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英BBCから流れてくるのは気が滅入りそうなニュースばかりだ(写真:Mochio/PIXTA)
「この世の終わり」を思わせるイギリスの日常 もはや「悪いニュース」しか出てこない
http://toyokeizai.net/articles/-/180364
2017年07月13日 ロイター
先日、朝7時のBBC ニュースで8つのニュースが放送されていたが、その一つひとつがイギリス国民の日常に蔓延する絶望を感じさせる内容だった。初めのニュースは、北朝鮮の弾道ミサイル実験成功と、それに対するアメリカの「戦争も辞さない」という反応によりもたらされた世界的な脅威だった。
世界規模での最終核戦争の話題を取り上げたあと、ニュース速報は、イギリスの国家的苦難のニュースへ次々と進んでいった。
■「怒り」がイギリス国民の基本反応に
それらはこのような内容だ。
BBCのレポーターが「これよりひどいものはまずないだろう」と言ったハラスメント被害者支援に失敗した警察に対する調査結果、グレンフェルタワー火災で、大災害の責任があるとされる関係者たちを1人も逮捕しなかった警察に対する生存者からの告発、予想されている公共セクターにおける賃上げ率を1%に制限する政府の決定について、そして警察の失敗に対する別の申し立て。今回は数年にわたる人種差別的虐待の末、殺されたイギリスのイラン人難民ビジャン・エブラヒミさんの保護に関する失敗だった。
また、サウジアラビアによるイギリス国内でのテロ支援に関する政府報告が抑制されたことへの非難や、ほとんどの学生が約5万ポンドの負債を抱えて大学を卒業し、ほとんどの人がそれを返済できないというニュースもあった。
これに続くスポーツニュースは通常、イギリスがとてもスポーツ好きの国ということもあって、元気が出るようなニュースであることが多い。しかし、この日は違った。イギリス自転車界のスター選手の1人、マーク・カヴェンディッシュがツール・ド・フランスで落車によりリタイアしたのだ。イギリスのプライドが保たれるかどうかは、アンディ・マリーのウィンブルドン優勝にかかっているようだが、今期調子がいまひとつの彼には難しい挑戦だ。
今、イギリス人の多くが何かに対して基本的に示す反応は「怒り」だ。ケンジントン・アンド・チェルシー区議会が建築物の断熱材や防火扉改善のための資金を出し惜しんだという (予備的) 証拠があったグレンフェルタワー火災のケースのように、時として、このような反応は正当化されるように思える。
しかし、悲劇であると同時に複雑でもあるこのような事件で、いまだに逮捕者が出ていないということで警察を責めたり、自らの職務を開始する前に火災の原因についての質問を打ち切ったと非難される判事に対し、別の会議で軽蔑の言葉を浴びせたりすることは、正当化できる反応ではない。
普段は信頼されている警察や司法当局に、最近怒りの矛先が向けられることが多いのは、この怒りの裏にある恐怖を表している。イギリス社会に定着した高い不確実性から来る恐怖であり、また、世界に非常に大きな問題が存在しているということへの恐怖でもある。そして、それらは解決できるものではない。
これらは実際には解決策のある問題なのだが、行き詰まっている状況にある。79人の命を奪ったグレンフェルタワー火災で、警察が手を抜いて当局者たちに職務怠慢、またはそれ以上の責任を追及した結果、証拠不足で裁判に負けるかもしれない。または、警察が慎重に手続きを進めた結果、興奮した大衆や、票集めに奔走する政治家たちから警察自体が職務怠慢というレッテルを張られるかもしれない。
■ブレグジットは破滅的な選択だったのか
イギリスで差し迫っている問題はブレグジット(EU離脱)と、先月の総選挙後に出てきた腐敗政治への非難だ。ブレグジットは40年以上にわたり英国の法律、政治、経済の枠組みを統治してきた条約に幅広い変更を加えるという苦痛の連続であり、国内政治は、与党保守党内で権力を求める動きにより活気づいている。保守党の党首テリーザ・メイ首相の影響力は、大勝しなければならなかった選挙でほぼ敗北するほどまでに弱まっている。
イギリスの官公庁や、重要な国立機関のリーダー、職員たちは、ブレグジットが破滅的な選択肢だったと非常に強く感じている。カナダ人の経済学者マーク・カーニーが総裁を務めるイングランド銀行は、政府の意向に忠実に従っているが、ブレグジットが実施されたときには、ロンドンの金融街シティから主要機関が多数撤退し、景気が悪化することを内心では懸念している。
この国で強まる緊張感は確実なものになるかもしれない(少なくともある程度は)。それは、もし政府に、ウェストミンスター議会に再び主権を持たせたいという多数派の要望を尊重する反対派がいればの話だが、現実はそうではない。
労働党の党首、ジェレミー・コービンは、彼が6 月の選挙で党を破滅させるという世間一般の見方にあらがい、逆に、中流階級や若年層、高齢層に受けそうな純粋な大衆迎合主義のポジションをとることで労働党への票数を増やした。
数字のつじつまが合わないマニフェスト、あいまいすぎて位置づけが難しいブレグジットに対するポジション、「保守党員は昔からそうだが、相も変わらぬ反動主義のまぬけたちだ」という一貫した批判――。これらが労働党の優勢予想を支え、コービンのリーダーシップを強固なものにした。そしてそれらは、イギリス社会にさらなる後退をもたらした。
イギリスは現在、偉大な指導者がいるような国ではまったくない。メイ首相に取って代わる可能性が高い競争相手の中で唯一、財務相のフィリップ・ハモンドだけが、彼自身の政府をつくる前に、その任務の大きさと、それによりイギリスが負債を負うかもしれない深い溝を理解している。しかしハモンドは控えめなテクノクラートであり、政治的な戦いを望んでいるのかどうかまだはっきりさせていない。
■再び「欧州の病人」になってしまうのか
イギリスは行き詰まっている。イギリスはEU加盟国27カ国とうまくやっていくことを願っている国の1つだが、そのEU加盟諸国はイギリスが拒絶したクラブから追い出すことを協議している。EUはイギリスの輸出の大部分を受け入れている単一市場だが、イギリスがその市場にアクセスすることを拒否するだろう。
しかし、もしイギリス政府がそのスタンスを軟化させ、ノルウェーのように単一市場に参加しつつもEUには加盟しない(それによりEU加盟国からの移民は受け入れる)という道をたどれば、ブレグジット推進派から強い反対に遭うだろう。そして、イギリスに対して友好的な大国は世界で唯一アメリカだけになるだろう。
そのアメリカを率いるドナルド・トランプ大統領の自由貿易への反感は、将来、自分ではどうしようもできないところまで、大統領自身の力を弱めてしまうかもしれない。
イギリスが「欧州の病人」というレッテルを張られていた1970 年代以降初めて、この国は深刻な一連の危機に直面している。そして、それを避けるためには偉大な政治的手腕が必要になるが、現時点では、そのような手腕を持った政治家も政党も、ないようだ。
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