗内を撮影した写真には、グッチやシャネル、プラダ、バーバリー、モンブランといった世界の名立たるブランド品が写っている
また、NK Newsの取材によると、OCNは金融業にも乗り出している。同社は柳京商業銀行を設立し、前述の平壌の店舗にATMを設置済みだ。1万ドル以上の銀行預金残高を有する預金者には、両店舗での買い物で10%のディスカウントを受けられる特典も提供しているという。
■北朝鮮の密輸ネットワーク
さらに、OCNは金融だけではなく、海運事業にも進出してきた。OCN傘下のシンガポール拠点の船舶会社は貨物船を保有する。そして、国連と米国のシンクタンクのC4ADSによって、北朝鮮の密輸ネットワークに関与していると指摘されたシースターシップス(海之星船舶管理有限公司)がOCN傘下の香港拠点の海運会社を運営しているとみられている。
北朝鮮の元幹部によると、日本製品を積んだ貨物船は、まず第三国である香港や、中国の天津に寄港する。そして、そこで別のコンテナに荷物を積み替え、平壌に近い北朝鮮の南浦港に貨物船を向かわせるという。
国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネル委員の古川勝久氏は「OCNと金融と貨物船のリンクは非常に重要だ。シースターシップスと関係があるとは思わなかった。シースターシップスは、専門家パネルでもかなり追及した」と述べた。
歴史を振り返れば、北朝鮮は1990年代半ば、餓死者が数百万人にも及んだとみられる大飢餓に襲われた。国連の安全保障理事会や米国、日本は、核ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して、厳しい制裁措置を科してきた。しかし、この間ずっと、北朝鮮は核ミサイル開発を続行した。平壌は一向に核ミサイル開発をやめていない。OCNの事例が示すように、北朝鮮に対する経済制裁は「ザル」状態で、制裁の実効性がまだまだ不十分な点がみられる。国際社会が制裁を強化し、北朝鮮に断固たる意志を示す余地は大いにある。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。