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混迷深まる中東 どこへ
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投稿者 あっしら 日時 2017 年 7 月 15 日 02:02:42: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[複眼]混迷深まる中東 どこへ

 中東情勢が混迷を深めている。サウジアラビアとイランの盟主争いは、サウジ主導のカタールとの断交に発展。シリア内戦や過激派組織「イスラム国」(IS)掃討は、米国やロシア、トルコなど域外国の思惑も絡んで地域を複雑にしている。地政学上の要衝である中東はどこへ向かうのか。

◇  ◇

■サウジ、イスラエル接近も 東京大学准教授 池内恵氏

 サウジアラビアは国政の実権を握るムハンマド新皇太子の下で、イランに強硬姿勢を取り続けるだろう。イランは今のところサウジの挑発に反応せず、サウジが国際社会の問題児であると見られるほど、利点がある。懸念はサウジがこれまでありえなかったことをやる可能性だ。

 それはイスラエル(との接近)だ。反イランで利害が一致するサウジとイスラエル、トランプ米政権の連合にイスラエルが知恵をつけている、というのがイランの認識。イランも織り込み済みだが、サウジがイスラエルと相互に国家承認するなど公然と連合を組む事態は別だ。

 イスラエルと同盟し同じ中東の国に危害を加えることは、国家の威信や正統性を失う恐れがあるため誰もやらなかった。しかしサウジやアラブ首長国連邦(UAE)では王族の世代交代が進む。過去の経緯を意に介さない若い王子たちは、従来とは違う政策を取る可能性が高い。

 イスラエル接近の目的は米国の取り込みだ。1979年のイラン革命以降、米国はイランを押さえ込んできた。オバマ前政権はイランに近づいたものの、反イランのトランプ政権が誕生した。サウジにとり、米国と近いイスラエルは切り札だ。

 カタールはイランとの関係悪化は得策でないと考えているが、サウジには抜け駆けと映る。しかしカタールに圧力をかけてもイランやトルコの側に追いやるだけ。気付けばイランの影響力がアラビア半島に及んでいた、ということになりかねない。

 サウジでは王族や官僚に新皇太子の支持層がいる。だが権力基盤確立には有能でも、政策の先行きは見通せない。経済改革計画「ビジョン2030」は全国民の優遇政策を変えないと成立しないが、昨年決めた公務員給与削減は撤回した。内政安定を優先すれば改革は進まず、改革を標榜する王子たちの権力掌握の道具となって終わる。

 ISは「アラブの春」の後の強権統治の揺らぎと、代わりの統治理念や体制がない中で、国家権力が及ばない場所に出現した。掃討作戦でシリアやイラクでの領域支配がなくなっても、ISを生んだ環境やイデオロギーはなくならない。似たような非国家主体は今後も現れる。

 シリアやイラクでは民族と大国により勢力圏が再編される。もはやシリア全土を1つの中央政府が統治することはないだろう。トルコやイラン、ロシアといった域内外の大国が介入し治安の安定が得られるなら、国際合意が生まれる可能性がある。

(聞き手は松尾博文)

 いけうち・さとし 東大先端科学技術研究センター准教授。国際日本文化研究センター准教授などを経て現職。専門はイスラム政治思想。著書に「イスラーム国の衝撃」など。43歳。

◇  ◇

■調停役が不在、解決みえず 英王立国際問題研究所シニアリサーチフェロー ピーター・ソールズベリー氏

 アラブ諸国のカタールとの断交は、それを主導したサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が、湾岸協力会議(GCC)内だけでなく中東・北アフリカ地域のリーダー役を担おうとする野望を示している。

 サウジやUAEは、カタールがイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を支援し、イランに融和的な姿勢を取るのを問題視した。イランはこの機会にカタールとの結び付きを強め、利益を得ようとするだろう。

 サウジがカタールの締めつけに動いた背景にはいくつか理由がある。「アラブの春」の際、サウジは自国や地域の利益を守るうえで米国が当てにならないと気づいた。中東各国の体制転換を米国は後押ししかねない。オバマ前政権は中東政策の軸足を湾岸諸国からイランへと移し、警戒感は一層深まった。

 それが2011年に起きたバーレーンの反政府デモ鎮圧のためのGCC合同軍派遣や、15年のイエメン軍事介入につながった。サウジに強硬路線のサルマン国王が誕生し、新皇太子に息子を選んだのも大きな変化だ。サウジはより野心的に近隣諸国に干渉しようとしている。

 複雑な中東情勢はトランプ米大統領の登場にかき回されている。トランプ氏は対イランでオバマ氏よりずっと攻撃的だが、その真意や行き着く先を理解するのは難しい。トランプ氏の心変わりへの警戒感も根強い。

 米国の指導力の空白を見て、ロシアも中東への介入を強めている。イランのロウハニ大統領がこれまでの対外融和路線を続けるかも分からない。各プレーヤーの動きは結局のところ、原油価格に左右されるからだ。

 イエメンではサウジとイランがそれぞれ支援する勢力による「代理戦争」が続き、人道危機が深刻だ。トルコがカタールを擁護し、すでに対立は地域を二分している。全員が片足を突っ込んでいるが、決着に必要な妥協を考えている者はいない。手詰まりの状態が続くだろう。

 問題は、壮大な調停役を引き受ける中立的な仲介者が見当たらないことだ。イランの核問題を巡り欧米など6カ国が合意した「包括的共同行動計画」のような手段が役立つとの見方もあるが、トランプ氏とここ数カ月の出来事を考えると、具体的な道筋は想像すらできない。

 中国のような第三の大国ならば間に立てるかもしれないが、あの国は歴史的に調停役を果たしたことがない。可能性は限りなく低いだろう。

(ロンドンで、聞き手は小川知世)

 Peter Salisbury 中東経済専門誌の編集者を経て、15年に英王立国際問題研究所の研究員。英政府や国連、世界銀行のコンサルタントを歴任した。専門は中東の政治経済。34歳。
◇  ◇
■アラブの溝、イランに利益 イラン政治評論家 アミル・モヘビアン氏

 サウジアラビアはイランが世界にテロをばらまいていると主張する。イランの立場からは、サウジこそが思想面、資金面でテロ組織を育ててきた国だ。

 ISがイランを攻撃しないことを、サウジはイランのテロ支援の根拠としてきた。しかし6月、ISはイランの首都テヘランで大規模なテロを実行した。

 イランはシリアやイラクで影響力を広げているが、いずれも請われて介入した。サウジが主張するような、イスラム世界を支配する野心などない。

 サウジのムハンマド新皇太子は政治家としての未熟さを露呈した。国内改革に力を注ぎたいのなら近隣国との緊張を下げる努力をすべきで、カタールとの断交は不要だった。

 アラブ諸国の間に生じた溝はイランにとって利益だ。イランはカタールと特に良好な関係ではなかったが、経済封鎖後に支援した。カタールの人々は困難な時に助けの手をさしのべたことを決して忘れないだろう。

 問題は米国だ。トランプ大統領の思考回路は、リーダー(指導者)ではなくディーラー(商売人)のものだ。5月にサウジを訪問したトランプ氏は帰国後、国民に成果を強調したが、それはいかにカネを稼いだかという点に尽きた。

 トランプ氏は国際社会における賢明な意思決定者としての米国の信頼を切り売りしている。イランは彼が中東の複雑なわなに落ちるのを待っていればよい。中東が大混乱に陥ったとき、イランに歩み寄らざるを得なくなるのは米国のほうだろう。

(テヘランで、聞き手は岐部秀光)

 Amir Mohebbian イランのアザド大学で西洋哲学博士号取得。イラン外交の戦略家として知られる。イランのアリヤ通信社の創設者。55歳。

◇  ◇

■カタールとの断交を支持 カイロ大学教授 モハメド・カマル氏

 エジプトはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンとともにカタールへの断交を通告した。カタールはエジプトに対する敵対的な行動を続けてきたが、我慢が限界に達し、下した決断だ。

 (エジプトでムバラク政権を転覆したイスラム原理主義組織)「ムスリム同胞団」をカタールが支えてきたことはよく知られている。カタールは同胞団の指導者たちをかくまってきた。

 同胞団はエジプトの国民に対する攻撃の基地としてカタールを使った。また、カタールは(アラビア語衛星テレビ局アルジャズィーラなど)自分たちが影響を及ぼすメディアを用いて、エジプトの体制を攻撃した。

 カタールはテロ組織への支援を続けることで、ISのイデオロギーをエジプトのシナイ半島に広げることに力を貸した。これは内政干渉にほかならない。

 カタールとの断交をエジプトのメディアは歓迎している。エジプトのテロの脅威の背後にカタール政府がいるという見方を集中的に報じるようになった。

 カタールとアラブ諸国の間の対立から、イランは最大限の利益を得ようとしている。イランには中東地域で支配を広げたいという意図があるからだ。

 イランと、同様にカタールの擁護に乗り出しているトルコの2カ国は、中東地域でより大きな役割を果たすことを望んでいる。2カ国は、カタールと他のアラブ諸国の対立をことさらに誇張しようとしている。中東域内の主要国としての地位を固めて、政治的、経済的な得点をあげることを目指している。

(聞き手はドバイ=岐部秀光)

 Mohamed Kamal 米ジョンズホプキンス大で国際関係論の博士号取得。ムバラク政権で政策アドバイザーなどを務めた。

◇  ◇

〈アンカー〉暗雲ペルシャ湾 世界経済脅かす

 サウジアラビアが主導するカタールとの断交が、中東内の亀裂を広げている。背後にあるのはサウジとイランの対立だ。世界有数の産油地帯であるペルシャ湾の不安定化は世界経済を脅かし、原油の大半をこの地域から調達する日本も無関係ではいられない。

 サウジでは31歳のムハンマド新皇太子への権力集中が進む。イランを敵視するトランプ米政権と結びつき、危機を加速させる。池内氏は「サウジがこれまでにない政策をとる可能性」に言及した。

 モヘビアン氏が言うように「アラブ諸国の溝はイランの利益」だが、国内強硬派が黙っている保証はない。ソールズベリー氏の指摘通り、問題は「調停を引き受ける中立的な仲介者がいない」こと。ロシアやトルコなど域外国の思惑も絡み、中東の混迷は収束が見通せなくなりつつある。

(編集委員 松尾博文)

[日経新聞7月4日朝刊P.6]

カタール首長に関係強化伝達 首相が電話協議

 安倍晋三首相は28日、カタールのタミム首長と電話で約20分間協議し、サウジアラビアなどアラブ諸国がカタールと国交を断絶した問題などで意見交換した。首相はエネルギー分野を中心にカタールとの関係を強化していく方針を伝えた。日本側の説明によると、首相は断交問題について「クウェートの仲介努力を支持し、問題が平和裏に決着することを期待する」と伝えた。

[日経新聞6月29日朝刊P.4]

 

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